1978年に公開された、主演ロバート・デ・ニーロで送る、1960年代末期のベトナム戦争を舞台にした戦争友情映画。第51回アカデミー賞並びに、第44回ニューヨーク映画批評家協会賞作品賞受賞した作品でもある。
映画『ディア・ハンター』の作品情報
- タイトル
- ディア・ハンター
- 原題
- The Deer Hunter
- 製作年
- 1978年
- 日本公開日
- 2018年12月14日(金)
- 上映時間
- 184分
- ジャンル
- 戦争
アクション
ヒューマンドラマ - 監督
- マイケル・チミノ
- 脚本
- デリック・ウォッシュバーン
- 製作
- バリー・スパイキングス
マイケル・デーリー
マイケル・チミノ
ジョン・ペバロール - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- ロバート・デ・ニーロ
ジョン・カザール
ジョン・サベージ
メリル・ストリープ
クリストファー・ウォーケン - 製作国
- アメリカ
- 配給
- KADOKAWA
映画『ディア・ハンター』の作品概要
時代は、1960年代末期のベトナム。戦争が始まり、普通の生活をしていた男たちは徴兵されベトナムへ向かう。主演、ロバート・デ・ニーロは仲間たちと共に捕虜となり、拷問ゲームを強いられる。第51回アカデミー賞で、作品賞・監督賞・助演男優賞などの5部門を制し、第3回日本アカデミー賞、第36回ゴールデングローブ賞でも受賞した70年代の名作が、製作40周年を記念して、4Kのデジタル復刻版となり劇場で再公開される。
映画『ディア・ハンター』の予告動画
映画『ディア・ハンター』の登場人物(キャスト)
- マイケル(ロバート・デ・ニーロ)
- ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外のクレアトンで、製鉄所に勤めながら友人たちと暮らす。ロシア系移民。
- ニック(クリストファー・ウォーケン)
- マイケルの友人。休日は一緒に鹿狩りに行く仲間。マイケルと一緒にベトナムへ徴兵され、戦場で再会する。
- スティーブン(ジョン・サベージ)
- マイケルの友人で、休日はニックらと一緒に鹿狩りを楽しむ。ベトナム戦争へ徴兵される前の壮行会で、婚約者アンジェラとの結婚式を行う。
映画『ディア・ハンター』のあらすじ(ネタバレなし)
アメリカ、ペンシルベニア州ピッツバーグの郊外にある小さな町クレアトンに、マイケルは製鉄所で働きながら休日は仲間たちと鹿狩りを楽しんでいた。そんなある日、アメリカとベトナムとの間についに戦争が勃発し、主に男性が徴兵されベトナムへと向かうことになる。
徴兵される兵士の中に、マイケルや友人のニック、スティーブンなども含まれ、マイケルたちは壮行会を開きベトナムへ向かう士気を高め合った。
ベトナム戦争では、思った以上にアメリカ軍が苦戦を強いられる。地理を把握しきっているベトナム軍のゲリラ戦は、アメリカ軍の戦法にはない戦い方であった。ベトナム軍の攻勢に、アメリカ軍兵士たちは次々と捕虜として閉じ込められてしまう。
戦場で再会したマイケルやニック、スティーブンも他の兵士と同じく捕虜として連れて行かれ、向かった小屋で行われていたロシアンルーレットを目の当たりにする。リボルバーに一発だけ弾を込め、ベトナム兵士たちはそれをアメリカ兵士に渡し、自らのこめかみに当て、引き金を引かせる。狂気が入り乱れる狭い小屋の中で、マイケルはどうにかして脱出を試みるのだった。
映画『ディア・ハンター』の感想・評価
戦争シーンのない戦争映画
多くの戦争映画が公開されている中で、この『ディア・ハンター』は、戦争シーンがほとんど描かれていない珍しい戦争映画である。映画のメインはドンパチではなく、閉じ込められた捕虜たちをストレスの発散にしているベトナム兵士の狂気と闘う捕虜と言う設定になっている。
狭い小屋の中で狂気と闘う勇敢なアメリカ兵士を描き、ベトナム戦争が、戦場以外でもいかに苦しく辛い戦いであったかを描いている。心理的や精神的に戦争の被害や苦しみを描いているので、敵の姿があまり見えずドンパチしているだけの映画の方が戦争映画初心者には向いているかもしれない。
劇中では、極度の緊張と狂気によって発狂する人も出現する。これまで戦争とは無縁の地で、普通の生活をしていた人間からしてみれば、言い表しようのない恐怖と狂気に、発狂してしまっても無理はない。
この映画の狂気は、戦争で起きたことのほんの一部だろう。実際には更に多くの拷問時間が割かれ、多くの被害者がいたに違いないが、ベトナム戦争の最高傑作ともいわれている今作を、現代の若者たちが見て、戦争について少しでも何かを感じ取ってくれたらと願ってしまう。
180分を超える超大作
