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映画『プリズナーズ』あらすじとネタバレ感想

映画『プリズナーズ』の概要:現在、アメリカで社会問題にもなっている子どもの失踪、誘拐事件をモチーフに『X-MEN』シリーズで人気を得たヒュー・ジャックマンを主演に迎え、アメリカ社会が抱える暗部にメスを入れた衝撃のサスペンス・スリラー。

映画『プリズナーズ』 作品情報

プリズナーズ

  • 製作年:2013年
  • 上映時間:153分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス、ミステリー
  • 監督:ドゥニ・ビルヌーブ
  • キャスト:ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール、ビオラ・デイビス、マリア・ベロ、テレンス・ハワード etc

映画『プリズナーズ』 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★☆☆

[miho21]

映画『プリズナーズ』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『プリズナーズ』のあらすじを紹介します。

ある年の感謝祭。近所で親しくしている黒人一家のバーチ家と感謝祭を祝おうと、彼らの家に訪れた白人一家のドーヴァー家。楽しい時も過ぎ、気が付けば長い時間が経っていた。少し前に外出したはずの末娘の姿が見えない。先に帰宅でもしているだろうと、家に帰ってみても、娘たちの姿はなかった。ここで父親ケラー(ヒュー・ジャックマン)は、親友宅の近くに停めてあった白いバンの存在を思い出す。暗い雨の中、捜索するとすぐにそのバンが見つかった。だが、娘たちの姿はどこにもなく、その車の持ち主アレックス・ジョーンズ(ポール・ダノ)が容疑者として、捕まった。娘の失踪は、誘拐事件として警察が捜査することになるが、証拠となる物証が少なく、事件は最初から暗礁に乗り上げた。

翌日、小さな田舎全体で、子どもらの搜索が警察も含めて開始された。そこには父親ケラー親子の姿とケラーの娘と共に失踪した黒人の少女の両親バーチ夫妻(テレンス・ハワードとヴィオラ・デイヴィス)も参加していた。生きているのか、死んでいるのか、分からない緊張の中でケラーの携帯に警察から電話が入る。昨夜逮捕した容疑者アレックスを証拠不十分で釈放すると。その電話の内容に激昂した彼は、捜索を止めて、一人警察署に赴くのであった。そこには、釈放されたばかりのアレックスと彼の母親(メリッサ・レオ)の姿もあった。ケラーは彼に歩み寄り、娘たちの行方を怒鳴りながら尋ねた。アレックスは彼の耳元で誰にも聞こえない声で『彼女たちは大人しく、まったく泣かなかったよ』と意味深な発言をケラーだけに聞こえるように発した。ケラーは彼の発言を聞き、この誘拐事件の疑惑が確証に変わったと、確信した。

翌日から、ケラーはアレックスの行動を監視するようになった。その一方で、この事件を担当するロキ刑事(ジェイク・ギレンホール)もまた、難解な事件に対して頭を抱えていた。アレックスを逮捕しないロキ刑事に対して、業を煮やしたケラーは独自で事件を追うことを決意。一番疑わしい容疑者アレックスを、今は誰も住んでない祖父の家で監禁し始めた。その場にバーチ夫妻も呼んで、アレックスに真相を聞き出そうとケラーは躍起になったが、彼は口をなかなか割らない。彼の暴力を止めようとも、加担しようともしないフランクリン・バーチを尻目に、ケラーのアレックスに対する拷問は酷くなるばかり。暴力を繰り返され、熱湯で攻められても彼は頑として真実を語ろうとはしない。幾度となく繰り返す暴力。それを静止しようとしないバーチ夫妻。敬虔なクリスチャンのケラーは、良心に呵責に押し潰されそうになるも、愛する娘たちの行方を必死に聞き出そうと躍起になるばかり。

一方、事件を追い続けるロキ刑事は、アレックスが失踪したと、確信した。難解な事件を捜査する一方で、行方不明になったアレックスも探さないといけなくなった。ケラーの独善的な行動が、事件を二転三転させ、ますます難解にさせてしまっていた。そんな状況の中で、真犯人は見つかるのか?娘たちは、無事に保護されるのか?緊張が続く物語の展開に、ラストは誰もが息を呑むだろう。

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映画『プリズナーズ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『プリズナーズ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

本作の監督ドュニ・ヴィルヌーヴとは、どんな人物か?

