「死んでくれ」と言っているうちに本当に死んでしまった父親を生き返らせるために、ピンクの髪のデスメタル少女が奮闘するコメディ映画。まだまだこれからが熱い広瀬すずの新たな境地と共に、コメディ映画に欠かせない俳優が磐石に脇を固める。
映画『一度死んでみた』の作品情報
- タイトル
- 一度死んでみた
- 原題
- なし
- 製作年
- 2020年
- 日本公開日
- 2020年3月20日
- 上映時間
- 93分
- ジャンル
- コメディ
- 監督
- 浜崎慎治
- 脚本
- 澤本嘉光
- 製作
- 吉田繁暁
松崎薫
永江智大
山邉博文 - 製作総指揮
- 大角正
石原隆 - キャスト
- リリー・フランキー
小澤征悦
嶋田久作
木村多江
松田翔太
加藤諒
でんでん
柄本時生 - 製作国
- 日本
- 配給
- 松竹
映画『一度死んでみた』の作品概要
『ラストレター』(19)『ちはやふる』(16)など、話題作品で主演に引っ張りだこの女優・広瀬すずによる、新境地デスメタルキャラ。2日間だけ死んでしまう薬をめぐって、父親役の堤真一、その秘書役の吉沢亮らを始めとした豪華キャストが大騒動を繰り広げる。親子間の確執と愛情を笑いとともに描き、つい頷きながらも心がしっかり温まる、ハートフルS(死んだ)F(ふり)コメディ。
映画『一度死んでみた』の予告動画
映画『一度死んでみた』の登場人物(キャスト)
- 野畑七瀬(広瀬すず)
- 「魂ズ」というデスメタルバンドのボーカル。髪をピンク色に染めている。反抗期で父親を嫌っており、バンドのシャウトでいつもその思いをぶちまけている。
- 松岡卓(吉沢亮)
- 七瀬の父・計の秘書をしている若い男。存在感が全くないため、「ゴースト」と呼ばれている。
- 野畑計(堤真一)
- 七瀬の父親で、製薬会社の社長。「2日間だけ死ぬ薬」を飲んだところ、ライバル会社の陰謀で火葬されそうになってしまう。
映画『一度死んでみた』のあらすじ(ネタバレなし)
ピンクの髪をしたデスメタル系女子、七瀬。絶賛反抗期真っ最中で、父のことが大嫌いだった。いつもライブで父への文句を歌い、何度も死ねと言っていた彼女がある日、本当に父が死んでしまったことを知る。
実は父は、製薬会社が発明したとある薬で仮死状態になっていた。どうやら「2日間だけ死んじゃう薬」という、2日たてば生き返る薬のようだ。しかし、生き返りを阻止しようとする者が現れて大混乱。ライバル会社の陰謀に巻き込まれて火葬されそうになった父を見て、七瀬は父を生き返らせようと決心する。
七瀬の元に現れたのは父の秘書だった男、松岡。七瀬は彼の協力を得て父を生き返らせた後で、死ぬほど文句を言うことに決めた。
映画『一度死んでみた』の感想・評価
広瀬すずの新境地
父親に嫌いと叫び、匂いが臭いと消臭剤をかける広瀬すずを見たことがある人は、誰もいないのではないだろうか。暗く思い悩む役、等身大の少女の役などを多く演じてきた広瀬すずを起用し、思春期・反抗期真っ只中のデスメタル少女にしてしまったこの映画は、そんな今までのイメージから彼女を大きく逸脱させた。
コメディらしい嫌がる顔、不服な顔、叫ぶときの極端でキャラクター的な表情だけでなく、父親との距離が縮まってゆくための微妙な距離感の描写もこの映画には必要とされていたことだろう。キャリアを積み、それらを表現できるようになった彼女の姿を映画史に刻ませたこの映画は、彼女自身の今後のキャリアにも、きっといい意味での爪痕を残してくれるはずだ。
「魂ズ」として公開された楽曲
広瀬すず演じる七瀬が所属するデスメタルバンド「魂ズ」。この映画のためにバンドが歌う曲が書き下ろされており、広瀬すず本人が目を剥き、激しくヘッドバンギングをしながら熱唱する。
「デス・デス・デス・デス」と叫び、観客のレスポンスを誘いながら父親への思いの丈・文句を叫ぶ。歌の中で父親に「死んでくれ」と歌ったことが現実になるという体でストーリーが進んでゆく。
この楽曲「一度死んでみた」を担当したのは、人気音楽クリエイター・ヒャダイン。動画投稿サイトで一躍注目を集め、現在はSMAPや椎名林檎、関ジャニ∞などの様々な有名アーティストの楽曲を担当している。ストレートで耳に残るこの曲を聞いて、ストレス発散にヘッドバンギングをしてみてはどうだろうか。
先行して発売された小説と漫画
映画の公開に先駆けて、小説版、児童書版、漫画版の3種類の媒体での「一度死んでみた」が発売されている。脚本家による解説がついていたり、子供でも読みやすい工夫があったり、キャッチーなイラストで見せたり等、様々な観客を楽しませることのできる隙のない準備がされている。
予習で読むのもよし、また、映画を見たあとにチェックしてもよし。漫画はアプリなどで連載がされているため、連載公開前までの部分を少しずつ読み進めておき、映画を見る前の気持ちを高めておくのもいいだろう。
児童書版は、そろそろお父さんが嫌いな気持ちも少しわかる年頃の、小学校高学年の女の子に好んで読まれ、リアルな共感を得ているようだ。
