辛口で知られる映画批評サイト、『Rotten tomatoes』でも、なんと94%という高評価を獲得した注目作品が、とうとう日本に上陸。描かれるのは、人気子役の葛藤。
映画『ハニーボーイ』の作品情報
- タイトル
- ハニーボーイ
- 原題
- Honey Boy
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2020年8月7日(金)
- 上映時間
- 95分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- アルマ・ハレル
- 脚本
- シャイア・ラブーフ
- 製作
- ブライアン・カバナ=ジョーンズ
ダニエラ・タップリン・ランドバーグ
アニタ・ゴウ
クリストファー・レゲット
アルマ・ハレル - 製作総指揮
- フレッド・バーガー
ラファエル・マルモー
ダニエル・クラウン
ビル・ベネンソン - キャスト
- ノア・ジュプ
ルーカス・ヘッジズ
シャイア・ラブーフ
FKAツイッグス - 製作国
- アメリカ
- 配給
- ギャガ
映画『ハニーボーイ』の作品概要
俳優としての高い演技力が認められ、数々のヒット作品に出演している一方で、突発的な奇特な行動で、俳優界の異端児と呼ばれているシャイア・ラブーフ。最新作では、そんな彼が脚本を担当。自らの経験を元に描いた、自伝的作品となっている。作品を彩るのは、脚本担当のシャイア本人以外にも、ノア・ジュプやルーカス・ヘッジズなど、幼少の頃からその演技力が高く評価されている逸材ばかり。批評家からも高い評価を得た、映画自体のクオリティも保証されている一本。シャイアが長年、本当に作りたかった作品。
映画『ハニーボーイ』の予告動画
映画『ハニーボーイ』の登場人物(キャスト)
- オーティス(ノア・ジュプ / ルーカス・ヘッジズ)
- 天才子役としてその才能を遺憾なく発揮している少年。10年後は、アルコール中毒に苦しんでいる。
- ジェームズ(シャイア・ラブーフ)
- オーティスの父親。オーティスのマネージャーも務めているが、その性格からオーティスの悩みの種でもある。
映画『ハニーボーイ』のあらすじ(ネタバレなし)
オーティスは、12歳にしてハリウッドで活躍する天才子役。周りから評価され、順風満帆な毎日を送っているように見えるオーティス。しかし、彼には悩みがあった。それは、彼の父親であるジェームズのこと。オーティスのマネージャーも担当するジェームズだったが、前科者で彼自身は無職。そんなジェームズに振り回されていたオーティス。そして、時は流れ、オーティスは22歳になっていた。依然、俳優として第一線で活躍していたオーティスだが、日々のストレスのせいで、アルコールに溺れるようになっていた。そして、とうとう事故を起こしてしまったオーティスは、更生施設へと送られる。そこで、なんと彼はPTSDの徴候があると指摘されてしまう。彼は自身のトラウマに立ち返るべく、幼少期を思い出すのだったが…。
映画『ハニーボーイ』の感想・評価
シャイア・ラブーフの葛藤
『トランスフォーマー』シリーズの主人公、例えシャイア・ラブーフの名前を知らない人でも、そう言えば顔はすぐに思い浮かぶだろう。実は、彼が芸能界での活動を開始させたのはまだギリギリティーンエイジャーになったばかり、という若さの頃。瞬く間にブレイクし、その後休む間もなく第一線で活動し続けてきた。しかし、そのストレスが長年彼を苦しめ続けたのか、ある時を境に、酩酊による軽犯罪や、奇抜とも取れる行動を突然行っては週刊誌を騒がせるようになった。最新作では、そんなシャイアが脚本を担当。人気子役が抱える葛藤を、誰よりも理解しているシャイアが生々しく描く、成長の物語。当時の彼も、主人公と同じような悩みを抱いていたのだろうか。
入れ替わりの激しい子役戦争
まだ幼いとは思えない、卓越した演技力と存在感。天才子役が現れた、というニュースは時々世間を騒がせている。例えば、芦田愛菜などがそのいい例だろう。安達祐実など、今でも芸能界で活躍し続けている元子役もいる。しかし、勿論全員が大成するわけではない。成長と共に、人知れず消えていった子役も大勢存在する。子供の頃の愛嬌も、成長と共に少しずつ変化していく。どのように変化していくかは、当然自分では選べない。その成長がファンの予想とは違った方面に向かうことだってあるのだ。また、子供の頃のイメージからうまく脱却できない可能性もある。成長は、誰にでもやってくる。子供役を演じられる年齢には、限界があるのだ。つまり、大人の俳優よりも、子役の方が入れ替わりが激しいのである。そんな、厳しい競争社会の子役社会で、果たして彼らは何を考え日々を過ごしているのだろうか。
天才子役、ノア・ジュプ
ノア・ジュプ、それは、現在ハリウッドにおいて最も注目されていると言っても過言ではない子役の名前。あのジョージ・クルーニーが、「最高の子役」と手放しに褒め称えた逸材。本来、年齢を重ね様々な経験をしていくうちに、人間としての深みがより深まっていく。その深みが演技に反映され、役者としての味に繋がっていくのだろう。しかし、まだ人生経験の浅い子役でも、演技に圧倒的な説得力を持っているケースがある。ノアもその中の一人。元々豊かな感性や、類稀なる才能を持っているのだろう。子役だからと言って、軽く見ていては失礼。演技に重要なのは、年齢だけではないことを教えてくれる。逆に、彼らから人間の感情の機微を教えてもらおう。
映画『ハニーボーイ』の公開前に見ておきたい映画
トランスフォーマー
