2017年2月公開映画一覧＆おすすめ注目映画

まだまだ寒い日が続くこの時期。劇場では各国の映画祭で絶賛された作品が続々と公開される。今月のイチオシはジャンフランコ・ロージ監督のドキュメンタリー映画「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」。2016年のベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品をぜひ劇場で堪能してほしい。

2017年2月公開のおすすめ注目映画

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

大好きな祖父の遺言でとある島へ渡った少年ジェイク。そこではミス・ペレグレンと奇妙なこどもたちが暮らしていた。彼らと親交を深めたジェイクは、こどもたちを狙う邪悪な存在と戦うことになる。

監督はあのティム・バートン。「チャーリーとチョコレート工場」（05）や「アリス・イン・ワンダーランド」（10）といった実写でのファンタジー作品はもちろんのこと、「ティム・バートンのコープスブライド」（05）や製作と原案を務めた「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」（93）のストップモーション・アニメでも類い稀なる才能を見せつけてきたファンタジー界の名匠だ。彼の空想力と美的センスは抜群で、どの作品もキモ可愛いキャラクターと不思議な世界観に魅了される。

そんなティム・バートン史上「最も奇妙な作品」と謳われている本作。奇妙であればあるほどティム・バートン・ファンタジーのファンとしては嬉しいわけで、公開が待ち遠しい。

こんぷれっくす×コンプレックス

日本のアニメーションで中学生の男女が主人公とくれば、誰もが甘酸っぱい青春ラブストーリー的な美しい物語を想像することだろう。しかしこの作品のキーワードは「ワキ毛」。

中学2年生のゆいは濃いワキ毛に大人の魅力を感じてしまうワキ毛フェチ。しかし自分のマニアックなワキ毛好きにコンプレックスを感じている。ゆいと同級生のマサトはゆいにとっては理想のワキ毛を持つ毛深い男子。マサトは明らかにみんなよりも濃い自分のワキ毛にコンプレックスを感じている。果たしてワキ毛に翻弄される2人の運命やいかに…。正直言って先の展開が全く読めない。

監督・脚本・アニメは若干30歳のふくだみゆきが務めている。この作品はすでに国内の映画祭で多くの賞を受賞しており、下北沢トリウッドで2月4日から2週間の限定上映が決定した。24分の短編ながら大変気になる作品なので、全国での上映を期待したい。

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男

ニュートン・ナイトという歴史上の人物を筆者は知らなかった。1860年代のアメリカで人種差別や身分差別に抵抗し、黒人奴隷や農民と反乱軍を結成した白人のリーダーがこの作品の主人公ニュートン・ナイト。彼は迫害される人々のために戦った英雄だ。“ジョーンズ自由州”という徹底的に平等と自由を追求した独自の州まで設立している。しかし長い歴史の中で彼の名前はいつしか埋もれてしまう。

そんなニュートンの存在に改めて注目し、長い年月をかけて彼の生涯を掘り起こしたのが本作で監督・製作・脚本を務めるゲイリー・ロス。主演はアメリカを代表する演技派俳優マシュー・マコノヒー。その脇をググ・バサ＝ロー、マハーシャラ・アリ、ケリー・ラッセルといった実力派たちがかっしりと固めている。骨太な新作をお探しの方はこちらへどうぞ。

海は燃えている イタリア最南端の小さな島

ドキュメンタリー映画でありながら第66回ベルリン国際映画祭金熊賞（グランプリ）を受賞するという快挙を成し遂げた本作。すでに世界各国で大絶賛され、メリル・ストリープやジュリエット・ビノシュ、マッテオ・レンツィ（元イタリア首相）やパオロ・ソレンティーノ（映画監督）といった多くの著名人が本作に惜しみない賞賛の声を贈っている。ジャンフランコ・ロージ監督の実力はヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した前作「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」（13）で実証済みだが、どうやら本作は前作を超える作品になっているようだ。

