映画『読書する女』の概要:朗読を仕事とする女性が出会う、エロチックな世界を描く人間ドラマ。出演はミュウ=ミュウ、パトリック・シェネ。「恋は足手まとい」のミシェル・ドビル監督の1988年フランス映画。
映画『読書する女』 作品情報
- 製作年:1988年
- 上映時間:99分
- ジャンル:ラブストーリー、ヒューマンドラマ、ファンタジー
- 監督:ミシェル・ドヴィル
- キャスト:ミュウ=ミュウ、マリア・カザレス、クリスチャン・リュッシュ、マリア・デ・メディロス etc
映画『読書する女』 評価
- 点数:60点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『読書する女』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『読書する女』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『読書する女』 あらすじ【起・承】
読書が好きなコンスタンス(ミュウ=ミュウ)は、同居している夫ジャン(クリスチャン・リュッシュ)にベッドで「読書する女」という本を読み聞かせしていた。
本の主人公は、朗読を仕事にしているマリー(ミュウ=ミュウ)。美声と知性を生かしたいと朗読の広告を出そうとするが、広告会社の男から、”いかがわしい広告は出せない!”と最初に断られてしまう。
しかし、女性であることを隠して広告を出すことで、ちょっと変わった依頼主が次々と現れるのでした。
(1)モーパッサン作「手」
車イスの乗った少年エリック(レジス・ロワイエ)とその母親にマリーは朗読を依頼された。マリーは、少年エリックにモーパッサンの「手」を朗読するが、少年の瞳はマリーの足に向けられていた。
突然、少年が苦しみ出してしまう。翌日、病院に見舞いに行くと医者から、エリックが”髪の毛、髪の毛・・”とうわごとのように言っていたと聞く。
(2)マルクス作「反デューリング論」より貴金属に関する章
マリーは、本の選択について相談するため、生徒とは寝ない主義の教授に会いに行く。そこで、モーパッサンではなく、ゾラの本が良いと言われます。その助言を参考に100才の老女の家を訪れた。
そこには、蜘蛛が足に住み着いていると悩む、召使いのベラ(マリアンヌ・ドニクール)がいた。100歳の未亡人(マリア・デ・メディロス)は、”なんて美しい声かしら!”とマリーの声を誉めた。
彼女がリクエストした、マルクスの「反デューリング論」より貴金属に関する章を読んだ。すると、マリーはお金持ちの未亡人に気に入られた。
その後も何度か訪れるが、召使いのベラはようやくクモを体の中から追い出して、新しい世界へ飛び立ってゆく。
(3)ボードレールの詩集「悪の華」より「宝石」
再び、エリックの家へ行き、「悪の華」を朗読した。エリックは猫が好きだと言う。
彼は、マリーが気に入り、この前と同じ服を次回着てくるよう、注文を付けた。
マリーは、彼が朗読を聞きたいのではなく、性的関心を抱いていることに気づく。
映画『読書する女』 結末・ラスト(ネタバレ)
(4)マルグリット・デュラス作「ラ・マン(愛人)」
社長(パトリック・シェネ)から、教養を高めたいので文学を教えて欲しいと依頼が来た。しかし、実際は文学に興味があるのではなく、マリーに対して性的な関心を向けてきた。
”僕たちはお似合いだから結婚しょう!”と初対面にも関わらず、プロポーズ。
それでも、「ラ・マン(愛人)」の朗読に集中しょうとする、マリー。朗読を聞かないなら帰ると社長に告げた。
社長のことを教授に相談すると、関係を持たないほうが良いと言われます。それでも、肉体関係を結んでしまう。後にジンバブエに誘われるが断ります。
(5)ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」
6才の少女コラリー(シャルロット・ファルラン)は、母親が忙しいので代わりに朗読して欲しいと言う。その日、近くに移動遊園地が来ていたので、コラリーと遊園地へ行った。楽しい時間を過ごすが、コラリーの母親が帰ってきてびっくりしてしまう。
宝石が何者かに盗まれ、娘まで誘拐されたと誤解した母親は警察にマリーを訴えてしまう。実際には、コラリーが宝石を身に着けていただけだった。コラリーの部屋にはウサギのぬいぐるみがいっぱい。もう、この家族には会わないだろう。
(6)ジョワン・デュ・バレー作「哀惜詩集」から「金羊毛」
15才を迎えた少年エリック。”僕はいつ旅に出られるでしょうか?”とマリーに訊く。”毛”という言葉に敏感に反応する少年に、朗読を終えたマリーはスカートを捲し上げて見せた。
すると、少年は”次は、下着なしで見せてくれませんか?”と言うのだった。
(7)マルキ・ド・サド作「ソドム百二十日」
引退した判事は読書家。書庫から、マルキ・ド・サドの希少本を取り出して読んで欲しいと言う。マリーは躊躇したが、なんとか我慢して朗読した。そして、再訪を約束して別れます。
次に訪れた時、判事は2人の男性を家に呼んでいた。”紹介しょう!朗読してくれる女性だ。”と。再び、マルキ・ド・サドの「ソドム百二十日」を朗読させられそうになるが、マリーは読まずに立ち去った。
(終わり)コンスタンスは朗読し終えると、”私は声が美しいの!朗読を仕事にするわ。”と決めた。夫は、妻が隣りの家に車で傷をつけたことを思い出し、謝りの電話をかけた。
映画『読書する女』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『読書する女』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
「読書する女」はおしゃれ?それとも卑猥な作品なのか?
