2011年3月11日、午後2時46分に起きた未曾有の災害「東日本大震災」において、福島第一原発で大事故が起きてしまった。現場に残った50名の作業員たちの決死の活躍を描く。
映画『Fukushima 50』の作品情報
- タイトル
- Fukushima 50
- 原題
- なし
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2020年3月6日(金)
- 上映時間
- 122分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 若松節朗
- 脚本
- 前川洋一
- 製作
- 堀内大示
大角正
布施信夫
井戸義郎
丸山伸一
安部順一
五阿弥宏安
飯塚浩彦
柴田建哉
岡畠鉄也
五十嵐淳之 - 製作総指揮
- 角川歴彦
- キャスト
- 佐藤浩市
渡辺謙
吉岡秀隆
安田成美
緒形直人
火野正平
平田満
萩原聖人 - 製作国
- 日本
- 配給
- 松竹
KADOKAWA
映画『Fukushima 50』の作品概要
東日本大震災の際に、福島第一原発で起きた大事故をモデルに制作されたヒューマンドラマ。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、改めて国内のいたましい震災の記憶と向き合うことを目的として立ち上がった企画である。中心人物に据えられているのは、100本以上の映画に出演してきたベテラン俳優・佐藤浩市と、ハリウッド版『ゴジラ』シリーズなど海外映画での活躍もめざましい渡辺謙。その他にも実力派俳優や若手俳優がバランスよく顔を揃える。
映画『Fukushima 50』の予告動画
映画『Fukushima 50』の登場人物(キャスト)
- 伊崎利夫(佐藤浩市)
- 福島第一原発 1・2号機当直長。冷静ながらも現場の要として、必死に現場作業員たちに指示を出し続ける。
- 吉田昌郎(渡辺謙)
- 福島第一原発の所長。原発の現状を確認し何度も絶望しつつも、諦めずに伊崎へとすべてを託した。
- 伊崎遥香(吉岡里帆)
- 伊崎利夫の娘。避難所でニュースを頼りに、父の無事を祈っている。
映画『Fukushima 50』のあらすじ(ネタバレなし)
2011年3月11日、午後2時46分。東日本大震災での地震と津波の被害によって、福島第一原発では炉心融解(メルトダウン)の危機が発生した。世界的にも類を見ないほどの大事故となったあの頃に一体、発電所の中では何が起きていたのか?
現場の50名ほどの作業員たちは、発電所の内部に残って奔走していた。残してきた家族がいるにも関わらず、現場で自らの身体を危険にさらしている作業員たち。しかし、実情を把握していない上層部や政府からの見当違いな横槍も次々と入ってくる。状況も刻々と悪化していた。
そして、さらなる最悪の事態を防ぐためには、作業員が命を顧みず原子炉に入っていく、「ベント」という作業を行う必要があった。
映画『Fukushima 50』の感想・評価
当時の状況を再現し、伝えるリアリティ
日本の映画では初の、米軍から協力を得た作品となっている。米軍基地での撮影を行ったほか、米兵の登場するシーンや東北支援のヘリコプターのカットは、本物の米兵やヘリコプターUH-1が使われている。
その他、陸上自衛隊の協力シーンも数多い。複数の用途別のヘリコプターが使われ、リアルにこだわった撮影が行われている。
当時の状況を可能な限り忠実に再現した巨大なセットを組み、また実際の当時の発電所で作戦に参加していた作業員の意見も取り入れている。メディアに今まで映されなかった部分を隅まで描くことに注意深く取り組んだ映画だ。リアルなものを使って丁寧に描いたことで、そこで何が起こっていたのかの説得力は増していることだろう。
ノンフィクション作家の原作小説によるリアリティ
本作品の原作となったのは、ジャーナリストであり、またノンフィクション作家でもある門田隆将による『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発(角川文庫)』である。作者は元々記者であり、殺人事件の被害者遺族を追う、裁判の問題点を指摘するなど、数々の事件の中身を詳細に考証してきた。
独立してからも精力的に活動をしており、今作でも実際に福島第一原発を事故後に現地取材。当時の状況を描いた本作の他にも、その後を追った『記者たちは海に向かった-津波と放射能と福島民友新聞』などを刊行。当時の真実に関して朝日新聞と戦っている、まさに事故の真実とともに歩んできた人物だ。
数々の著書刊行と受賞歴を持ち、現在も取材、執筆、講演や論争、問題提起を続けている。
俳優たちが悩みながら作り上げたリアリティ
人生には、忘れなければ生きていけないことと、絶対に忘れてはいけないことがあり、俳優たちはこの映画で後者をどう描き出すのかという試行錯誤を行ってきた。ハードルの高いプロジェクトであることを認識しながらも、監督や他の俳優と連携し、意思疎通を図りながら越えてゆく挑戦だったと言う。
また、渡辺謙だけは本当に実際に存在した人間の名前を冠した役となっている。大きなプレッシャーを感じながらも、役そのものへの意識を高めて演じている。
日常生活で馴染みの薄い「放射能」というものに晒されたとき、一体どういう状況なのかというのはとても想像しにくい。知識を補填するため本や取材から情報収集を行いつつ撮影がされており、俳優たちが丁寧に作品と向き合っていることが伝わってくるはずだ。
映画『Fukushima 50』の公開前に見ておきたい映画
楽園
2019年に公開された佐藤浩市が主演の映画。地方都市で起きた少女失踪事件を軸に、それに関わる人々の生活のなかで起こってゆく事件を描く。小説が原作の作品として、鬱々とした中にも文学的な風合いがある。
佐藤浩市の役どころとしては、妻を失い愛犬と過ごす穏やかで人当たりのいい壮年男性だ。とある事件以降、次第に村八分にされ、やがて精神を病んでいく様はまさに佐藤浩市の演技力の見せ所と言ったところだろう。
「楽園」は一体どこにあるものなのか?という作品本来の問題提起に加え、衝撃的なシーンも存在するインパクトの強い本作は、見たものになかなかのダメージを残していく。綾野剛、杉咲花など、同じく主演クラスで話を進めていく俳優もそれぞれに見所となっている。
詳細 楽園
怒り
残虐な殺人事件から一年が経った頃、逃亡して未だ捕まらない犯人らしき人物が、日本の3箇所に別々に現れる。それぞれの場所で彼らは人と繋がりを持ってゆく。一体本当の殺人犯はどの人物なのだろうか?
