若手ピアニストの登竜門、芳ヶ江国際ピアノコンクール。そのコンクールに、4人の若手ピアニストが挑んだ。その内の1人である栄伝亜夜は、幼い頃に天才ピアニストとして名を馳せていた。だが、とある理由で、表舞台から姿を消していた。
映画『蜜蜂と遠雷』の作品情報
- タイトル
- 蜜蜂と遠雷
- 原題
- なし
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2019年10月4日(金)
- 上映時間
- 119分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
音楽 - 監督
- 石川慶
- 脚本
- 石川慶
- 製作
- 市川南
佐藤善宏
石黒裕亮
加倉井誠人 - 製作総指揮
- 山内章弘
- キャスト
- 松岡茉優
松坂桃李
森崎ウィン
鈴鹿央士
臼田あさ美
ブルゾンちえみ
福島リラ
眞島秀和 - 製作国
- 日本
- 配給
- 東宝
映画『蜜蜂と遠雷』の作品概要
映像化不可能と言われていた恩田陸原作の青春群像小説を元に制作された作品。若手ピアニストの登竜門、芳ヶ江国際ピアノコンクールに挑む4人の若手ピアニストの姿が描かれている。松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士の4人が若手ピアニストをそれぞれ演じた。鈴鹿央士はオーディションを勝ち抜いて謎の少年ピアニスト・風間塵を演じることになった。『愚行録』(16)で長編映画監督デビューを果たした石川慶が、監督と脚本を担当している。
映画『蜜蜂と遠雷』の予告動画
映画『蜜蜂と遠雷』の登場人物(キャスト)
- 栄伝亜夜(松岡茉優)
- 幼い頃、天才ピアニストとして名を馳せていた。自分を支えてくれた母を失い、表舞台から姿を消す。
- 高島明石(松坂桃李)
- 楽器店勤務のサラリーマン。結婚しており、一児の父でもある。年齢制限ギリギリのため、最後のコンクールに挑む。
- マサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)
- 名門ジュリアード音楽院に在学している、若き天才ピアニスト。幼い頃、亜夜と一緒にピアノを学んでいた。新しいクラシックをやりたいという信念がある。
- 風間塵(鈴鹿央士)
- 養蜂家の家に生まれる。正規の音楽教育を受けたことがない。「ピアノの神様」と呼ばれるユウジ・フォン=ホフマンの推薦状を持ち、コンクールに出場する。
映画『蜜蜂と遠雷』のあらすじ(ネタバレなし)
若手ピアニストの登竜門、芳ヶ江国際ピアノコンクール。栄伝亜夜はそのコンクールに挑んだ。実は、亜夜は幼い頃に天才少女として名を馳せていたが、母親の死をきっかけに表舞台から姿を消していた。亜夜は今回優勝できなければ、ピアノを辞める決意をしていた。
コンクールには亜夜の他にも3人の「天才」が挑んでいた。高島明石は年齢制限ギリギリのため、最後のコンクール出場だった。彼はサラリーマンで、一児の父でもあった。マサル・カルロス・レヴィ・アナトールは名門ジュリアード音楽院に在学し、優勝に一番近いと言われていた。そして、謎の少年、風間塵。風間は「ピアノの神様」と呼ばれる人物からの推薦状を持参していた。
4人の「天才」は己と向き合い、ライバルとぶつかり合いながら、ピアノを奏でた。果たして、音楽の神様に愛され、優勝を勝ち取るのは誰なのか?