フランス人は日本人に比べて、読書好きで妄想が膨らみすぎてしまうところがあります。特に男の子に朗読するときは要注意ですね。
朗読を通じて、彼らの人となりが見えてくるわけで、時に朗読が少年の性への目覚めを促したり、老婆がお金持ちなのに倹約を尊ぶ文章を喜んでいたりするのがなんとも可笑しい。
フランス人の知的な楽しみを覗き見たような気がします。劇中に出てくる本を全て読んだことがあるという人は少ないと思いますが、原作が映画化された「ラ・マン(愛人)」など有名な作品も出てきますので、興味がある方は一読をお勧めします。
私が好きなシーンは、「不思議の国のアリス」を朗読する時に登場する女の子がウサギを抱えているところ。”ファンタジー”の世界に”逃避”した少女が更に、”遊園地”という装置に飛び込むわけです。
このように少女や老婆が本を通して、”逃避”するのに対して、少年や男性たちは、”性への欲求”を満たそうとするんです。読書に対する性差の感性の違いも興味深い。
朗読をテーマにした映画が熱い!
朗読と言っても、誰のためにどんな本を読むのかで印象が変わります。朗読が重要な意味を持つ映画を3作取り上げてみたいと思います。
まず、1作目はレア・セドゥ主演の「マリー・アントワネットに別れを告げて」(12)。18世紀のフランス。宮廷の朗読係シドニーが目撃した、フランス革命に揺れる3日間を描いています。
権力の座にあっても、孤独な王と王妃マリー・アントワネット。実在した宮廷の朗読係の女性をモデルにフランスの宮廷文化を味わえるのが魅力です!
2作目は、スティーブン・ダルドリー監督の「愛を読むひと」(08)。原作はベルンハルト・シュリンクの小説「朗読者」を映画化したもの。15才のマイケルは病気で倒れた時、介抱してくれた21才年上の女性と恋仲になります。
彼女のために読むのが、「オデュセイア」やチェーホフの「犬を連れた奥さん」などの作品。別れを経て、再会した時、彼女はナチスの収容所で犯した罪を裁かれます。彼女が、”文盲”だという事実が衝撃的なんです!
”文盲”のために殺人を犯したとなれば、有名な「ロウフィールド館の惨劇」というミステリーを嫌でも思い出してしまう。
3作目は、ニコラス・スパークス原作の「きみに読む物語」(04)。施設で暮らす認知症の女性に物語を読み聞かせをするデューク。彼が語る、青年ノアとアリーの切ない恋。認知症を患った女性が、ふとこれは自分の物語かもしれないと気づくシーンが泣けます。
どんなに科学技術が発達しても、人間の肉声から生まれる思いには魅力がありますね。声に出して読みたくなります。
映画『読書する女』 まとめ
これまで、読書は1人で読むものだと思っていたが、時には誰かに朗読してもらうのもいい。もし、本を選ぶならと想像しながらこの映画を観ると楽しくなります。
「読書する女」には、フランス流の知的なおしゃれ感がいっぱい詰まっています。コンスタンスは、自らを本の主人公マリーと重ね、本を読むことで誰かと繋がろうとします。
それは、職業としては成り立たなくても、危険でスリリングな体験なのかもしれない。男性が聞き手となると、性的な関心にばかりいくのはフランス的感性だろうか?
読書に対する性差の感性が違うことに驚くが、真面目に文学談義をするシーンなどもあれば、もっと作品の面白さが引き立つかもしれない。
また小悪魔的な魅力を放つ、ミュウ=ミュウの演技に朗読を聞きたい!と思うファンもきっと多いだろう。
みんなの感想・レビュー