森山未來、松山ケンイチ、綾野剛という顔の系統が近く、絶妙に犯人の似顔絵に近い俳優を集めたバランス感覚が見事。同じく吉田修一の小説を原作とした、答えのすぐに出せない映画となっている。
メインキャストとして登場する渡辺謙は、突如現れた謎の男と娘が恋愛をしていることに不安を抱く父親役。悩み、苦しむ姿を表現してみせた。
疑うことの苦しみ、信じることができないことへの怒り。大事な人を守りたいという想い。様々な感情の交錯する、非常に密度の高い一本。
詳細 怒り
バーニング・オーシャン
ピーター・バーグ監督による2016年制作のアメリカ映画。2010年4月20日に石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン」で起きた、大爆発事故を描いたノンフィクションとなっている。
世界最大の事故であり、人災であったこの爆発では、作業員126名が海上で逃げ場を失うこととなった。閉じ込められた彼らを救出し、事態を食い止めようとする作業員たちをリアルに描いている。
現場と指示系統の認識の乖離はどこの事故でも起こりうる事態である。またどれだけの規模の事故であっても、現場が命懸けで走り回っていることで、最悪の事態を防げたこと。最悪の中での最善であったことを、映画の形で知らしめる手法は有効なことだと感じられた。
詳細 バーニング・オーシャン
映画『Fukushima 50』の評判・口コミ・レビュー
『Fukushima50』の総括。内容、映像面ともに長短ある。政治面の描写は駄目です。だが大きな意義もある。即ち、現場で闘った人の思いや行動をどう受け止め、どう考えるか。良くも悪くもね。要は大切な部分だけ掬い取って他は切り捨てればいいんです。でも全てを切り捨ててはいけない。そんな映画です。 pic.twitter.com/HhdVSwLerX
— シネマン(映画好き) (@cineman_0727) 2020年3月8日
映画「Fukushima50」見る。2011年の福島原発事故を現場東電作業員の目線で感動的に描く事実歪曲映画。作業員の努力で事故が収束したという感動巨編にする為の嘘が多すぎる、3/17の自衛隊ヘリ散水の後に2号機の圧力下がって皆が喜ぶが事実は3/15東電現場が逃亡した日の夜には下がっている。下の中
— 上原 丘 (@hllluehara) 2020年3月7日
#Fukushima50
東日本大震災時原発でリアルに何が起こっていたのか?と言う話。
伝わって来たのは現場職員の使命感と責任感。
死守してくれた50人への感謝、管理者との温度差による理不尽さ、そういう二つが押し寄せ 違った涙腺を常に刺激してくる。自分が東北に住んでるせいなのかなぁ。 pic.twitter.com/9yB2ep0LCk— yang0wenli (@yang096E) 2020年3月6日
『Fukushima50』
演出など鼻につく所はあったけど、ニュースで流れてくる一部情報しか知らなかったので、現場で闘っていた方々の事を“知る“機会を与えてくれた製作陣に感謝。当時中学校で3年生の送別会をしてた事、福島にボランティアに行った時の記憶が鮮明に蘇る。忘れちゃいけない。 pic.twitter.com/a8c80arq8S— ひいろ (@ak_miwa10) 2020年3月6日
『Fukushima 50』
あの日、今にも牙を剥こうとする原子炉の暴走を落ち着かせようと決死の覚悟で前線に留まった人たち。電源喪失による重なる想定外、撤退=壊滅の瀬戸際で高い意識でもって事態収拾に勤しむ勇姿。まあ相手が相手だけに美談に拍手とも違うけど想像も何も及んでなかった事は痛感した。 pic.twitter.com/uvcoju3uCk— コーディー (@_co_dy) 2020年3月7日
『Fukushima50』観た。冒頭10分くらい良かったけど、それからの人間ドラマが
「死にたくない者は残れ!」
「僕も行きます!私も行きます!」
「お前ら…(思いがこみ上げる)」
ギャーギャー騒ぐ外野
の繰り返しという邦画の悪い所が凝縮されてて中々邦画って感じでした— 社畜のよーだ (@no_shachiku_no) 2020年3月7日
『Fukushima50』
役者の過剰な演技
感動を誘うチープな演出
安直な家族愛
アメリカへの忖度政府や東電の問題から目を背け(配慮?)
一番大切な事を描かず残念
安っぽい人情ヒーロー映画で
興醒めだったもちろん当時現場で闘ってた人達には
敬意を表します文化庁助成映画らしい…。#Fukushima50 pic.twitter.com/WFaAZ3sXGw
— ken (@ken70121871) 2020年3月6日
映画『Fukushima 50』のまとめ
実際にあった事件の関係者、それを取材してきた作家、忘れないために企画に起こした人間たちと、作品にした監督、演じた俳優。どの立場の人たちも、当時の事件の惨たらしさを再現し、そして戦った人々への功績を再現するために緻密な努力を行っている。ノンフィクション映画という形にして事故の全貌が見えるこの機会に、劇場でそれらを受け止める私たちも、しっかりと見届け、感じていかなくてはならないのだと思わされる。
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