小学4年生の少年アオヤマ君が出会う、不思議なペンギンと不思議なお姉さんとのひと夏の物語。町に突如現れたアデリーペンギン。その正体を突き止め、謎を解くべくアオヤマ君の夏の研究が始まる。
映画『ペンギン・ハイウェイ』の作品情報
- タイトル
- ペンギン・ハイウェイ
- 原題
- なし
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2018年8月17日(金)
- 上映時間
- 119分
- ジャンル
- ファンタジー
アニメ
青春 - 監督
- 石田祐康
- 脚本
- 上田誠
- 製作
- 不明
- 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- 北香那
蒼井優
釘宮理恵
潘めぐみ
福井美樹
能登麻美子
久野美咲
西島秀俊 - 製作国
- 日本
- 配給
- 東宝映像事業部
映画『ペンギン・ハイウェイ』の作品概要
日本を代表する人気作家・森見登美彦原作『ペンギン・ハイウェイ』は2010年に発表され、およそ8年の歳月を経て映像化された。今作は、森見登美彦の最高傑作とも言われ、日本SF大賞を受賞した名作でもある。監督は、弱冠29歳ながらも第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞した経験を持つ新鋭、石田祐康が手掛ける。また、森見作品の『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半神話大系』の映像化を手掛けた上田誠が脚本を担当する。
映画『ペンギン・ハイウェイ』の予告動画
映画『ペンギン・ハイウェイ』の登場人物(キャスト)
- アオヤマ君(北香那)
- 小学4年生の少年。少し大人びた面もあり、将来は立派な大人になると夢に描いている。日々の発見をノートにしたため、いろいろな物事を研究し考察する程、頭が良い。突如町に現れたペンギンを、治療のため通っている歯医者さんで働いている歯科助手のお姉さんと一緒に研究する。
- お姉さん(蒼井優)
- アオヤマ君が治療に通っている歯科医院で歯科助手として勤めている女性。さばさばとした口調でフレンドリーだが、どこか不思議な一面とミステリアスな雰囲気を持つ。町に湧いて出てくるペンギンと深く関係する。
- ウチダ君(釘宮理恵)
- アオヤマ君のクラスメイトの男の子。大人しい性格だが、アオヤマ君と同じく好奇心は旺盛で探求心も強い。一緒に探検隊を組み、ペンギンの謎に迫る。
- ハマモトさん(潘めぐみ)
- アオヤマ君のクラスメイトの女の子。アオヤマ君と同じくチェスを嗜む。アオヤマ君、ウチダ君の研究に参加する。
- アオヤマ君のお父さん(西島秀俊)
- アオヤマ君が日々起きていることや気になったこと、自分で調べたことなどをノートに書くように習慣づけた人。アオヤマ君の好奇心を微笑ましく、また適切な距離を保ちながら静かに見守っている。
- ハマモトさんのお父さん(竹中直人)
- 大学の研究所に勤務している。町で突如起きた現象を調べるために、調査隊を編制する。甘党。
映画『ペンギン・ハイウェイ』のあらすじ(ネタバレなし)
小学4年生の夏。少年アオヤマ君は、毎日自分で調べたこと、日々起きたこと、学んだこと、それらを大切なノートに記していく。アオヤマ君は普通の大人よりも勉強し、普通の大人よりも知っていることが多いと自負していた。
そんなアオヤマ君の日常は、ある生物と出会うことで一変する。目の前に現れたのは、本来であればおよそこの地から何百キロも離れた場所で生息しているであろう生物、ペンギン。黒と白の体に大きな瞳を持つその生物が、フリッパーをパタパタとさせる姿は、動物園で人気のペンギンそのもの。
アオヤマ君は、クラスメイトのウチダ君とハマモトさんと共に、ペンギンがなぜ海もないこの町にやって来たのかを調べるため探検隊を組織する。目の前に見えるペンギンは果たして本物か、そしてたくさんのペンギンたちは、一体どこから来てどこへ行くのか。そして、謎を調べている最中でアオヤマ君は、自身が通う歯科医院の歯科助手のお姉さんが、ペンギンと深い関わりがあることを知る。
少年たちの飽くなき探求心はやがて世界の謎へと広がっていく。この謎が行きつく先に、ペンギンが存在する理由がある。ペンギンが一列になって歩く決まった道「ペンギン・ハイウェイ」を辿り、アオヤマ君は大いなる謎に迫る。
映画『ペンギン・ハイウェイ』の感想・評価
原作が森見登美彦
まず何といってもこの映画の原作者が森見登美彦であることから、この映画への期待値は計り知れない。森見登美彦と言えば、日本のファンタジー作家を代表すると言っても過言ではなく、彼の代表作『四畳半神話大系』や『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』などは若い世代はもちろんのこと、30代や40代にも幅広く人気だ。
