ジム・カミングスが監督、脚本、編集、音楽をすべて自ら担当し、自身作の短編を長編映画化した作品。人生があまり上手くいっていない男が母の葬儀で踊ったことで、さらに問題が悪化してゆく。
映画『サンダーロード』の作品情報
- タイトル
- サンダーロード
- 原題
- Thunder Road
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2020年6月19日(金)
- 上映時間
- 92分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
コメディ - 監督
- ジム・カミングス
- 脚本
- ジム・カミングス
- 製作
- ジム・カミングス
- 製作総指揮
- ジム・カミングス
- キャスト
- ジム・カミングス
ケンダル・ファー
ニカン・ロビンソン
ジョセリン・デボアー
チェルシー・エドマンドソン
メイコン・ブレア
ビル・ワイズ - 製作国
- アメリカ
- 配給
- ブロードウェイ
映画『サンダーロード』の作品概要
短編映画としてジム・カミングスが製作した作品がサンダンス映画祭にてグランプリを受賞。カミングス本人による長編映画化が実現した。監督、脚本、編集、音楽までそのほぼすべてをカミングスが務めている。テキサスで警官をしていた男・ジム・アルノーが自分の母の葬儀でダンスを踊ったことでトラブルになる。結果として警官を解雇されてしまったところから、物語が展開してゆく。
映画『サンダーロード』の予告動画
映画『サンダーロード』の登場人物(キャスト)
- ジム・アルノー(ジム・カミングス)
- 妻とは別居、仕事もうまくいかないなかで母を亡くし葬儀に出席。そこでもトラブルが起こり、事態が悪化していく。
映画『サンダーロード』のあらすじ(ネタバレなし)
テキサス州で警官をしているジム・アルノーは、妻とは別居中、仕事も上手くいかない毎日のなかで過ごしている。母親が亡くなったことで葬儀に出席し、弔辞を述べるがこれも上手くいかない。母の好きだった曲、ブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」を流し、それに合わせて踊ろうとしたが、またもトラブルが起こり曲はかからなかった。仕方なく無音の状態でダンスをするジム。
母親はダンスの教師をしていたため、そこに思いを込めた踊りだったのだが、娘の親権をめぐる調停にて映像を提出されてしまう。ジムの奇行の証拠とされたことにイラつくジムは同僚との関係も悪化させ、最後には警官の職まで解雇されることになってしまった。
映画『サンダーロード』の感想・評価
ジム・カミングスとは?
監督をはじめとしたこの映画の製作ほぼ全てに関わったジム・カミングス。彼の作品は、長編映画としては本作が初となる。2016年のサンダンス映画祭で本作の元となった短編映画がグランプリを受賞しており、なんとワンカット12分で撮られている。その後も短編映画を続けざまに6本も発表し、非常に注目を集めている新人監督である。短編映画では母の葬式にてノリノリで踊る彼のシーンが数分間を占める。
長編映画になった本作も、カンヌ国際映画祭やシアトル国際映画祭など13の映画祭にてグランプリを獲得。期待の賞候補である有名作品を押しのけた受賞をしてきており、様々な国の観客たちだけでなく、批評家からも非常に評価の高い作品となっていることが伺える。
「涙のサンダーロード」
主役であるジム・アルノーが母親の葬式で踊る曲はブルース・スプリングスティーンによる「涙のサンダーロード」である。彼の母親が好きだったという曲であり、本作のタイトルもここから来ている。また、彼のストーリーのなかでの重要なポイントでもある。
ブルース・スプリングスティーンはアメリカのロック・ミュージシャンであり、世界的にも知名度の高いアーティストである。「涙のサンダーロード」は、軽快なメロディーに少し切ない歌詞の乗った名曲だ。ジムの母親は、自らの青春の中でほかの若者たちのように、この歌を聞いていた一人だったのかもしれない。孤独や哀愁、未来への希望が乗ったこの歌に、共感や憧れを覚えていたのだろうか。
無名監督が飛ばすヒット
ジム・カミングスだけではなく、昨今は既に実力を見出された監督ではない、無名監督の作品がヒットを飛ばすことがよく見受けられるようになっている。全くの無名というわけではないが、舞台の脚本を書いていたり、短編映画の制作をしていたりとほかの分野で少しずつ活動を広げていた人物などが多い。日本でも、「カメラを止めるな!」(2017)の上田慎一郎監督など、シネコンでの上映をされてこなかった監督が非常に話題となった。
実力がしっかり評価される状況になれば、より一層熱意と才能のある新人が台頭してくるだろうし、そのぶん面白く画期的な作品も増えてゆくだろう。ジム・カミングスも本作を踏み台として、さらに羽ばたいていってほしい。
映画『サンダーロード』の公開前に見ておきたい映画
バニシングin60″
H・B・ハリッキー監督によるカーチェイス映画。大量の車を破壊する、本編の半分以上を占めるカーチェイスシーンがカルト的な人気を誇る。2000年にニコラス・ケイジ主演でリメイクもされている。
