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映画『ちいさな独裁者』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

2017年にドイツで制作され、2019年冬、日本で公開されるある1人の大尉の物語。時代は第二次世界大戦末期の1945年、脱走兵の青年が偶然拾った将校の軍服をまとったことから始まる、実話を元に描かれたサイコ・サスペンスドラマ。

映画『ちいさな独裁者』の作品情報

ちいさな独裁者

タイトル
ちいさな独裁者
原題
Der Hauptmann
製作年
2017年
日本公開日
2019年2月8日(金)
上映時間
119分
ジャンル
サスペンス
監督
ロベルト・シュヴェンケ
脚本
ロベルト・シュヴェンケ
製作
不明
製作総指揮
フィリップ・リー
マーカス・バーメットラー
キャスト
マックス・フーバッヒャー
フレデリック・ラウ
ミラン・ペシェル
アレクサンダー・フェーリング
ワルデマー・コブス
ブリッタ・ハンメルシュタイン
ザムエル・フィンツィ
製作国
ドイツ
フランス
ポーランド
配給
シンカ
アルバトロス・フィルム
STAR CHANNEL MOVIES

映画『ちいさな独裁者』の作品概要

ハリウッドで大ヒットを記録し、日本でも人気を博したブルース・ウィリス主演のアクション・コメディ映画『RED/レッド』の監督・ロベルト・シュヴェンケが、現代のパワーハラスメントにも通じる社会の闇を照らし出す。日本からはるか遠く離れたヨーロッパで、実際に起こった事件を元に、ロベルト・シュヴェンケ監督が脚本も手掛け、権力を手に入れた人間の暴走劇を描く。主演には、『リスボンに誘われて』や『まともな男』に出演しているマックス・フーバッヒャーが務める。

映画『ちいさな独裁者』の予告動画

映画『ちいさな独裁者』の登場人物(キャスト)

ヴィリー・ヘロルト
ドイツ軍に従事している兵士。ドイツ軍が戦争に配線する直前の混乱期に、軍を脱走する。
フライターク(ミラン・ペシェル)
ヘロルトがナチス将校の軍服を身にまとって、最初に出会ったはぐれ兵士。ヘロルト大尉に従盲している。

映画『ちいさな独裁者』のあらすじ(ネタバレなし)

1945年、第二次世界大戦末期のドイツ。1人の若き兵士であったヴィリー・ヘロルトは、自軍の敗戦を悟っていた。このままでは、戦いに呑まれて命を落としてしまう。体の至るところに傷ができ、泥にまみれ、服は裂けている。それでも草原を走り、森の中を走り、木々の合間に隠れ、敵に追われながらも命からがら逃げ、ヘロルトは海岸沿いに出る。

そこで見つけた、運命を変える瞬間。人影なく、乗り捨てられた1台の車の中に残されていたのは、食べ物とキレイに畳まれた将校の軍服。ヘロルトはその軍服を眺め、ふと袖に手を通す。

靴を履き替え、軍帽をかぶり、軍服のボタンを締める。するとどうだろう、みすぼらしかった一兵卒のヘロルトは、瞬く間に立派な軍人へと生まれ変わったのだ。ヘロルトは使われていた一介の兵士から、人を使う側のヘロルト大尉となり、出会う兵士たちを次々と服従させていく。

自身に従い、命令を遂行する兵士たちを見て、ヘロルトは権力の味を知る。そして、次第にヘロルトの心に傲慢さが表れ、大量殺戮への道を歩み始めるのだった。

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映画『ちいさな独裁者』の感想・評価

実在の人物ヴィリー・ヘロルト

まるで映画のような出来事が、第二次世界大戦中に実際に起きている。その事件の主犯が、今回の主人公のヴィリー・ヘロルトである。彼はドイツ軍の上等兵であったが、たまたま脱走中に見つけた空軍大尉の軍服を身にまとい、多数の敗残兵を指揮下に置き、収容所を不当に支配していた。

おそらく、ヘロルトが新しい勲章の付いた軍服をただ見つけて、好奇心から羽織っていただけならこれほどの事件にはならなかっただろう。しかし、疑うことを知らない無垢な兵士に慕われる「権力」の偉大さやありがたみや、うま味を知ってしまったからには後戻りはもうできない。しかし、その麻薬のような蜜の味を味わうにはヘロルトは若すぎた。

