40代半ばのスティーブ・ランドリーは、ボクサーとしての才能がなかった。バイトをして何とか生活費を稼いでいる状態だった。そんなある日、スティーブは娘のために、チャンピオンのスパークリング・パートナーを務めてお金を稼ぐことを決める。
映画『負け犬の美学』の作品情報
- タイトル
- 負け犬の美学
- 原題
- Sparring
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2018年10月12日(金)
- 上映時間
- 95分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
スポーツ - 監督
- サミュエル・ジュイ
- 脚本
- サミュエル・ジュイ
クレマン・ルシエ
ジェレミー・グエズ - 製作
- ブリュノ・ナオン
- 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- マチュー・カソビッツ
オリビア・メリラティ
ソレイマヌ・ムバイエ
ビリー・ブレイン
ライズ・セイレム
ダビド・サラシーノ
イブ・アフォンソ
アミール・エル・カセム - 製作国
- フランス
- 配給
- クロックワークス
映画『負け犬の美学』の作品概要
フランス映画『アメリ』(01)で、主人公が恋する相手・ニノ・カンカンポワを演じたマチュー・カソビッツが、主人公の中年ボクサーを演じている。カソビッチは作品を撮る前にボクシングの練習を行い、アマチュアでリングデビューを果たしている。また、元WBA世界スーパーライト級王者のソレイマヌ・ムバイエが出演しており、リアルなボクシングシーンが見られる。サミュエル・ジュイ監督は、本作品で長編映画監督デビューを果たした。
映画『負け犬の美学』の予告動画
映画『負け犬の美学』の登場人物(キャスト)
- スティーブ・ランドリー(マチュー・カソビッツ)
- 40代半ば。ボクサー。ボクサーとしての旬は過ぎており、偶に試合の声がかかるだけになっている。妻子がいる。バイトを行い、生活費を稼ぐ。タレク・エンバレクのスパークリング・パートナーになる。
- タレク・エンバレク(ソレイマヌ・ムバイエ)
- プロのボクサーで、欧州チャンピオン。スティーブの根性を気に入り、ある提案を持ち掛ける。
- オロール・ランドリー(ビリー・ブレイン)
- スティーブの娘。ピアノを習っている。パリの学校に行くという夢がある。
映画『負け犬の美学』のあらすじ(ネタバレなし)
スティーブ・ランドリーはボクサーとしての才能がないまま、40代半ばの年齢に差しかかっていた。スティーブには妻子がおり、偶に呼ばれる試合とバイトで生活費を稼ぐ日々だった。そんなある日、娘のオロールにピアノの才能があることを知る。オロール自身もパリの学校に通いたいという夢を持っていた。
スティーブはお金を稼ぐため、危険な仕事に手を出した。それは、チャンピオンのスパークリング・パートナーを務めることだった。スパークリング・パートナーでは、チャンピオンの練習台になり、身体が壊れるまで殴られてしまうことがあった。妻は夫の体を心配して反対するが、スティーブの意思は固かった。オロールも父がボロボロに殴られている姿を見て悲しむが、スティーブは辞めなかった。
チャンピオンはボロボロになっても逃げ出さないスティーブを気に入り、試合の前座をしないか話を持ち掛けた。スティーブは試合に勝つため、体を鍛えた。
映画『負け犬の美学』の感想・評価
プロボクサーのソレイマヌ・ムバイエ
ダレク役で元WBA世界スーパーライト級王者であり、元WBA世界ウェルター級暫定王者でもあるソレイマヌ・ムバイエが出演している。ダレクはプロボクサーで、主人公がスパークリング・パートナーを務めることになる相手である。ムバイエ自身がプロのボクサーであるため、主人公と行うスパークリングは、本格的でリアリティのあるシーンになっている。さらに、ダレクは主人公の背中を押し、あるきっかけを提案する作品内でも重要な人物である。ぜひ、ダレクに注目しながら作品を見て欲しい。
