一度も人を撃ったことがない凄腕サイレントキラー、という、聞いても想像ができないようなキャラクター設定が話題を呼んでいる本作。大御所俳優達が描き出す、笑って泣けるハードボイルド映画!?
映画『一度も撃ってません』の作品情報
- タイトル
- 一度も撃ってません
- 原題
- なし
- 製作年
- 2020年
- 日本公開日
- 2020年7月3日(金)
- 上映時間
- 100分
- ジャンル
- サスペンス
コメディ - 監督
- 阪本順治
- 脚本
- 丸山昇一
- 製作
- 榎望
菅野和佳奈 - 製作総指揮
- 木下直哉
- キャスト
- 石橋蓮司
大楠道代
岸部一徳
桃井かおり
佐藤浩市
豊川悦司
江口洋介
妻夫木聡 - 製作国
- 日本
- 配給
- キノフィルムズ
映画『一度も撃ってません』の作品概要
トレンチコートに身を包み、タバコを片手にブラックハットを被る殺し屋、市川。なんともハードボイルドな姿だが、実は究極のハードボイルド小説を書き上げるために殺しの依頼を受けて他人に回していたという衝撃的な設定である本作。『大鹿村騒動記』などで知られる阪本順治監督の元に集った大御所達俳優。見渡す限り有名俳優ばかりで、よくこれだけの豪華メンバーを揃えられたと驚くばかり。元々決まっていたメンバーに加え、自ら出演したいと声を上げた俳優もいたほどの脚本。一堂に会した実力派俳優による全力の芝居合戦を楽しもう。
映画『一度も撃ってません』の予告動画
映画『一度も撃ってません』の登場人物(キャスト)
- 市川進 / 御前零児(石橋蓮司)
- 裏社会では知らぬ者はいないほどに有名なサイレントキラー。しかし、実際にはただ情報を提供していただけで、一度も人を撃ったことがない。
- 石田和行(岸部一徳)
- 市川の兼ねてよりの友人。これまで市川に依頼を持ちかけていたが、ある時中国系マフィアに命を狙われてしまう。
- 今西友也(妻夫木聡)
- 市川が受けた依頼を引き受けている本物の殺し屋。看護師をしている恋人がいる。
映画『一度も撃ってません』のあらすじ(ネタバレなし)
市川進は悩んでいた。彼は長年作家として活動していたのだが、既に彼の作風は時代遅れとされ、原稿が全く売れなかったのだ。一見、うだつの上がらないダメ男に見える彼だが、実は彼にはもう一つの顔があった。何と、彼は裏社会では知らぬ者はいない、伝説のサイレントキラーだったのだ。しかし、彼は一風変わった殺し屋だった。実は、これまで彼は一度も人を撃ったことがなかったのである。サイレントキラーと言っても、彼はこれまで旧友の石田からの依頼でターゲットの行動を調べ上げていただけなのだ。しかし、そんな石田が中国系のヒットマンに命を狙われてしまう。そして、その毒牙が市川にも向いてしまったのだ。これまで一度も人を撃ったことがないサイレントキラーは、果たしてどう立ち向かうのか。
映画『一度も撃ってません』の感想・評価
コメディとハードボイルドのバランス
超一流である殺し屋でありながら、その正体は謎に包まれている。そんな彼が命の危険に晒される、というストーリーだけ聞いていればなんともハードボイルドな作風である本作。しかし、本作はただのハードボイルド作品というわけではなく、コメディ要素も十分に含まれている。勿論、純粋なハードボイルド作品の中でも『ジョーカー・ゲーム』や『孤狼の血』など成功しているものは数多く存在する。しかし、そういった作品はあまり若い世代には好まれないことも多く、見る世代を選ぶというのも事実。そういった意味で、本作は幅広い世代から受け入れられ易い作品に仕上がっているといえる。しかし、コメディ要素が強すぎるとハードボイルド好きから批判を買う。コメディとハードボイルド、二つの要素をバランスよく取り入れることに成功した作品である。
圧倒的なキャスト陣
まず、本作の出演陣一覧を注目してもらいたい。『ドクターX 外科医・大門未知子』の岸部一徳や、SK-ⅡのCMでも知られる桃井かおり、『アウトレイジ』や『キングダム』など、数多くの話題作に出演し続ける石橋蓮司などの名前が連なっている。本来、全員が各映画で主役を張れるほどの豪華キャストであり、まさに現代の日本映画を支えているといっても過言ではないほどの実力者ばかり。そんな豪華キャストばかりがこぞって出演しているのだから、映画としての期待値も自然と上がるというもの。ベテラン達だからこそ出せるハードボイルド感、また、ベテラン達が全力でふざけると一体どうなるのか。なんとも贅沢な一本、感謝の気持ちと共に楽しもう。
石橋蓮司主演作品
石橋蓮司という俳優を知っているだろうか。インターネットで画像検索をすれば、必ずどこかで見たことがある日本を代表する名優である。彼は1954年に俳優としての活動を開始し、現在78歳という高齢でありながら未だ第一線で活躍する大御所中の大御所。そんな彼が映画で主演を務めるのは、実は18年ぶりとなる。これは助演としての出演が多いためであるが、その助演としては日本アカデミー賞で、何度も優秀助演賞、最優秀助演賞を獲得してきたほどの実力者。しかし、主演として獲得した賞は未だない。果たして、本作で彼は主演男優賞も獲得し、まさに行くところ無敵の俳優となれるのだろうか。
映画『一度も撃ってません』の公開前に見ておきたい映画
劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ
ハードボイルドとコメディのバランスが非常によく取れている作品と聞いて、『シティーハンター』シリーズを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。元々は1985年より連載が開始された、昭和を代表する大人気コミックであった本シリーズ。そんな本シリーズが、約20年ぶりに新作アニメーションを作成することが大きな話題となった。それが本作。そして、それだけ期間が空いたにも関わらず、オリジナルキャストがこぞって大集結しているという、当時のファン大歓喜の仕上がりで好評を博した名作。今回冴羽と香が構える事務所に転がり込んできた依頼は、人気モデルである進藤亜衣のボディーガード。一方で、新宿には各地から精鋭の傭兵達が結集していた。そして、なぜか彼らは亜衣を狙っており…?