最新作の脚本を担当しているシャイア・ラブーフ。最新作では、彼がこれまで抱えてきた葛藤を生々しく感じることができる。幼い頃から何本もの作品に出演してきた彼だが、やはり彼の名前を聞くと思い浮かぶのは本シリーズではないだろうか。惑星サイバトロンには、金属生命体、トランスフォーマー達が住んでいた。彼らは、機械や金属に命を吹き込む力を持った、『オールスパーク』によってこの世に誕生したのだ。しかし、そのオールスパークを巡り、オートボットとディセプティコンという2つの勢力が、激しく火花を散らすこととなる。しかし、その争いの末、サイバトロンは荒廃してしまう。サイバトロンを復興させるため、宇宙へと向かったトランスフォーマー達は地球に辿り着いたが…?本作で爆発的な人気を博し、もしかすると、彼のその後の葛藤のきっかけにもなったかもしれない作品。
詳細 トランスフォーマー
ワンダー 君は太陽
2018年の『クワイエット・プレイス』でブレイクして以降、数々の話題作に出演し続けている天才子役、ノア・ジュプ。そんな彼が出演し、再び大きな話題となったのが本作である。主人公のオーガストは、トリーチャーコリンズ症候群という病を生まれながらにして患っていた。顔の変形を伴うこの病気。これまで27回も手術をしてきたオーガストだったが、やっと病態が安定し、学校に通うこととなった。しかし、オーガストの容姿は、同級生の子供達から見ると、異形のものに映った。周囲からのいじめや差別に苦しむオーガスト。挫けそうになりながらも、両親の支えを受け必死に毎日を生きていた。そして、周囲も、そんなオーガストに感化され、少しずつ考え方を改めていく。
詳細 ワンダー 君は太陽
gifted/ギフテッド
2017年に公開された作品。7歳のメアリーの人生は、ある日一変する。それは、数学の授業でのことだった。彼女は、数学において天才的な才能を見せたのだ。メアリーは先天的に高い能力、通称ギフテッドを持っていたのだった。普通であれば、誰もがギフトを持っていたことに対して喜びを見せるはず。実際に、メアリーの通う学校の校長も、彼女をギフテッド向けの学校に彼女を通うわせることを提案してきた。しかし、叔父のフランクは、そのことに対して良い反応を見せなかった。そして、そのことにはとある理由があった。才能があるということは、必ずしも幸せなことではないのかもしれない。演技の才能というギフトを持って生まれた子役達も、その才能が故に苦労することもあるだろう。才能ある子役の演技を堪能できる一本。
詳細 gifted/ギフテッド
映画『ハニーボーイ』の評判・口コミ・レビュー
『ハニーボーイ』映画館にて93本目。
父親は自分の写鏡。シャイア・ラブーフが自身の過去のトラウマを形にした脚本を元に“父の支配”と“心の痛み”を克服した模様を届ける。どんな役でも演じられる天才子役は一番欲しい目の前の愛情が得られず苦悩した。主演3人の演技が心を大きく抉る。 #EDDIE映画2020 pic.twitter.com/mXuqrRitSD— EDDIE@Kings29-40👑 (@eddie2yuji) August 8, 2020
ハニーボーイ
シャイア・ラブーフの自伝的映画。親の心子知らず、大人になって初めて気づく父の無償の愛。如何ともし難い喪失を抱えるノアジュプ演じる少年と己に不甲斐なさを感じ臍を噛むラブーフ…互いに堰き止められない感情が溢れる。破滅と再生、交差しそうでしない巧妙さが沁みた…秀作です! pic.twitter.com/NKsWj1VzQJ
— ムービードープ (@browsing_movie) August 1, 2020
#ハニーボーイ はすべてのカットが宝石のように美しい。
シャイア・ラブーフが痛みばかりの父との関係に苦悩した子役時代からのPTSDを患うほどのトラウマと向き合った経験が映画に。
親との関係が人生を左右するといっても過言ではないが、過ぎ去った時間を振り返ると至る所に愛があることに気づいた… pic.twitter.com/LwkvDPm0RF— DIZ (@DIZfilms) July 31, 2020
「ハニーボーイ」、“なぜ自分はここにいるんだ?”と自問する大人になった子役と、“自分は何も悪くない”と誰かに言い訳をしていた子役の父。俳優というのは“嘘をつき続ける仕事”なのだということを、3人の“名優”が身を切るような痛みとともに教えてくれた。それぞれの後ろ姿がとても印象的。 pic.twitter.com/C2C71oOiMe
— Shinichi Ando (@andys_room) August 8, 2020
「ハニーボーイ」を観ました
オーティスが求めているものはお金でも名声でもなくただ父親がそばにいて手を繋いでいてくれる事で、健気すぎて辛かったです。
父親を演じたシャイア・ラブーフの経験をもとに脚本が書かれたそうだが、自ら演じるのは相当な葛藤があったと思うしそして乗り越えたんだろうな pic.twitter.com/UQHLPpQRDO— ろこ (@r5_vu) August 8, 2020
映画『ハニーボーイ』のまとめ
本作に出演しているノア・ジュプ、シャイア・ラブーフ、そして、ルーカス・ヘッジズ。そんな彼らには、とある共通点がある。それは、全員が年若い頃からずば抜けた演技力で注目された逸材であったという点。そんな彼らが天才子役の葛藤をテーマに描かれた本作にこぞって起用されているのは、偶然かはたまたハレル監督の粋な計らいか。全員、主人公の気持ちが分かるだけに、より演技にリアリティが増すのではないだろうか。辛口批判者ですら認めた、クオリティの高い一本。本年の映画賞でも注目の一作となるかもしれない。
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