2016年、アメリカで上映された盲目の女性と、その女性を支える献身的な夫を描いた映画。ヒューマンドラマのような内容かと思えば、これは女性の瞳を巡ったサスペンス映画である。光のない世界で生きてきた主人公ジーナが、片目だけだが光を取り戻したとき、彼女の世界はこれまでと一変する。
映画『かごの中の瞳』の作品情報
- タイトル
- かごの中の瞳
- 原題
- All I See Is You
- 製作年
- 2016年
- 日本公開日
- 2018年9月28日(金)
- 上映時間
- 109分
- ジャンル
- サスペンス
- 監督
- マーク・フォースター
- 脚本
- ショーン・コンウェイ
マーク・フォースター - 製作
- マーク・フォースター
クレイグ・ボームガーデン
ジリアン・クーグラー - 製作総指揮
- レネー・ウルフ
ロン・パールマン
ブライアン・ウィルキンス - キャスト
- ブレイク・ライブリー
ジェイソン・クラーク
アナ・オライリー
イボンヌ・ストラホフスキー
ウェス・チャサム
ダニー・ヒューストン - 製作国
- アメリカ
- 配給
- キノフィルムズ
映画『かごの中の瞳』の作品概要
2008年公開『007 慰めの報酬』、2013年公開『ワールド・ウォーZ』など、映画好きなら名前くらいは知っているだろう名作の数々を手掛けた名監督、マーク・フォースターが、2016年サスペンススリラー映画『かごの中の瞳』の監督・製作・脚本を手掛ける。盲目の女性が手術によって片目だけ光を取り戻したものの、冴えない夫に失望し、自由な世界へ羽ばたいていくストーリー。だが、その中で女性に忍び寄る不穏な影。『ゴシップガール』などで人気を博した女優ブレイク・ライブリーが、視力を取り戻し美しく変身していく女性を演じる。
映画『かごの中の瞳』の予告動画
映画『かごの中の瞳』の登場人物(キャスト)
- ジーナ(ブレイク・ライブリー)
- ジェームズの妻で、幼いころの事故により両目の視力を失っている。手術により、片目だけ視力の回復に成功した。
- ジェームズ(ジェイソン・クラーク)
- ジーナの夫。献身的に妻を支え、介助する絵に描いたような理想の夫。
映画『かごの中の瞳』のあらすじ(ネタバレなし)
ジーナは目が見えなかった。幼いころの事故により、両目の視力を失っていた。しかしジーナには、自分を献身的に支えてくれるジェームズという素晴らしい夫がおり、2人は幸福な毎日を過ごしている。
2人は子供を持つことを考え、ジーナの視力回復のため角膜移植手術に挑む。手術は成功し、ジーナは片目だけだが光を取り戻した。しかし、そこで予期せぬ事態が2人を見舞う。ジーナは自分の夫の顔を初めて目にしたとき、思わずにはいられなかった。自分の夫が理想としていた人物と違って、どこにでもいそうな中年の地味なおじさんだったと。
片目の生活に慣れ、それまでジーナが押し殺してきた自分自身のやりたかったことがあふれ出る。ジーナの生活は一変した。夫が一緒でなくても旅行ができ、服が着られ、食べ物が食べられる。しかし、そうして羽ばたいていくジーナを見ていると、ジェームズは狂おしい程の嫉妬に駆られていくのだった。
映画『かごの中の瞳』の感想・評価
感動のヒューマンドラマ化と思いきや、ストーリーに潜む謎
この映画の紹介は、どこを見てもサスペンススリラー映画となっている。盲目の女性が光を取り戻した話は、それだけ見れば夫と障害を乗り越えた感動のヒューマンドラマだろう。しかし、それだけで終わらないのがこの映画の見どころの1つである。
これまで、自分を頼って生きてきたジーナが、手術をして光を取り戻した途端自分から離れていく。夫ジェームズからしたら、とてつもない喪失感を伴うだろう。視力の回復は喜ばしく、実際にジェームズも嬉しいはず。だが、心の底から喜べないのは、これまで何をするにでも妻と夫がセットだったから。
自由を手にした若き女性を、とどめておく術は難しい。これまで抑圧されてきた自分の正直な気持ちをジーナは全面に押し出し、やりたいことをやっていく。光の中で生きるジーナの陰で、ジェームズは何を思っているだろう。ジーナに忍び寄る不穏なものの正体は、果たして嫉妬に狂う夫の姿だけなのか。
