地球上で静寂な場所は少ない。にも関わらず、音は人間の心拍数や脳波に呼吸、ホルモンの分泌などに大きな影響を与えている。人々の周りには常に音が溢れ返っているが、果たしてこんなに刺激を求める必要があるのだろうか。
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』の作品情報
- タイトル
- 静寂を求めて 癒やしのサイレンス
- 原題
- In Pursuit of Silence
- 製作年
- 2015年
- 日本公開日
- 2018年9月22日(土)
- 上映時間
- 81分
- ジャンル
- ドキュメンタリー
音楽 - 監督
- パトリック・シェン
- 脚本
- 不明
- 製作
- パトリック・シェン
アンドリュー・ブロメ
ブランドン・ベダー - 製作総指揮
- アンドリュー・ブロメ
ラリー・ファインゴールド - キャスト
- グレッグ・ヒンディ
ヘレン・リーズ
ジョージ・プロチニック
マギー・ロス
ピコ・アイヤー
スーザン・ケイン
宝積玄承
ジョン・ケージ - 製作国
- アメリカ・⽇本・ドイツ・ベルギー・中国・インド・台湾・イギリス合作
- 配給
- ユナイテッドピープル
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』の作品概要
「静寂」・「騒音」・「音楽」にスポットが当てられたドキュメンタリー作品。日本だけではなく世界的に見ても騒音問題は注目されており、人体や鳥類の生態系への悪影響が懸念されている。実際に、騒音は頭痛や睡眠妨害、痒みやアトピーの悪化など、聴力以外の部分にも悪影響が出ることがある。最近では「静寂」に世間の注目が集まっている。静寂は精神をリラックスさせる効果があるかもしれないと言われており、瞑想や森林浴などを積極的に取り入れている人もいる。
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』の予告動画
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』の登場人物(キャスト)
- グレッグ・ヒンディ
- 22歳。騒音から逃げるため、次の誕生日までの1年間、無言のまま徒歩でアメリカ大陸を横断した。
- ジョン・ケージ
- 作曲家。『4分33秒』という無演奏の曲を発表する。
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』のあらすじ(ネタバレなし)
地球上で静寂を保っている場所は少ない。経済が発展した現代では、視覚的には忙しく音響的には大きくなった。音は人間の心拍数や脳波に呼吸、ホルモンの分泌などに大きな影響を与えている。
飛行機は朝6時から夜中まで飛んでいる。時には午前3時頃まで飛ぶこともあった。上空を飛んでいるから、飛行機と騒音は関係ないということはない。空港に降りるために高度を下げるため、地上にいる人々の耳にも大きなエンジン音が届いてしまうのだ。
人々の周りには常に音が溢れ返っている。携帯の着信音・祭りに参加する人々の騒ぎ声・店内に流れる激しい音など。人々は異常な興奮状態の中で暮らしていた。果たして、こんなに刺激を求める必要があるのだろうか。
静寂は人間をあるべき姿に戻す。静寂は言葉よりも深い「何か」を表しており、会話よりも深い「何か」を聞く空間である。
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』の感想・評価
騒音
騒音は「典型7公害」の1つであり、日本だけではなく世界的に見ても大きな社会問題になっている。20世紀後半より世界各地で騒音に対する量的基準が制定され、WHOおよびWHO欧州事務局がガイドラインを定めている。これは、経済の発展と共に工場・事業場騒音や交通騒音など、大きな音が鳴るような環境が増えたからである。
騒音は難聴などの聴力への影響だけではなく、頭痛や睡眠妨害、痒みやアトピーの悪化など、聴力以外の人体にも大きな悪影響を与えている。さらに、鳥類の生息環境の悪化や鳥類の餌資源の逃避・減少など、鳥類の生態系にも大きな悪影響を与えてしまっている。騒音という言葉は広まっているが、それがどこまで人や動物に影響を与えているのか知らない人も多いのではないだろうか。
静寂が与えるもの
騒音が人体にもたらす悪影響については古くから注目されていた。かの有名なフローレンス・ナイチンゲールも、無用な騒音は子供の突然死に結びついていると主張し大きな関心を持っていた。
しかし、静寂についてはあまり注目がされていなかった。静寂が与える人体の影響について注目されるようになったのは、2006年ごろのことである。それも、静寂にスポットを当てて研究されていたわけではなく、音楽が与える人体の影響に対しての実験途中で偶然発見されたものである。それにより、静寂は精神をリラックスさせるのかもしれないという考えが生まれた。
