2017年、『スタンド・バイ・ミー』や『最高の人生の見つけ方』などを手掛けた名匠ロブ・ライナーが、イラク戦争のきっかけとなった大量破壊兵器の存在を追う記者たちの奮闘劇を映像化。字幕監修には、ジャーナリスト池上彰が参戦した衝撃の真実の物語。
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の作品情報
- タイトル
- 記者たち 衝撃と畏怖の真実
- 原題
- Shock and Awe
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2019年3月29日(金)
- 上映時間
- 91分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
- 監督
- ロブ・ライナー
- 脚本
- ジョーイ・ハートストーン
- 製作
- マシュー・ジョージ
ロブ・ライナー
エリザベス・A・ベル - 製作総指揮
- マーティン・シェイファー
ウェイン・マーク・ゴッドフリー
ロバート・ジョーンズ
アラステア・バーリンガム
トニー・パーカー
クリストファー・H・ワーナー - キャスト
- ウッディ・ハレルソン
ジェームズ・マースデン
ロブ・ライナー
ジェシカ・ビール
ミラ・ジョボビッチ
トミー・リー・ジョーンズ - 製作国
- アメリカ
- 配給
- ツイン
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の作品概要
2003年、アメリカはイラクのサダム・フセインが大量破壊兵器を所有していることを理由に、イラク戦争の開戦に踏み切る。これは、地球上の人類の声明を守るためという大義名分の元、始められた戦争であった。だが、結局大量破壊兵器は見つけられなかった。イラク侵攻の作戦名“衝撃と畏怖”の名の裏で、何があったのか。ハリウッドで華々しいキャリアを築き上げてきたロブ・ライナー監督が、新たな挑戦ためにメガホンを取る。監督自らワシントン支局長役を演じ、イラク戦争開戦当時から構想を固めていた企画がついに映像化する。
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の予告動画
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の登場人物(キャスト)
- ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)
- ナイト・リッダー新聞社のワシントン支局長。アメリカ政府のイラク戦争開戦について疑問を抱く。
- ジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)
- ナイト・リッダー新聞社で働く記者の1人。ウォルコットの部下で、真実のため取材に踏み切る。
- ウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)
- ジョナサンと同じくナイト・リッダー新聞社で働いている記者。ジョナサンとタッグを組み、イラク開戦についての取材を進める。
- ジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)
- 元従軍記者で、現在はジャーナリストとして働いている。ウォルコットの意向を組み、ジョナサンとウォーレンと共に取材をする。
- ブラトカ・ランデー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)
- ジョナサンの妻。イラク戦争開戦についての記事で、世間から厳しい批判を受ける夫を献身的に支える。
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』のあらすじ(ネタバレなし)
2002年、時の大統領ジョージ・W・ブッシュはイラクのサダム・フセインが大量破壊兵器を所持していると世間に報道する。そして、アメリカ国民に状況がいかに切迫しているかを記者会見で報道することに。アメリカを、世界を、テロから守るため、ブッシュ大統領は国民にイラクへの侵攻について理解を求めた。
その情報を入手した新聞社のナイト・リッダー社では、支局長のジョン・ウォルコットがテレビ報道に一抹の疑問を覚える。すぐに部下のジョナサン・ランデーと、ウォーレン・ストロベルの2人に、事実の究明のために取材をしてくるよう命じる。
しかし、それは小さな新聞社にとってその後の社運を大きく変えることとなる。取材を命じられた2人は、政府が、サダム・フセインの所持しているであろう大量破壊兵器の所在を突き止めておらず、情報操作によって中東支配に乗り出している事実を突き止める。
真実にたどり着いたナイト・リッダー新聞社は、すぐに記事に起こしブッシュ政権の批判を世に送り出す。しかし、NYタイムズ・ワシントンポストなどの大手新聞社は、こぞって政府の方針を容認し、ナイト・リッダー新聞社は窮地に立たされてしまった。
果たして、真の愛国者は誰なのか。アメリカ全土がイラクへの侵攻に前向きになっていく一方で、戦地へ向かう兵士やその家族に寄り添う小さな新聞社の知られざる闘いが始まろうとしていた。
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の感想・評価
政治家の思惑と不都合な真実
