長編映画初監督デビューを果たすジャスティン・ティッピング監督が贈る、カリフォルニア州・リッチモンドを舞台に、スニーカーを巡る少年の奮闘物語。ティッピング監督の渾身の一作を新人のジャキング・ギロリーが体当たりで演じる。
映画『キックス』の作品情報
- タイトル
- キックス
- 原題
- Kicks
- 製作年
- 2016年
- 日本公開日
- 2018年12月1日(土)
- 上映時間
- 87分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
青春 - 監督
- ジャスティン・ティッピング
- 脚本
- ジャスティン・ティッピング
ジョシュア・ベーアン=ゴールデン - 製作
- デビッド・カプラン
アデル・ロマンスキー
ジョシュア・アストラカン
ジェフリー・クアン
エリク・ロメスモ
ジョシュア・ベーアン=ゴールデン - 製作総指揮
- アレックス・サガルチック
マイケル・シャーマン
マシュー・パーニシアロウ
マーカス・コックス
デオン・テイラー
フレデリック・W・グリーン
ロビン・スコア
ジェフ・シュロッスマン
ビル・ウォールワーク - キャスト
- ジャキング・ギロリー
クリストファー・メイヤー
クリストファー・ジョーダン・ウォーレス
マハーシャラ・アリ
コフィ・シリボー - 製作国
- アメリカ
- 配給
- SPACE SHOWER FILMS
映画『キックス』の作品概要
映画の製作された2016年、ロサンゼルス映画祭に正式に出品され、トライベッカ映画祭2016年撮影賞受賞・ローマ国際映画祭2016Alice in the City賞受賞と、多くの賞を受賞した話題作。監督は、今回が長編映画初挑戦となるジャスティン・ティッピング。製作には2018年の話題ホラー『It Comes At Night』 を手掛けたデビッド・カプランが加わり、そうそうたる制作布陣が組まれる。また、主人公ブランドンには、カリフォルニア州生まれ育ちの俳優兼ラッパーのジャキング・ギロリーが務める。
映画『キックス』の予告動画
映画『キックス』の登場人物(キャスト)
- ブランドン(ジャキング・ギロリー)
- 15歳の少年。カースト底辺で生活しており、加えて背が低いこととスニーカーがボロボロなことで女の子から見向きもされない。
- マーロウ(マハーシャラ・アリ)
- ブランドンの叔父で、ギャングにスニーカーを盗まれたブランドンを慰めるが、同時に自分で落とし前を付けるアドバイスもする。
映画『キックス』のあらすじ(ネタバレなし)
カリフォルニア州リッチモンドで生活している15歳の少年・ブランドン。彼は背が低く、持っている物もボロボロなことから、学校でも女の子には全く見向きもされず、モテない学生生活を送っている。
だが、この状況を打破するためにブランドンは必死にお小遣いを貯めていた。そしてついに、人生の転機を迎える日がやって来る。ブランドンは貯めたお小遣いで学生たちから絶大な人気を誇る最強のスニーカー“エアジョーダン1”を手に入れたのだ。
早速、そのスニーカーを履いてみると、これまで見向きもされなかった女子が自分を気にしてくるではないか。そして、仲間からは羨望の眼差しを向けられる。ブランドンは、一気に人気者への道を駆け上がったのだった。
だが、その人気は一瞬で地の底へ落ちる。スニーカーがあまりにも目立ちすぎたために、地元のチンピラから襲われる羽目に。そして、苦労して貯めて買ったスニーカーも、あっけなく奪われてしまった。全く無意味な暴力に、ブランドンの怒りが爆発する。
少年のスニーカー奪還復讐劇が幕を上げる。
映画『キックス』の感想・評価
期待の新人俳優ジャキング・ギロリー
生まれも育ちもカリフォルニア州のギロリーは、幼い頃からCMやMVに出演していた。ギロリーが初めてテレビに登場したのは、実に9歳の頃である。その後も、映画やテレビなどの作品に次々と出演し、コンピューターオタクやドラッグディーラー等の役どころをこなす。
更に、現在はラッパーとしても活躍し、毎日曲作りに励んでいるのだとか。友人と一緒に作った曲に、自らの人生を歌詞に乗せ、話題沸騰となっている。
