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映画『ハウス・ジャック・ビルト』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

1970年代から1980年代にかけて、米国ワシントン州で暗躍したシリアルキラーのジャックが、ラース・フォン・トリアー監督・脚本、マット・ディロン主演でついにスクリーンに登場する。およそ12年にも及ぶジャックの奇行が、今ここで明らかになる。

映画『ハウス・ジャック・ビルト』の作品情報

ハウス・ジャック・ビルト

タイトル
ハウス・ジャック・ビルト
原題
The House That Jack Built
製作年
2018年
日本公開日
2019年6月14日(金)
上映時間
152分
ジャンル
ホラー
監督
ラース・フォン・トリアー
脚本
ラース・フォン・トリアー
製作
ルイーズ・ベス
製作総指揮
トマス・エスキルソン
トーマス・ガメルトフト
ペーター・オールベック・イェンセン
キャスト
マット・ディロン
ブルーノ・ガンツ
ユマ・サーマン
シオバン・ファロン・ホーガン
ソフィー・グロベル
ライリー・キーオ
ジェレミー・デイビス
製作国
デンマーク
フランス
ドイツ
スウェーデン
配給
クロックワークス

映画『ハウス・ジャック・ビルト』の作品概要

デンマーク映画界を牽引する鬼才・ラース・フォン・トリアーが、アメリカのワシントン州で殺人をアートと捉え、次々と人々を手にかけていく連続殺人鬼ジャックの12年間を描く。マット・ディロン主演で送る他、ブルーノ・ガンツら豪華俳優陣で構成された今作品は、多くの賛否両論を巻き起こす。第71回カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、あまりの過激さからアメリカでは修正版のみ正式上映が決定した話題作。日本では、R18指定ではあるが、完全ノーカットのオリジナルで上映される。

映画『ハウス・ジャック・ビルト』の予告動画

映画『ハウス・ジャック・ビルト』の登場人物(キャスト)

ジャック(マット・ディロン)
建築家を目指している技師。整った顔立ち、すらりとした身長、独特な雰囲気を併せ持つが、実は強迫性障害を患っている。
ヴァージ(ブルーノ・ガンツ)
古代ローマの詩人・ウェルギリウスの化身。ジャックとの対話することで、ジャックの価値観・哲学・芸術などあらゆることを引き出していく。
女性1(ユマ・サーマン)
ジャックが連続殺人犯となるきっかけとなった女性。車の故障によりジャックに助けられるが、横柄な態度でジャックを怒らせてしまい殺害される。

映画『ハウス・ジャック・ビルト』のあらすじ(ネタバレなし)

時は1970年代のアメリカ・ワシントン州。ジャックは、強迫性障害を抱えながらもコツコツとまじめに働く技師である。将来は建築家になるのが夢で、日ごろから家の模型を作ったり実際の建築現場に足しげく通ったり熱心な姿を見せる。

そんなある日、車を走らせていたジャックは、雪の残る山道の真ん中で立ち往生しているキレイな女性に出くわす。女性は車が故障してしまったことで途方に暮れており、ジャックは親切心から女性を車に乗せ、待ちまで送ることにした。

だが、その道中女性は自分を助けてくれたジャックに対してとても横柄な態度を示す。「失敗したわ」と話しかけると、ジャックをじっと見て「あなたは殺人鬼に見える」と失礼な言葉を吐く。女性のあまりにも横柄で理不尽な言葉に、ついにジャックは我を忘れて衝動的に女性を殺害してしまった。

それからジャックの世界が一変する。ジャックは、女性の死を見て殺人が「アート」であることに気付いた。それ以降、ジャックは夢に描く「ジャックハウス」を建てるため、そして芸術を完成させるために次々と人々の命を奪っていくのだった。

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映画『ハウス・ジャック・ビルト』のネタバレあらすじ結末と感想
映画『ハウス・ジャック・ビルト』のネタバレあらすじと感想。ストーリーを結末まで起承転結で分かりやすく簡単に解説しています。映画ライターや読者による映画感想も数多く掲載。

