『ハリー・ポッター』シリーズや『美女と野獣』で、日本人にも大人気の女優・エマ・ワトソンがヒロインを務める、アメリカ・ミソネタで実際に起こった話を元にしたサスペンス・ホラー映画。2015年に制作上映されたが、日本でも満を持してついに公開。小さな町で起こる奇妙な事件。父親の罪を告発する少女と父親の裏に隠された秘密が明かされるとき、この町に眠る恐ろしい闇も姿を現す。
映画『リグレッション』の作品情報
- タイトル
- リグレッション
- 原題
- Regression
- 製作年
- 2015年
- 日本公開日
- 2018年9月5日(水)
- 上映時間
- 106分
- ジャンル
- サスペンス
- 監督
- アレハンドロ・アメナーバル
- 脚本
- アレハンドロ・アメナーバル
- 製作
- フェルナンド・ボバイラ
アレハンドロ・アメナーバル
クリスティーナ・ピオベサン - 製作総指揮
- ボブ・ワインスタイン
ハーベイ・ワインスタイン
ジスラン・バロワ
アクセル・クシェバツキー
ノア・シーガル - キャスト
- イーサン・ホーク
エマ・ワトソン
デビッド・シューリス
ロテール・ブリュトー
デビッド・デンシック
ピーター・マクニール
デボン・ボスティック
アーロン・アシュモア - 製作国
- スペイン・カナダ合作
- 配給
- ポニーキャニオン
映画『リグレッション』の作品概要
『アザーズ』や『海を飛ぶ夢』で数々の賞を受賞しているアレハンドロ・アメナーバルが手掛けたオリジナル脚本を元に制作された、サスペンス・ホラー映画。アメナーバルと言えばスペイン映画界での活躍が知られ、多くのスリラー映画を手掛けてきた実力の持ち主。今作でも、実の娘に対しての父親からの性的虐待を巡り、事件は思いがけぬ展開を迎えることで見ている者の目をスクリーンに釘付けにする。主演を監督・俳優・著者など幅広く活躍するイーサン・ホークが務める。
映画『リグレッション』の予告動画
映画『リグレッション』の登場人物(キャスト)
- ブルース・ケナー(イーサン・ホーク)
- アンジェラの告発を受けて、アンジェラの受けた虐待暴行事件を調査する刑事。レインズと協力して、事件の真相を追う。
- アンジェラ・グレイ(エマ・ワトソン)
- 父親からの性的虐待を受けていた少女。ケナー刑事に真実を告白し、父親を告発しようとする。
- レインズ(デビッド・シューリス)
- 著名な心理学者。ケナー刑事からの応援要請で、アンジェラの父親の記憶を追体験させ、事件の真相に迫る。
- ジョン・グレイ(デビッド・デンシック)
- 自分の娘に性的な虐待をしていたアンジェラの父親。罪を認めているものの、事件の記憶は曖昧になっている。
映画『リグレッション』のあらすじ(ネタバレなし)
1990年代のアメリカ・ミソネタ州のとある町。悪魔崇拝が活発だったこの町で起こる、凄惨な少女虐待事件。その事件の被害者アンジェラは、勇気を振り絞り自らの父親の罪をケナー刑事に打ち明ける。ケナー刑事がアンジェラの父親に事実を確認すると、父親ジョンは罪を認めるも記憶は定かではない。不可思議な少女と父親に対して、ジョンは心理学者の協力を要請し、封じられた記憶を掘り起こすとともに、この町に蔓延る謎多き闇に迫って行く。
映画『リグレッション』の感想・評価
90年代の悪魔崇拝が見せる人間の狂気
この映画は実話に基づいて制作されているため、2015年に海外で上映された際の評価はそこまで高くはなかった。だが、人間の内に秘める狂気や集団心理と言ったカルト的な要素が、アメナーバルの得意とするサスペンス・スリラー的技法を使ったカメラワークによって見ている者を恐怖に陥れる。
90年代の統計では、悪魔崇拝者は世界で5万人から10万人程存在していると言うデータも残っている。そして現在もその数は増えており、悪魔崇拝を社会的に認めるような活動も多くみられる。2001年FBIが調査したところでは、悪魔崇拝者の多くは20代前後の若者だ。
そう聞くと、「若気の至り」なんていう言葉が日本にもあり、今流行りの言葉で言えば「中二病」的な要素があるのではないかと感じてしまうが、悪魔崇拝者が関与した事件では残虐なものや虐待に至るものも多く存在するため、日本人的な考え方では到底理解できそうにない。
