1980年代、映画の黄金期風の青春ホラー映画がついに日本公開する。「連続殺人気も、誰かの家の隣人だ」、そんな当たり前のようで想像もつかない事実に、無垢な少年少女たちが、ドキドキとわくわくを募らせ、闇のドアを開いていく。
映画『サマー・オブ・84』の作品情報
- タイトル
- サマー・オブ・84
- 原題
- Summer of 84
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2019年8月3日(土)
- 上映時間
- 106分
- ジャンル
- 青春
ホラー - 監督
- フランソワ・シマール
アヌーク・ウィッセル
ヨアン=カール・ウィッセル - 脚本
- マット・レスリー
スティーブン・J・スミス - 製作
- ショーン・ウィリアムソン
ジェームソン・パーカー
マット・レスリー
バン・トフラー
コーディ・ズウィーグ - 製作総指揮
- フローリス・バウアー
- キャスト
- グラハム・バーチャー
ジュダ・ルイス
ケイレブ・エメリー
コリー・グルーター=アンドリュー
ティエラ・スコビー
リッチ・ソマー - 製作国
- カナダ
- 配給
- ブロードウェイ
映画『サマー・オブ・84』の作品概要
1980年代には、映画の黄金期と言われるほどの影響力と活力があった。レンタルビデオのシステムが確立し、一般家庭でも手軽に映画を楽しめるようになった時代でもある。『E.T.』『スタンド・バイ・ミー』『13日の金曜日』、一度は名前を聞いたことのある名作が次々と誕生し、ホラー&スリラーやスラッシャーなどの言葉が映画のジャンルとして確立した頃でもある。今作では、題名にあるように1984年を舞台にしている。インターネットもまだ普及していない時代に、冒険やミステリーなどに魅了される少年少女に視点を当てた青春映画だ。
映画『サマー・オブ・84』の予告動画
映画『サマー・オブ・84』の登場人物(キャスト)
- デイビー(グラハム・バーチャー)
- 15歳の好奇心旺盛な少年。世界中で起きている猟奇殺人や幽霊、エイリアンなど「オカルト」が大好き。4人の中ではオタクのポジション。
- トミー・‘イーツ’・イートン(ジュダ・ルイス)
- デイビーの友人で、いわゆる“ワルガキ”のようなポジション。背が高く、メンバーの中で1番のイケメン。
- デール・‘ウッディ’・ウッドワース(カレブ・エメリー)
- デイビーの友人の1人、ぽっちゃりのおでぶ体型をしており、15歳には見られない風貌もしている。
- カレブ・エメリー(コリー・グルーター=アンドリュー)
- デイビーの友人で、長身のインテリメガネ君。顔の半分を覆るほどの大きなメガネをかけている。
映画『サマー・オブ・84』のあらすじ(ネタバレなし)
1984年のアメリカ、オレゴン州。公害の片田舎に住む15歳の少年デイビーは、平和だが退屈な日常を過ごしていた。デイビーは、世界のいたるところで起きている猟奇殺人を調べたり、エイリアンや幽霊の記事や雑誌を収集したり、いわゆる“オカルトオタク”のような少年であった。
ある日、デイビーはニュースで近隣の町で起きている事件の報道を知る。その事件とは、デイビーと同じくらいの年代の少年たちがターゲットとなった殺人事件であった。好奇心旺盛で、“そういう”事件が大好きなデイビーは、事件に興味を持ち自分でも調べてみることに。すると、デイビーの家の隣に住んでいる警察官のマッキーがどうも怪しいと思えてきたのだった。
このことを、いつも一緒に行動している不良のイーツ、おでぶのウッディ、インテリメガネのカーティスに話し、4人はマッキーが連続殺人犯なのかどうか調べることに。4人は双眼鏡を使ってマッキーを監視し、マッキーの家を捜索する。そして、トランシーバーで連絡を取り合い、事件の真相に近づいていく。
だがそれは、恐ろしくおぞましい現実への扉の幕開けであった。
映画『サマー・オブ・84』の感想・評価
カナダの映像制作ユニット「RKSS」最新作
今回の映画は、2015年に公開され高く評価された『ターボキッド』を制作したカナダの映像制作ユニット「RKSS」によるものである。正式名称は「ROADKILL SUPERSTARS」で、これまで多くの短編映画を製作してきた。BMX版の『マッドマックス』と評価されたSFアクション映画の『ターボキッド』で長編映画のデビューを飾った。『ターボキッド』は、SXSW映画祭最優秀観客賞を受賞し、次なる映画の制作にも意欲を見せた。