美しい地中海に浮かぶ人口わずか5500人ほどのランペドゥーサ島で伸び伸びと暮らすサムエレ少年。カメラはサムエレの平和な日常の向こうにある過酷な現実を捉える。イタリア最南端にあるこの島を目指して、アフリカや中東から数万人の難民たちが命がけで海を渡ってくるのだ。しかし島の人々の日常が難民によって変化することはない。ここには今世界が直面している悲劇の縮図がある。

平和な日本で暮らす私たちだからこそ見ておきたい今月のイチオシ。

世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方

のどかなドイツの村で6人の幼稚園児と仲良しのアカハナグマのクアッチが大人相手に反乱を起こす！彼らが結成した“ハナグマ・ギャング団”の目的は大好きなおじいちゃんやおばあちゃんを老人ホームから救出すること。果たしてちびっこギャングたちの作戦は成功するのだろうか？

6人全員が映画初出演というだけあって、子供たちが実に伸び伸びとしている。はっきり言って猛烈に可愛い。しっかりと演技の勉強をしたうまい子役も素晴らしいが、個人的には子供の自然な表情を捉える小津安二郎監督や是枝裕和監督の子役の使い方が好きだ。そういう人にもってこいなのがこの作品。間違いなくほっこり笑える作品なので、カップルにもオススメ。絶対に雰囲気が良くなるはず。

サバイバルファミリー

ある日突然、電気が全くなくなったらどうなるか…。この部屋は真っ暗になり、冷蔵庫も停止、パソコンも使えない。この窮地をSNSで呟こうかなとスマホを手にするが、あれ？充電切れ。電話も不通。電車も動かない。さあ、どうしましょうというのがこの映画のストーリーだ。

このサバイバルな環境に放り出された鈴木家は電気がないとどうにもならない東京を脱出する。しかしお父さんは役立たず。お母さんは天然気味で、現代っ子の息子と娘は我慢の限界。

その様子を客観的に見るのは確かに面白そう。しかし完全に電気がない状態を想像するのはかなり難しい。「ウォーターボーイズ」（01）や「スウィングガールズ」（04）といった話題作を手がけてきた矢口史靖監督はどこまでこの危機的状況を再現しているのか。そこらあたりにも注目して、鈴木家の頑張りを見守りたい。

たかが世界の終わり

本作の監督グザヴィエ・ドランはまだ27歳。1989年にカナダで生まれ、子役として活躍。20歳の時に「マイ・マザー」（09）で映画監督デビューを果たしていきなり注目され、監督5作目の「Mommy / マミー」(14)で第67回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞。そして本作「たかが世界のおわり」（16）で第69回カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞した。20代にしてものすごい経歴だ。

人気作家のルイは自分の死が目前に迫っていることを伝えるため12年ぶりに家族が暮らす故郷へ帰る。母と妹、兄夫婦がルイを迎えてくれるが、食卓を囲む5人には微妙な空気が流れる。そして迎えるクライマックスの時、家族は胸に秘めてきた想いをぶつけ合う。

映画界の新鋭がギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ、そしてナタリー・バイという一流のキャストを揃えて挑むある家族の物語。グザヴィエ・ドラン監督の演出も楽しみだ。

愚行録

一年前、誰もが羨むような一家が惨殺される。記者の田中はこの事件の取材を続けるうちに幸せな家族のイメージからは想像もできない現実を知ることになる。果たしてこの一家を惨殺した犯人は誰なのか。

愚行という言葉を辞書で引くと“ばかげていて、人の笑いものになるような行動”とある。涼しい顔をして生きているあの人もこの人も、見えないところでは愚行を重ねているという現実。そんな人間の愚かさを描いた群像劇をミステリーに仕上げた貫井徳郎の同名小説が石川慶監督によって映像化された。石川監督にとってこの作品が長編映画監督デビュー作となる。

主演は妻夫木聡。その妹役で満島ひかり。他にも小出恵介、臼田あさ美、市川由衣、松本若菜、中村倫也、眞島秀和、濱田マリに平田満といった実力派がキャスティングされており、どうやらキャストの演技合戦にも期待できそうだ。この作品を通して人間の本性があなたには見えるだろうか？

2017年2月公開映画一覧