昨今では、アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏の発言が度々物議を醸し、彼の歯に衣着せぬ物言いはたちどころにSNSなどによって世界中へ届けられ、それと同時に、出所不明の悪質なデマが当たり前のように飛び交っている。
その中には、もちろん真実も紛れているのだが、権力者に都合の悪いことを報道しているメディアは、“フェイクニュース”などと揶揄されることも。一般市民からすれば、新聞社やメディアが報じている内容は、真実であってもらわなくては困る。
しかし、今からおよそ15年以上も前に、アメリカ政府は国中を欺き、世界中の人々さえも騙して中東にあるイラクへの侵攻を開始した。それは、イラク政権を握っていたサダム・フセイン大統領が大量破壊兵器を所持しているからだとのこと。
アメリカ政府が言うのだから、真実なのだろうと誰もが疑いもしないところがアメリカの権力の大きさを物語っている。しかし実際には、そうした事実はなく、アメリカ政府の中東支配の大義名分のためだったと知らされる。この映画は、いつだって政治家や権力者は国民を裏切りかねないのだと、思い知らせてくれる教育的な作品である。
世間の空気に流されず、真実を追うジャーナリストたち
当時のナイト・リッダー新聞社では、取材チームが暴露した内容について、傘下の新聞社からは印刷や掲載を拒まれ、会社には脅迫メールや電話が届き、社員の身内からもこき下ろされる始末。それでも、取材チームは並々ならぬ使命感によって、政府職員への地道な取材の結果、真実に辿り着く。
この映画のモデルになった記者たちは、実際に映画の撮影現場でもアドバイスを行い、4人の記者の苦悩と苦難の連続であった闘いの一部始終を忠実に再現している。例え彼らの言っていることが真実であったとしても、世間の波と真逆のことを声高らかに発言するには相当の勇気がいる。
4人の取材チームは、深い苦悩を抱えながらも、衝撃の真実をこのまま隠蔽させないために、お互いを支え合い、妻や大切な恋人に支えられ、毅然と逆境に立ち向かっていく。大切な人を守りたい、大切な国を守りたい、多くの人たちの明日を守りたい。彼らのその信念と仕事へのプライドの強さは、「素晴らしい」なんて言葉が陳腐に思えてしまう程に素晴らしい。
時には笑い、時には喜び、ジョークを言い合いながらも団結して真実を追い求めるジャーナリストの姿は、あらゆる観客の涙腺を緩ませるセンセーショナルなドラマである。
イラク開戦時から練られていた構成
ハリウッド映画の監督には、多くの名称と呼ばれる人たちが現在も新たな映画を製作し、人々を楽しませている。ロブ・ライナーという監督も、そうした名匠の中の1である。彼の制作した1986年の映画『スタンド・バイ・ミー』は、21世紀となった今現在でも名作と呼ばれている。
そのロブ・ライナーが2003年のイラク戦争開戦時からずっと構想を練っていたと言われているのが、今作の『記者たち 衝撃と畏怖の真実』である。イラク戦争が終戦し、長い年月が経った現在満を持して公開される。
この映画に登場する記者たちは皆、真実を求めるために躊躇なく荒波に飛び込む者たちばかりで、演じる役者も相応のメンバーが揃っている。主人公ジョナサン・ランデーを演じているウディ・ハレルソンは、アカデミー賞ノミネート男優として知られ、最近の話題作『ハンガー・ゲーム』シリーズ、『グランド・イリュージョン』シリーズ、『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』、『ヴェノム』など怒涛の快進撃を続ける。
更に、『X-MEN』シリーズのジェームズ・マースデンに、日本のコーヒーCMでもおなじみのトミー・リー・ジョーンズ、人気ゲームの実写映画『バイオハザード』シリーズの主人公アリスを演じたミラ・ジョヴォヴィッチなど、目白押しだ。キャラクターの一挙手一投足から片時も目が離せない、ロブ・ライナー監督らしい社会はドラマである。
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の公開前に見ておきたい映画
スタンド・バイ・ミー
名匠ロブ・ライナーの名が、世間に浸透するようになった現代でも傑作だと言われている作品が『スタンド・バイ・ミー』である。アメリカのホラー小説家スティーヴン・キングの日ホラー短編集『THE BODY』が元となっており、アメリカのオレゴン州の小さな町に住む4人の少年のひと夏の思い出を描いている。
おおよそこの映画を見たことがない人でも、蜃気楼立ち込める真夏日に、4人の少年が線路に沿って歩いているイメージは何となく見たことがあるのではないだろうか。少年たちは、太陽が照り付ける真夏日のある日、「英雄になれる」との理由から、線路脇に野晒しにされている死体を見つけるため旅をする。
内気だが真面目な主人公の少年ゴーディ、正義感に溢れる秀才クリス、大きな眼鏡をかけたテディ、太っちょのバーン。12歳の頃に出会う、家庭環境も性格も個性も違う4人の少年たち。喧嘩をしながら、時には助け合い励まし合いながら、彼らは当初の目的を果たす。
物語は、大人になり小説家となったゴーディの回想記として進む。青春時代に出会ったかけがえのない友人らとの、スリルに溢れた大切な記憶は、大人になり社会に忙殺される現代人に、大切なものを思い起こさせてくれる温かい作品である。
詳細 スタンド・バイ・ミー
LBJ ケネディの意思を継いだ男
今作のような社会派ドラマを、監督のロブ・ライナーは2016年にも製作している。物語は、アメリカで最も有名な男として知られるジョン・F・ケネディ大統領の傍で働いていた副大統領のリンドン・ジョンソンに焦点を当てる。リンドン・ジョンソンという人物は、元々ケネディ大統領と同じく人種差別問題について関心が高く、志も同じくしていた仲間だった上に、どの執務も無難にこなす貴重な人材であった。
