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映画『半世界』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

カメレオン』、『座頭市 THE LAST』、『行きずりの街』などの監督で知られる阪本順治の完全オリジナル作品『半世界』。主演を元SMAPの稲垣吾郎が務め、阪本順治がこれまで映画化できず温めてきた作品に挑む。

映画『半世界』の作品情報

半世界

タイトル
半世界
原題
なし
製作年
2019年
日本公開日
2019年2月15日(金)
上映時間
120分
ジャンル
ヒューマンドラマ
監督
阪本順治
脚本
阪本順治
製作
椎井友紀子
製作総指揮
木下直哉
キャスト
稲垣吾郎
長谷川博己
池脇千鶴
渋川清彦
竹内都子
杉田雷麟
菅原あき
牧口元美
製作国
日本
配給
キノフィルムズ

映画『半世界』の作品概要

阪本順治完全オリジナル脚本で制作された、26本目となる映画は、前作『エルネスト もう一人のゲバラ』のグローバルな視点から翻り、地方都市へ目を向ける。人々の小さな営みによって成り立っている地方都市で、40歳の大台を目前に控えた39歳の大人の男3人の友情を描く物語。主演には、『十三人の刺客』や『おしん』に出演している稲垣吾郎が務め、『セカンドバージン』、『シン・ゴジラ』の長谷川博己、豊田監監督作品常連の渋川清彦が名を連ねる。

映画『半世界』の予告動画

映画『半世界』の登場人物(キャスト)

高村紘(稲垣吾郎)
とある地方都市の郊外に暮らす3人家族の家長。父親から受け継いだ山中の炭焼き窯で、備長炭を製炭している。
沖山瑛介(長谷川博己)
高村紘の中学校の旧友で、高校を卒業してからは町を出て自衛隊員となり海外遠征に出かけていた。
岩井光彦(渋井清彦)
高村紘の中学校の同級生。現在は高村と同じ町で自営業の中古車販売店を経営している。

映画『半世界』のあらすじ(ネタバレなし)

都会とは程遠い、しかしド田舎とも形容しがたい中途半端なとある地方都市。その更に郊外に住んでいる高村は、妻の初乃と息子の明と3人で慎ましやかに生活する。仕事は、高村の父から受け継いだ備長炭の製炭業。山の深くに備え付けてある炭焼き窯の前に座り、出荷するための備長炭を春夏秋冬問わず製炭し続ける。

高村の40回目の誕生日が目前に迫る、肌寒いある日、中学校の同級生で旧知の中であった沖山がひょっこりと町に戻ってくる。沖山は、自衛隊員となった日から町を出ており、現在は海外に派遣されて連絡がほとんどとれていなかった。その沖山が、何の連絡もなしに突然町に戻って来たので、高村は懐かしさで顔が綻ぶ。

久しぶりに語りたいことがありすぎて、高村は町で中古車販売を営んでいる同じく同級生の祝いを誘って、飲みに繰り出す。30代から40代となる節目の年に訪れた人の繋がりが、高村の人生に大きな意味をもたらしてくれる。

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映画『半世界』のネタバレあらすじ結末と感想
映画『半世界』のネタバレあらすじと感想。ストーリーを結末まで起承転結で分かりやすく簡単に解説しています。映画ライターや読者による映画感想も数多く掲載。

映画『半世界』の感想・評価

人生、どこで諦めどこで焦るのかを考えさせてくれる

高村は結婚をして家庭も持っているが、息子の明は反抗期で全く交流もなく、家のことは妻の初乃に任せっきりで無関心であったために家庭は冷え切っている。仕事も特にやりたいと思って始めたわけでなく、父親から引き継いでいるだけの不安定な職で、将来には不安が残るばかり。

そんな時に、突然連絡もなしに戻って来た旧友の沖山瑛介。自衛隊員であった職を辞めて、更に離婚までして地元に戻って来る。きっと何か事情があって戻って来たのだろうが、いくら旧友とはいえ深くは問い質せない。そんな人生の選択があったのかと、目から鱗であるばかり。

自己啓発本などでは、「人生はいつからでもやり直せる」「人生を諦めることはない」「始めるのに遅すぎることはない」などのキャッチフレーズが並んでいる。確かにそれらは事実であり、何かを始めるのに誰かの了承を得る必要は本来ない。人生は自分だけの物で、誰かに指図されるものではないからだ。しかし、自分が何を抱えているかによって状況は変わる。

そうしてやりきれない気持ちを抱えたまま過ごしている人にこそ、ぜひ見て欲しい映画である。この映画を見た結果、状況が何も変わらなくても、きっと心のどこかに隠れている自分の気持ちを見つけ出せるはずである。

自分の仕事、自分の家族と向き合う

今、働いている人は自分の仕事に誇りが持てているだろうか。その仕事が好きで始めたのでないなら、誇りを見いだせず淡々とした毎日を過ごしているのではないだろうか。家庭を持っている人は、子供たちや夫婦間で交流を持てているだろうか。気づいたら相手の悪いところを見つけては文句を言い、子供たちに全く関心なく家に帰りたくないなんて思ってないだろうか。