映画『一度死んでみた』の公開前に見ておきたい映画
海街diary
広瀬すずが4人姉妹の末っ子を演じた、2015年の映画。日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞を獲得している。
長女の綾瀬はるか、次女の長澤まさみ、三女の夏帆、そして末っ子広瀬すず。それぞれの俳優の良さが出ているだけでなく、長女としての魅力や末っ子としての魅力など、それぞれの立場ごとの魅力もしっかり描かれている丁寧な作品である。
デスメタルバンドのボーカルとは真逆の、まだあどけない素直な少女を演じている広瀬すずが微笑ましく感じてしまう。彼女の可愛らしさと真っ直ぐさが周りに影響を与えていく様子が、心地よく爽やかな後味を与えてくれる。この映画を先に見ることで、そのギャップも楽しめるかもしれない。
詳細 海街diary
ラプラスの魔女
数々の映画を撮ってきた三池崇史監督による、東野圭吾原作小説の実写映画化作品。「ラプラスの魔女」と呼ばれる、未来の事象を観測できる少女を広瀬すずが演じている。
広瀬すずを始めとして見目麗しい俳優たちが揃えられており、「高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない」というテーマに沿って、非常にゆったりとしたペースでストーリーが進んでゆく。
広瀬すずの役どころとしては、特殊な能力を持ち、普通の人間よりも達観した感情を持つ少女である。未来に何が起きるかをすべて知っているため、常に冷静で浮世離れしている。周りの人間との落差を楽しんだ後は、デスメタルバンドのボーカルを演じる彼女自身と比較してほしい。
詳細 ラプラスの魔女
ゴースト ニューヨークの幻
死んだ男の魂が現世に残り、陰謀に巻き込まれた彼女の命を守ろうとする奇妙な愛の物語。こちらの主人公は、死んだ体がなくなり本物の幽霊となってしまうわけだが、なんとか現世にしがみついて必死になる姿を思わず応援したくなってしまう。
アカデミー賞・脚本賞、助演女優賞、またゴールデングローブ賞・助演女優賞を受賞している名作で、2時間の間にハラハラドキドキさせられた後、最後にはほっこりできる。死んだ人間が生きた人間に直接できることは少なくても、その存在が与える影響は大きいのだということを改めて考えさせられる。
コメディではないが、ところどころクスッと笑えて飽きることがない。バランスよく楽しめる名作映画である。
映画『一度死んでみた』の評判・口コミ・レビュー
『一度死んでみた』正直前半のノリだけでナメてました。どっこい後半から怒涛のブースト、伏線を回収しながらのスピーディーな展開でむしろ大好物! コメディ演技に振り切った広瀬すず&吉沢亮が良いし堤真一パパンの不器用ぶりに泣けたよ。油断してるとふっと現れる大量の主演級キャストも贅沢デス! pic.twitter.com/eLNqxjfOIK
— 葦見川和哉 (@kazuya_movie) 2020年3月21日
『一度死んでみた』
タイムリミット要素があるのに(コメディとはいえ)ここまで緊迫感が無い感じに見えるのはすごく新鮮。コメディ部分はカリカチュアされすぎたキャラのイマイチな魅力に満ち溢れ、虚ろな豪華キャストと、空虚な演出で物語を語るのは不可能ということが分かって本当に良かった pic.twitter.com/QClSOBh8Jh— 地獄 (@TiBlc) 2020年3月21日
『#一度死んでみた』(S/快作)
期待以上の痛快な娯楽作。不謹慎感溢れる後半が物凄く楽しい。TPOを意識し外面だけ取り繕う人間社会を、熱くおかしく面白く皮肉りつつ本質に迫る。エンタメ故なせる非常識な世界で暴れる豪華俳優陣に元気を貰った。閉塞感漂う社会を挑発する気概に拍手。映画は自由だ! pic.twitter.com/sfA01TYVhO
— シネマン(映画好き) (@cineman_0727) 2020年3月20日
#一度死んでみた 映画好き達の嗅覚はぱない。仮死になる唯一つの嘘の下に描かれる人生賛歌。文句言いながらも食事を一緒にする広瀬すずで泣けてくる。拘束期間1,2日であろう共演俳優の厚みが贅沢。駒木根さん相変わらず年齢不詳。吉沢亮の存在を消した演技も見もの。CG加工で薄くしたかと思ったほど。 pic.twitter.com/taznUY9CS4
— イヌとかば (@WsKw7) 2020年3月21日
映画『一度死んでみた』のまとめ
広瀬すずを楽しみながら、吉沢亮を楽しみながら、そしてキーである堤真一の運命を楽しみながら、笑ってほっこりして後味よく劇場を後にすることができるだろう。設定がわかりやすく序盤から入り込むことができるので、子供から大人まで一緒に楽しみ、盛り上がることができる作品と言える。
一人でもカップルで見に来ても楽しい映画でありながら、もしかすると父親と娘で見に行くというのがこの映画の一番の楽しみ方かもしれない。
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