廃工場で発見されたオンボロ・ロボットが、アウトローな男たちの運命を変えていく。これまでもコンビを組んで数々の話題作を生み出してきた山田孝之と山下敦弘監督が、互いに愛読してきた伝説の漫画『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』を遂に映画化!
映画『ハード・コア』の作品情報
- タイトル
- ハード・コア
- 原題
- なし
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2018年11月23日(金)
- 上映時間
- 124分
- ジャンル
- コメディ
ファンタジー
ヒューマンドラマ - 監督
- 山下敦弘
- 脚本
- 向井康介
- 製作
- 二木大介
根岸洋之
山田孝之 - 製作総指揮
- なし
- キャスト
- 山田孝之
佐藤健
荒川良々
石橋けい
首くくり栲象
康すおん
藤原季節
松たか子 - 製作国
- 日本
- 配給
- KADOKAWA
映画『ハード・コア』の作品概要
カルト的な人気を誇る伝説のコミック『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』(作・狩撫麻礼 / 画・いましろたかし)を実写映画化した作品。世の中とうまく折り合っていけない男たちが謎のロボットと出会い、人生を一変させていく。テレビドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』や映画『山田孝之3D』(17)などの話題作を生み出してきた山田孝之と山下敦弘監督が再びタッグを組み、アウトローな男たちの人生活劇を完成させた。山田孝之の演じる主人公の親友役に荒川良々、弟役には佐藤健がキャスティングされている。
映画『ハード・コア』の予告動画
映画『ハード・コア』の登場人物(キャスト)
- 権藤右近(山田孝之)
- 不器用で純粋すぎるため、社会から孤立している。山奥で怪しげな活動家の埋蔵金探しを手伝い、細々と生きている。
- 牛山(荒川良々)
- 右近と同じ埋蔵金探しの現場で働いている。右近が唯一心を許している友人。
- 権藤左近(佐藤健)
- 右近の弟。一流商社で働いているエリートサラリーマン。
映画『ハード・コア』のあらすじ(ネタバレなし)
この社会で生きていくには、あまりに不器用で純粋すぎる男、権藤右近。右近は曲がったことが大嫌いで、自分の信念を決して曲げない。そのため、人の間違いを正そうとしてはトラブルを起こし、自分の居場所を失ってきた。
都会で生きるのが難しい右近は、怪しげな活動家に誘われて、群馬の山奥で埋蔵金探しの仕事を手伝い、日銭を稼ぐ。その現場で知り合った牛山は、とても心の優しい男で、右近も彼には心を許していた。そんな兄のことを、エリートサラリーマンの弟、左近は忸怩たる思いで見守っている。一方で、左近も腐った世の中で疲弊し、生きる希望を見失っていた。
そんなある日、右近たちは廃墟となった工場で謎のロボットを発見する。ロボットはとても古びていたが、驚くほど高性能な代物だった。右近はロボットを“ロボオ”と名付け、ただの機械ではなく友人として、自分たちの仲間に加えてやる。このロボオとの出会いが、右近たちの人生を一変させていくことになる。
映画『ハード・コア』の感想・評価
アウトローな男、権藤右近
本作の主人公である権藤右近は、純粋でまっすぐすぎる性格のため、現代社会に順応できない。右近が唯一心を許す友人の牛山も、不器用で優しすぎる性格が災いして、競争の激しい世の中で生きていくのが難しい。
予告編では、ハロウィンで浮かれる若者たちを見て「クソが」と悪態をつく右近の姿が確認できる。マスコミの報道だけを見ていると、日本中の人がハロウィンだ、クリスマスだと大騒ぎしているような印象を受けるが、そんなものに全く興味がない(むしろ苦々しく思っている)人種も一定数は存在する。そもそも日本で、なぜキリスト教の行事がここまでメジャーになっているのか、不思議に思ったことはないだろうか?アメリカ人が神輿を担いで浮かれていたら、違和感を感じると思うのだが…。そこは「楽しければいいじゃない!」ということなのだろうが、右近はそういう軽薄な輩が許せない。「日本人がハロウィンを祝うなんておかしいだろう!このクソが!」と、ついつい攻撃的になってしまう。そういう人間は、現代の日本では非常に生きにくい。ただ、弟の左近がそうであるように、右近のまっすぐな頑固さに憧れを抱く人も多い。原作コミックの愛読者だという山田孝之と山下敦弘監督も、きっとそうなのだろう。
カオスな作品を提供し続ける山田孝之と山下敦弘監督
