『君の名前で僕を呼んで』で世界的に注目を浴び、現在最も期待されている俳優・ティモシー・シャラメ最新作映画。『フォックスキャッチャー』のスティーブ・カレルとの夢の共演で、ドラッグ依存症をテーマに美しい父子愛を描く。
映画『ビューティフル・ボーイ』の作品情報
- タイトル
- ビューティフル・ボーイ
- 原題
- Beautiful Boy
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2019年4月12日(金)
- 上映時間
- 120分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン
- 脚本
- ルーク・デイビス
フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン - 製作
- ブラッド・ピット
デデ・ガードナー
ジェレミー・クライナー - 製作総指揮
- ナン・モラレス
サラ・エスバーグ - キャスト
- スティーブ・カレル
ティモシー・シャラメ
モーラ・ティアニー
エイミー・ライアン
ケイトリン・デバー - 製作国
- アメリカ
- 配給
- ファントム・フィルム
映画『ビューティフル・ボーイ』の作品概要
『ムーンライト』や『それでも夜は明ける』など数々の話題作を世に送り出し、多くの称賛を受けているブラッド・ピット率いるプランBエンターテインメントが新たに贈る、父親と息子の究極の父子愛ドラマ。主演は、『君の名前で僕を呼んで』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた、現在ハリウッドで最も期待されているティモシー・シャラメ。父親役には、『フォックスキャッチャー』でこちらもアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたスティーブ・カレルが熱演する。
映画『ビューティフル・ボーイ』の予告動画
映画『ビューティフル・ボーイ』の登場人物(キャスト)
- ニック・シェフ(ティモシー・シャラメ)
- スポーツ万能・成績優秀・才能豊かな優等生で、将来を期待されている青年。だが、義理の母親と幼い兄弟からの度重なる過度な期待に、次第に心を蝕まれていく。
- デヴィッド・シェフ(スティーブ・カレル)
- ニックの実父。ドラッグに溺れていく息子を献身的に支え、何度更生施設を抜け出したり再発したりしても、決して離れず大きな愛で包み信じ抜いた唯一の人。
映画『ビューティフル・ボーイ』のあらすじ(ネタバレなし)
シェフ家の長男として生まれたニックは、自分を包み込んでくれるような大きな存在の父親を中心に、家族に愛されながら育つ。
特に父親とは仲が良く、これまで多くのことを共有しながら育ってきた。ニックは成長するにしたがって、運動神経も良くスポーツができ、勉強面での成績も優秀で、自慢の息子となった。
しかし、ニックに幼い弟たちができたことや、義母からの過度な期待により、ニックの心は次第に蝕まれていく。愛しているはずなのに、愛されているはずなのに、家族といることが苦痛になっていく。
そうしてティーンエージャーに育ったニックは、ふとした拍子からたばこやドラッグに嵌っていく。父親にはもちろん反対される。だが、“みんなやってること”という安心感が、ニックをドラッグ中毒にまで貶めていった。
最近のニックの様子がおかしい、父のデヴィッドはそう感じながらも、ティーンエージャー期の息子に対してどう接していいのか分からなくなる。だが明らかに、ニックの様子は悪くなる一方であった。
以前と変わらない、明るく、聡明で、家族思いのニックを取り戻すために、父と子の更生への辛く苦しい道のりが始まろうとしていた。
映画『ビューティフル・ボーイ』の感想・評価
父と息子、2つの回顧録からなる2つのドラマ
