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映画『Eggs 選ばれたい私たち』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

日本では中々触れられることのない、生命倫理の問題。そんな禁断のテーマに鋭く切り込んだ話題作がとうとうスクリーンに登場。出産はしないが母親になるという選択肢を選んだ女性達に注目。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』の作品情報

Eggs 選ばれたい私たち

タイトル
Eggs 選ばれたい私たち
原題
なし
製作年
2018年
日本公開日
2021年4月2日(金)
上映時間
70分
ジャンル
ヒューマンドラマ
監督
川崎僚
脚本
川崎僚
製作
不明
製作総指揮
不明
キャスト
寺坂光恵
川合空
三坂知絵子
新津ちせ
湯舟すぴか
みやべほの
見里瑞穂
斎藤結女
製作国
日本
配給
ブライトホース・フィルム

映画『Eggs 選ばれたい私たち』の作品概要

本作は、2018年に行われたタリン・ブラックナイツ映画祭で唯一、日本からコンペティション作品として選出された一本。ちなみに、その年の日本の招待上映作品は『万引き家族』。あらゆる賞を総なめにしたあの『万引き家族』と同様に、日本を代表して堂々と世界に進出した作品なのだ。監督を務めたのは川崎僚。川崎は、この作品に自身が実際に経験した出来事を入れ込んだという。この登場人物達と同様な経験をしたことがあるという人は、きっと多いはず。自身のライフプラン、セクシュアリティなどに悩んでいる人には、ぜひ見てもらいたい作品。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』の予告動画

映画『Eggs 選ばれたい私たち』の登場人物(キャスト)

純子(寺坂光恵)
誰とも結婚する気がない女性。卵子提供をすることを決意するが、タイムリミットである30歳を目前に控えていて…?
葵(川合空)
純子の従兄弟で、実は同性愛者だった。恋人に家を追い出されてしまい、純子と同居することになる。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』のあらすじ(ネタバレなし)

純子は、30歳を目前に控えた未婚の女性。彼女は生涯結婚する気はなく、一人の人生を謳歌していた。しかし、ある時、純子は大きな決心をする。それは、卵子提供をするというもの。卵子提供とは、子供に恵まれない夫婦に自身の卵子を提供するというシステム。ドナー登録会に赴いた純子だったが、そこで思いがけない再会を果たすことになる。それは、従兄弟の葵。その時初めて知ったのだったが、実は葵は同性愛者だった。恋人に家を追い出された葵は、なぜか純子の家に転がり込む。結婚をしないことを決めた女性と、同性愛者の女性。世間が期待する『一般的な女性像』とのギャップを抱え生きてきた二人は、卵子提供という重大な選択肢を前にして…?

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映画『Eggs 選ばれたい私たち』の感想・評価

母親になるという選択肢

戦時下の日本は、『産めや増やせや』の時代だった。戦争も遠い過去となってきた今、時代は変わった。しかし、未だに女性が子供を産むことを当然だと捉えている人もいる。近年、LGBTQ+のことを『生産性がない』と議員が言い捨て、問題となった騒動もあった。そういった人は、女性が子供を産まないという選択肢をとった場合も、生産性を説くのだろう。しかし、子供を持つか持たないかは、その家族の自由である。本作に登場する卵子提供では、自分自身が妊娠や出産はしないものの、自分の血を受け継いだ子供がこの世に誕生するということになる。育ての親ではないが、遺伝子上の母親になるのだ。これまでとは違う形の、『母親になる』という選択肢。もしかすると、今後の日本において、こういった事例は増えていくのかもしれない。

倫理的な問題

卵子提供などのテーマを語る際、どうしてもついて回るのが倫理的な問題である。親権の問題、成長した子供の心情など、様々な問題が懸念される。一般に生命倫理と呼ばれるそれらの問題には、明確な正解が存在しないため、中々議論に決着がつかないことも多い。勿論、不要な中絶は許されるべきではない。しかし、どうしても子供ができないカップルにとって、卵子提供という手段は救いになっていることも確か。本作では、卵子提供という行為をただただ持ち上げているわけではない。それを取り巻く人々の葛藤や、現実的な問題、そして、倫理的な問題まで深く掘り下げている。卵子提供の実際を知るには最適な一作。

