人々から尊敬を集めている聖職者達。しかし、そんな聖職者達も、やはり人間。過ちを犯すことも勿論あるのだ。聖職者が性犯罪を起こすという禁忌のテーマを取り扱った問題作。
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の作品情報
- タイトル
- グレース・オブ・ゴッド 告発の時
- 原題
- Grace a Dieu
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2020年7月17日(金)
- 上映時間
- 137分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
サスペンス - 監督
- フランソワ・オゾン
- 脚本
- フランソワ・オゾン
- 製作
- エリック・アルトメイヤー
ニコラ・アルトメイヤー - 製作総指揮
- 不明
- キャスト
- メルビル・プポー
ドゥニ・メノーシェ
スワン・アルロー
エリック・カラバカ
フランソワ・マルトゥーレ
ベルナール・ベルレー
ジョジアーヌ・バラスコ
エレーヌ・バンサン - 製作国
- フランス
- 配給
- キノフィルムズ
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の作品概要
フランスで実際に起こった、神父による性的虐待事件。そんな、禁断とも言える事件を忠実に再現した、衝撃作が誕生。メガホンを取ったのは、『2重螺旋の恋人』や『8人の女たち』などで知られる、フランス出身の監督、フランソワ・オゾン。かつてヨーロッパ映画賞で、脚本賞も獲得した経験のある鬼才である。脚本賞受賞者ということもあり、本作も練り込まれた重厚なストーリーは必見。トラウマと必死に向き合う主人公と、彼の告発によって人生が変わる多くの人々の衝撃を見事に描き出した。第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲得した名作が、とうとう日本上陸。
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の予告動画
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の登場人物(キャスト)
- アレクサンドル・ゲラン(メルビル・プポー)
- かつて、神父から性的虐待を受けていた男性。今もその神父が活動をしていることを知り、彼の悪事を告発する決意を固める。
- ベルナール・プレナ(ベルナール・ベルレー)
- かつてアレクサンドルに性的虐待を行なっていた神父。現在も、子供達に聖書を伝えている。
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』のあらすじ(ネタバレなし)
妻子と共に、平穏な日々を送っていたアレクサンドル。しかし、彼は決して消えない傷を抱え続けていた。実は、彼は幼少の頃、プレナという神父から性的虐待を受けていたのだ。そして、ある時、未だにプレナが子供達に聖書を教えていることをアレクサンドルは知る。自分と同じような被害者を出さないためにも、彼は自らのトラウマと向き合い、プレナ神父を告発する決意を固める。活動を続けていく中で、アレクサンドルは自分と同じような経験をしてきた人間が多くいることを知る。そして、とうとう教会側はプレナの悪事を認めた。しかし、なんと、教会はそのことをスルーしようとしたのだ。さらには、事実を知った現家族とも少しずつ溝ができていき…?
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の感想・評価
聖職者の過ち
神への忠誠を誓ったはずの聖職者達。人々を導く側であるはずの彼らだが、そんな彼らでも間違いを起こすことがある。ただでさえクリーンなイメージがある聖職者。そのため、彼らが悪事に手を染めた際の印象の悪さと言えば、他の人の比ではないだろう。最新作のような、聞くもおぞましいような事件を起こしたとなれば尚更である。しかし、こう言った宗教的なスキャンダルは、中々明るみに出にくい傾向にある。だからこそ、長い間大勢の被害者達が泣き寝入りを強いられているのだろう。または、聖職者が犯罪、特に性犯罪などするはずがないと、どこかで人々は思っているのかもしれない。人は、やはり善にはなりきれないのだろうか。色々と考えさせられる一本。
幼少期のトラウマ
幼い頃にした経験というものは、深く記憶に残っていることが多い。子供の頃に苦手や怖い、と感じたものは、そのまま大人になっても苦手意識を持っていたりする。そして、深く傷ついた経験も、その人の心に大きな影を落とすのだ。ましてや、幼い頃に同性の大人に、しかも、信じていた聖職者から性的虐待を受けた、などという経験が子供に与える影響は計り知れない。人格形成には、それまでの人生、つまり幼少期の環境というものが大きく影響している。果たして、本作の主人公が抱えるトラウマは、その人格形成にどのような影響を与えたのだろうか。トラウマと向き合うことを決意し、必死に戦い続けた彼らの勇姿、こちらも目を逸らすことなく受け止めよう。
未解決事件
ベルナール・プレナ神父による性的虐待事件。その被害者は、なんと80人以上にも及ぶという。そして、その事件は、フランスで今も尚裁判が進行中だと言う。多くの子供達を恐怖に陥れたプレナ神父に対して、どのような判決が下るのか。一人の告発が、ヨーロッパ全土を震撼させる結果となった本事件。日本は他国と比較して信仰心が薄いため実感はないかもしれないが、その危険はどこにだって潜んでいる。フランス全土が固唾を飲んで見守っているこの裁判、他国だからと言って知らないフリはできない。自分であればどのように対応するか、そして、主人公のように勇気を持って告発することができるか。様々なことを感じながら、この未解決事件の行方を見守ろう。
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の公開前に見ておきたい映画