この物語は、実在する人物が記録した回顧録が原作となっている。ただし、その回顧録は1つではない。ドラッグ中毒から更生したニック本人の視点から書かれた手記と、息子の依存症の克服のために、最後まで傍に寄り添い続けた父親の手記の2つからなる。この回顧録は、アメリカで発表されて以来大絶賛を浴び、ベストセラーになるまでに至った。
映画では、この2つの視点を1つにまとめ上げたことで、物語がよりリアルなものとなった。お互いの当時の気持ちが、全て素直に文字に起こされているため、映像化されたときもお互いの心境が置き去りにされることなく、作りこまれている。
父と息子は、ドラッグ依存を更生する前から細々と執筆を始めており、最終的には8年間の記録となった。その間に、父と息子は何度もぶつかり合い、何度も裏切られ、何度も抱き合ったのだが、それでもお互いがお互いを支え合いながら克服したのは、この手記の存在が大きかったと言う。
ティーンエージャー期の子供と言えば、“親は自分のことなど少しも分かっていない”“自分の問題だから、親にも誰にも迷惑をかけていない”など思いがちである。だが親は、いつでも話して欲しいし、いつでも分かり合いたい、理解し合いたいと思っている。少しでも力になれたらと願わずにはいられないのだ。それを、言葉ではなく手記に起こし見せ合ったことで、2人は互いを理解し合い、信頼し合うようになった。
映画では、その2人のドラマが、どちらの気持ちも置き去りにすることなく絶妙に描かれている。
アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた2人の名優が送る人間ドラマ
主人公の青年ニックを演じるのは、2017年の『君の名前で僕を呼んで』で溢れんばかりの才能を世に見せつけ、一躍スターに輝いたティモシー・シャラメ。ミレニアム世代のレオナルド・ディカプリオとさえ噂され、1939年以来、最も若いアカデミー賞主演男優賞の候補者となった。
今回のニックを誰が演じるかに当たって、シャラメはオーディションを受け、役を勝ち取ったが、製作者側はシャラメを選抜する気でいたようである。シャラメは飛び抜けて才能豊かであり、どこか聡い部分もあり、ドラッグ中毒に至ってしまう少年を演じるのにぴったりであった。
父親のデヴィッド役には、今回のプロデューサー陣と『マネー・ショート 華麗なる大逆転』で仕事を一緒にしたことのあるスティーブ・カレルの名が挙がる。
父親というのは、子供に対して言葉だけで全てを語りはしない。“親の背中を見て育つ”と言うように、言葉だけでは語れない“絆”が、家族の間にはあるのだ。それを、表情豊かに表現力豊かに演技してくれるのが、スティーブ・カレルであった。
カレルは、2014年の『フォックスキャッチャー』でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の主演男優賞ノミネートを始め、これまで多くの称賛を浴びてきた。今回は、自身も一男一女のパパであることを踏まえ、他人ごとではない心境で演技に挑んだとのことである。
再生の記録に寄り添う、ジョン・レノンの名曲
映画を構成するのに必要不可欠な要素の1つに、音楽がある。映像が視覚的に訴えかけるのであれば、音楽は聴覚的に観客に訴える。そして、その音楽が観客にとって馴染み深いものであればあるほど、映像とのリンクによって観客の胸を打つ。
今回、映画に起用された音楽は新しい楽曲ではなく、回顧録の中にもたびたび登場した楽曲であった。ニックとデヴィッドの関係の深さには、音楽の繋がりも外せない要素の1つであるからだ。
2人の関係にとって、音楽は特別な意味があり、特に映画のタイトルにもなっている『Beautiful Boy』は、父のデヴィッドにとって感慨深い曲でもある。デヴィッドは、仕事でジョン・レノン本人にこの曲についてインタビューを行っていたのだ。
映画では、父親役を演じるスティーブ・カレルが僅かに口ずさむシーンがあるが、それが次第にジョン・レノンの歌声に変わっていく。この絶妙な曲の取り入れ方は、原作者デヴィッド本人からも絶賛であった。