それから静寂について研究が行われるようになるが、まだ確かなことは解明されていない。しかし、瞑想が流行していたり、周囲の音を遮断するヘッドホンが開発されているのを見る限り、余計な音を排除したいという願いを無意識の内に人々が抱いている可能性が高い。
音楽
音楽は古くから多くの人に親しまれ、古代ギリシア時代に音楽理論や音楽の哲学が生まれている。古代ギリシアに流行っていたのは、詩に音楽が伴っているものであった。この古代ギリシア音楽が、後のクラシック音楽へと変遷していく。日本でも縄文時代から音楽が誕生していた。日本で音楽というものが確立したのは、5世紀以降の朝鮮半島や中国からの影響が大きい。現代でも音楽は人々に親しまれ、生活の一部に溶け込んでいる。
音楽と静寂は相反するものである。しかし、作曲家のジョン・ケージは、『4分33秒』という無演奏の曲を発表している。映画の中でもオーケストラが楽器を演奏せず、観客達が「無」の音を聞く様子が収録されている。ジョン・ケージが発表したこの曲は、音楽の概念を覆す新しい試みとして注目を集めた。
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』の公開前に見ておきたい映画
ジャージー・ボーイズ
音楽に纏わる映画。アメリカのポップスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」と、そのリードボーカルであるフランキー・ヴァリにスポットを当てた作品で、日本でも大人気の楽曲『君の瞳に恋してる(Can’t Take My Eyes Off You)』の誕生秘話が描かれている。監督を務めたのは、『硫黄島からの手紙』(06)や『グラン・トリノ』(08)など数々の名作を世に送り出しているクリント・イーストウッドである。
ニュージャージーの田舎町という希望のない街で、トミー・デビートとニック・マッシは暮らしていた。彼らは素行が悪く、警察の世話に度々なっていた。しかし、彼らには音楽と夢があった。トミー達は素晴らしい歌声を持つフランキー・ヴァリと、作曲家としての才能を持つボブ・ゴーディオをメンバーに加え音楽活動を精力的に行った。
詳細 ジャージー・ボーイズ
猫が教えてくれたこと
ドキュメンタリー映画。トルコ・イスタンブールは古くから猫の街として有名で、野良猫達が街の中に溢れており、景観の一部として人々から認識されていた。この作品はその野良猫達と、猫に関わる人々にスポットが当てられて作られている。
トルコ・イスタンブールには欠かせない存在があった。それは、猫である。街には猫が溢れ、人々と共に暮らしていた。泥棒猫のサリは、いつも餌を捜し歩いていた。でも、それは自分のためではなく、小さな子猫達のためだった。美食家デュマンは、とあるレストランに通っていた。そこに美味しいものがあると分かっているのだ。最強の雌猫サイコパスは、相手が闘犬でも立ち向かう勇ましい猫だった。猫は人々に生きる希望を与える、愛らしい存在であった。
詳細 猫が教えてくれたこと
すばらしき映画音楽たち
ドキュメンタリー×音楽映画。この作品はハリウッド映画を彩ってきた、「映画音楽」にスポットが当てられた作品である。『007』シリーズや『スター・ウォーズ』シリーズなど、大ヒットした主題歌やメインテーマがどのようにして生まれたのか、監督は作曲家とどのようなやり取りをしているのか、色んな角度から「映画音楽」が紐解かれていく。
映画には素晴らしい音楽が欠かせない。映像に音楽が加わると、それがたちまち物語へと変わっていく。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの音楽を手掛けたハンス・ジマーや、『タイタニック』を手掛けたことでも有名なジェームズ・キャメロン監督など、著名な人物達が登場し「映画音楽」について語っている。
詳細 すばらしき映画音楽たち
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』の評判・口コミ・レビュー
9/29よりシネマリンにて上映『#静寂を求めて 癒しのサイレンス』https://t.co/urXvdDU1Qz
本日「ポップ・アイ」鑑賞時に予告編が流れ、公開楽しみ。2作に共通する要素もたくさんあるように思った。ポップアイの中にも心地の良い”静寂”がたくさん。そよぐ木々、川の音、乾いた道を歩くポパイの足音… pic.twitter.com/rdo1AalAvV— 横浜映画日和 (@y_eiga_biyori) 2018年9月21日
映画『静寂を求めて 癒やしのサイレンス』のまとめ
「静寂」・「騒音」・「音楽」にスポットが当てられた作品で、「静寂」を求める人々の姿が描き出されている。ごく普通に生活しているだけでも、道路を走る車の音やエアコンの音など、何かしらの音が自分の身の回りで鳴っている。地球上で完全な静寂を感じられる場所は、本当に僅かしかないのだろう。この作品では現代人がいかに騒音と共に生活しているのか、静寂がどれほど人々にとって大切なものかを改めて感じられる作品になっている。
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