映画の一般的な公開時間は90分から長くても120分ほどで、時間に直すと1時間半から2時間程度。しかし、『ディア・ハンター』は180分を超える、超大作として製作されている。
今まで公開されている映画の中でも、ダントツに長いこの作品は、「日常の変化」をテーマにもしている。劇中の最初に登場するアメリカペンシルベニア州ピッツバーグ郊外の町では、自然や町の風景、そこで働く普通の人たち、休日に楽しむ鹿狩りの様子などを描いている。
そして、壮行会を経て向かうベトナムでは、様子ががらりと変わり、生死を左右するまさに極限状態の戦場へとなる。そこからの逃走劇と、戦地から戻ってきた田舎町の変わらない風景のギャップが、より戦争の悲惨さを物語っている。
世界のどこかでは今でも戦争をしており、日本に住んでいるほとんどの人が戦争を体験せずに、平和に暮らしている。だが、ある日突然その平和は打ち砕かれ、自分の常識の全く通用しない世界へと放り込まれる。
誰しもが生きるのに必死で、辛くも生きて帰ったとして、そこで待っているのはもうこれまでの自分が知っている「日常の風景」ではなくなっている。180分かけて描かれたこの変化は、普段生活していると気付きにくい「日常」がどんなものかを思い出させてくれる。
世界的に有名なったロシアンルーレット
この映画のポスターにもなっている、拳銃を自らのこめかみに当てる仕草。これは、有名なロシアンルーレットの様子を表しているが、ロシアンルーレットが世界的に有名になったのは、この映画が発端と言われている。
戦争映画なのに、ポスターはなぜか拳銃自殺の様子を描いている。これは、ロシアンルーレットがこの映画の象徴ともなるゲームであることを物語っている。劇中、戦争シーンと言えば180分ある中でも30分程度しかないものの、ロシアンルーレットが観客に強く印象づいたのは、それだけ過酷な状況だったからに他ならない。
戦争を体験して、主人公マイケルは五体満足で戻って来られたが、友人の1人は足を失い、もう1人の友人はロシアンルーレットをやるギャンブラーにまで変化する。生死の瀬戸際が人間の様子をここまで変えてしまうのかと、感嘆せずにはいられない。
大砲も、戦車も、爆撃機もない戦争映画だが、戦争とは人の心の深い部分に大きな傷を作り、なかなか癒えず病気のようにずっと救うものだということを、改めて実感させられる。
映画『ディア・ハンター』の公開前に見ておきたい映画
グッド・シェパード
ロバート・デ・ニーロ監督作品の2作目である『グッド・シェパード』は、CIAの誕生秘話と諜報員として生きる男の葛藤を描いている。第2次世界大戦時を時代背景に、アメリカ東海岸でCIAの前身である戦略事務局OSSにスカウトされた男が、諜報員として国家の諜報活動に従事する。
1961年に実際に起きた、ピッグス湾事件をモデルにしており、CIAと亡命キューバ人部隊が革命政権への打倒へ進軍するストーリー。
主演をマッド・デイモンが務め、ヒロイン役にアンジェリーナ・ジョリーが抜擢された豪華俳優陣の映画でもあり、ロバート・デ・ニーロも監督・製作の傍らで劇中に出演している。
キリスト教徒の多いアメリカでは「グッド・シェパード」がどんな意味かすぐに分かるだろうが、日本語訳に直すと「良き羊飼い」と言う意味である。これは、マッド・デイモン演じる主人公エドワード・ウィルソンがCIA創設のために身を捧げたことに敬意を表したものだと評価されている。
世界最大の諜報機関となったCIAの前身でもあるOSSで活躍するエドワード・ウィルソンを、若かりし頃のマッド・デイモンがまさに体当たりで演じ切っている。ちなみに、アンジェリーナ・ジョリーの美しさとセクシーさは、当時も変わらず目が離せない。
詳細 グッド・シェパード
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
『ディア・ハンター』で、ベトナム戦争に従事し、精神障害を負いギャンブラーへと堕ちてしまった、ニックを演じたクリストファー・ウォーケンの代表作。
この作品で、クリストファー・ウォーケンは英国アカデミー賞の助演男優賞を受賞し、アカデミー賞助演男優賞にもノミネートしている。ちなみに、『ディア・ハンター』ではアカデミー賞助演男優賞を受賞している、アメリカを代表する俳優である。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』では、主人公のレオナルド・ディカプリオ演じるフランクの父親役として出演している。この映画は、レオナルド・ディカプリオが天才詐欺師のフランクを演じ、フランクを追うFBI捜査官をトム・ハンクスが担当している。
監督を映画界の巨匠・スティーブン・スピルバーグが務め、豪華俳優陣で構成されたこの映画は、日本アニメでも有名なルパン三世と銭形警部を見ているようで、日本人には馴染みやすい映画かもしれません。