また、映画にはビートルズだけではなく、その当時に流行った楽曲が他にも使われている。ニックがまだ幼少期の頃、デヴィッドの車のカーステレオから流れたニルヴァーナで、ヘッドバンキングする映像も、予告で公開されている。ニール・ヤング、シガー・ロスなど、ロックからオルタナティブまで、オールドミュージックが好きな観客も楽しませてくれるエモーショナルな映画である。
映画『ビューティフル・ボーイ』の公開前に見ておきたい映画
オーバー・ザ・ブルースカイ
今回の映画の監督・フェリックス・バン・ヒュルーニンゲンは、ベルギーで生まれ、ヨーロッパを中心に活躍してきた人物である。彼が国際的に注目を浴びたのは、2009年にカンヌ国際映画祭でプレミア上映された『The Misfortunates』だが、最も有名なのは『オーバー・ザ・ブルースカイ』である。
この映画は、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされ、セザール賞では最優秀外国映画賞を受賞している。
ヒュルーニンゲン監督は、映画のテーマに家族の絆や人生の喜び、愛、人との絆や相互理解などを挙げている。『オーバー・ザ・ブルースカイ』では、今挙げられたような内容が存分に盛り込まれている。
音楽に満ち溢れながら、カウボーイに憧れるバンドマンと、タトゥー・デザイナーの女性が、突然出会い、恋に落ち、喜びを分かち合い、人生を共にする。そして、幸せな恋や幸せな結婚や幸せな家庭生活から一変して、愛娘の重病が家族に試練としてのしかかる。
およそ人間が生きていく中で、湧き上がって来るであろう感情の全てが映画の中で表現されている。それが、アイリッシュ系のソウルミュージックであるブルーグラス・ミュージックの流れに乗って観客の目と耳にダイレクトに訴えかけるので、より感動を呼ぶ。
ヒュルーニンゲン監督が映画の中で観客に伝えたい、表現したいテーマがふんだんに散りばめられており、それが今回の『Beautiful Boy』にも通ずるところがあるので、この映画はぜひチェックしておきたい。
詳細 オーバー・ザ・ブルースカイ
マネー・ショート 華麗なる大逆転
ブラッド・ピット率いるプランBが製作を担当し、スティーブ・カレルも登場した、4人のアウトローによる金融トレーダーのサクセスストーリー。
『アントマン』の監督としても知られているアダム・マッケイが監督・脚本を務め、映画はアカデミー賞の脚色賞に輝いている。スティーブ・カレルの他に、製作のブラッド・ピットも出演し、本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたクリスチャン・ベールや、『ラ・ラ・ランド』で演技の他に歌唱力でも高い評価を受けたライアン・ゴズリングが名を連ねている。
本作は、実在した4人の人物のノンフィクション映画となっており、リーマンショックにより世界規模で経済が混乱している中、4,000億円もの利益を生み出したその手腕が描かれている。物語は、そんな「お金の稼ぎ方のコツ」に溢れ、多くの人に役立つ仕事・投資・貯蓄などのヒントに満ちている。
有名な俳優が出演しているだけでも話題性充分だが、実話を元にした物語なので、面白さはよりリアルである。リーマンショックがいかにして起きたのか、そして、その危機をどう回避し切り抜けたのか、世の中のお金の仕組みを知りたい人には自己啓発的な観点からもぜひ鑑賞して欲しい映画である。
君の名前で僕を呼んで
現在、最も期待されているハリウッドの若手俳優・ティモシー・シャラメの初映画主演作品が『君の名前で僕を呼んで』である。この映画で、シャラメはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされることとなり、その他にも数々の賞に輝いた。
レオナルド・ディカプリオ以来の実力の持ち主として賞賛されているだけあり、本作『君の名前で僕を呼んで』の主人公エリオを演じたシャラメの演技力は、見応え抜群である。ラストシーンの表情だけを映した3分30秒のシーンは、心動かされずにはいられないある意味で衝撃的なシーンとなった。