ムバイエはフランス出身のプロボクサーで、1998年にプロデビューを果たした。デビューから19連勝を果たし、20戦目で全仏スーパーライト級王座に輝いている。総試合数は46試合で、勝利を収めたのはその内の40試合という素晴らしい成績を残している。
マチュー・カソビッツ主演
主人公を演じたのは、フランス出身の俳優・マチュー・カソビッツである。カソビッツ自身51歳の中年男性である。だが、役作りのためにボクシングを習い、アマチュアでリングデビューを果たしている。それほどまでにこの映画に真摯に向き合い、主人公のスティーブ・ランドリーを演じているのである。
カソビッツは日本でもファンの多い、フランス映画『アメリ』(01)に出演している。カソビッツが演じたのは、ポルノショップの店員で主人公が恋する相手・ニノ・カンカンポワである。また、カソビッツは俳優の他に、監督や脚本家としても活躍している。監督・脚本・出演している作品は、『裏切りの戦場 葬られた誓い』(11)や『アサシンズ』(1997)などがある。
落ち目の主人公
本作品の主人公は、ボクサーとしてぱっとしない中年男性である。現在は愛する妻子がいて幸せな生活を送りながらも、40代半ばとなりボクサーとしての旬は過ぎてしまっていた。主人公はバイトと偶に行う試合で、何とか生活費を稼いでいる状態だった。
華々しい活躍をしているボクサーではなく、落ち目の男性を描いているところがこの作品のおもしろいところである。若い人にとってはあまり主人公の気持ちが理解できないかもしれないが、きっと主人公の娘の気持ちが分かるのではないだろうか。家族のために必死にお金を稼ぐ父親は、ボクサーとしては落ち目でも、誰よりもカッコよく見えるはずである。主人公と同年代の人だけではなく、人生に迷いがある、あらゆる年代の人の心に響く作品だと思う。
映画『負け犬の美学』の公開前に見ておきたい映画
裏切りの戦場 葬られた誓い
マチュー・カソビッツが監督・脚本・編集・主演を務めた作品。1988年に起きたウベア島虐殺事件を元に作られている。ウベア島虐殺事件とは=独立推進派の先住民族(カナック)が、警察官を拉致して立て籠もり事件を起こした。その際、フランス政府が特殊部隊を派遣して鎮圧したのだが、無抵抗だったカナックを射殺し、そのことを隠ぺいしたのだ。フランス政府はこの作品で描かれている件について、現在も否定している。
1988年、天国に一番近い島と言われているフランス領ニューカレドニア。独立推進派の先住民族達の手によって、警官30名が誘拐された。フランス政府は国家憲兵治安部隊を派遣し、フィリップ・ルゴルジュ大尉に犯人との交渉を任せた。ルゴルジュ大尉は何とか対話を持って平和的に解決しようと尽力を尽くすが、攻撃命令が下ってしまう。ルゴルジュ大尉は自分の無力さに苦悩した。
詳細 裏切りの戦場 葬られた誓い
シンデレラマン
ボクサー×ヒューマンドラマ作品。実在するプロボクサー・ジェームス・J・ブラドックについて描いている作品。主演を務めたのは、『ビューティフル・マインド』(01)で「ゴールデングローブ賞・主演男優賞」に輝いたラッセル・クロウ。本作品でも受賞には至らなかったが、「ゴールデングローブ賞・主演男優賞」にノミネートされている。
アメリカ・大恐慌時代。かつてはボクサーとして華々しい成績を残していたジム・ブラドックだったが、現在は怪我と年齢を理由にライセンスをはく奪されていた。何とか日雇いの仕事を行い家族を養おうとするが、収入は少なく満足に食べ物も買えない日々が続いた。そんなある日、ジムに1日だけボクサーとしての仕事が舞い込む。
詳細 シンデレラマン
オールド・ルーキー