自由を手にした女性
抑圧されてきた欲望が、何かの拍子ではじけ飛び収拾のつかない事態になることはままあることだろう。ジーナの場合は、幼いころの事故で両目の視力を失って、それまで思い描いていた自分の人生から随分とかけ離れてしまったのではなかろうか。
たった1人で生きていくことはできず、常に誰かの手助けが必要な生活。それが愛する人だったとしても、時には重くのしかかることもあっただろう。それが、角膜移植という現代だからこその技術を駆使して片目だけでも視力を取り戻すことができたなら、彼女を止めるのはもう不可能に近い。
これまで甲斐甲斐しく妻を介助してきた夫への感謝の気持ちは忘れてはならないが、普通の女性のようにショッピングを楽しんだり、映画を観たり、スポーツをしたり、旅行に行って絶景を見たり、やりたいことは尽きることがない。大半の健常者は、そんな些細なことにわざわざ感動を覚えない。しかし、ジーナだからこそ感じ取る感動が、スクリーンからあふれ出してきそうだ。
ジーナを襲うのは、愛なのか嫉妬なのか
子供が成人して自分の手から離れるとき、親は嬉しく思う反面寂しく思い、いつまでもかわいいかわいい子供のままでいて欲しいと思ってしまう。ジェームズが感じているのも、確かに妻への愛なのだろうが、「誰かに必要とされている感覚」を覚えてしまい、その喜びを周囲に語っていたのも事実。
ジェームズからしたら、ジーナは片目が見えるようになっただけでこれまでとは何も変わらない。だがジーナからしたら、夫の顔は初めて見るし、今まで住んでいた家の家具も初めて見るものばかり。それどころか、住んでいる町並みでさえジーナは知らなかった。何もかもが新鮮で、初めて外へ出た子犬のようにふるまうジーナ。きっと嬉しいだろう、世界はこんなにも光であふれているのだと分かったのだから。
ジェームズはジーナに、雛鳥の巣立ちを見守る親鳥のような気持ちを持ってしまったのかもしれない。だからこそ、もっと手元に置いておきたい。もっと自分を見て、自分だけを必要としていて欲しいと感じてしまうのかもしれない。自由を求めるジーナを引き留めたい。そんな純粋すぎるジェームズの嫉妬心が、ジーナとの関係に亀裂を生んでしまう。
映画『かごの中の瞳』の公開前に見ておきたい映画
007 慰めの報酬
マーク・フォースター監督作品、007シリーズの第22作品目。前作、『007 カジノ・ロワイヤル』からの続編を手掛け、前作の直後からストーリーは始まる。凄腕のエージェントであるはずなのに、MI6からは理解されず組織の中では浮いてしまっている。
孤独ながらもボンドは、敵対している「ミスター・ホワイト」とその裏にいる組織を追い、カーチェイスを繰り広げ、死闘を繰り広げ、MI6からの裏切りに遭いながらも真実を追い求めていく。前作同様、フォード、アストンマーチン、レンジローバー、アルファロメオなどの高級車も登場し、車好きにもたまらない仕上がりとなっている。更に、今作ではボンドグッズの登場は少なめで、現代的で諜報員らしい多機能型電話機などが登場している。
ストーリーとしては、前作『007 カジノ・ロワイヤル』からの続きなので、そちらも観た方が話しはスムーズかもしれない。だが、ひとまずマーク・フォースター監督作品に絞って鑑賞して欲しいので、そちらは007ファンにお任せするとしたい。
詳細 007 慰めの報酬
プーと大人になった僕
2018年9月14日(金)、アラン・アレクサンダー・ミルン作『クマのプーさん』と、ウォルト・ディズニー・カンパニーの『くまのプーさん』原作で送る、世界で最も有名なくまの物語。
日本でも数多くの人たちがディズニーのファンとなっており、くまのプーさんの人気ぶりも留まるところを知らない。誰からも愛されているおっちょこちょいでおとぼけで、はちみつが大好きな黄色いくま、プーさん。100エーカーの森で仲間の動物たちと暮らしながら、少年クリストファー・ロビンと楽しく過ごす日々。