1983年の北イタリアの避暑地を舞台に、17歳の青年エリオと、アメリカからやって来た24歳の大学院生オリヴァーの恋を描く。アカデミー育ちで才能に溢れるエリオは、これまで出会ったことのない自信家で自分と同じように何でもこなすオリヴァーに反発する。だが次第に、そんなオリヴァーに惹かれている自分を知るエリオ。
『胸騒ぎのシチリア』などで知られている、イタリアの俊英・ルカ・グァダニーノ監督と、アカデミー賞脚色賞に輝いた脚本家・ジェームズ・アイヴォリーが手掛ける、生涯忘れられない初恋の喜びと痛みを描いた、心温まる物語。
詳細 君の名前で僕を呼んで
映画『ビューティフル・ボーイ』の評判・口コミ・レビュー
#ビューティフル・ボーイ
青年の心を崩壊させ、家族の絆さえも引き裂こうとする薬物の恐ろしさ。
依存症で苦しむ息子を慈しみ抱きしめる父親。
”お前を愛してる“
祈りを込めたハグに涙腺が緩む。
ティモシー・シャラメの病身が痛々しくも美しい。
最後まで寄り添う事が愛ならば希望は輝きを失わない。 pic.twitter.com/eBgO3NQYxG— マウンテンボート (@9ilHACAQWfhHCmJ) 2019年4月13日
#ビューティフル・ボーイ
堕ちていく人を見るのは実に耐え難いね…ましてやそれがティモシー・シャラメならば…😥💦
人は弱い生き物で何かに依存するのも仕方のない事かもね🤔💦
でもドラッグはダメだよね🙅♀️
何度裏切られても常に寄り添う家族の姿が印象的🥺
劇中に流れる音楽も素敵やったなぁ〜🤔🎶 pic.twitter.com/kBJY4tOuJ9— Leona🌸映画垢 (@1ose9Leona) 2019年4月13日
辛い辛い作品でした🎬ドラッグの怖さと絶つ難しさ、リックの痛々しさをこれでもかと描いてます
一瞬の快楽と現実逃避
その代償は余りに大きく誰も幸せにならない!
堕ちていく息子を救うには?
愛だけでは我が子を救えないのか?
かなりの問題作、若い人にほど観て欲しいR15 pic.twitter.com/qrEIaSTzwH— るみ❤️ (@pecolove3) 2019年4月13日
『ビューティフル・ボーイ』
薬物依存症の恐怖。薬物からの脱却が如何に難しいか。薬物は問題から逃げる手段。若者達の心を歪ませ、人生を崩落させる悪魔。毒される息子に寄り添い続ける父の無償の愛と、諦め。対称的な2つの感情、父と母の想いに共感し、涙。助けは常に側に、愛のみが心を浄化する。 pic.twitter.com/KpeA3NxlsG— じょび (@moviejovi0116) 2019年4月14日
『ビューティフル・ボーイ』
幾ら愛を注ごうと目の前にいる最愛の息子は薬物に壊されていく。献身、擁護思いつく全てを試し愛で包もうとするも届かない遣る瀬無さとそんな父の想いを理解しつつも心を上回る薬物汚染の深み。終焉なき家族を取り戻す闘い、限られた更生の道を前に寄り添い祈るしかない。 pic.twitter.com/PQ4vOA9nw2— コーディー (@_co_dy) 2019年4月12日
映画『ビューティフル・ボーイ』のまとめ
この映画の良さや見どころを語るには、限られた文字数の中では納まりきらない程、内容の濃い映画である。英語映画に初挑戦する監督・ヒュルーニンゲンの手腕然り、プランBの数々のヒット作品を生み出す目利き然り、アカデミー賞の名に相応しい名優たちの共演然り。また、映画を彩る音楽についても話題は尽きない。テーマが重く、ドラッグが非日常的過ぎるので、日本人では想像がつかず嫌煙されるかもしれない。しかし、この映画はそれ以上に愛に溢れた家族の物語なのである。ここで少しでも興味が湧いた人は、まず映画の前に公式サイトの彼らのインタビューをおススメする。この映画が、前よりずっと好きになるはずだ。
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