少し気を付ければ、長く軍に従事している者ならヘロルトの嘘を見抜けただろう。しかし、ヘロルトと敗残兵が町にたどり着くまでに実に30人にも及ぶ兵士がヘロルトを大尉だとし、ヘロルトの堂々とした振る舞いに疑問を持つ人はいなかった。

これはもはや、ある種の才能でもある。人を従わせ、人を支配するには話術・自身・オーラ・功績など多くの要素がある。だが、若いヘロルトにオーラや功績などあるはずがない。にもかかわらず、多くの人がヘロルトの嘘を信じて大尉だと信じていたとは、彼の話術の巧みさと堂々とした「上に立つ者」の風格のなせる業。

多くの兵士を虐殺した罪が許されるわけではないが、彼の人の心を鷲掴みにするは、称賛に値する。

現代の社会問題に鋭く切り込む話題作

映画『ちいさな独裁者』は、今から70年以上も前の第二次世界大戦中の出来事であるが、この時の内容は、現代日本でも日常茶飯事である。人による人の大量虐殺ではなく、所謂権力を傘にした「ハラスメント」の横行である。

自らの墓穴を、自らに掘らせるヴィリー・ヘロルトの残酷な仕打ちは、今の日本社会で形を変えて日々行われている。上司からのキャパオーバーな仕事の割り振りや、不当な評価、イベントごとなどの強制参加なども、苦痛の種である。そして、仕事を辞めたがる社員に対しての嫌がらせや、妊娠した女性への退職を促す風習など。

これらはもはや、権力の暴走である。権力とは、人の生活を豊かにするためにあるもので、権力を持つ人間は、それを自分以外の人に使わなければならない。しかし、人は権力を手にすると、途端に自分が強くなったと勘違いする。そのために失われる命があることも、その責任の重さにも考えが及ばない。

ヴィリー・ヘロルト事件は、戦時中の混乱だからこそ起きた事件ではなく、戦時中の出来事があまりにも残虐だったから話題になっただけで、根本は変わらないのだ。この映画は、権力に苦しむ人にももちろんだが、会社の中である程度の地位にいる人にも、我が身を振り返るために鑑賞しておいてほしい映画である。

書き換えられた歴史

ドイツでは、長きに渡って第二次世界大戦中、一般の兵士たちが大量虐殺に関与していないと語られてきた。それはいつしか、次第に“神話”として親から子へ語られ、ドイツ人の誇りともなっていた。しかし、1980年代後半に冷戦が終結を迎え、ロシア側に残っていた数々の証拠ともなる写真が公表されると、それまでの“神話”は跡形もなく崩れ去る。

ドイツ人は怒りに震え、嘘をつかれて騙されていたことに涙した。そして、この映画が公開されたとき、ドイツ人は「待っていた」とばかりに映画を称賛する。それほど、自国が犯してきた罪を深く捉え、そして反省する間もなく嘘をついてごまかしていたことを恥じていたのだ。

日本では、こうした残虐行為を描いた作品は少なく、語り継がれるべき資料が失われつつある。そして、高度経済成長期に人の気持ちを置いて急速に大型社会として成長してきてしまったツケが、現在になって闇として表れてきている。

シュヴェンケ監督は、「人は本質的に残虐行為をする可能性を孕んでいる」と語るが、まさに人間の神髄のようなものがこの映画から読み取れる。「顔にパンチを浴びる衝撃を覚えて欲しいと」言う監督の願いは、衝撃的な内容を余すところなく表現したこともあり、成し遂げられそうである。

映画『ちいさな独裁者』の公開前に見ておきたい映画

映画『ちいさな独裁者』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『ちいさな独裁者』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

RED/レッド

ロベルト・シュヴェンケ監督がその名を世に知らしめた、ブルース・ウィリス主演のアクション・コメディ映画である。共演者にモーガン・フリーマン、ジョン・マルコビッチ、ヘレン・ミレンなどの豪華俳優陣を携え、引退した超危険人物「RED」が誕生する。