ペンギン・ハイウェイの予告を見るだけで、森見登美彦が得意とする「普通の日常の中に起こる不思議現象」が数多く描かれている。およそ魔法ではないかと思われるようなことが、森見登美彦の世界では当たり前に存在している。今回登場するペンギンも、そんな森見登美彦の不思議世界を象徴する存在だ。
ただし今回の作品で描かれる世界は、森見登美彦の得意とする京都市ではなく彼の生家のある奈良県が舞台。普段見慣れている(読み慣れている)京都市から離れ、奈良県の片田舎で起こる少年たちの大冒険。このペンギン・ハイウェイに限っては、どこでもないこの田舎町が舞台でなければここまで物語に引き込まれることはなかっただろう。青々とした空に真っ白の雲、辺り一面広がる緑の田畑や遠くの山。そんな美しい自然の中に現れる黒と白のコントラストが動く様を、ぜひ見逃さないで欲しい。
主題歌は宇多田ヒカルの書き下ろし
宇多田ヒカルが映画の主題歌を担当するのは、劇場版エヴァンゲリオン:Q以来であるため、約6年ぶりとなる。今回の主題歌「Good Night」は、宇多田が原作を読み、書き下ろした一曲。予告編で聞くだけでも、宇多田ヒカルの儚く美しい歌声とメロディーが映像と相まってとても心地が良い。
宇多田と言えば、結婚出産を機に一時アーティスト活動から離れていたが、復帰するや否や更に人気を博している。母親になったことで、歌声や歌詞はこれまでよりも深みが増し、よりメッセージ性の強い心に響く曲が多くなっている。ペンギン・ハイウェイは、少年たちの冒険の物語を描いているが、その中にはドキドキワクワクだけでなく、子供が大人のお姉さんに憧れる甘酸っぱい憧憬や、子供ではどうすることもできない現象への不安や葛藤、そして大人になるために一歩踏み出す勇気などの要素も盛り込まれている。そんな目まぐるしく変わっていく子供たちの心境を、宇多田ヒカルの優しい歌声と歌詞は丁寧に表現している。出演キャストからも絶賛される宇多田ヒカルの主題歌を、ぜひ劇場の巨大なスクリーンと、完備された音響設備の中で堪能したい。
監督・石田祐康と脚本・家上田誠
石田祐康と言う人物は、高校で美術科を先行してからというもの数々の賞を受賞している驚異の新鋭である。制作する映像は、鑑賞している人を引き込むスピード感や躍動感に溢れ、シンプルなストーリーを上回る圧倒的なクオリティが話題になっている。今作が初めての長編映画監督となるわけだが、その創造性は予告映像を見るだけで安心して鑑賞することができる。
そして、脚本を担当している上田誠と言えば、森見登美彦作品には欠かせない脚本家となっている。『四畳半神話大系』と『夜は短し歩けよ乙女』に続き、今作が森見登美彦作品の映像化3作品目である。不思議な言い回しと独特の雰囲気を醸し出す森見登美彦の小説を、想像の世界から目に見える映像にするためには、その世界観を壊さないことが必須条件であるが、尚且ついくつもの要素が折り重なりながら物語が進行していく森見登美彦流の進行は、脚本が命となる。その点を、森見登美彦と同じく京都府で育ち、学び、培った2人がどのように仕上げてくるのか、公開が待ち遠しい。
映画『ペンギン・ハイウェイ』の公開前に見ておきたい映画
夜は短し歩けよ乙女
言わずもがな、森見登美彦の原作をアニメーション映画化した作品。上田誠が脚本を担当している。主人公の冴えない大学生の青年が、大学の同じクラブに所属する黒髪乙女に懸想している様を、コミカルに描いた作品。
大人しく人間関係も上手くなく、そして成績は不調で友人も少ない大学生の「私」。その私が、思いを馳せる乙女に仕掛ける「ナカメ(ナるべくカのじょのメに留まる)作戦」は、見ている方からするとやきもきするかもしれない。思春期の中学生の初恋を体現しているかのような「私」のキャラクターを、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』でお馴染みとなった星野源が熱演している。俳優が主演を務めているという点では、今回のペンギン・ハイウェイも共通しているところだが、夜は短し歩けよ乙女の見どころは、他のキャラクターを人気声優の花澤香菜や神谷浩史、中井和哉などが演じているところにもある。
自身を天狗と名乗る不思議な男や、よく分からない自動車に乗る富豪の老人、表現が難しい程のイケメンな学園祭事務局長など、ユーモラスなキャラクターも多く登場し、更には日常とは少しかけ離れた妙な出来事まで起き、見ている者を飽きさせない。森見登美彦作品を知っている人はもちろん、知らない人も是非鑑賞することをお勧めしたい。
詳細 夜は短し歩けよ乙女
台風のノルダ
こちらの作品は、ペンギン・ハイウェイでもキャラクターデザインを担当している新井陽次郎が劇場監督のデビュー作品として制作上映されたもの。新井陽次郎と言えば、『コクリコ坂から』『風立ちぬ』などの名作を生みだしたスタジオジブリで、アニメーターとして活躍していた経歴を持つ。更に、台風のノルダの制作に、ペンギン・ハイウェイでも携わっているスタジオコロリドが担当しているため、その世界観は今作ペンギン・ハイウェイを鑑賞する上でもとても参考になるだろう。