彼らの目は確かに常人とは違う何かを見ており、心の奥底から「何か」を崇拝しているのだろう。
集団心理から読み取れる宗教観念
上記と関連して、「集団心理」とは時に厄介な力を孕んでいたりする。宗教において一神教と多神教が決して相容れないように、神と悪魔も決して相容れない存在である。更にそこに、「集団」の要素が含まれて来ると、思いもよらない事態が起こりうる。
小さな町で起こった暴行事件が、町全体を覆う闇に繋がっている。ケナー刑事が事件を紐解いていくにつれて垣間見えてくるこの町の実体。この映画の予告を見ていると、2004年に上映されたM・ナイト・シャラマン監督の作品『ヴィレッジ』を彷彿とさせる。信仰者を心理的に操作するのにうってつけなのが「掟」という存在。宗教においても、少なからずこの「掟」と呼べなくもないものが存在する。
エマ・ワトソン扮するアンジェラの住む町でも、人々の記憶を操作しているもしくは、それに近いことが行われていると見受けられる。それ程までに隠さなければならない真実とは一体何なのか。劇中には刑事の他に心理学者も登場するとのことで、町に蔓延る「悪魔」の存在と「集団心理」の行く末が気になるところだ。
ダイヤの原石から成長したエマ・ワトソンの見せる恐怖
この映画の見どころと言うか、推しポイントがどこにあるのかと言われれば、やはりヒロインがエマ・ワトソンだと言うところではないだろうか。ハリー・ポッターシリーズからあまりパッとした役どころのなかった彼女だが、2017年の『美女と野獣』以来、名女優として確かな地位を確立させたと言っていいだろう。
だが、この作品は公開こそ2018年だが制作されたのは2015年で、エマ・ワトソンは美女と野獣のベル役を演じるより前にアンジェラ役を演じていた。リグレッションのポスターが公開された際、普通の人なら『美女と野獣』の後の公開になるので、エマ・ワトソンの演技にそこまで驚かないかもしれない。
しかし、『ハリー・ポッター』後のエマ・ワトソンだと思えば、彼女はこのサスペンス映画でもう一段階演技に拍が付いたと言えるのではないだろうか。言い知れない恐怖を相手に伝えるには、ファンタジーに登場するキャラクターやモンスターを相手にするのでは現実味がない。それだけ難しい役どころだが、あのポスターのエマ・ワトソンを見れば、彼女の演技がどれだけ確立されたものか、安心して映画に集中できそうだ。
映画『リグレッション』の公開前に見ておきたい映画
海を飛ぶ夢
今作の監督・脚本を務めるアレハンドロ・アメナーバルの長編作品。この作品でもアメナーバルは監督・脚本を務めており、アカデミー賞・ゴールデングローブ賞・ヨーロッパ映画賞他、多くの賞を受賞したアメナーバルの代表作となる。
25歳の青年ラモンが、旅行中の事故により首より下が不随となる重体となる。若いラモンは、家族からの献身的な世話に支えられるが、誰かに依存しなければ生きていけない人生に絶望し死を望む。そんな折、自らの死を望むラモンと弁護士のフリアが出会い、ラモンは次第にフリアに心を開いていく。
「尊厳死」とは、日本では聞きなれない言葉だが、ヨーロッパ特に北欧では「安楽死」を推奨している国もある。ある特定の条件が揃えば、人は自らの意思で死を選ぶことができる。家族にとってはとても辛いことかもしれないが、それは時に、本人を救い誰もが幸せになるための1つの選択肢なのかもしれない。
詳細 海を飛ぶ夢
デビルズ・ノット
2013年に公開された、実話を元にした映画『デビルズ・ノット』。これは、悪魔崇拝者のティーンの男の子たちと知能障害を持つ男の子が殺人事件の犯人とされ、えん罪の被害に遭う映画である。
リグレッションも悪魔崇拝のキーワードが出てくると同時に、実話を元にしているという点でもこの映画はぜひ見て欲しい要素を揃えている。そして、少年たちを大人たちのでっち上げた証拠品によって訳の分からない裁判にかけ、犯人としてしまうところもストーリーの見どころとなっている。