しかし、いつしか少年は大人になっていく。クリストファー・ロビンは田舎から都会へと移り、人間の学友と勉強に励み、第1次世界大戦によって世界は激変し、クリストファー・ロビンの心からプーさんたちの存在はなくなっていってしまう。大人になったクリストファー・ロビンとプーさんの再会は、クリストファーの心にどのような変化をもたらすだろう。2018年大注目の話題作の監督を、ドイツを代表する名監督マーク・フォースターが務める。
詳細 プーと大人になった僕
ロスト・バケーション
テレビシリーズ『ゴシップガール』で人気の女優、ブレイク・ライブリーが主演を務める、人食いサメとのサバイバルアクション映画。主人公ナンシー(ブレイク・ライブリー)とサメの身が登場する異色の映画だが、その内容もまた過激だ。
海を愛するサーファーのナンシー。普段務めている医師の白衣を脱ぎ捨て、休暇にビーチへと赴くと、大好きなサーフィンを楽しむ。ところが、海中で足を負傷し近くの岩場へ避難したナンシーが目にしたのは、海の上に飛び出る三角のヒレ。岩の周りを優雅に泳いでいる獰猛で危険なサメを目の当たりにし、ナンシーは自身の置かれた状況を悟る。
目と鼻の先には岸がある。しかし、そこへ辿り着くまでに越えねばならない壁は、とてつもなく高い。徐々に潮が満ち、海面が上昇するとナンシーのいる岩場は足場をなくしていく。極限の100分間、恐怖と戦うナンシーを熱演するブレイク・ライブリーをぜひ見逃さないで欲しい。
詳細 ロスト・バケーション
映画『かごの中の瞳』の評判・口コミ・レビュー
『かごの中の瞳』見ました。ん〜おしい!視力を失って長らく見えない人生を送っていた女性が手術で視力を取り戻して様々な変化が起こる話。冴えないわりに所有欲・支配欲は立派な夫によって引き起こされるあれこれがドラマチック故にノイジーだけどなきにしもあらず。むしろ神秘的な映像が気になる…
— ボンババボン☆オカワリ (@0kawary) 2018年9月29日
驚いた。『かごの中の瞳』、たいへんな傑作だと思いました。妻が視力を失っているという物語の大前提と、それを踏まえた映像表現が形式上の主眼となるけど、『夫婦」という人間関係の本質に驚くほど大胆に踏み込んでいて、すっかりのめり込みました。
— 南波克行 (@nanbaincidents) 2018年9月29日
『かごの中の瞳』。人間関係の支配と依存を描いた物語。艶笑小話の雰囲気もあり、わかるわーと思いつつ見る。とにかく撮影がよくて、画的にもキマったショットが連発される。美しいショットがたくさん見れて満足。旦那さんの小物感もよかったな
— 伊藤聡 (@campintheair) 2018年9月29日
ギリギリ間に合って『かごの中の瞳』見ました!サスペンス色が強くなるのは後半結構過ぎてから。でも結局は…?うーん、私は彼女の方が良くないと思うんだけどな…。とりあえずジェイソン・クラーク見たさで行ったので良かったです!
— きなこ みちる (@michiru_kinako) 2018年9月29日
anan「稲垣吾郎シネマナビ」紹介『かごの中の瞳』鑑賞
妻が視力を取り戻した時から逆転する夫婦の関係。バンコクとバルセロナが背景のコントラスト。何と言ってもB・ライヴリーが本当に魅力的。ライヴリーが歌うシーンがあるのだけど歌声も凄く素敵!ERで流れる歌も良いので最後まで席を立たないでね😊 pic.twitter.com/CrUUZklDE7— kumiko (@keito56) 2018年9月29日
映画『かごの中の瞳』のまとめ
予告編で流れる、光を取り戻したブレイク・ライブリーの表情は美しく、その涙も輝いて見え、彼女の自然な演技に感服する。また、ジーナを見つめるジェームズの瞳の何と優しげなことだろう。『All I See Is You』とはジェームズの言葉だろうか、それとも、目が見えるようになったばかりに大切なものを見落としてしまったジーナの本心だろうか。目に見えるものが全てではないとよく言われるが、人の愛とは見えないからこそ大切にしなければならないと考えさせられる。
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