多くのCMやMVなどを手がけた、若き才能溢れる関根光才が初の長編映画監督に挑む。芥川賞受賞作家・本谷有希子の同名小説を原作に、現在人気急上昇の趣里が過眠症で引きこもりの主人公・寧子を演じ、その脇を実力派俳優・菅田将暉と仲里依紗が固める。
映画『生きてるだけで、愛』の作品情報
- タイトル
- 生きてるだけで、愛。
- 原題
- 無し
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2018年11月9日(金)
- 上映時間
- 109分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 関根光才
- 脚本
- 関根光才
- 製作
- 甲斐真樹
松井智
藤本款
板東浩二
新井重人
森原俊朗
前信介
上田豊
水戸部晃 - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 趣里
菅田将暉
田中哲司
西田尚美
松重豊
石橋静河
織田梨沙
仲里依紗 - 製作国
- 日本
- 配給
- クロックワークス
映画『生きてるだけで、愛』の作品概要
芥川賞や三島由紀夫賞候補の作家で女優の、本谷有希子原作小説『生きてるだけで、愛。』が映画化。過眠症で引きこもり気味、おまけにメンヘラちゃんの寧子と、ゴシップ雑誌の編集者で寧子の恋人・津奈木。生きていることに疲れている若者が織り成す、切ないまでのラブストーリー。ドラマや舞台で活躍中の趣里、第41回日本アカデミー賞受賞の菅田将暉が全力でぶつかり合う。監督には、多くの才能を咲かせ、話題沸騰中の関根光才が担当する。
映画『生きてるだけで、愛』の予告動画
映画『生きてるだけで、愛』の登場人物(キャスト)
- 寧子(趣里)
- 津奈木の恋人。津奈木の部屋で引きこもり中の、過眠症でメンヘラ女子。精神的に不安定で、一日の大半を寝て過ごす。
- 津奈木(菅田将暉)
- 文学が好きで出版社に入社し、現在はゴシップ雑誌の編集をしている。感情の起伏があまりなく、人に関心もない。
- 安堂(仲里依紗)
- 津奈木の元恋人。津奈木と別れてから随分経つが、まだ津奈木に想いを寄せている。
映画『生きてるだけで、愛』のあらすじ(ネタバレなし)
メンタルが強くなく、何かあると鬱状態になってしまう寧子は、付き合って3年経つ恋人の津奈木の部屋の布団の上で、一日のほとんどを過ごしている。鬱になるのでバイトも続かず、過眠症のために家事もできない。それでも、恋人の津奈木は寧子に怒ることもなかった。
津奈木は、出版社勤務の青年。現在は週刊誌のゴシップ記事編集を担当しているが、会社での人間関係も上手くいかず、恋人の寧子は寝てばかりな上に、感情のままに怒りや暴言をぶつけてくる。だが、そんな生活にも、もう関心を持たなくなった。
そんなある日、津奈木の留守中に寧子が布団の上で過ごしていると、津奈木の元恋人である安堂が訪ねてくる。何事かと思ったら、安堂は津奈木のことが忘れられず、寄りを戻しにやって来たと言う。
今の生活から追い出されてしまったら、寧子は生きていけない。だが、安堂はお構いなしに寧子の“自立”と言う建前で、カフェバーのアルバイトを決めてきてしまう。
映画『生きてるだけで、愛』の感想・評価
女優・趣里という人物
本名・水谷趣里は、活動こそ最近その名が知れられてきた女優だが、彼女の父親を知らない人はいないのではないだろうか。日本の刑事ものドラマの中でも、圧倒的な人気を誇る『相棒』の主人公・杉下右京を演じる水谷豊その人である。
母親の女優で、ナレーターも行っている旧姓・伊藤蘭との間に生まれた趣里は、幼い頃からクラシックバレエを習い、プリマに抜擢される程の努力家である。本格的にバレエを勉強するためにイギリスへ留学し、アキレス腱と足首を痛めて医師に止められるまでは、精力的に練習に励んでいた。
その後、「表現したい」気持ちが収まらない趣里は、父や母と同じ役者の道を進む。2011年に『3年B組金八先生ファイナル~「最後に贈る言葉」4時間SP』で初の女優デビューを果たす。
2016年の『とと姉ちゃん』で注目を浴びると、それまで培ってきた舞台や映画・ドラマなどの映像作品が評価され始め、2018年の『ブラックペアン』の看護師役で、圧倒的存在感を見せつけ、女優としてその名を更に知らしめる。
現在最も期待と関心が高まっている若手女優の1人である趣里が、どちらかと言うと正反対な性格・人生観の主人公・寧子に全力でぶつかっていく。彼女の演技に幅が1つ増えそうである。
俳優・菅田将暉という人