映画『蜜蜂と遠雷』の感想・評価
映像化不可能と言われたピアニスト達の物語
2016年に発売された恩田陸原作の青春群像小説を元に制作された作品。原作の小説は、「第156回直木三十五賞」と「第14回本屋大賞」をダブル受賞している。恩田は執筆の際、浜松国際ピアノコンクールに何度も通い、取材を行っている。浜松国際ピアノコンクールは静岡県浜松市で3年に1度開催されている国際ピアノコンクールで、1991年から始まった。
本作では4人の天才ピアニスト達の音楽への愛と苦悩と孤独が描かれている。原作者の恩田自身が無謀だと思っていたほど、映像化の実現はとても難しい作品だった。しかし、松岡茉優を始めとした実力派俳優が集結し、登場人物達を見事に表現している。そして、超一流のピアニスト達が、役に合わせた演奏を行った。それを見事にマッチさせたのが、新進気鋭の監督・石川慶である。原作の小説のファンも満足できる作品に仕上がっていること間違いない。
日本最高峰の音楽家達
映画化するに当たり、一流の音楽家達が作品に協力している。主要人物のピアノを担当したのは、ピアニストの河村尚子、福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央の4人である。河村尚子は5歳でドイツに渡り、ピアノを学んでいる。今まで日本フィルハーモニー交響楽団やベルン交響楽団など、日本国内に留まらず海外のオーケストラとも何度も共演している。福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央の3人も世界で活躍し、数々の賞を受賞している素晴らしいピアニストである。
物語のキーとなる第二次予選の課題曲『春と修羅』を作曲したのは、作曲家の藤倉大。藤倉大は15歳でイギリスに渡り、音楽を学んでいる。バンベルク交響楽団やシカゴ交響楽団から作曲を依頼されるなど、実力は折り紙付き。ぜひストーリーだけでなく、音楽面も期待して欲しい。
特に注目すべき2人の俳優
主演を務めたのは、2018年に大きな話題を集めた是枝裕和監督の映画『万引き家族』に出演していた女優の松岡茉優。幼い頃に天才ピアニストとして活躍しながらも、母を失ったことで大きな苦しみを負う女性・栄伝亜夜を演じた。「ほとんどしゃべらない主人公」と言われるだけあり、他の映画に比べれば主人公である亜夜のセリフは少ない。しかし、松岡は視線や表情で亜夜を表現している。ぜひ松岡の演技に注目してもらいたい。
本作で松岡の他に注目してもらいたいのは、謎の少年ピアニスト・風間塵を演じた鈴鹿央士。鈴鹿は100人を超えるオーディションの中から選ばれた新人俳優である。石川慶監督が「塵そのものだ」と評しているだけあり、風間塵のどこか自由で野性的な雰囲気が体現されている。
映画『蜜蜂と遠雷』の公開前に見ておきたい映画
万引き家族
松岡茉優の代表作。是枝裕和が監督・脚本・原案・編集を担当した作品。実際にあった年金の不正受給事件を元に、10年の時を掛けて構想を練り作り上げた作品。「第71回カンヌ国際映画祭・パルム・ドール賞」を受賞した。日本人監督が同賞を受賞したのは、約21年ぶりの快挙である。松岡は主人公の妻の妹、柴田亜紀を演じた。
柴田家は父の治、妻の信代、信代の妹の亜紀、治の息子の祥太、治の母の初枝の5人暮らしだった。治と信代の稼ぎと、初枝の年金で生計を立てていた。しかし、それだけではなく治は祥太に手伝わせ、万引きを行っていた。そんなある日、近くの団地の外で、寒さに震えている少女を見つける。治は少女を連れて帰り、一緒に暮らすようになった。
詳細 万引き家族
ユリゴコロ
松坂桃李の出演作。松坂は数々の不運に見舞われたときに、偶然実家で「殺人者の告白分」が書かれたノートを発見する青年・亮介を演じた。沼田まほかる原作のミステリー小説を元に制作された作品。海外でも翻訳版が出版されるなど、高い人気を誇る。「ユリゴコロ」とは人が生きていく上で欠かせない「心の拠り所」のことを表している。