スポットライト 世紀のスクープ
聖職者が犯した性犯罪という、禁忌のような事件を取り扱ったのは、実は最新作だけではない。そして、これもまた、実際に起こった事件を題材としている。米国の新聞社史上、最も長い歴史を持つボストン・グローブ紙の調査報道班。2003年、その調査報道班がとんでもない記事を取り上げた。それこそが、カトリック司祭が起こした性的虐待事件だった。ゲーガンという神父が子供への性的虐待を行ったという事件を調査していた一行。しかし、それはこれまで隠蔽されていた闇に踏み込む、歴史的一歩だったのだ。あらゆる妨害に遭いながら、真相解明のために突き進み続けたチームの執念は圧巻。第88回アカデミー賞で、作品賞と脚本賞を受賞した名作。
ドクター・スリープ
幼い頃のトラウマが、大人になっても尚、主人公達を苦しめ続ける。本作は、あの伝説的映画、『シャイニング』の約40年ぶりとなる続編。シャイニングではまだ幼い子供だったダニーが大人になった姿を描いている。彼が幼い頃に経験した事件はあまりにも凄惨。父親の仕事の都合で移り住んだ、雪山にあるロッジ。あまりの閉鎖的空間の中で、ダニーの父親が神経を病み、オノを片手に家族に襲いかかってきたのだ。なんとか生き延びた母親とダニーだったが、そんな記憶が簡単に消え去るわけもない。今やダニーは、アルコール中毒に苦しむ中年に成り果てていた。そんな頃、ダニーは一人の少女との邂逅を果たす。そして、その少女は、ダニーと同じ力を持っていた。その力こそが、『シャイニング』。そして、ダニーは彼女を通して、世界の命運をかけた戦いに巻き込まれていく。
詳細 ドクター・スリープ
告発
最新作は、主人公が聖職者の悪行を世の中に告発したことで物語が動き出す。そして、タイトルから分かるように、こちらも告発をテーマにしている物語。アルカトラズ島という名前を、どこかで聞いたことはないだろうか。アメリカのカリフォルニア州にある島の名前。そして、その島にはアルカトラズ連邦刑務所という軍事要塞が存在した。あらゆる映画作品の舞台になっている、非常に有名な場所。そして、その刑務所で、あまりにも過酷な虐待が行われているという告発がされたのだ。その告発をきっかけに、アルカトラズは閉鎖に向かっていくことになる。本作は、そんな告発をきっかけに起こった一連の騒動を描いた物語。
詳細 告発
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』の評判・口コミ・レビュー
『グレース・オブ・ゴッド告発の時』をオンライン試写で。少年に性的虐待を加えた神父を、かつての被害者たちが告発する物語。怒る個人に対し「昔の話」「みんな苦労してる」「むしろ私も被害者(by加害者)」と沈黙を強いる圧力は、宗教も国も関係なしに身近に感じられる。テンポよく深い、快作でした pic.twitter.com/eXocqUDZSB
— 加藤よしき (@DAITOTETSUGEN) May 31, 2020
『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』一足先に鑑賞しました。カトリック神父による性的暴行を告発した人々の戦いを描く。同様の事件を新聞が告発した『スポットライト』に対してこちらは被害者本人の告発なので切実で胸が詰まる。フランスで今も係争中の実話を2時間に凝縮した圧巻の映画です。 pic.twitter.com/AtpPPi2kRr
— ビニールタッキー (@vinyl_tackey) July 6, 2020
オゾンの『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』見応えありました。トリッキーな演出は封印して、第一の告発者の始動からひたすらに事実を積み重ねていく手法に面食らうかもだけど、主旨は係争中の事件を整理して伝えること。その中で「個人と信仰」のドラマを成立させていて作家としての成熟を感じた。 pic.twitter.com/7pEI4wniKm
— 花俟良王(良い王様改め) (@goodkingsama) June 8, 2020
『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
神父の小児性愛スキャンダルを、名匠フランソワ・オゾンが十八番の幻惑演出を封じ質実に映画化。
複数の被害者視点が遷移する展開自体に、個の内面にはとても落とし込めない傷の深さが表現され、対峙する役者たちの絶えず両義的な表情演技に胸締めつけられる。 pic.twitter.com/qK6FlNcn4N
— pherim⚓ (@pherim) July 14, 2020
フランソワ・オゾン監督作『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(7月公開)、神父による児童性的虐待の実話を映画にした点は『スポットライト 世紀のスクープ』と同様も、本作は被害者と家族の深い苦悩に焦点をあてる。教会の欺瞞に憤り、勇気を出すことで世界を変える人々の、連帯と葛藤が胸に迫る。 pic.twitter.com/IDsd9rw518
— 中井 圭 (@nakaikei) May 22, 2020
映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』のまとめ
純粋無垢な子供たち。そんな子供たちを性的な目で見て、汚そうとする大人が、残念なことに存在する。そういった事件をニュースなどで目にするたびに、悲痛な気持ちを覚えることだろう。これがこの世で実際に起こったことであるなど、とても信じたくない。しかし、これはまごうことなき実際の話。私達はこの悲惨な事件から目を背けることなく、決して盲信的にならず、自分で考えることの重要性を改めて確かめる必要がある。フランス映画らしい、重厚なストーリー展開が、事件の悲痛さをより伝えてくれる。
みんなの感想・レビュー