今やCMでもドラマでも映画でも見ることが多くなった若手俳優・菅田将暉。彼は2008年のジュノンボーイに選出されると、その魅力をいかんなく発揮することとなる。次の年には桐山漣とW主演で仮面ライダーWの役を務め、それがきっかけで映画主演も果たす。
2013年には第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞、2014年では高崎映画祭最優秀助演男優賞受賞、更に翌年2015年に第1回コンフィデンスアワード・ドラマ賞主演男優賞受賞、2016年は日本映画プロフェッショナル大賞最優秀主演男優賞と、その怒涛の受賞歴は留まることを知らない。
快進撃を続ける菅田将暉だが、2017年にはついに第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に選ばれるなど、当初のアイドル的な存在から、既に力のある若手俳優の1人としての地位を確立している。
これまでの菅田将暉が演じてきた役は、貧乏人やチンピラ、果ては総理大臣と、幅広い役をこなすことで有名である。次に菅田将暉が演じるのは、無気力で人に無関心で感情の起伏もなく、人生に面白みも感じていないいわゆる「つまらない青年」の津奈木。彼が、そのつまらない人間をどのように演じていくのか、上映が楽しみである。
監督・関根光才という人
映像ディレクターとして、知られている関根光才。多くのCMや、ミュージックビデオを手掛けて業界人にはその名を知られることとなる。関わって来たCM作品は、有名な自動車メーカーやスポーツメーカー、化粧品メーカー。ミュージックビデオはMr.ChildrenやAKB48、安室奈美恵など、その名を知らない人などいない大物アーティストばかりである。
関根光才の名は、日本よりも海外で知られている場合がある。カンヌ国際広告際でのグランプリや、ニューヨークフェスティバルでの金賞など、国際的なクリエイティブアワードに軒並みその名が並び、審査員まで務める経歴を持つ。
映像・広告ディレクターとして、日本だけでなく海外でもその地位を確立させた関根光才が、更に活躍の幅を広げるために挑戦するのは、長編映画の監督。人間関係に悩む若者たちに思いを伝えるために、関根光才のメッセージがこれまでの経験をフルに生かして作り上げる。
映画『生きてるだけで、愛』の公開前に見ておきたい映画
共喰い
菅田将暉が、その存在感や演技力を観客や世間に知らしめた2013年公開の『共喰い』。山口県下関市を舞台に、高校生の篠垣遠馬のひと夏の出来事を映画化したもの。遠馬は、暴力的な父親とその愛人と3人で暮らし、父親の病的とも言える病力的な性癖に辟易している。そして、父親を忌み嫌い嫌悪感を抱いていた。
ところが、17歳の誕生日を迎えるにあたって、幼馴染の千種と初めて性行為をした遠馬は、あれだけ嫌悪感を抱いていた父親の病的で暴力的な性癖が、自分の中にも存在していることをまざまざと知らしめられる。
嫌悪の対象と、自分の素直な気持ちに折り合いがつかず、苦しむ高校生の姿を、当時大注目を浴びていた若手俳優・菅田将暉が演じる。昭和最後の63年の夏を、生きるのに不器用な高校生と中年男と愛人が、彼女や母は妻に支えられ、賢明に生きる。
今作のプロデューサーでもある甲斐真樹と菅田将暉のタッグで送る、昭和最後の夏の闇を抱える人間たちのひと夏のドラマ。
詳細 共喰い
ローリング
菅田将暉の才能をその目で見て、ともに仕事をしていたプロデューサーの甲斐真樹が2015年に製作総指揮を担当した作品、『ローリング』。高校教師だった権藤と、その教え子たちとの関係を、犯罪で結ぶヒューマンドラマ。
女子更衣室盗撮という、非人道的な行為で職を失った元高校教師の権藤は、キャバ嬢を連れて故郷に戻る。そこで、元教え子の青年に助けてもらいながら、盗撮の被害者である元教え子の女性たちから逃げ回る。
人間のクズと定義されるには、いつくかの要素が必要であるが、この権藤という人物はまさに「クズ」と呼ばれてもおかしくない人物である。元教え子に糾弾されるのが怖くて逃げ回り、更に元教え子から芸能人が登場したら、盗撮の映像を事務所に送り脅迫まがいのことまでやっている。
甲斐真樹の担当する作品には、こうした異様な性癖・性格・人格・人生観を持つ人物が多く登場する。どこか狂っていて多くの闇を抱えている人間模様は、現実離れしていそうで、実は身近な存在だったなんてことが多分にある。
その、リアルとも現実とも言えないようなキャラクターたちが織り成すドラマは、見ていて共感する部分があり、それが甲斐真樹の作品の特徴とも言える。