この映画で、主人公となるリンドン・ジョンソンを演じているのは、『記者たち 衝撃と畏怖の真実』でも主人公を演じているウディ・ハレルソンである。ハレルソンは、目立たずともきちんと使命を全うし、突然の訃報にも揺るぐことなくアメリカ国を支えたジョンソンを演じたが、世間の映画への評価はそこまで高くない。
ジョンソン氏の副大統領時代は、まさに耐え忍ぶ時期。ケネディ大統領の知名度や存在感が大きすぎて、常に日陰者であり政界から軽んじられていた忍耐の日々である。しかし、ケネディ大統領が暗殺されて事態は一変、慌ただしく大統領宣言をし、ケネディ大統領が行っていた執務をこなす日々。複雑なジョンソン大統領の生きざまは、確かに表現が難しいだろう。ぜひ映画鑑賞する際は、ジョンソン大統領の生い立ちを何となくでも知った上で見ることをおススメする。
詳細 LBJ ケネディの意思を継いだ男
グリーン・ゾーン
『記者たち 衝撃と畏怖の真実』では、アメリカにいる記者たちが真実を追い求める物語である。アメリカ政府に疑問を抱いた記者たちが、政府職員に細かな取材を行った結果、証拠を掴み、裏を取り、真実を世間に露見するが、『グリーン・ゾーン』はまさにイラク現地で隠された真実を暴く物語である。
主演は、数々のアクション映画に出演してきたマット・デイモン。CIAが担当しているサダム・フセイン大統領の所持する大量破壊兵器調査を補佐する役割を担っているMET隊の隊長ロイ・ミラー准尉である。任務は、大量破壊兵器が隠されているという倉庫をくまなく調べること。
だが、兵器は存在しておらず、次第にミラー准尉はこのイラク侵攻には隠された真実があるのではないだろうかと疑念を抱く。その後、CIA捜査官や現地ジャーナリストたちを味方につけ、戦争の原因を突き止めていく。
アメリカ本土にいながら真実を追い求める『記者たち 衝撃と畏怖の真実』と違い、現地で命のやり取りをしながら真実を追う姿も、見どころ満載である。真実に辿り着くまでに数々の苦悩が同じように存在しており、それでも信念の元、銃を手に戦う姿は胸を打たれる。
詳細 グリーン・ゾーン
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の評判・口コミ・レビュー
【映画】096. 記者たち 衝撃と畏怖の真実
実話を元にした記者の映画
豪華キャストしかいないが、それに負けない仕上がりでテンポ良さのストーリーにはロブ・ライナーさすが
メディア媒体が伝える情報が真実か嘘かは我々視聴者にはわからない
ただ、真実のみを伝えようとする熱い姿に胸打たれたな pic.twitter.com/obP0UHMXXW— NYcinema (@YcinemaN) 2019年3月29日
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」劇場鑑賞。9.11後イラク侵攻に動く政府と大手メディアに唯一真実を追い立ち向かったナイト・ラダー社の記者たちの実話。結末がわかるだけに辛区学びが深い。Amazonプライムでドラマ「倒壊する巨塔」と来週公開の「バイス」をセットで観るととても良いであろう映画。 pic.twitter.com/kEMIn0LcQ9
— キャサリン/Catherine (@Hitomi_forward) 2019年3月31日
『#記者たち 〜衝撃と畏怖の真実〜』鑑賞。
これは本当に今観るべき作品。
9.11のあの夜のことがフラッシュバックした。その後のゴタゴタも。
今、日本で同じことが起きている。後で謝られても、失ったものは取り戻せない。 pic.twitter.com/q6dJdY1so2— K (@ymt_k) 2019年3月29日
「記者たち 衝撃と畏怖の真実」観てきました。イラク戦争での大量破壊兵器が無かった真実を追及していた記者の話。全体に地味でちょっと難しかったのだけど何事も証拠が必要。それを見る自分の目も大切。分かりにくかったけど、けど面白かった。観てよかった。対局を描いた「バイス」が更に楽しみに。 pic.twitter.com/MziZ3VX6vh
— かんたむ (@kantamu0320) 2019年3月30日
『記者たち 衝撃と畏怖の真実』イラク戦争時代を描いた「大統領の陰謀」であり(劇中でも言及する!)、この題材で90分というタイトさも素晴らしい。特筆すべきは編集長/良きメンターであるジョン・ウォルコット役を監督のロブ・ライナー自ら演じていて、軽妙過ぎず重過ぎず絶妙なバランス!名優! pic.twitter.com/P3dGUS6znx
— 🖖濁山ディグ太郎🖖 (@DiRRKDiGGLER) 2019年3月30日
映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』のまとめ
監督のロブ・ライナー氏は、健全な民主主義には、独立したジャーナリズムが必要であると語る。政府の圧力・世間の風潮などに負けず、自由な表現方法で真実を伝える機関は絶対的に必要なのである。真実を追い求めながらも、人々に届けることのできなかった4人の記者の声が、こうして形になり世に送り出されることになった事実は、きっとこれからも真実を求める人たちに希望をもたらしてくれるに違いない。
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