そして彼らが次に手掛けたのは、1980年代を舞台にした少年少女たちの青春物語。監督のフランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン・カール・ウィッセルは、自分たちの子供時代、青春時代とも呼べる年代・原体験を基に映画を製作。
インターネットのない時代に、未知なるものを求めて友人たちと冒険に繰り出すドキドキやわくわくと言った好奇心。不思議な体験や、酸いも甘いもある恋愛経験など、誰もが通る青春時代に、夏らしい“ホラー”のスパイスを投じる。
黄金期と言われた1980年代
1980年代のハリウッドでは、スティーブン・スピルバーグやロバート・ゼメキスなどがSFXを駆使して制作した作品『E.T.』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を世に送り出し、空前のメガヒットとなった。また、ハリウッド映画の大物俳優シルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーなどが、筋骨隆々な肉体を使った豪快でど派手なアクションで敵をなぎ倒す映画を発表する。映画が一般家庭でも普及する後押しとなったのは、レンタルビデオシステムの確立で、これによりいつでも手軽に映画を楽しめる時代となった。80年代とは、まさに映画の激動の時代である。
今回の『サマー・オブ・84』では、そんな1980年代のアメリカの10代の少年少女たちに焦点を向け、その当時はやり始めたホラー&スリラーの要素を取り入れた。スラッシャー映画やスプラッタ映画、サイコスリラー映画など、様々な名前で生々しい流血の見られる猟奇的な大量生産された時代に相応しい映画である。
監督の3人も、80年代に映画に魅了された青年たちである。映画に魅了され、クリエイターの道に進み、やがて知識と経験を得る。その後は、自分たちの原点でもある80年代を振り返り、その当時に流行った要素を映画の中の随所に散りばめていく。監督たちが、次世代に伝えたい80年代の青春ホラーは、トラウマ級の衝撃を与える作品であった。
映画『サマー・オブ・84』の公開前に見ておきたい映画
ターボキッド
RKSSが長編映画デビューを飾り、好評化を得た作品である。監督は、今作と同様フランソワ・シマード、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル。核戦争によって文明の滅んだ1997年が舞台の物語。チャリンコ版の『マッドマックス』と言われており、きちんと作り上げられている作品に、驚きの声が上がる。
物語を簡単にまとめると、荒廃した世界で水を巡って戦いを繰り広げていくストーリー。その中で、主人公の青年キッドは、謎の少女との恋や極悪首領との戦いに巻き込まれていく。少年が荒野を1人で爆走していく姿は、どこか微笑ましくもあり、また、不思議ちゃんの女の子とのやり取りもわくわく感が漂ってくる。
元々は『T is for Turbo』という短編の映画だったが、それがあるきっかけを経て長編映画に作り直された作品。斬新なシーンも多く、笑いがある場面も散りばめられており、面白い要素がてんこ盛りの一作となっている。
詳細 ターボキッド
シャイニング
1980年代は、ホラー映画の全盛期である。この時代は、今でも名の知られている有名な作品が続々と登場した時代で、この年代のホラー映画を見ておくなら、まずはぜひ『シャイニング』をおすすめしたい。映画のDVDのパッケージやポスターなどで、男が壁の隙間から顔をのぞかせているシーンを見たことはないだろうか。それが『シャイニング』である。
映画の題名の「シャイニング」とは、不思議な力を示すものであり、超常現象を目撃することができる。主人公ジャックを演じたジャック・ニコルソンは、小説家を志望しており、家族と共に冬期は閉鎖されるホテルへ家族とやってくる。そのジャックの息子ダニーに、シャイニングの力が宿っていた。ジャック一家がホテルを住処とすると、すぐに様々な“怪異”がジャックたちを襲う。精神を病み、謎の存在に苦しめられ、やがて命令に従わざるを得なくなっていくジャック。外界から閉ざされた孤立したホテルで、ジャックたちを襲う怪異に、成す術はあるのか。
紹介文だけを見ると、ありきたりなストーリーかもしれない。だが、ジャック・ニコルソンの並々ならない演技は、やはり実際に映画を目の当たりにしないとその恐怖は理解できない。
詳細 シャイニング
13日の金曜日(1980)