本作と共通する点として、監督、脚本、主演、そしてスタントを含めたほぼすべてをハリッキー監督が自ら行っていることがある。監督は続編製作中にスタント事故で亡くなっているが、自分の描きたいものを描くことに熱心なことを、作品やエピソードから伺うことができる。何を描きたいかを伝え、それを再現する通常の映画製作と違い、描きたいものを自分の手で直接表現することで、伝えたいものがより明確になっていることを感じられるだろう。
詳細 バニシングin60″
ジョジョ・ラビット
タイカ・ワイティティ監督による2019年製作の映画。第二次世界大戦中のドイツにて、空想上の友達アドルフ・ヒトラーと過ごす少年、ジョジョを描いている。ジョジョは訓練の中で強いドイツ兵になろうとしていたが、自宅の中で匿われているユダヤ人の少女を見つけてしまう。初めはパニックになったジョジョだったが、やがて少女との交流をしていくことになる。
ストーリー上で取り上げられるテーマではないが、根幹の部分に関わってくる要素として「ダンス」がある映画だ。ダンスは楽しい時に踊るだけのものではなく、その時の人の感情も含む。人生の中で重要な意味を持つこともあるため、その意味を考えながら見てみるのも楽しみ方の一つではないだろうか。
詳細 ジョジョ・ラビット
タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら
普通に生きているだけなのに、どんどんトラブルに巻き込まれ、ゆっくりと状況が悪くなっていく…。そんな星の下に生まれてしまったデイル。本作と違ってホラーの要素を含むため、かなりスプラッタな状況が多いものの、ままならない人生を描いたコメディである。
因果応報という概念の話はよくあるが、とくに悪い人間でもなく、ただ運や要領の悪さで立場が悪化してゆくのは見ていて気の毒になってくる。しかし、人生においては往々にしてよくあることでもある。「あるある」と笑い飛ばせばコメディになるし、そこから立ち直るのを「頑張れ!」と応援できればヒューマンドラマにもなる。ある種共感を呼ぶ状況から、どう転がるのか?というところを注目して見ると面白い。
映画『サンダーロード』の評判・口コミ・レビュー
#サンダーロード 鑑賞
コミカルで切ない絶品な映画!
私生活、仕事、全てに行き詰まった警官の物語
コメディであり、とびきり素敵な人間ドラマでもある不器用な彼が作り出す居心地の悪い笑い
その中に見える惨めさ、虚しさが切なくて思わず涙が溢れる
相棒の黒人警官との友情も胸を打つ
最高です! pic.twitter.com/oewYlji2qF— yokito (@yogini_yokito) June 19, 2020
『サンダーロード』も今週公開。できれば邦題をボス曲に合わせて『涙のサンダーロード』にしたかったと思わずにはいられない哀愁作。それにしても近年のアメリカ映画は田舎町に住むダメ白人を描くのが上手くなった。本作にも、かつてこの手の話を得意としたコーエン兄弟には足りなかった愛がある。 pic.twitter.com/H7Mh3GxQ1Y
— 長谷川町蔵 (@machizo3000) June 17, 2020
『サンダーロード』
溢れ出る魂の叫びに心揺さぶられる大傑作!
母の死、仕事の不祥事、育児、離婚調停…
降りかかる苦難に空回りする男の危うさに釘付け。
感傷的なドラマとコメディのバランスに思わず唸る。
主演のみならず監督・脚本・編集までこなすジム・カミングスの才能に今後も目が離せない! pic.twitter.com/DoDXReYs7n— touch (@o_kilo_byte) June 19, 2020
『サンダーロード』、不思議な魅力の映画だった。冒頭の気まずさ爆発の長回しから急転直下の終盤まで自由なリズム。まさにオフビート。しかし庶民の哀歌と言える同名名曲の魂は翻案され隅々まで充満している。哀しいが希望はある。人生は終わりそうなってまた始まる。親子三代がそれを証明する物語。 pic.twitter.com/urJUU7jlZ6
— 花俟良王(良い王様改め) (@goodkingsama) June 14, 2020
サンダーロード、みた。母を喪い神経衰弱の男が、家族に仕事に災難に巻き込まれていく。葬式で「涙のサンダーロード」を流そうとするがラジカセが壊れてうまくいかない、踊りもおどれない。この映画は終始そんな感じだ。不安を埋めるかのようにまくし立てるジム。笑いとシリアスのバランスが絶妙。 pic.twitter.com/fYm9alyAda
— じゅぺ (@silverlinings63) June 20, 2020
映画『サンダーロード』のまとめ
既に短編映画で評価されて結果の出ている作品のため、面白いことに間違いはない。台頭してきた新しい才能による新感覚を味わうという楽しみもあり、また話題になる前に目をつけておき、見に行っておくという映画好きならではの楽しみもあるだろう。今一度、人生についてゆっくり考える機会にしてもいいのではないだろうか。それぞれの視点で、是非本作の楽しみ方を見つけて欲しい。
みんなの感想・レビュー