きっと、そうした鬱屈した気持ちは、知らない間に心に巣くってずっと残っているものである。それに気づいたら、誰かに吐き出すのが一番良い。誰かに話して、誰かの話を聞けたら、きっと自分の中でも何かが変わる。きっかけとはとても些細で、「変えたい」「変えないといけない」「変えた方が良いのかな」と思う人たちの元にきっかけはやって来る。

高村の場合は、旧友の突然の帰還であった。「こんなこと、1人でやってるのか」と驚き関心を持つ旧友からの言葉。そして、旧友との飲み会の場で「子供に関心持ってないから反抗期が来る」との指摘。高村にとってそれらは仕事と家族を顧みるきっかけとなった。きっかけは何処にでもあり、「変化」を望んだ人に等しくやって来るのだと教えてくれる。これはそんな映画である。

映画『半世界』の公開前に見ておきたい映画

映画『半世界』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『半世界』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

阪本順治監督が、2000年度の日本アカデミー賞で作品賞・脚本賞などを始め賞を総なめにした話題作である。そして、今回の『半世界』でもどこか通ずる世界観を持っている。それまで男性の持つ世界観を独特の表現方法で表現してきた阪本順治監督の、初めての女性主演映画でもあり、実在の事件をモデルにした映画でもある。

映画の主人公は吉村正子という35歳の女性で、藤山直美が正子の役を演じている。正子は、外にほとんど出ず長年引きこもり生活を続けている。一応、母親が経営しているクリーニング店で修繕の仕事をしていたが、店頭に立つことはまずなかった。それが、妹との小さな諍いから衝動的な殺人を犯してしまい、初めて外に飛び出すこととなる。刺激に溢れる外の世界を転々としながら、様々な人々との交流を描いた犯罪映画である。

この映画の主人公正子は、35歳で抑えられない感情から衝動殺人を犯し、外の世界へ飛び出す。これは、人生の転換期の1つとも捉えられる。余りにも衝動的なので、自身が望んでの転換期ではないが、自分の人生を変えるきっかけになっている。そして、人との繋がりが自分を見つめなおす機会を与えた映画でもある。

40歳を目前にくすぶっている高村と、ほとんど状況は一緒であり、それ故に高村がどうやってきっかけを自分の物にしていくのか楽しみが残る映画である。

詳細

クソ野郎と美しき世界

元SMAPの稲垣吾郎、香取慎吾、草彅剛の3名が出演する4本の短編映画が詰まったオムニバス映画である。稲垣吾郎は、そのうちの『ピアニストを撃つな!』にゴロー役で出演している。

この映画は、2週間限定で全国の限られた映画館でのみ上映されたが、初日の舞台あいさつで掲げた目標の15万人を大きく超え、28万人の動員数を記録した。『ピアニストを撃つな!』の監督・脚本は園子温氏が務め、主演の大門は浅野忠信が演じている。

クソ野郎と美しき世界』自体は、アクション・ファンタージ・ラブストーリー・ミュージカル、多くの映画要素が盛り込まれたオールジャンル映画で、園子温監督以外にも爆笑問題の太田光や劇作家の山内ケンジ、映像ディレクターの児玉裕一が作品を手掛けている。

ちなみに、草彅の配信しているYouTubeのライブ配信では、公開終了後の4月20日の時点で第2弾の制作が報告されている。新しい地図というグループで活躍している稲垣・香取・草彅の3人の活躍は、留まるところを知らないようだ。

詳細 クソ野郎と美しき世界

シン・ゴジラ

ハセヒロの愛称で親しまれている日本の男性俳優・長谷川博己が、2016年に公開された映画『シン・ゴジラ』で主人公・矢口蘭堂を演じた。『ゴジラ FINAL WARS』から実に12年もの年月が過ぎて制作された今作は、「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」のキャッチコピーでも話題を呼ぶ。

第40回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞や監督賞を始め10部門を受賞する快挙を成し遂げる。この映画で、主演だった長谷川博己ももちろん主演男優賞を受賞している。

この映画が最初に話題を呼んだのは、もちろんゴジラ映画が12年ぶりに制作されるという点でもあるが、総監督・脚本をアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られている庵野秀明が担当しているというところである。

公開される前から多くのメディアで取り上げられ、目に留まるビジュアルのポスターが更に話題を呼び、現在の40代前後の当時ゴジラ世代だったお父さんたちも取り込み社会現象を生んだ。

映画も迫力ある映像で、日本政府や自衛隊が巨大生物ゴジラに対抗しているシーンは印象的である。主演の長谷川博己が演じている矢口蘭堂は、内閣官房副長官で、巨大不明生物特設災害対策本部の事務局長でもある。キリっとした政治家の様子と、『半世界』では印象が全く異なり、長谷川博己の役幅の広さが伺える映画である。

詳細 シン・ゴジラ

映画『半世界』の評判・口コミ・レビュー

映画『半世界』のまとめ

「残りの人生をどう生きるか」という問いかけに関しては、問われたときの年齢によって答えが異なってくる。そして、その答えに正解はなく、だからこそ誰もが答えを探さないまま年を取っていくことになるのだ。それでいい場合もあるが悪い場合もある。『半世界』は、自分が思い描いた人生が何だったか、それを忘れてしまう程忙殺され、または無気力になってしまっている現代人に向けた、ほっと一息つかせる愛に溢れる希望の映画である。

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