アカデミー賞脚本賞を受賞した鬼才ジョーダン・ピールの最新ホラー映画。公開初登場でNo.1の大ヒットとなり、映画の歴史を塗り替える最高の1作と大絶賛の嵐。主演は同じくアカデミー賞で助演女優賞を受賞したルピタ・ニョンゴが挑む。
映画『アス』の作品情報
- タイトル
- アス
- 原題
- Us
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2019年9月6日(金)
- 上映時間
- 116分
- ジャンル
- ホラー
- 監督
- ジョーダン・ピール
- 脚本
- ジョーダン・ピール
- 製作
- ジョーダン・ピール
ショーン・マッキトリック
ジェイソン・ブラム
イアン・クーパー - 製作総指揮
- ダニエル・ルピ
ベア・セケイラ - キャスト
- ルピタ・ニョンゴ
ウィンストン・デューク
エリザベス・モス
ティム・ハイデッカー
シャハディ・ライト・ジョセフ
エバン・アレックス
カリ・シェルドン
ノエル・シェルドン - 製作国
- アメリカ
- 配給
- 東宝東和
映画『アス』の作品概要
コメディアンとして活躍していたアメリカの俳優ジョーダン・ピールが最初に手掛けた『ゲット・アウト』から2年。鬼才が奏でる次なる作品は、ミラーハウスで出会った不思議な少女によって齎される至極のホラー。製作には、『ゲット・アウト』にも関わっており、『セッション』や『ブラック・クランズマン』などでアカデミー賞にノミネートされた経験のあるジェイソン・ブラムが担当する。そして、恐怖を体験し、与える側としても才覚を発揮するのは、『それでも夜は明ける』でアカデミー賞助演女優賞を受賞した演技は女優・ルピタ・ニョンゴ。最強のチームが挑む、最大の恐怖と観客たちを凍りつかせる驚愕の結末は、見た人を悪夢へと誘う。
映画『アス』の予告動画
映画『アス』の登場人物(キャスト)
- アデレード・ウィルソン / レッド(ルピタ・ニョンゴ)
- 幼少期のトラウマから失語症を患っていた少女。大人になり失語症は克服し、ゲイブと結婚する。ゾーラの母親。
- ゲイブ・ウィルソン / アブラハム(ウィンストン・デューク)
- アデレードの夫でゾーラの父親。家族と一緒にサンタクルーズにあるビーチを訪れる。アデレードの良き理解者で、頼れる夫である。
- ゾーラ・ウィルソン / アンブラ(シャハディ・ライト・ジョセフ)
- アデレードとゲイブの娘。ジェイソンの姉。無邪気な少女ながらも、恐怖に見舞われた際に家族を助けようと奮闘する。
- ジェイソン・ウィルソン / プルートー(エヴァン・アレッスク)
- アデレードとゲイブの息子。ゾーラの弟。ビーチでの不可思議な出来事や「アス」に最初に出会う。
映画『アス』のあらすじ(ネタバレなし)
熱い太陽が照り付ける真夏のアメリカ・サンタクルーズ。ここにあるビーチに、ウィルソン一家はバカンスのためにやってきた。夫のゲイブと娘のゾーラ、そして末息子のジェイソン。彼らはこの旅行をとても楽しみにしており、ただ一人浮かない顔をして内心サンタクルーズへの旅行を反対していたアデレードとは大違い。家族はビーチを満喫していた。
アデレードには、サンタクルーズにとても深い思い出があった。だがそれは、とてもよい思い出だったとは言い難い。時は1986年の末にまで遡る。まだ幼い少女だったアデレードは両親と一緒に今回と同じようにサンタクルーズまでバカンスにやってくる。
そして、そのときにたまたま迷い込んだビーチハウスで、アデレードはある人物と出会ってしまった。それがきっかけでアデレードは深いトラウマを負い、失語症になるまでに至った。
時は戻り、現在のアデレードは失語症も克服して家族にも恵まれている。だが、ジェイソンがビーチで出会った不可思議な男によって、過去の記憶が呼び起される。ビーチハウスに戻ったアデレードは、ゲイブにトラウマを告白する。
ゲイブがアデレードを宥め、一家が一安心したと思ったそのとき、ビーチハウスは突然停電し暗闇に包まれる。そして、ついに「彼ら」がやって来てしまった。
映画『アス』の感想・評価
薄気味悪い恐怖に塗り固められたサスペンスホラー
前作『ゲット・アウト』の興行成績の2倍を超える数字を叩き出した『アス』は、批評家支持率94%という高い成績を収めている。デビュー作の次作はパッとしないと思われがちだが、ピール監督はそのジンクスを見事に払拭したと言える。