映画『ハウス・ジャック・ビルト』の感想・評価

カンヌ国際映画祭上映中、途中退場者続出の話題作

映画が「R18」指定になると、思わず性的な表現を思い浮かべてしまう。だが、今回の『ハウス・ジャック・ビルト』は人々の予想を遥かに超える。2018年5月、第71回カンヌ国際映画祭が開演され、『ハウス・ジャック・ビルト』はプレミア上映されることとなった。だが、上映された内容が余りにも過激過ぎたことから、映画上映中100人以上が途中退席するという異例の事態に。更に、映画の評価は完全に真っ二つに分かれることとなった。

アメリカの大手レビューサイトとして知られているRotten Tomatoesでの支持率は59%。これまで連続殺人鬼の軌跡を描いた作品は数多く発表されているが、中には「連続殺人映画の中では一番退屈な映画」と辛らつなコメントも。

一方で、「エンディングに仰天した」とのコメントを発する人もおり、予告動画からはとても想像がつかないエンディングで映画は締めくくられている。果たして、どちらの言い分が日本人の評価に繋がるのか。アメリカでは修正版の上映だが、日本では完全ノーカット無修正で登場する。ホラーが大好きな人でも、心して観賞することをお勧めしたい。

ジャックの犯した5つの物語

ジャックと言う人間が、12年もの間に侵した犯罪は数知れない。今回の映画は、ジャックが犯してきた殺人事件の中から5つの事件をピックアップした物語になっている。5人の罪なき被害者たちの模様は、予告動画を見ているだけで身の毛もよだつ有様だが、これが実際にあった事件だと思うと、被害者の絶望感が全身に痛いほど伝わってくる。

ラース・フォン・トリアー監督は、以前から独特な撮影方法や映像表現を駆使してきた監督で、彼が撮る映像の中には過激でバイオレンスな描写があるものも少なくない。今回も、演技指導には一切の妥協を許さず、より現実味のある映画として仕上がったのではないだろうか。

監督は、2011年に『メランコリア』と言う作品をカンヌ国際映画祭に出品し、そのときにヒトラーについて言及したことでメディアからバッシングを受け、カンヌを事実上追放されていた。あれから8年の歳月が流れ、ラース・フォン・トリアー監督の復帰策として銘打たれた今作は、あらゆる面で話題を掻っ攫っていく。

シリアルキラー展2019

2019年6月18日~7月11日までのおよそ1月弱、東京都中央区銀座8丁目にある「ヴァニラ画廊」で「シリアルキラー展」が開催される。展示室を2室使った規模の大きな展示会で、これまで小説や映画のモデルやモチーフとされてきた欧米のシリアルキラー(連続殺人犯)たちの作品を展示する。

「殺人ピエロ」や「キラー・クラウン」と呼ばれていた同性愛者の連続殺人犯ジョン・ウェイン・ゲイシー。墓場から死体を掘り起こし、その死体を使って別のアート作品を作り出すことに熱中していたアメリカ史上でも類を見ない猟奇殺人犯・エド・ゲイン。マンソンファミリーを率いていたカルト宗教のチャールズ・マンソンなど。20世紀のアメリカにおいて、連続殺人犯を語る上でその名を外すことはできないと言われるほどの犯罪者たちが作り出した作品や、セルフレポート、資料が所狭しと飾られる。

普通の人が見たら、目をそむけたくなるような残酷で残忍な凶行を次々と起こした犯罪者たちの世界観は、彼らの人生のそのものであるかのような絶望や凄みや虚無、無常、退廃で溢れている。会期中映画の半券チケットを持っていけば入館料が通常2,000円のところ、1,600円に割引されるため、かなりお得に見ることができる。日本ではほとんど見ることのできない犯罪者の中でも群を抜く人々の貴重なコレクションを、興味のある人はぜひ観覧してみてはいかがだろうか。

映画『ハウス・ジャック・ビルト』の公開前に見ておきたい映画

映画『ハウス・ジャック・ビルト』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『ハウス・ジャック・ビルト』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

ダンサー・イン・ザ・ダーク

デンマークの鬼才・ラース・フォン・トリアー監督が2000年に手掛けたデンマーク映画。アイスランドの人気女性歌手・ビョークを主役に、アメリカのとある街で息子と2人で暮らす母親に焦点を当てた。

映画は手持ちのカメラを使った撮影を主体に、独特のカメラワークとジャンプカットの多用によりスピーディーで、華麗な画面展開が見られる。更に、不幸な境遇にある主人公の空想シーンなどは、ミュージカル調に仕立て上げることで、物語にメリハリの付いた新奇な構成の作品として知られることとなる。