スポーツ(メジャーリーグ)×ヒューマンドラマ作品。35歳でメジャーリーグベースボールデビューを果たした、ジム・モリスの実話を元に作られている。ジムは史上最年長でプロデビューを果たした人物として、アメリカの人々の記憶に残る選手となった。ジム本人も審判役で出演しており、映画初出演を果たしている。
ジム・モリスは幼い頃、野球が大好きな少年だった。しかし、父が海軍に所属していたため頻繁に引っ越しがあり、なかなか思うように野球の練習ができる環境にいられなかった。大学でやっと野球をするようになり、スカウトされてマイナーリーグでプレーをすることになる。だが、肩の怪我が悪化してしまい、プロ野球になる夢を断念せねばならなくなる。35歳になったジムは高校教師になり、野球チームの監督を務めていた。そんなある日、ジムが教え子にボールを投げてみると、豪速球を投げることができた。
詳細 オールド・ルーキー
映画『負け犬の美学』の評判・口コミ・レビュー
負け犬の美学 観た
フランス映画。才能を持ってない45歳ボクサーと家族の話。フランスっぽい静かなストーリー。奥さんが旦那の絆創膏を貼るときに、痛みを紛らわせるために自分のケツに手を置かせるところ微笑ましかった。派手な演出は無いけど最後に静かに感動する。眠くないときに観るべき。星3.5 pic.twitter.com/Y6qEQLjqPj— しらゆき/Fix👻🎃🍭 (@sekiyarisa) 2018年10月14日
シネマカリテにて負け犬の美学を観る。邦題は頂けないが、そこには負け犬ではなく、ただ貫き通す男がいた。家族とのやりとりも美しい。特に娘役の方の表情が心にぶつかってくる。ふと観に行ったがとんでもない拾い物をした、という映画でした。素晴らしい。
— 則貞 (@norisada) 2018年10月13日
#負け犬の美学 #パンフ
足立紳 渋谷淳 各氏の解説。結果を出すこと、日本のスティーブの話。
主演は映画監督でもあり、妻役は今作で音楽も担当、チャンプ役はプロボクサー。ボクシング映画は”試合のリアリティ”が肝だが本作は凄い。実際に当ててるようにしか見えない。
と思ったら実際に当てていた。 pic.twitter.com/FQyiedw0Y3— Kenta Nakahira (@hiraken0204) 2018年10月13日
「負け犬の美学」
才能がある人のことを「アイツは持ってる」なんて言い方をよくしますが、本作はそれと反対に持たざる者たちの物語でした。
負けても負けてもまた立ち上がって戦い続ける。
いつの時代も人のために戦う姿には胸を打たれます。感動しました! pic.twitter.com/1ZsWvweEfE
— Kino (@Kino92027451) 2018年10月13日
サミュエルジュイ監督の負け犬の美学という映画を見た。めちゃくちゃ超名作だった。頑張る、勝者が語られがちなボクシング映画にもっと普遍的で人生を生きてゆく全ての人に送る最高のプレゼントだった。幸せ過ぎて笑い泣きしながら映画館を出た。 pic.twitter.com/34SaCqvtqz
— 山路貴澄 (@sumikata512) 2018年10月13日
映画『負け犬の美学』のまとめ
主人公はボクサーとして働きながらも、才能がなくバイトをして生活費を捻出していた。そんなある日、娘の学費を稼ぐために、家族の反対を押し切ってチャンピオンのスパークリング・パートナーを務めることを決める。チャンピオンに殴られている姿は観客にも見られており、観客達は主人公が殴られている姿を見て楽しんでいた。娘はそんな父の姿を見て悲しむ。普通の人ならここで心が折れてしまうかもしれないが、主人公はスパークリング・パートナーを辞めずに続けるところがカッコいいなと思う。主人公は社会的には成功者とは言えないが、どんなヒーローよりも勇敢で尊敬できる人だと思う。
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