内容は、バカンスに来ていた家族に未曾有の恐怖が襲い掛かるものだが、前作の『ゲット・アウト』同様、今作にもピール監督お得意の強いメッセージ性が込められている。『ゲット・アウト』では、人種差別問題をテーマにしながらのホラー作品であったが、今作ではキリスト教の世界観を強く表している。現代のアメリカに蔓延る社会問題を、ホラー作品として取り上げているため、アメリカ人受けがとても良い作品となったのは当然と言える。
日本人からすると、その世界観を理解するのに違和感を覚えるかもしれない。ピール監督が投げかけるメッセージや世界観を、日本人である観客たちがキャッチできるのか。もし世界観に入り込んでしまったら、覚めない悪夢に引きずり込まれたということになるかもしれない。
自分たちと瓜二つの集団が繰り広げる恐怖体験
「ドッペルゲンガー」という言葉を、ほとんどの人が一度くらいは聞いたことがあるはず。自分と全く同じ姿かたちをした存在で、ドッペルゲンガーを見た本人は、その直後に命を落とすと言われている。
今回の映画に出てくる「恐怖」の存在は、そのドッペルゲンガーである。元々は幻覚の一種として認知されており、「自己像幻視」という名前まで付いている超常現象の1つである。古くは肉体から霊魂が分離し、実体化したものだと信じられており、18世紀末から20世紀にかけて多くの小説家やクリエイターたちがドッペルゲンガーをモチーフにした作品を作り出している。自己の罪悪感の投影と言ったテーマにし、「死」の象徴や前兆でもあるドッペルゲンガーは、ホラー作品にはとても魅力的なのだ。だが、それを演じるとなるとその苦労は計り知れない。
なぜなら、役者は1人しかいないからだ。1人2役を演じる役者は大勢いるが、恐怖を与える者と、それを享受する者を演じ分けるには、相当の技術が必要となる。アカデミー賞で助演女優賞を受賞したルピタ・ニョンゴを始めとした実力派たちが揃う今作で、彼らの織り成す自己投影ホラーがどのような結末を迎えるのか。表と裏の戦いから、目を背けてはならない。
映画『アス』の公開前に見ておきたい映画
ゲット・アウト
俳優として多くのメディアに登場し、コメディアンとしても活躍していたジョーダン・ピールが初めて脚本を書き下ろした作品。更に自ら監督も務め、作品をアカデミー賞脚本賞受賞という大挙にまで持っていった。
映画は2017年に製作公開され、主人公はアフリカ系アメリカ人の青年クリス・ワシントン。彼は、写真家として活動しておりローズという恋人とがいた。ローズがクリスを両親に紹介するとのことで、ローズの家族が住むアーミテージ家を訪れる。
そこでクリスは、自らの想像を超える恐怖に直面する傍らで、自らを省みる貴重な体験もすることになる。白人である恋人のローズはクリスが黒人であることを気にも留めていないが、アーミテージ家でクリスが体験するのは普通のホラーとは一味違う。テイストが違えばコメディ映画にでもなったであろう要素がとても多いのは、さすがコメディアンであるピール監督ならではと言える。
とはいえ、『アス』でも共通するように、音楽の使い方やシーンの見せ方、役者の表情の使い方などは目を見張るものがあるため、ピール監督作品を知るためにぜひ鑑賞しておくべき作品である。
詳細 ゲット・アウト
パラノーマル・アクティビティ シリーズ
『アス』の制作陣に名を連ねているジェイソン・ブラムの名を聞いたら、真っ先に思い浮かぶ作品の1つが『パラノーマル・アクティビティ』シリーズではないだろうか。2007年に第1作品目が製作公開され、フェイクドキュメンタリーとも言われるモキュメンタリーの手法で撮影された超常現象をテーマとしている作品である。実話に元づいて制作されているために、リアリティ溢れる内容は当時のアメリカ人たちの心を鷲掴みにしている。その成果もあって、製作費1万5千ドルという低予算でありながらも、オープニング週末1館あたりの平均興行収入は『タイタニック』に次ぐ成績を叩き出した。
その後2010年に第2作品目が、続く2011年と2012年に3作品目と4作品目が製作された人気作品となった。その後、2015年に5作品目が登場し、内容もそれに伴って段々と濃くなっていく。2の前日譚に位置付けられており、3の後日談でもあるため、この作品を鑑賞する際は全シリーズ通して観ることをお勧めしたい。
それでも夜は明ける