そして、ギロリーを紹介するにあたってもう1つ押さえておきたいポイントは、その類稀なるアスリートとしての才能である。ギロリーは、ジュニア・フットボール・チームのランニングバックとして活躍するだけでなく、ジュニアオリンピックでの800mと1,500m走の金メダリストでもあるのだ。
将来をこのほど期待された多才の持ち主であるジャキング・ギロリーは、今作がデビュー作となるが、彼の演技には目を見張るものがあり、映画に掛ける情熱もまた、見どころの1つである。
ハリウッドで最も旬の俳優・マハーシャラ・アリ
『キックス』で、ジョージア映画批評家協会賞2017ブレイクスルー賞とBETアワード2017最優秀男優賞を受賞した経歴を持つ、マハーシャラ・アリ。彼は、現在ハリウッドで最も旬な俳優として、その需要を高めている。
『キックス』での演技や経歴もさることながら、アリのこれまでの経歴もまた輝かしいものである。『ハンガー・ゲーム』『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』などで第89回アカデミー賞8部門にノミネートし、そのうちの作品賞を受賞している。そして、『ムーンライト』では助演男優賞も受賞した。
受賞歴だけでもとにかく華々しく、また、多くの役どころをこなすアリの才能は、まだまだこれからも伸びていくと期待されている。『キックス』では、新人俳優ジャキング・ギロリーの脇を固め、町を仕切る大物の役をこなしている。
最高の靴と、目指す宇宙
『キックス』のテーマは、少年たちの成長だけでなく、町に蔓延る“闇”であると監督のジャスティン・ティッピング氏は語る。成長の糧に復讐が盛り込まれ、暴力が暴力を生み、主人公ブランドンは自身が犯した事象についての責任と向き合わなければならなくなる。だがそれは、大人であれば当たり前のことであるし、大人になる前のある意味での通過儀礼とも言える。
何事にも責任が付きまとい、その代わりに人々は自由を得るのだ。そして、弱い人は常に虐げられ、強いものの下にいると決まっている。カリフォルニアに降り注ぐ太陽の元、1つのスニーカーが引き起こす少年の成長秘話は、そうして始まり終わってく。
物語に登場する真っ赤なスニーカーは、ただのスニーカーではなく、ブランドンにとっての男の証なのだ。そして、物語では突然、宇宙飛行士が登場するなど結末が予想できない展開も待っている。
映画『キックス』の公開前に見ておきたい映画
ムーンライト
『キックス』に登場するマーロン役を演じるマハーシャラ・アリが、アカデミー賞で助演男優賞を受賞した作品である。マハーシャラ・アリの受賞の他に、作品賞・脚色賞の合計3部門受賞していることでも一躍話題となった。
更にこの映画を有名にしたのは、アカデミー賞に輝いたこともそうだったが、製作発表当時、ハリウッド俳優としてその名を知らない人はいない程有名な、ブラッド・ピットが製作総指揮を手掛けることでも話題となった。ブラッド・ピットは前作『それでも夜は明ける』でもプロデューサーとしてアカデミー賞を受賞している。
ちなみに『キックス』のプロデューサーの1人、アデル・ロマンスキーもこの作品にプロデューサーとして参加している。
『ムーンライト』の物語は、アメリカのマイアミを舞台に、自分の居場所とアイデンティティを探している少年の成長記録を、少年期・ティーンエージャー期・成人期と3つの構成に分け描いている。
この映画で、アリは麻薬ディーラーの役を演じ、幼い頃から体が小さいことでいじめられていた主人公の少年・シャロンに優しく接してくれるご近所の顔も同時に演じ分けている。
詳細 ムーンライト
アメリカから来たモーリス
『キックス』が話題となっているのは、俳優たちが豪華なだけではない。映画の進行をヒップホップの乗せて軽快に描いている点も、『キックス』の見どころの1つである。公式サイトではオリジナルサウンドトラックが公開されているほど、多種多様なヒップホップが散りばめられている。
そして、ヒップホップ関連の青春映画と言えば、2017年8月に一夜限りで上映された、『アメリカから来たモーリス』である。2016年サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞した作品で、日本で初めて上映されたのは2016年の第29回東京国際映画祭ユース部門であり、一般公開はされていない。