30歳というライン

本作でキーとなってくるのが、この30歳という年齢。30歳とは、卵子提供を行える年齢の上限。この30歳という年齢、あなたはどう感じるだろうか。勿論、感じ方は人によってそれぞれではあるが、存外30歳というのはそれほど遠い年齢ではない。近年、女性の社会進出に伴い、晩婚化、初産時の年齢の上昇といった傾向が見られている。初産時の年齢が30歳を超えているといったケースは、決して少なくないのだ。つまり、それだけ女性が、もしかすると男性も、結婚、出産を意識する年齢が遅くなっているということなのだ。そんな中で、30歳までに自身が卵子提供を行い、どこか遠くにいる子供の遺伝子上の母親になる、という決断を下すことができるのだろうか。自分がこの主人公であればどのような選択をするのか、考えながら見てみよう。

映画『Eggs 選ばれたい私たち』の公開前に見ておきたい映画

映画『Eggs 選ばれたい私たち』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『Eggs 選ばれたい私たち』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

人生、ブラボー!

卵子提供というテーマを扱った最新作。卵子提供をすれば、育ての親は別の人物だが、遺伝子上では自分の子供ができることになる。全く同様の状況を描いた作品が本作。本作では、主人公が精子提供をした結果、なんと533人もの子供がいることが分かった、というとんでもない設定のもとストーリーが進んでいく。その内、142人から身元開示の裁判を起こされてしまった主人公。果たして彼はどうするのか。あまりにも衝撃的な設定は観客の興味を惹き、各映画祭で観客賞など様々な賞を受賞するという華々しい結果を呼んだ。シリアスな展開が続く最新作とは違い、コメディ調で描かれるため、軽い気持ちで楽しめる作品になっている。

詳細 人生、ブラボー!

チョコレートドーナツ

家族の形は様々である。最新作の主人公は、自分で子供を妊娠し出産することではなく、他人に卵子を提供し、遺伝子上の子供を持つことを選んだ。本作では、ゲイカップル、そして、身寄りを無くした少年との交流を描いている。ルディとポールのゲイカップルは、仲睦まじく暮らしていた。しかし、ある日、二人の隣の部屋に暮らしていたダウン症の少年マルコに危機が訪れる。母親がドラッグで捕まったため、施設に送られることとなったのだ。しかし、マルコは何度となく施設から脱走を図った。そんなマルコを見かねて、二人はマルコを引き取ることにする。しかし、3人を見る世間の目は、決して暖かいものばかりではなかった。ゲイのカップルが、育児放棄された子供を育てたという、実話を基にした感動のストーリー。血の繋がりはないが、確かに彼らは家族だった。

詳細 チョコレートドーナツ

TIME/タイム

最新作同様、定められたタイムリミットが物語をより盛り上げている作品。最新作では、希望している卵子提供が30歳までしかできないというリミットがある。そして、本作ではなんと、通貨が『時間』になった世界を描いている。遺伝子操作によって、富裕層は無限とも思える時間を手に入れた。しかし、貧困層は、その日一日を生きていくにも必死な、まさに、常にタイムリミットに迫られる生活を余儀なくされていたのだ。そのタイムリミットのせいで、最愛の母親を亡くした主人公。彼は、この不条理な世界への復讐を誓う。歌手としても大成功を収めている、ジャスティン・ティンバーレイクが主演を務めたことでも大きな話題となった。

詳細 TIME/タイム

映画『Eggs 選ばれたい私たち』の評判・口コミ・レビュー

映画『Eggs 選ばれたい私たち』のまとめ

男性は仕事に勤しみ、女性は家庭を守る。そんな考え方が、昔の日本にはあった。時代は変わりつつある。女性が仕事で重要な役職に就くケースも増え、家政夫といった言葉も誕生した。しかし、やはりまだそれらのイメージは、完全に払拭されたわけではない。女性が結婚をしない、子供を産まないという選択肢を持つことを理解していない人も、確かにいるのだ。そういった人達の中では、やはり女性に対して家庭的なイメージがあるのではないだろうか。『結婚しないの?』『子供は産まないの?』。そんな問いかけを誰かにしてしまったことはないだろうか。自分にとっては何気ないその言葉が、もしかすると誰かを傷つけているのかもしれない。

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