この作品は、2000年の第53回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドール賞を受賞し、主演のビョークは主演女優賞を受賞した。元々歌手だったビョークが音楽も担当し、主題歌はゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞の歌曲部にノミネートされるほどの話題を得た。

アメリカのとある街で、大切な1人息子のジーンと共に暮らす主婦のセルマ。彼女は先天的な病気を抱えながら働き、自身の病気が息子に遺伝していたため、手術費を貯める日々を送る。そんな境遇の主婦に訪れる予想外の展開に、エンディングは驚きと涙を隠し得ない印象的な作品となっている。

詳細 ダンサー・イン・ザ・ダーク

ドラッグストア・カウボーイ

1989年に制作されたマット・ディロン主演のアメリカ映画で、ディロンはこの映画でインディペンデント・スピリット賞の男優賞を受賞している。当時規制が厳しかった麻薬をテーマとしており、麻薬を打った際の幻覚を映像で表現し、麻薬の恐怖や魅力をそれぞれの面で描き出した社会映画である。

マット・ディロンは、1970年代のオレゴン州で、麻薬に溺れたボブの役を演じる。ボブは、仲の良い仲間たちと共に、麻薬欲しさにドラッグストアを襲い、麻薬を手に入れ楽しむ日々を送る。しかし、生活は徐々に廃れていき、仲間の1人が死んだことで亀裂が入り、ボブはショックからサナトリウムに入り、療養することに。だが、1人抜けたボブを良く思わないかつての仲間との争いは避けられないものであった。

日本でも、芸能人を中心に麻薬の取り締まりは強化の一途を辿り、ニュースや学校教育でも度々麻薬の恐怖について言及している。1度嵌るとなかなか構成できないのが麻薬の怖いところで、現在は名前を変えてたばこよりも依存性が低いことを武器に若い世代に広く浸透してきていることが社会問題とされている。そうした中で、このように社会に訴える映画の再上映の機会が得られると、社会の興味もまた持たれやすくなるのかもしれない。

詳細 ドラッグストア・カウボーイ

ベルリン・天使の詩

2019年2月に亡くなられたばかりの、ブルーノ・ガンツが世界的に有名になった作品である。19歳でデビューしたガンツは、ドイツ映画界を中心に活躍していた世界的に有名な俳優で、この映画の他にも、2004年公開の『ヒトラー~最期の12日間~』のヒトラー役も高い評価を得ている。2018年に大腸癌を患い、療養中であったが、『ハウス・ジャック・ビルト』が彼の遺作となってしまった。

お勧めしたい『ベルリン・天使の詩』では、天使ダミエル役を熱演し、話題となった。長い歴史の中で、人間のあらゆるドラマに直面してきた守護天使のダミエルは、人間に寄り添いながらずっと人間たちを見守ってきた。そんなダミエルであったが、ある日、親友の天使に永遠の命を放棄して、人間となりこれまで見守ってきた人間たちと同じようなドラマを体験し、幸せに死にたいと打ち明ける。そしてついに、ダミエルは思いを寄せていた人間の女性のいる地上へと降り立った。そこは、決して越えることのできない「壁」で東西を仕切られた街・ベルリンであった。この作品は、1987年に行われたカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、1988年イギリスアカデミー賞では外国語映画賞を受賞するなど話題に尽きなかった。更に、世界中で大ヒットしたことで後の1988年には、ハリウッドで『シティ・オブ・エンジェル』として、リメイク版も発表された。

詳細 ベルリン・天使の詩

映画『ハウス・ジャック・ビルト』の評判・口コミ・レビュー

映画『ハウス・ジャック・ビルト』のまとめ

マット・ディロンの才能に気付いていたトリアー監督は、サイコパスの連続殺人犯のジャックの役を、「ディロンの良さが際立つ役」だと絶賛し、個人的に賞を贈りたいとディロンのシリアルキラーぶりを高く評価した。人から「サイコパス」だと言われたり、「猟奇的」だと言われたりすることは侮辱されたようで全く嬉しくないだろう。しかし、今回に限ってはトリアー監督の思惑通りの「ジャック」をディロンが演じてくれたおかげで、映画は良くも悪くも世界中で話題となるほどの作品に仕上がったと言っていい。ディロンのサイコパスの役は、これが最初で最後かもしれないので、ファンならぜひ劇場で見ておきたい。

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