鍵泥棒のメソッド
最新作の主人公、市川は、裏社会では知らぬ者はいないほどの凄腕サイレントキラー。しかし、実際は一度も人を撃ったことがないという、ただの情報屋のような存在である。凄腕という風評ばかりが一人歩きをして、実際の能力はそれほどでもないという殺し屋。そういった点で共通しているのが本作である。本作に登場する殺し屋山崎は、実力もピカイチの凄腕の殺し屋だった。しかし、そんな彼が銭湯で足を滑らせ頭を打ちつけ、記憶喪失になってしまう。そんな彼に成りすましたのが、うだつの上がらない毎日に嫌気が差していた三文役者桜井。しかし、これまで一般人だった彼が殺しなどできるはずもなく…?かくして、名前ばかりは一流だが、実力は全く伴っていない、へっぽこ殺し屋が誕生したのであった。
詳細 鍵泥棒のメソッド
ザ・ファブル
殺し屋、それは文字通り、人を殺して金銭を得る裏の職業のこと。しかし、人を殺すことができない殺し屋というのも存在する。最新作の主人公もそうであるし、本作の主人公、ファブルは裏社会では最早伝説として扱われるほどの実力を持つ殺し屋だった。しかし、ある日彼は自身の上司から、殺し屋を1年間休業し、一般人として生活するように命じられてしまう。当然、その間人を撃つようなことはご法度。万が一規則を破った場合には、今度は上司がファブルを殺すという。かくして殺し屋から一時足を洗い、一般社会に溶け込んだファブルだったが、そんな彼の元には次から次へとトラブルが舞い込んできて…?果たして、人を撃てない殺し屋、ファブルはなんとか平穏な日々を生き抜くことができるのか。
詳細 ザ・ファブル
映画『一度も撃ってません』の評判・口コミ・レビュー
一足お先に『一度も撃ってません』。原田芳雄繋がりで集まった超がつく豪華キャストが、ベテラン丸山昇一の脚本と阪元順治の演出による人を食った世界で楽しげに右往左往。このご時世なかなかお目にかかれない手練れ尽くしの娯楽作として堪能しました。佐藤浩市・寛一郎の親子共演も微笑ましかったな。 pic.twitter.com/46x4IpSkbb
— 花俟良王(良い王様改め) (@goodkingsama) June 29, 2020
『#一度も撃ってません』鑑賞
阪本順治の映画ってリアルじゃないのに何故かしっくりくる。ハードボイルドが時代遅れどころか、その存在すら忘れ去られようとしている令和の世の中でハードボイルドを演じ続けるロートル達の可笑しさと愛おしさ。敬意を持ってズレを楽しむような独特の安心感に満ちた佳作 pic.twitter.com/pnLDog9lxa— 淳之介 (@pop_junnosuke) July 4, 2020
阪本順治『一度も撃ってません』TOHOシネマズ。なんという軽妙洒脱な七十を越えたオッさんたちのハードボイルド。石橋蓮司、岸部一徳、大楠道代、桃井かおりの悪のり気味のやりとりを一つのフレームに収められるのは、阪本順治しかいないだろう。とにかく蓮司、一徳が現れるバーカウンターから痺れる! pic.twitter.com/ixy0tKbrkZ
— 田旗 浩一 (@tsukimoto_natsu) July 5, 2020
一度も撃ってません
大大大大大傑作。The邦画であり、喜劇のハードボイルド。石橋蓮司さんと豪華脇役陣の演技合戦祭りに集中しすぎて自分の存在を忘れてしまった。僕の観たかった邦画そのもの。佐藤浩市さんや妻夫木聡さんや柄本佑さん、トヨエツなど、凄いいい味しまくった役たちが集結。
続く↓ pic.twitter.com/TWAypqbaTk— 凡脳 (@atunes_re) July 4, 2020
映画『一度も撃ってません』のまとめ
伝説のサイレントキラーが活躍する映画。ハードボイルドな雰囲気を察して本作を見ようとしている方は少し待って欲しい。実は本作のサイレントキラーは一度も人を撃ったことがなく、あくまでもハードボイルドを気取っている売れない小説家なのだ。間違って一流の評価を受けてしまっているなんちゃってヒットマンが悪銭する苦闘する作品。思い描いていた作品とは違ったかもしれない。しかし、出演しているキャスト陣のあまりの豪華さ、練り込まれた脚本、ハードボイルドのコメディのバランスの良さなど、一映画としての完成度はあまりに高い。普段見ているハードボイルド作品とは少し異なると理解した上で、是非楽しんでもらいたい一本である。
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