元CIAの腕利きエージェントであったフランク(ブルース・ウィリス)が、現役副大統領の陰謀に嵌められながらも、元CIAの同僚や、MI6の殺し屋や、ロシア諜報員の力を借りて危険を回避していく。

現役を引退したエージェントたちなので、割と年齢層が高めということもあって激しいアクションシーンは少ないものの、味のある俳優たちが揃っているためとにかく全員がかっこいいと評判である。往年のスターが登場する映画は、割とどの映画でも評価が高い傾向にあるが、この映画も同じことが言える。

作品は第68回ゴールデン・グローブ賞の作品賞にノミネートされるなど話題となり、2013年には再びブルース・ウィリス主演で『RED リターンズ』が公開される。

詳細 RED/レッド

デーヴ

アメリカのホワイトハウスを舞台にしたコメディ映画で、1993年に公開されアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネートされた話題作である。物語は、特に際立った特徴のない平凡な男が、再起不能になった現役大統領の替え玉となる話。

主人公のデーヴは、パートタイマーの斡旋業を営む経営者であるが、離婚したり気ままに生活したりと、人と変わらない毎日を送る。唯一、人から覚えてもらい易い特徴と言えば、時の大統領ビル・ミッチェルと瓜二つであったこと。

そしてデーヴは、大統領そっくりさんの物まねをしたことがきっかけでシークレット・サービスの目に留まり、大統領が情事に勤しむ間のスピーチ時の替え玉にされることとなった。その後、1日だけの約束は大統領が脳卒中を起こしたことで延期となる。

ホワイトハウス内では、様々な表沙汰には決してならない事情が横行しており、そんな私利私欲が渦巻くホワイトハウス内で、デーヴは一般人の価値観で次々と人々の心を射止めていく。国民を欺きながら大統領を続けるデーヴの未来は何処に向かっているのか。デーヴが大統領夫人のため、倒れた大統領のため、そして愛するアメリカ国民のために権料を使う様は、見ていてとても心温まるものである。

詳細 デーヴ

ハンサム★スーツ

日本でも、誰かに成りすます映画は制作されている。その代表的なものが、2008年に公開された『ハンサム★スーツ』である。お笑い芸人・森三中の大島美幸の夫である鈴木おさむが脚本を手掛け、監督はこの映画で映画監督デビューを果たし、その後『高校デビュー』や『ヒロイン失格』などの話題映画を手掛けた英勉。

あらすじは、定食屋を営んでいる「ブタ郎」の愛称で親しまれる店主・大木琢郎が、親友の結婚式のために紳士服店で手に入れた「ハンサムスーツ」によって生まれ変わるラブ・コメディ。冴えない定食屋のブタ郎を、お笑いコンビ・ドランクドラゴンの塚地武雅が務める。そして、ハンサムスーツを着用した後の絶世の美男子を谷原章介が演じる。

ブタ郎が恋心を寄せるヒロインには、北川景子が抜擢され、もう1人ブタ郎の心の支えになるヒロインには、森三中の大島美幸が選出される。

ハンサムスーツを着用し、モテモテで大人気の光り輝くモデルのような人生を歩むか、そのままのデブで、ブサイクな姿のまま冴えない人生を送るのか。究極の選択を迫られたブタ郎の選択が、感動を呼ぶ物語である。こうした、人を温かい気持ちにさせてくれる「なりすまし」映画は、『ちいさな独裁者』公開後も、口直しならぬ目直しに見ておきたい。

詳細 ハンサム★スーツ

映画『ちいさな独裁者』の評判・口コミ・レビュー

映画『ちいさな独裁者』のまとめ

監督・ロベルト・シュヴェンケ氏が2018年11月、東京と杉並区の都立高校に来日し、特別授業を行った。そこでは、自国の恥部でもある事件をモチーフに映画を製作したことに対しての、高校生からの正直で鋭い質問が多く飛び交ったという。しかし、シュヴェンケ監督は、ドイツの歴史が書き換えられていたことを知り、“事実から目をそらす大きな力”に対抗するために映画を製作したのだと語る。現在も、権力は形を変えて弱く小さな者を圧迫する。歴史を繰り返さないために、こうした映画は教訓として世に訴えかけ続けるのだ。

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