2015年1月から12回に渡ってテレビ東京系で放送された深夜番組『山田孝之の東京都北区赤羽』は、抜群に面白い。山下監督の映画(架空)に出演した山田が、役に入り込みすぎておかしくなるという設定で、物語がスタートする。完全にスランプに陥った山田は、清野とおるのエッセイ漫画『東京都北区赤羽』に多大な影響を受け、「赤羽で自分探しをしたいので、その日々をドキュメンタリーとして撮影して欲しい」と言い出す。そして、山田は実際に赤羽で生活して、地元の人たち(このメンバーのキャラクターが濃い)と交流を深めていく。
これは“モキュメンタリー”と呼ばれる手法のドキュメンタリーに見せかけた作り物のドラマなのだが、山下監督の演出と山田の演技があまりにうまいため、視聴者はだんだん不安になってくる。「これっって、もしかして本当の話?嘘だよね?」と、思わず誰かに確認したくなるのだ。実際のところ、どこまでが本当でどこまでが嘘なのか、最後までよくわからない。視聴者は狐に包まれたような気分になりながら、カオスな世界を楽しむことになる。2017年1月から放送された『山田孝之のカンヌ映画祭』も山田孝之と山下監督がタッグを組んだ同じ手法の番組で、これまた大好評。山田と山下監督は、面白がるところの感覚が非常に近いのだろう。“面白い”という点に関して、このコンビの信用度は絶大だ。
濃いキャスト陣に期待
本作で気になるのが、個性的なキャストの顔ぶれ。主演の山田孝之は当然として、右近が唯一心を許す友人、牛山を演じる荒川良々と弟の左近を演じる佐藤健の存在も見逃せない。特に荒川良々は原作コミックのキャラクターにそっくりで、それだけでもちょっと笑える。
主要キャラクターの3人を盛り上げるのは、康すおん、藤原季節、首くくり栲象といった、名前からして一癖あるメンバーだ。康すおんは、山下敦弘監督作品の『もらとりあむタマ子』(13)で、タマ子の父を演じている。康は味わいのある自然な演技で、わがままな娘に翻弄される心優しい父の心情を表現していた。藤原季節は、札内幸太や地曵豪らと共に海外でも高い評価を得ている若手の実力派で、2018年10月13日公開予定の『止められるか、俺たちを』にも出演している。さらに、2018年3月31日に永眠したアクショニスト、首くくり栲象の存在にも注目したい。首くくり栲象は、“庭劇場”と名付けた自宅の庭で、何十年も首吊りパフォーマンスを披露してきた孤高の人。彼の凄まじい生き様は『首くくり栲象の庭』(16)というドキュメンタリー映画にもなっている。彼が本作でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、とにかく気になる。
映画『ハード・コア』の公開前に見ておきたい映画
リンダ リンダ リンダ
柴崎高校文化祭「ひいらぎ祭」の前日。軽音部に所属している山田響子(前田亜季)、立花恵(香椎由宇)、白河望(関根史織)は、ギターの今村萌(湯川潮音)、丸本凛子(三村恭代)と結成しているガールズバンドで、文化祭に参加する予定だった。ところが、萌が指を骨折したことが発端となって、気の強いキーボードの恵と凛子が対立してバンドは分裂。ドラムの響子とベースの望は文化祭への参加を諦めかけていたが、恵は凛子への意地もあり、韓国からの留学生ソン(ペ・ドゥナ)をボーカルにして、THE BLUE HEARTSのコピーバンドを結成。4人は、3日後のライブを目指して猛練習を開始する。
山下敦弘監督が2005年に発表した青春映画で、各方面から高い評価を得て、山下監督の出世作となった。『ハード・コア』の脚本を手がけている向井康介は、この作品や『松ヶ根乱射事件』(06)、『マイ・バック・ページ』(11)、『もらとりあむタマ子』(13)でも、山下敦弘監督とタッグを組んでいる。
すごい事件が起きるわけではないし、過剰な演出もないのだが、様々な感情を揺さぶられる。ペ・ドゥナの演じるソンが体育館のステージで「リンダ リンダ」を歌うクライマックスのシーンは胸熱。無我夢中で歌うソンの前で、大盛り上がりしている高校生たちの後ろ姿には、普遍的な青春の1ページが凝縮されている。
詳細 リンダ リンダ リンダ
苦役列車
1986年、東京。19歳の北町貫多(森山未來)は、小5の時に父親の性犯罪が原因で一家離散し、中学卒業後は日雇い労働をしながら、その日暮らしをしている。そんなある日、貫多は日雇いの現場で専門学校生の日下部正二(高良建吾)と知り合い、初めての友人を得る。日下部のおかけで、古本屋でバイトをしている女子大生の桜井康子(前田敦子)とも友達になることができ、貫多は舞い上がる。しかし、ロクデナシの貫多は、非常識な行動ばかりして、日下部や康子を疲れさせていく。