本作にて監督を務めたドュニ・ヴィルヌーヴ監督は、カナダ出身で全世界から注目を浴びている期待の俊英だ。カナダ時代に製作した『渦~官能の悪夢』『灼熱の魂』初期短編2作とこの2作の間に短編1本と長編1本『Polytechnique』を制作している。この長編3作『渦~官能の悪夢』『Polytechnique』『灼熱の魂』は、アメリカのアカデミー賞と相当するカナダ版のアカデミー、ジニー賞にて監督賞を3度受賞している。カナダの新鋭の監督だ。

余談だが、ジニー賞の最優秀作品賞の歴代の中には80年にホラー映画『チェンジリング』。1989年、1992年にはデヴィッド・クローネンバーグの『戦慄の絆』『裸のランチ』。1994年、1997年にはアトム・エゴヤンの『エキゾチカ』『スウィート ヒアアフター』。2008年にはカナダの若手女優サラ・ポーリーの監督デビュー作『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』など、錚々たるメンバーの中で堂々と受賞している新人監督。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の才能に目を付けたアメリカ・ハリウッドが、本作に同監督を抜擢。前作の『灼熱の魂』同様、緊張感のある張り詰めた空気のサスペンス・スリラーに見事成功している。ただ脚本も兼ねている前2作『渦~官能の悪夢』『灼熱の魂』に比べ、本作の脚本は残念ながら、実に説得力に欠けた脚本だ。ドゥニ・ヴィルヌーヴが、監督と脚本を担当した作品は実に、ストーリーの構成が理にかなっているが、本作『プリズナーズ』は伏線の回収が中途半端、小ネタやエピソードを小出ししているが、上手に回収出来てない。二転三転する展開なのに、ラストは実に呆気なく終わってしまう。多くの登場人物を出しておきながら、キャラクターの性格を活かしきれてない。言い出せばキリがないが、そんな稚拙な脚本を、第一級の大作映画に昇華させたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の演出力は、実に目を見張るものがある。

目を見張ると言えば、カナダ出身でありながらアメリカ・ハリウッドで活躍している監督は大勢いる。70年代にホラー映画の監督としてデビューしたデヴィッド・クローネンバーグを皮切りに、80年代にヒットを飛ばした『ゴーストバスターズ』シリーズの監督アイヴァン・ライトマンもまたカナダ出身だ。上記2名の息子ブランドン・クローネンバーグとジェイソン・ライトマン達も監督デビューを果たしている。他に忘れてはいけないのが、『ターミネーター』シリーズ、『タイタニック』『アバター』など全世界で興行収入がトップのヒットメーカー、ジェームズ・キャメロンもカナダ出身だ。他にアトム・エゴヤン、サラ・ポーリー、ポール・ハギス。現在注目を浴びているのがグザヴィエ・ドランやフィリップ・ファラルドーだろう。そんな粒揃いの映画監督の中でもドゥニ・ヴィルヌーヴもまた、現在期待されている監督の一人に挙げられている。

まだまだカナダ映画は陽の目を出ないが、彼ら若手監督の活躍が盛んになれば、映画界の方向性も大いに変わる機会だろう。そんな時期にデビューし活躍しているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督に対する世界の期待は、大きいに違いない。

映画『プリズナーズ』 まとめ

先ほど述べたように本作『プリズナーズ』は、稚拙な脚本なので、観客に対しての説明力や説得力は欠けるが、それを補う監督の演出力は計り知れない。本作を例えるなら、2009年に公開されたクリント・イーストウッド監督の『チェンジリング』や2011年に公開されたダーレン・アロノフスキー監督の『ブラック・スワン』以来の衝撃度だろう。これらの作品以外で、見終わった後のあの脱力感を超える作品はまだない。『プリズナーズ』は、久々に得た衝撃的な映画だった。この作品を観ずして、2014年に公開された映画を語ることはできない。避けて通れない紛れもない映画史に残る傑作だ。

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