のどかな風景や、背景を彩る美しい青空などは、ペンギン・ハイウェイでも描かれている通り。更に、劇中に登場する主要人物「ノルダ」と言う少女の、どこかミステリアスでそして人を惹き付けるような表情は、ペンギン・ハイウェイに登場する“お姉さん”に通じるものがある。不思議な力を持つノルダを助けるために、超大型台風が接近する中奮闘する2人の少年の必死な思いが、やがて大きな危機を回避することになるとは、きっと映画が始まった時点では誰も思わなかっただろう。今作ペンギン・ハイウェイの世界観の前身ともなる台風のノルダは、ぜひ押さえておきたい作品である。
詳細 台風のノルダ
借りぐらしのアリエッティ
2010年に劇場公開されたスタジオジブリ作品で、こちらの作品にも新井陽次郎がアニメーターとして深く携わっている。小さな人間「小人」たちは、人間に見つからないように人間から物資を「借りて」生きている。病弱の主人公の少年翔は、その小人のアリエッティと出会い、確かな友情とほのかな恋を育む。
人間の人差し指程度の大きさしかない小人たちが暮らす世界は、何もかもが大きく、とても美しい。青々とした緑と大空、無骨ながらも繊細な人間の作り出す造形物。その対照的な物が入り混じる背景は、さすがスタジオジブリならではのクオリティと言わざるを得ない。
段々と数を減らし、絶滅の危機に瀕している小人のアリエッティに、翔がその事実を突きつけるシーンはとても印象的だ。そして、自分たちが絶滅しそうだということを知ったとき涙を流すアリエッティの生に対して必死になる姿もまた、見ている人の胸を打つ。
更にこの映画を強く勧める理由は、主題歌の美しさにある。ジブリ作品では初めて海外アーティストを起用したことでニュースにもなった「Arrietty’s Song」を歌うフランス人のシンガーソングライター、セシル・コルベル。彼女の美しすぎる歌声と流暢な日本語は、魅了されなかった人はいないのではないかと思う程に洗練されており、映画の雰囲気ともベストマッチしている。美しい映像を充分目に焼き付け、更にセシル・コルベルの歌う美曲を聞きながら、映画の余韻に存分に浸って欲しい。
詳細 借りぐらしのアリエッティ
映画『ペンギン・ハイウェイ』の評判・口コミ・レビュー
ペンギン・ハイウェイ良かった 夏の終わりにぴったりかも
ファンタジーだしアニメで映像にするとほんと映えるな〜もっとグリグリ動かしてくるかと思ったら意外と静かなカメラワークだった(実写寄りなのか?)— はまはま (@hmhm926) 2018年8月18日
ペンギンハイウェイを観てきました。アオヤマ君と同様に、ミステリアスな「お姉さん」に惹かれていく。スタジオコロリド作品の中で一番好きな作品になった。 pic.twitter.com/gmf25QDE0q
— Da (@yoshi_ghibli) 2018年8月18日
ペンギンハイウェイを見てきました。原作大好きすぎて最初の数分で涙腺決壊しその後ずっと涙目でみてた私の感想があてになるかはともかく、日常の延長にあるへんてこな事象、その先にある世界の果てという原作の独特な雰囲気が再現されててよかったです。ペンギンハイウェイは世界の果てに通じる道……
— のぞむ (@nozomu_kosaka) 2018年8月18日
ペンギンハイウェイとても良かった!アオヤマ君の冒頭のセリフで即引き込まれた。お姉さんとの関係が素敵だよ~。研究に夢中な夏休みやラスト付近の展開が泣けた💦町や海の風景が優しくて綺麗で、観に行って良かったよ…
— みっころ (@miccochanco) 2018年8月18日
ファンタジーとして純粋に見れば、ペンギンは可愛いですし、映像は綺麗ですし、小学生の一夏の冒険談として面白かったですむ話ですが、内容を理解しようと思うとすごく難しいと思いました。自分も結局何が起きていた話なのかはわからないままです。
— みなづき (@Mori_minaduki) 2018年8月18日
町にペンギンが発生。青山君はおっぱいの大きなお姉さんがジュース缶をペンギンに変身させたのを目撃する!そして町には海と呼ばれる巨大な球体も出現!ペンギン・海・そしてお姉さんは何者か!?
ファンタジーオネショタ冒険アニメ「ペンギン・ハイウェイ」
最高に面白かったので是非見てね!!— くりから(佐藤祐介) (@yuu0328) 2018年8月18日
映画『ペンギン・ハイウェイ』のまとめ
森見登美彦氏は、自身のブログで出来上がったペンギン・ハイウェイを見て涙を流したと綴っている。それだけ原作に対しての思い入れが強いのだろうが、森見登美彦の作品を映像化することが容易ではないように感じるのは、恐らく原作者だけではない。小難しく回りくどい話し方をするキャラクターや、癖のある妙なキャラクターが多い印象を受ける森見登美彦の作品だが、今回は子供たちにも人気の“ペンギン”が登場するだけあって、子供から大人まで楽しめる作品ではなかろうか。夏にぴったりの涼し気な映画の上映が、今から楽しみである。
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