主人公のフランク・W・アバグネイル・Jrは、実在した人物であり、映画は1960年代を舞台に描かれているので、歴史に興味のある人にも、この映画はぜひお勧めである。
天国の門
『ディア・ハンター』でアカデミー賞受賞と華々しい成績を残した、監督・マイケル・チミノの遺作。この映画も、映画評論家の中ではとても有名な作品として知られている。と言うのも、この映画は巨額の制作予算と製作期間がつぎ込まれたものの、興行的失敗で幕を閉じ、更に映画製作会社が倒産にまで追い込まれる事態となった作品である。
実は、この映画にも『ディア・ハンター』で主人公マイケルの友人役ニックを演じたクリストファー・ウォーケンが出演している。
映画は、『ディア・ハンター』よりも長い216分と超大作で、1890年代のアメリカワイオミング州を舞台にしている。内容は、東欧系移民の悲劇がテーマとなっており、移民農民皆殺しの計画を知った主人公とヒロインが、その悲劇を阻止するために奮闘する物語。
この映画は、アメリカでは酷評で、興行収入も10分の1程度、公開は1週間で打ち切りと散々なものだったが、ヨーロッパや日本では公開時から概ね良い評判であった。当初216分ではなく5時間を超える超大作だったが、216分に削られ、更に日本では149分の短縮版が上映された。
詳細 天国の門
映画『ディア・ハンター』の評判・口コミ・レビュー
「ディア・ハンター」
M.チミノ映画史上最も評価が高い本作は激動の60年代に起きたベト戦に狩り出された若者3人を軸に展開される鹿狩りハンターの物語。やはり戦場の狂気を象徴する“引金ゲーム”の場面は凄まじい…戦場現地を映す70年代とベト帰還兵の苦渋を映す80年代…ベト作品を扱った傑作の一つだ。 pic.twitter.com/Rdwy9JZsfl— Jeffrey (@jeafyanagida) 2018年12月11日
カメ止め、カランコエではなく
「ディア・ハンター 4K修復版」を
UPLINK吉祥寺スクリーン1にて鑑賞。40年前の若き心に刻まれたあのヒリヒリ感が
まざまざと甦り、全編を通してあの時代の焦燥も
スクリーンに見事に映し出されてたと思う。
ペンステートのとある鉄鋼の街のあの泥臭さよ。 pic.twitter.com/BmXUKSzEng— 純・MopJayJun (@MopJayJun) 2018年12月16日
#ディア・ハンター
改めて観る映画は気付かされる事が多い。戦争の狂気をもろにえぐり出した名作。三時間あっという間でした。 pic.twitter.com/1Py2Zjon67— ヨシオcinema (@yoshio78086262) 2018年12月14日
#ディア・ハンター @deerhunter4k 鑑賞。上映時間184分、大きく分けると3つの章から構成されている感じ。中でも戦地から戻ってきてからの場面が印象的。「戦争はこんなにも人間を変えてしまう」ということを違った視点で見せつけられた。この時のMeryl Streepがまだそれほど有名でなかったとは。。。
— 洋画ファン (@tokyocinemalog) 2018年12月15日
「ディア・ハンター」4Kリバイバル(東京は12/14~、大阪は1/4~)
アカデミー賞作品賞含む5部門受賞、あの高倉健さんのオールタイムベスト1でもある歴史的名作。
「見たことのない究極の男の友情」を描いた本作の劇場公開を絶対に見逃さないで欲しい。 pic.twitter.com/ux4GZPGO1R— masa@ (@masa09261014) 2018年12月15日
映画『ディア・ハンター』のまとめ
『ディア・ハンター』は、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存されている1本としても有名なほど、不朽の名作として知られている。静かなる戦争の悲惨さが、ポスターや劇中からひしひしと伝わり、人生観が変わるとさえ言われる程の映画である。また、内容はもちろんのこと、ロバート・デ・ニーロの若かりし頃だけでなく、当時デビューしたばかりのメリル・ストリープも、映画の見どころの1つとして挙げられる。
みんなの感想・レビュー
ロシアの血筋であるニックが、ロシアに主導される北ベトナムと戦わなくてはいけないという、また別サイドからベトナム戦争を題材にした面白いテーマだ。
ベトナム戦争という点ではあまりしっくりこなかったが、この作品で重要なのはベトナム戦争どうこうではなく、「普通の青年が戦争という非日常へ飛び込んだ時、いかにして彼らは変化するのかという問題だからだ」というパンフレットの言葉がとてもしっくりきている。ディアハンターの「一撃」、命の重みを知る映画だと思った。