詳細 ローリング
勝手にふるえてろ
今作の主人公・寧子を演じる趣里が出演している、2017年に公開された映画。この映画は、芥川賞作家である綿矢りさ原作のコメディ映画で、主演に松岡茉優を迎えている。恋愛経験ゼロのこじらせOLが、人生で初めて告白された衝撃的事実から、付き合ってもないのに勝手に脳内で彼氏に変換。
また、中学時代の片思いの男性のことも未だに引きずり、そちらも勝手に脳内で彼氏に昇格変換し、妄想恋愛でお花畑状態を作り出す。この映画で、趣里はとても明るい金髪ショートボブの雑貨や店員を演じている。一目には趣里とのイメージからはとてもかけ離れているが、それはそれで見ていて新しい趣里を発見できたようで面白い一面である。この映画を先に見ておき、『生きてるだけで、愛。』を見ると、その差に驚愕するかもしれない。
役者とは色々な役をこなす仕事だが、ここまで正反対の役を演じ切る趣里に、若手女優ながら称賛をしてしまう。彼女の役にぶつける熱意が、主演映画であるとかないとか関係なくひしひしと感じられる。
詳細 勝手にふるえてろ
映画『生きてるだけで、愛』の評判・口コミ・レビュー
『生きてるだけで、愛』
躁鬱で凶暴な“もらとりあむ趣里”と“獣になれない菅田将暉”。自分でさえも自分を信じられない、“生きてるだけでもシンドい”2人が寄り添うのは“愛”か“依存”か?。
全く共感出来なかった女がこんなにも愛おしくなる…これが愛かなと思わせるラストが素晴らしすぎた。#背骨映画 pic.twitter.com/AocRl6c7W4— 背骨 (@sebone1126) 2018年11月10日
🎬 生きてるだけで、愛。 🎬
何回も言ってるけどこういう生活感溢れた映画とても好き…生活感溢れてるのに対照的で美しい音楽…光と音…
はぁ、余韻が……
これを上手く文章にまとめろって言われても難しいなあ…
何って訳でもないけど
なぜかラストの台詞で泣いてしまった。 pic.twitter.com/ZqyQD68NyE— 茶 沢 . 映画垢 (@cya_movie) 2018年11月10日
『生きてるだけで、愛。』鑑賞。彼氏との同棲生活を送る引きこもり女子を描いた関根光才監督作品。趣里演じる主人公の寧子は今年のベストヒロインに決定。共感度ゼロの彼女のことを劇場を出る頃には狂おしいほど好きになっているはず。『寝ても覚めても』と双璧をなす恋愛映画のヘビー級チャンピオン。 pic.twitter.com/Ba9zFEkgG8
— だよしぃ (@purity_hair) 2018年11月9日
”生きてるだけで、愛”岡山メルパ。趣里演じる、ヒロイン寧子だけでも、退いてしまう位の存在感なのに、輪をかけたような、仲里依紗演じる安堂の登場に、ワナワナとなりながら、陰鬱を顔に張り付けた菅田将暉にも魅了される。面白くて痛い、今を映す作品に、持って行かれてしまいました。石橋静香も良い pic.twitter.com/ck1eU8VcMJ
— 常山の住職 (@CinemaCLAIRfan) 2018年11月10日
映画「生きてるだけで、愛」
久しぶりにヒリヒリするような
映画だった。寧子を演じた趣里さんの
体当たりの演技に終始惹き込まれた。
ラストシーンは特に美しい。
生きづらさを感じている人、何かを感じるものがあると思う。ほんの一瞬だけでも分かり合えたら。#生きてるだけで愛 pic.twitter.com/TFvZoLV7OO
— Leon (@chihiroleon) 2018年11月10日
生きてるだけで、愛
分かり合えたのがほんの一瞬でもその一瞬が本当の愛と言えるのかもしれない。
鬱、苦悩、ストレスなどを重く描いててリアルでした。
趣里の怪演が凄すぎる。
菅田将暉は本当に良い演技をする。
仲里依紗の悪女ハマり過ぎ。
田中哲司、西田尚美の喫茶店に行ってみたい。 pic.twitter.com/zUnsJEBREn— ディーン・フクヤマ (@masuyou1005) 2018年11月10日
映画『生きてるだけで、愛』のまとめ
現代を生きる日本人は、誰しもが人生にどこかしかで疲れている。働いても増えない給料、社内や学内の気だるい人間関係、足りない時間、寂しい人生。人を拒絶しながらも、やっぱり人と関わらなければ生きていけない世界で、公開されているポスターにもある「ほんの一瞬だけでも、分かり合えたら。」という切ない文が、物語の全てを現しているかのよう。生きているだけで疲れてしまう人生を、誰もが懸命に生きているから、自分を否定してしまいがちな人にこそ、この映画をお勧めしたい。
みんなの感想・レビュー