日本では「悪魔崇拝」も馴染みが薄いが、キリスト教を強く信じている国では悪魔の存在もまた、キリストと同じくらい信じ込まれている。宗教観念の低い日本人からしたら、あまり理解できないかもしれないが、何かを一途に信じている人たちは、傍から見たら狂気を放っていることもある。「映画の中の世界」でなら、そう言う人たちと触れ合うのも、非日常的でスリリングかもしれない。
詳細 デビルズ・ノット
ハリー・ポッターと死の秘宝
おそらくこの名を知らない人はいないのではないかというくらい、世界的な人気を誇るファンタジー作品。中世の建物や魔法・ドラゴン・モンスター・剣に箒に杖、子供たちはおろか大人たちでさえ引き込まれてしまう魅力的なキャラクターの数々。
リグレッションでヒロインを務めるエマ・ワトソンは、このハリー・ポッターシリーズの第1作品からハーマイオニー・グレンジャーとして活躍している。さて、このシリーズでおすすめしたいのは、映画の最終章とも言われる『死の秘宝』だ。最終章に至るまでに、ハリー・ポッターシリーズは1作品目から数えると10年も経過しており、その間に、エマ・ワトソンの顔立ちや仕草は、1作品目のあどけない少女ではなくなっている。女優として演技にも力強さがあり、女の子から女性へと変貌していくその途中でもあり、一言で言うと魅力的なのだ。
大人の女性へと成熟していくエマ・ワトソンは、リグレッションで表情・仕草・目の動きだけで観客を恐怖に追いやる演技力を発揮する。その後、大ヒット作となる『美女と野獣』で更に名声を得る訳だが、このハリー・ポッターシリーズがエマ・ワトソンの礎となっているのは自明の理である。彼女の集大成を、まだ見ていない人はぜひ鑑賞をお勧めする。
映画『リグレッション』の評判・口コミ・レビュー
『リグレッション』とある家族の少女の身に起きた事件がきっかけに、イーサン・ホーク演じる刑事がこの家族に潜む異常性を嗅ぎ付け、真実を暴こうとあちこちと孤軍奮闘するサスペンス。悪魔崇拝、退行性記憶蘇生術など奇怪な要素も絡み、先の展開が見たくなる話の推進力は強力。ただオチは凡庸。7.1点
— ジャックと豆の木 (@ayumiotomo) 2018年9月15日
「リグレッション」鑑賞 父親の娘への性的暴行事件に見え隠れする悪魔崇拝者集団の謎を追うミステリー。刑事のイーサン・ホークと被害者のエマ・ワトソンが好演。全体に漂うダークな雰囲気が良い。
— ぱぱた (@errorman64) 2018年9月15日
「リグレッション」鑑賞@新宿武蔵野館。久々となるアレハンドロ・アメナーバル監督作は、悪魔崇拝が絡んでくるサスペンス。ちょっとサイコ。タイトルは 後退 の意味で、話はやや予想外の方向に。
題材的に語り口が複雑で、話を追うのがけっこう大変。アメナーバルらしさは弱め。 #twcn— aida ronpe (@ronpekun) 2018年9月15日
『リグレッション』
証拠がないのに悪魔崇拝が関係していると信じ込み狂奔する刑事、悪夢を見たり次第に精神的に追い込まれる様子が迫る、恐怖が伝染しヒステリーが発生したり。突として答えが出て事件の全容を一から説明するのはなしでしょう、皆理解してると思うのだけど、俳優陣の好演で良作。 pic.twitter.com/U7pNlSpcXy— nori (@ele_love15) 2018年9月15日
リグレッション、悪魔崇拝をテーマにしたサスペンス…というかオカルトホラー?個人的には好きなジャンルの映画なので楽しませていただきました. 若い頃より最近のイーサン・ホークの方がかっこいい.
— へらこ (@heraco004) 2018年9月15日
映画『リグレッション』のまとめ
日本では悪魔崇拝とは馴染みが薄く縁遠いが、昔から日本でも「村」の単位で崇め奉っていた神々が多く存在する。常識では測れない出来事や存在を、日本人は全てひっくるめて「神」と呼び、事あるごとに祭り事を行い、必要であれば生贄を用意してきた。そういった慣習は日本では減少傾向にあるが、宗教観念の強い海外では未だにこの映画のように、「町」単位での崇拝が当たり前なのだろう。今作に登場する「悪魔」とは日本で言うところの「邪神」の類だろうが、映画を観て「悪魔」に祟られぬよう、気を引き締めてかかりたい。
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