鹿野靖明は筋ジストロフィーという病に罹っていた。鹿野が動かせるのは手と首だけで、心臓も弱っていた。医者に入院を勧められるが、鹿野は大人しく聞くような男ではなかった。自分でボランティアを探し、自由気ままな生活を始めた。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の作品情報
- タイトル
- こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話
- 原題
- なし
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2018年12月28日(金)
- 上映時間
- 不明
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- 前田哲
- 脚本
- 橋本裕志
- 製作
- 大角正
今村司 - 製作総指揮
- 吉田繁暁
伊藤響 - キャスト
- 大泉洋
高畑充希
三浦春馬
萩原聖人
渡辺真起子
宇野祥平
韓英恵
竜雷太 - 製作国
- 日本
- 配給
- 松竹
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の作品概要
渡辺一史原作のノンフィクション本、『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』を元に作られた作品。主人公で筋ジストロフィーを患っている鹿野靖明を演じたのは、北海道テレビのバラエティ番組『水曜どうでしょう』で一躍有名になった大泉洋。大泉は鹿野を演じるに当たり、本人に容姿を似せるために最大で10キロの減量を行っている。高畑充希と三浦春馬が、鹿野を支えるボランティア役で出演している。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の予告動画
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の登場人物(キャスト)
- 鹿野靖明(大泉洋)
- 34歳。幼い頃に筋ジストロフィーと診断される。医師から入院を勧められるが、それを無視してボランティアと共に生活を送る。惚れっぽく、我儘で、ずうずうしいところもあり、よくしゃべる性格。
- 安堂美咲(高畑充希)
- 新人ボランティアとして鹿野のサポートをすることになる。我儘な鹿野に腹を立てる。勝ち気な性格。
- 田中久(三浦春馬)
- 安堂の恋人。医大生のボランティア。鹿野のサポートをしている。鹿野を懸命に支えようとする真面目な性格。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』のあらすじ(ネタバレなし)
鹿野靖明は筋ジストロフィーという病に罹っていた。そのため、鹿野が動かせるのは、首と手だけだった。ある日、病院を受診したとき、心臓の力がだいぶ弱っているため、明日にでも入院する必要があると診断される。
鹿野はただ静かに余命を待つ日々を送る男ではなかった。病院に入院するのを止め、自分で集めたボランティアと共に生活を始めた。鹿野は惚れっぽく、我儘で、ずうずうしいところもあり、よくしゃべる男だった。医大生のボランティアである田中と新人ボランティアの安堂美咲は、そんな鹿野によく振り回されていた。
田中は懸命に鹿野を支えようとするが、安堂は周りを振り回す鹿野にウンザリしていた。田中と安堂は付き合っていたが、鹿野のことを巡って喧嘩することもあった。そんな中、鹿野の命は尽きようとしていた。鹿野は自分の我儘を、毎回命懸けでこなしていた。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の感想・評価
筋ジストロフィーについて
主人公が罹っている筋ジストロフィーという病は、筋肉が壊れやすく再生されにくいという特徴を持っている。この病は遺伝性の疾患である。遺伝子に変異が生じ、たんぱく質の機能異常などが起こる。そして、筋力の低下が起き、体が自由に動かせなくなる。また、それだけではなく、呼吸不全や心不全などにより死に至ることもある。
筋ジストロフィーは難病に指定されている病である。この病に根本的な治療方法は存在していない。現在も完治するための研究が行われている状態である。リハビリによって車椅子での移動が可能になったり、呼吸療法によって肺を柔らかく保つ訓練をしたりという治療が行われているが、抜本的な解決には至っていない。咀嚼・嚥下能力が低下することもあるため、栄養が摂取できなかったり、誤嚥が生じたりと、毎日の生活でも困難が生じている。
渡辺一史原作のノンフィクション本を元に作られた作品
本作品は渡辺一史原作の著書『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』を元に作られている。この本は鹿野をサポートしたボランティア達が綴った記録を元に書かれている、ノンフィクション作品である。「第35回大宅壮一ノンフィクション賞」と「第25回講談社ノンフィクション賞」を受賞しており、介護現場の壮絶な戦いがそのまま描かれている。
鹿野は札幌に暮らしていたため、映画も北海道で全て撮影が行われている。鹿野を演じた大泉洋は10キロの減量を行い、鹿野本人の容姿に似せている。「鹿野靖明」という人物を描くために、細かなところまで配慮された作品である。本ではなく映像作品だからこそ伝わる、鹿野の小憎たらしさと日々を懸命に生きている様子を体感して欲しい。
鹿野靖明と彼を支えたボランティア
病を患っている人とボランティアの関係を描くと、どうしても辛い場面や大変な場面の描写が多く、重苦しい雰囲気になりがちである。この作品は怒りや感動や楽しさなど、色んな感情が揺さぶられる映画になっている。
主人公である鹿野靖明は24時間の介護を必要としながらも、傍若無人な態度を崩さない男である。夜更けにバナナが食べたいと突然言い出し、ボランティア達はバナナを求め街を奔走することになる。新人ボランティアの安堂美咲が、「障害者だったら何を言ってもいいのか」と言う場面がある。そんな言葉を言いたくなるぐらい、鹿野の態度は腹が立つものである。見ている人も最初は安堂の気持ちに共感する人が多いと思う。しかし、鹿野はいつ尽きるとも分からない命で、1日1日をとても大切に生きている。そのことが分かったとき、安堂や見ている人の気持ちに少しずつ変化が起きる。ただ、介護という過酷な現場を描いているだけではなく、映画を通して「生きる」ことに真剣に向き合うことができる作品である。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の公開前に見ておきたい映画