ラッパーに憧れて、アメリカからドイツへ引っ越した黒人の少年・モーリスの成長記録を描いた作品。ぽっちゃり系男子のモーリスが、家族の都合で新天地ドイツへ行ったことで一変する。
元々ヒップホップが嫌いであったモーリスだが、ドイツ語が分からないためにクラスから孤立し、孤独を紛らわすために聞いていた音楽に触発されてラップを始める。やがて、モーリスを気に掛ける人が1人2人と増えていき、少年はラップの他に、恋とタバコとキスを覚えていく。
詳細 アメリカから来たモーリス
アンダー・ザ・シルバーレイク
2018年注目作品ランキング上位にランクインしている、サスペンススリラー映画。『キックス』のプロデューサーの1人、アデル・ロマンスキーが製作を担当している映画である。
名のあるアーティストやセレブ達が集う、ロサンゼルスの富豪都市シルバーレイク。そこで暮らす主人公の青年サムは、懸想している隣人の美女サラの失踪がきっかけで、趣味の都市伝説を駆使してサラを探す。
やがてサムは、町に潜んでいる陰謀に否応なしに巻き込まれることになる。セレブ達が集まる街で起こる現代人特有の恐れと好奇心の相対性を、美しい映像がリアルに描き出す。
主演は、『ハクソー・リッジ』で第89回アカデミー賞主演男優賞にノミネートしたアンドリュー・ガーフィールド。キリっとした眉と切れ眺めの目からは想像もできないオタクぶりを発揮しており、それがまた映画を面白くしている。
映画『キックス』の評判・口コミ・レビュー
「キックス」鑑賞@シネクイント。貯めた小遣いで買ったエア ジョーダン1を奪われた少年が、なんとか取り戻そうと奮闘するスニーカー映画。苦い展開もあり、黒人社会の厳しさと、文化的な面白さをあらためて伝えている一作。マハーシャラ・アリも登場します。 #twcn
— aida ronpe (@ronpekun) 2018年12月3日
「キックス」良かった。ヒップホップが好きだからというのはもちろん、自分がいる所とは全然違う世界の小さな話を描いた作品が大好物というのも大きい。「フロリダプロジェクト」とは違う形で、でも確実に地続きで、ヒップホップが日常で鳴り響く必然性を感じさせてくれた映画 pic.twitter.com/JsZTUoZIdy
— 金田謙太郎 (@kentarokaneda) 2018年12月3日
映画「キックス」観た
黒人社会のスタンド・バイ・ミーと言っても過言じゃない、とても面白い映画だった
スニーカーカルチャーと銃社会のリアルに心揺さぶられた
あと曲がハマり過ぎ、ちゃんと訳がついてるのもよかった、スニーカー好きじゃなくても観る価値あるよ— Cuckoo (@cuckoo138) 2018年12月1日
『キックス』を観た。✨
スニーカーに憧れて買ったがギャングに襲われ奪われてしまい取り返す話。しかし、スニーカーの取り合いで人が死んでしまう感じが現代アメリカの問題をはらみつつ、男の成長もあって、なかなか見ごたえが有りました。新人の監督らしい❗期待します。https://t.co/6XREDJSlWQ— かずみナジラネ~ (@kazumi_nazirane) 2018年12月2日
映画『キックス』を観た。貧困社会の中で、俺もうキレたぞ、今こそ男になる時だと、ジャーナリスティックに切り取られた世界の中で、甘酸っぱいけど気付けば口の中は血だらけでヒリヒリな青春映画。渋谷の若者達がみんな痺れてた。
— チョロQ (@okamo_Q) 2018年12月1日
映画『キックス』のまとめ
女の子を落とすためのテクニックとしてラップを磨く少年たちと、治安が悪く暴力性に溢れている町。そこで奏でられる軽快なヒップホップは、彼らの象徴でもある。そして、常に笑いを忘れないユーモラスな一面も持ち合わせている。そこで繰り広げられている日常は、自分の確立されたラップ・スタイルとアイデンティティの披露。それは決して奪われてはいけないもので、ブランドンたちの場合それが新品の「エアジョーダン」だったのだ。宝物を取り戻す彼らの姿を静観するのではなく、心から応援してあげたい。
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