『シャイニング』と同年に公開された、こちらも全世界で知らない人など見たことのないほど有名なホラー映画『13日の金曜日』。現在でもアメリカでは、13日の金曜日は不吉な日だと信じている人もいるくらい、衝撃を与えた作品である。これまでに公開された映画の他にも10作品以上にも及ぶ映画などが作られ、ゲームのキャラクターやイメージにも採用されているほどである。
ストーリーは、はるか昔にキャンプ場で1人の少年が溺れて行方不明になったことから始まる。それ以降、キャンプ場では多くの奇怪な現象が起こり、ついに死人が出るまでに至る。しばらくキャンプ場は閉鎖されていたが、やがて数十年が経つ頃にはキャンプ場を再開。だが、そこには一連の怪事件の真犯人がまだ潜んでいたのだった。
映画に登場する猟奇殺人気ジェイソンは、男性でイメージされることが多いが、シリーズ1作品目に登場するジェイソンの正体は50代前後の白人女性である。もともとはジェイソンという男の子が湖で溺れてしまったことが原因だったが、白人女性パメラがジェイソンの母親であった。多くの死体や生々しい性的描写、激しい暴力描写やスプラッタシーンは、当時のスラッシャー映画に多大な影響を与え、ラストシーンは更に衝撃的であるため、こちらもぜひ80年代を代表するホラー映画として鑑賞をおすすめする。
映画『サマー・オブ・84』の評判・口コミ・レビュー
連続殺人鬼の正体は近所に住む警官?好奇心から調査を始めた少年たちの姿を描く『サマー・オブ・84』は、少しダークさを強めたスタンド・バイ・ミーかなと思ったら、もっと恐ろしくエグい青春スリラーでした。一夏の冒険なんて生温いものでは済まない、あまりにもドス黒い作品です。 pic.twitter.com/tYnXMKGdvt
— 人間食べ食べカエル (@TABECHAUYO) 2019年8月3日
『サマー・オブ・84』
郊外の暇を持て余した少年たちが、隣人の警察官が連続殺人鬼ぽいって思い込み探偵ごっこを続けるうちに 抜き差しならなくなるという、死体を探す旅に出る『スタンドバイミー』のホラー版ってカンジでグロシーンはないけど楽しかった‼︎前半にもう少し見せ場が欲しかったけど… pic.twitter.com/Wn75XV0g8Y— くま@べあ (@kuma_zombi) 2019年8月4日
シネマカリテ、[ Summer Of 84(サマー・オブ・84)]、最近の Stranger Things 辺りの流れに乗っけて来たかな > 懐かしみとほろ苦さでほんのり優しい気持ちに > 何これ無茶苦茶こわいんですけどどうなるの! で素直に鼓動速くして文字通り手に汗。そしてラストまで80sスラッシャーな完璧夏映画で最高! pic.twitter.com/90hgUT1lUY
— ssgr./ TheWorld’sEnd (@gr0112) 2019年8月3日
『サマー・オブ・84』
オタク×デブ×不良×ガリ勉の映画ではお馴染みだけど、おそらくこの世に存在しない仲良し4人組の一夏の思い出。一生のトラウマ。
ディスコビートも相まってレトロなアドベンチャーゲームをやってるような感覚に!脱童した仲間を「写真撮って祭壇に飾ろう!」って喜ぶシーンが最高 pic.twitter.com/VaDf9kn8y5— しすてま (@y_w_g_h) 2019年8月3日
『サマー・オブ・84』映画館にて119本目。
夏にピッタリのスリラー。「連続殺人犯も誰かの隣人だ」という脅威的なキャッチコピーとともに、オタッキーな少年たちが隣人を疑い調査していく。斬新性は緩いものの、ラストは脳裏に焼きつくほどの恐怖。子供たちの活躍からは目が離せない! #EDDIE映画2019 pic.twitter.com/NT6958yDh9— EDDIE@来季こそKingsPlayoffいこう (@eddie2yuji) 2019年8月3日
映画『サマー・オブ・84』のまとめ
日本では、アニメ『名探偵コナン』に登場する小学1年生で結成された少年探偵団が、多くの犯人を追いつめ、逮捕に貢献している。死体は登場するものの、物語はどれもほのぼのとしており、常にハッピーエンドで終わる。だが、同じ少年たちが犯人を追っていく物語の『サマー・オブ・84』は、アメリカの黄金期のスタイルや精神を踏襲した傑作的スラッシャー映画に仕上がっている。観客は、思春期の甘酸っぱい時代へタイムスリップしながらも、残酷な結末や描写に戦慄し、純真無垢の時代を、否応なく終わらせる現実の痛烈さを実感する。
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