駆込み女と駆出し男
大泉洋の代表作。「第39回日本アカデミー賞・優秀主演男優賞」と「第58回ブルーリボン賞・主演男優賞」を受賞している。井上ひさし原作の小説『東慶寺花だより』を元に作られた作品。江戸時代の神奈川県鎌倉市の東慶寺が物語の舞台になっており、離縁を求める女性達の姿が描かれている。
江戸時代、離婚を望む女達が駆け込む寺があった。この時代、夫から妻に離縁を申し込むことができても、妻から夫に離縁を申し込むことはできなかった。女達は救いを求め、幕府公認の駆け込み寺・東慶寺に逃げ込んだ。寺で2年過ごすことができれば、離婚が成立した。駆出しの医者である信次郎は、ひょんなことから女達の人生再出発のお手伝いをすることになる。
詳細 駆込み女と駆出し男
ブタがいた教室
前田哲監督の代表作。黒田恭史が執筆した『豚のPちゃんと32人の小学生 命の授業900日』を元に作られた作品。「自分達で育てた豚を食べる」という授業が実際に大阪の小学校で取り入れられたことがあり、原作の本はこの授業を元に執筆されている。主題歌はトータス松本の『花のように 星のように』。
新人教師の星は小学校6年2組の担任を担当することになった。星は「食べ物の大切さ」「生き物を食べる意味」を子供達に教えるため、クラスで豚を飼い食べることにした。世話をする期間は1年。子供達は喜んで豚の世話をした。しかし、1年経った後、豚を食べるか食べないかで子供達の間で意見が分かれる。子供達は自分が感じたことや思ったことを述べ、真剣に話し合った。
詳細 ブタがいた教室
ひるね姫 知らないワタシの物語
高畑充希が主人公の森川ココネの声を担当している。神山健治が監督・脚本・原作を務めた作品。神山はSFアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズの監督・シリーズ構成などを担当したことで有名な人物である。本作品は「第41回日本アカデミー賞・優秀アニメーション作品賞」を受賞しており、スペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭やフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭でも上映されている。
高校生の森川ココネは、自動車の改造ばかりしている不愛想な父と2人暮らしをしていた。ココネは最近1日中眠気が取れず、授業中でも居眠りをしてしまっていた。毎日同じ、何だか温かい不思議な夢を見ていた。実はその夢は、ココネも知らない家族の秘密に繋がっていた。
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の評判・口コミ・レビュー
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
筋ジスの鹿野とボラとの掛け合いに笑い、絆に泣く。
人は皆一人では生きられない。だから出来ない事を助けてもらう“勇気”が必要なのだ。現代医療のあり方についても色々考えさせられた。
制約を抱えながら前向きに夢を追い続ける鹿野を、大泉洋が熱演。 pic.twitter.com/tKr3OvlX4o
— Hidezou (@hidezou777) 2018年12月29日
「こんな夜更けにバナナかよ」
鹿野さん本当に強い人。「自分の命は自分で責任を持つ」の言葉にグッと来る😭介護者も最初は様々な思いだったけど鹿野さんだったからこそ500人もの介護者が増えたんだと思う本当に凄い❗笑い、めっちゃ感動しました❗#映画好きと繋がりたい #こんな夜更けにバナナかよ pic.twitter.com/Y6JwNAQUwl— hiro😖映画大好き❗ (@EigaOsusumeKan) 2018年12月29日
「こんな夜更けにバナナかよ」
予想以上に良き映画!
予告では我儘で嫌な印象の鹿野さんが、だんだんと愛しい存在に変わっていきます。「できないことは助けてもらう」
障害の有無に関わらず、お互いに苦手なことを補い合える社会っていいよね。高畑充希の可愛さが大爆発しているのも見所です。 pic.twitter.com/kI9kEa0Qs1
— たなびー。 (@tanabotta1) 2018年12月29日
こんな夜更けにバナナかよ。見てきました。正直に生きること。1人じゃなんにもできないこと。そして介護する側もされる側もお互いが助け合ってることをあらためて確認できた。どんなことにも言える。真剣だから喧嘩もする。 pic.twitter.com/HDAeZ1q55y
— けいくま (@keikuma0828) 2018年12月30日
本日公開の「こんな夜更けにバナナかよ」を鑑賞してきました🍌
亡くなった私の父は左半身麻痺の障害者で、私が3歳の頃から18歳まで、
一緒に生活 していました。
その頃の記憶が蘇りました。
この映画を通して、父を22年間介護し続けた、母の偉大さを改めて感じました。#こんな夜更けにバナナかよ— Nuno (@TNHokkaido) 2018年12月28日
映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』のまとめ
主人公の鹿野は手と首しか動かせないため、自分で寝返りを打つことすらできない。しかし、車椅子に乗り、ボランティアを従え、色んな場所に出かけて行く。そして、思いっきり楽しみ、思いっきり笑う生活を送っている。これだけ聞けば何だか羨ましさすら感じるかもしれないが、自分で体を動かして自由に出かけられないもどかしさを、鹿野は日々感じているのではないかと思う。最初は鹿野の我儘っぷりに腹立たしさも感じるが、この人はどんなことを思い何を感じているのか、映画が進むにつれて鹿野という人間の内面がとても気になってくると思う。
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