芥川賞を受賞した西村賢太の同名小説を、山下敦弘監督が映画化した作品。主人公、北町貫多のモデルは西村自身で、映画の出来には不満を述べているが、どこまでが本音なのかはわからない。原作小説の世界観を再現できているかは別として、映画『苦役列車』は、インパクトのある青春映画に仕上がっている。特に印象に残るのが、主演の森山未來の役作り。森山は、家賃を滞納しているくせに稼いだ日銭は酒と風俗に費やし、人の好意を無にしていく主人公のだらしなさと卑屈さを、見事な役作りで表現している。身も心もゲス野郎になりきった森山の演技を見るだけでも、一見の価値あり。
詳細 苦役列車
鴨川ホルモー
2年の浪人生活を経て京都大学に入学した安倍(山田孝之)は、帰国子女の高村(濱田岳)と共に、青竜会という謎のサークルに勧誘される。安倍はサークル活動に興味はなかったが、新歓コンパで一目惚れした早良京子(芦名星)目当てで、青竜会に入会。青竜会とは、“ホルモー”と呼ばれる謎の競技を行うサークルで、安倍たち新入生は、青竜会会長の菅原真(荒川良々)ら先輩の指導を受け、ホルモーに必要なオニ語や技を習得していく。そして、神聖なる吉田神社での儀式の日を迎え、安倍はついに自らが使役となって操るオニたちとの対面を果たすのだった…。
万城目学の同名青春ファンタジー小説を本木克英監督が実写映画化した青春ファンタジー・コメディ映画。主演の山田孝之もいいのだが、本作では謎多き青竜会会長の菅原を演じた荒川良々の怪演が光っている。それにしても、荒川良々の年齢不詳加減はすごい。若作りしているわけでもないのに、学ランを着ていても全く違和感がないし、年相応(荒川は現在44歳)のおっさん役もハマる。実に不思議な俳優だ。本作は、いい意味で最高にくだらない青春コメディになっており、屈託なく笑える。CGアニメーションで再現されたオニたちもキュート!
詳細 鴨川ホルモー
映画『ハード・コア』の評判・口コミ・レビュー
「ハード・コア」
ハードボイルドの皮を被った、社会のはぐれ者たちの孤独な魂。彼らが生きるしかない狭き世界から文字通り飛翔し突破した先にある、女や金といった千載一遇のチャンスとは別次元の幸せのカタチ。それはまるでどこでもドアを開けた先にあるドラえもんからのプレゼントのようだ。 pic.twitter.com/JWnrDCuatW— ミル兄さん (@GOvJTw81fobs2Ga) 2018年11月25日
『ハード・コア』
シュールな近未来リアリティファンタジー。最先端テクノロジー(ロボット)との関わり方について考えさせられる。社会的弱者やはみ出し者が、無知や純心によって理不尽に不幸に陥らない社会がロボットで実現されたらめっちゃいいね!https://t.co/XAWAWImw9e #ハード・コア #ハードコア pic.twitter.com/iQekQWEKmO— 岡田拓朗@映画とドラマのブルース (@takuro901) 2018年11月25日
映画「ハードコア」観てきました。原作&狩撫麻礼リスペクトが感じられましたわ。フツーに無茶苦茶面白い映画でした。 pic.twitter.com/5cI6oz5vPY
— ウォーA組 (@IMUGAOW) 2018年11月24日
”ハード・コア”山下敦弘監督によるカルト漫画の映画化は、漫画未読ながら、山田孝之・佐藤健・荒川良々にロボットの立ち姿のポースターに惹かれ鑑賞し、今に疑問を感じながら、自分の価値観と向き合い、懸命に生きる不器用な男達と、ロボットの思いに感銘。くだらなくも、素敵な作品です。 pic.twitter.com/qpeqeE3KE0
— 常山の住職 (@CinemaCLAIRfan) 2018年11月24日
「ハード・コア」凄い。あまりに自由で荒唐無稽。山田孝之、佐藤健という人気俳優を起用しているのにかかわらず、ここまで商業性を無視した作品を作りあげた山下監督に拍手。もちろん漫画的なディティールは多々あるが、どこか現実と隣り合わせの不穏な距離感が絶妙に配分。これは原作を読まなくては。
— 高過晋作 (@nara4039) 2018年11月23日
映画『ハード・コア』のまとめ
原作の『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』は、1991年から1993年にかけて青年漫画雑誌「グランドチャンピオン」に連載されていたかなり昔の漫画だ。一部のファンにはカルト的な人気があるとはいえ、漫画そのものの知名度は低い。しかし、山田孝之と山下敦弘監督は、この漫画の映画化を熱望し、そして実現した。20年近く前から原作漫画を愛読してきた山下監督は、「原作への想いというか意地というか、とにかく全てが詰まっている作品」と語っている。主演に加えて、プロデューサーも兼任している山田孝之も同じ気持ちなのだろう。そこまで言われたら、この作品の中に詰まっているという“何か”を確認したくなる。時代に取り残されたアウトローたちと謎のロボット“ロボオ”が繰り広げる人生活劇とやらを、ぜひ劇場で見届けたい。
みんなの感想・レビュー