亮介は婚約者の千絵と一緒に喫茶店を営み、幸せな日々を送っていた。しかし、その千絵が突然行方不明になってしまう。しかも、父が末期がんであることが発覚し、喫茶店の経営も上手くいかなくなる。亮介は様々な出来事に追い詰められる中、実家で一冊のノートを見つける。そこには、美紗子という女性の半生と、殺しの記録が綴られていた。
詳細 ユリゴコロ
愚行録
石川慶の代表作で、監督&編集を担当している。貫井徳郎原作のミステリー小説を元に制作された。エリートサラリーマン田向一家惨殺事件を軸に、人の「愚行」にスポットが当てられたストーリーになっている。最後まで「えっ!?」と驚く要素が仕掛けられており、それを見抜けるかどうかぜひ確かめて欲しい。
週刊誌の記者である田中武志は、一年前に起こった田向家一家殺人事件の取材を行うことにした。夫の浩樹、妻の由季恵、娘の3人が殺された事件だった。犯人はまだ見つかっておらず、家はそのまま放置されていた。学生時代の同級生、元恋人、会社の同僚など、様々な人から話を聞いた。そこから田向家一家の知られざる本性が浮かび上がってくる。果たして、彼らを殺したのは誰なのか。
詳細 愚行録
映画『蜜蜂と遠雷』の評判・口コミ・レビュー
『#蜜蜂と遠雷』
ピアノコンクールでありながら己れの高みに近づくために共鳴し合う天才達。あちら側の人間にしか見えない世界をこちら側の言葉を使わずに映画化させた石川慶監督の手腕恐るべし。今最も邦画らしくないアプローチを見せる邦画大作。天才を体現する松岡茉優という名の天才#背骨映画 pic.twitter.com/w2A7RF18QC— 背骨 (@sebone1126) 2019年10月5日
『蜜蜂と遠雷』
神の啓示の如く精神に直に響く音。天賦の才に恵まれようとその音を連ね自分だけの音楽へと昇華させるのは〝好きでたまらない〟という純粋な想い。天才という抽象的な存在を俯瞰しながらもその距離を多面的に描き一括りではない感情を捉える。これが凡人の自分にも響くんですw凄いと思う pic.twitter.com/CBApvr7u77— コーディー (@_co_dy) 2019年10月6日
『#蜜蜂と遠雷』(2019/日)
劇場にて。コンクールに臨む若きピアニスト達の群像劇ながら、より主人公の如く表現されるのは彼らの心情ではなく、彼らのピアノ演奏それ自体。ピアニストならば演奏で語れよ、演奏に至るまでの彼らの物語は、俳優ならば演技で語れよと、表現者の高い志で作られた秀作。 pic.twitter.com/LZPemf1N7Z— 銀色のファクシミリ (@Iin5cjYdKrAm26D) 2019年10月6日
「蜜蜂と遠雷」
我々には到底理解出来ない天才の崇高な世界を圧倒的演出の画で見せ、音楽で魅せる。表情で、指先で、音で語り、邦画らしさを全面に出さない…映画とはやはりビジュアルで魅せるものなんですよ。もはや映画館ではなく、コンサートホールに鳴り響いた天才達の永遠を留める音色。 pic.twitter.com/YXpECzDlhW— マッドなコーダイⅡ (@Gorilla_Island2) 2019年10月5日
#蜜蜂と遠雷 天才4人がピアノで呼応し合う描写(セリフもほぼ音楽の話)と、美しくストイックな音と映像に引き込まれる。役者陣も素晴らしく、中でも脆さと凄みの両方を演じ切る松岡茉優に魅入られた(1シーンだが斉藤由貴とのやり取りも印象的)。今年の邦画・音楽映画のトップクラスのお気に入り。秀作! pic.twitter.com/IBDky9Q1RE
— チェキロ (@check_row) 2019年10月5日
映画『蜜蜂と遠雷』のまとめ
天才ピアニスト少女として名を馳せながらも、母の死をきっかけに表舞台から姿を消した栄伝亜夜。彼女を中心に描かれた、4人の若き天才ピアニスト達の物語。日本を代表するプロのピアニスト達が登場人物達のキャラクターに沿った演奏を行っているだけあり、聞きごたえ十分の音楽が楽しめる。特に、藤倉大が作曲した『春と修羅』には注目してもらいたい。熾烈な争いを制して芳ヶ江国際ピアノコンクールの優勝を手にするのは誰なのか、最後まで目が離せない展開が待っている。
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