ケニアが誇る名女優・ルピタ・ニョンゴがその名を知らしめた2013年公開の歴史ドラマ映画。ニョンゴはこの作品で、アカデミー賞助演女優賞を受賞し、女優のキャリアを不動のものとした。
原作は1853年に発表された奴隷体験記が元になっており、映画は体験記を記したソロモン・ノーサップが驚くほど忠実に再現されている。時代背景は1841年のアメリカで、自由黒人であるソロモンは、ヴァイオリニストとして妻と2人の子供と順風満帆な人生を歩んでいた。だが、とある男たちから周遊公演に誘われたソロモンがその申し出を受けると、男たちはソロモンを薬漬けにし、奴隷として農家に売り払う。
この映画で、ニョンゴはプランテーションを取り仕切っている残忍で意地悪な主人の奴隷パッツィーとして登場する。パッツィーは日常的に主人から性的な暴行も受けており、綿花を毎日200キロ以上摘むなどの重労働を強いられている。それにも拘わらず、主人の機嫌一つで厳しい鞭打ちにも遭い、耐え忍ぶ生活を送る。
歴史の教科書で知らされる白人至上主義・黒人の奴隷時代とは違う、リアリティ溢れる作品で、演技とはいえニョンゴの表情には心が締め付けられる。この映画は、ある種の覚悟が必要な作品であるとも言える。
詳細 それでも夜は明ける
映画『アス』の評判・口コミ・レビュー
『アス』家族がそれぞれ自分たちと同じ姿をした相手と戦う構図が、NARUTOでいうところの対音の4人衆的な、少年漫画系チームバトルを思い起こさせて楽しかった。ただ、メッセージありきで肝心のストーリーが弱い。あと長いね。顔面の筋肉を酷使した顔芸は今回も健在です。プラス今回は体の動きも良い。 pic.twitter.com/69HTBs2yzg
— 人間食べ食べカエル (@TABECHAUYO) 2019年9月7日
『アス』
上層民と下層民。不快感極まりない演出により炙り出す、社会的弱者の怒り、哀しみ、切望。手を取り合って、武器を持って、立ち向かわざるを得ない格差社会を、更に助長するUnited States(Us)への痛烈な批判を込めた社会派ホラー。日本も決して例外ではない。赤い「私達」が増えないように。 pic.twitter.com/nCeGtXnRF5— じょび (@moviejovi0116) 2019年9月7日
#アス
二重性をテーマに至る所にメタファーを盛り込み、不吉で不快な音楽と共に”自身の抱える恐怖”と”自分自身の恐怖”そのものを描く。細部まで作り込まれた世界観と日常に非日常が入り込んでいく恐怖に酔い痴れた。
小さい頃に思い描いていたイメージをホラーとして映像にしてくれて何だか嬉しかった pic.twitter.com/lEv0zSyS0H— Tom@映画垢 (@movie_watcjer) 2019年9月6日
『アス』
アメリカ格差社会の実情に対する警告をホラーとして描く社会派映画で、同じ社会になりつつある日本も人ごとではないように感じました。もし貧困層の人が家に入り込もうとしたら? 裕福さを守るため同じ国に住む人の不幸を無視するのか? 自分がそちら側だったら? そんな映画です。
【86点】 pic.twitter.com/Kz5NnaG3Nv— みねさん@映画垢 (@inpakuto12345) 2019年9月6日
『アス』
前作に勝るとも劣らない作品に。
映像面は遥かにパワーアップ。特に暗闇のシーンは恐怖と様式美が見事に融合している。
ユーモアのブチ込みも最高。残酷で不謹慎、そのユーモアと恐怖が何よりも雄弁にフィクション世界で現実を皮肉る事に成功している。
ルピタ・ニョンゴの怪演も必見。 pic.twitter.com/nIbxBbV3k8— メトロポリタン (@redsoil3) 2019年9月7日
映画『アス』のまとめ
夏を彩る映画は、いつだってホラー作品である。今年も背筋を冷たく凍らせるような映画に巡り合えそうである。また、映画の制作や公開に関しても、年々新しくなってきている。ピール監督でいえば、ホラーでありながらも強いメッセージ性を込めた作品として認知されており、今回も目を凝らしながら映画を観賞すると、後々に「あ!」と思うところが出てくるはずである。映画の醍醐味とも言えるので、映画の恐怖に負けることなく最後まで鑑賞してほしい。
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