映画『ウインド・リバー』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし) | MIHOシネマ

「ウインド・リバー」のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

第70回カンヌ国際映画祭(ある視点部門)監督賞を受賞した社会派のクライム・サスペンス。ネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバーで頻発する少女殺害事件を通して、アメリカ社会が目を背けてきた問題を暴き出す。

ウインド・リバーの作品情報

ウインド・リバー

タイトル
ウインド・リバー
原題
Wind River
製作年
2017年
日本公開日
2018年7月27日(金)
上映時間
107分
ジャンル
サスペンス
監督
テイラー・シェリダン
脚本
テイラー・シェリダン
製作
ベイジル・イバニク
ピーター・バーグ
マシュー・ジョージ
ウェイン・L・ロジャース
エリザベス・A・ベル
製作総指揮
エリカ・リー
ジョナサン・ファーマン
ブレイデン・アフターグッド
クリストファー・H・ワーナー
ボブ・ワインスタイン
デビッド・C・グラッサー
ウェイン・マーク・ゴッドフリー
ロバート・ジョーンズ
ニック・バウアー
ディーパック・ネイヤー
ティム・ホワイト
トレバー・ホワイト
ニコラス・シャルティエ
ジョナサン・デクター
バンサン・マラバル
ブラヒム・シウア
キャスト
ジェレミー・レナー
エリザベス・オルセン
ジョン・バーンサル
ジル・バーミンガム
ケルシー・アスビル
グレアム・グリーン
製作国
アメリカ
配給
KADOKAWA

ウインド・リバーの作品概要

ボーダーライン』(15)と『最後の追跡』(16)でアカデミー脚本賞に2年連続ノミネートされた脚本家のテイラー・シェリダンがオリジナル脚本で初監督を務め、不毛の地に追いやられたネイティブアメリカンの人々が抱える問題を暴いていく。主人公の孤独なハンターを演じるのは『ハート・ロッカー』(08)や『ザ・タウン』(10)での演技が絶賛された実力派のジェレミー・レナー。『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(11)のヒロイン役で鮮烈なスクリーン・デビューを果たしたエリザベス・オルセンが正義感の強い新米女性捜査官を演じる。

ウインド・リバーの予告動画

ウインド・リバーの登場人物(キャスト)

コリー・ランバード(ジェレミー・レナー)
ウインド・リバーの合衆国魚類野生生物局で働く白人ハンター。ネイティブアメリカンの妻との間に娘と息子がいたが、3年前に娘のエミリーが殺され、妻とも離婚してしまった。ジェーンに依頼され、ネイティブアメリカンの少女ナタリー殺害事件の捜査に協力する。
ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)
FBIの新米捜査官。殺人事件の捜査経験はほとんどない。事情があってFBIの専門チームが来られなくなり、地元警察とコリーの協力を得てナタリー殺害事件の真相に迫っていく。
マット(ジョン・バーンサル)
殺されたナタリーの恋人の白人青年。森の中で死体となって発見される。
マーティン(ギル・バーミンガム)
ナタリーの父親。妻は心を病み、息子はドラッグ中毒になっているため、娘のナタリーだけが心の支えだった。

ウインド・リバーのあらすじ(ネタバレなし)

ワイオミング州の雪深い山岳地帯にあるネイティブアメリカン保留地「ウインド・リバー」の雪原で、18歳になるネイティブアメリカンの少女の死体が発見される。第一発見者となったハンターのコリーは、少女が娘の友人のナタリーであることを知って胸を痛める。コリーの娘エミリーも、3年前にナタリーと似たような状況で亡くなっていた。

部族警察長はFBIに報告するが、FBIは猛吹雪に阻まれてなかなか現地に来られず、何とかたどり着いたのは新米捜査官のジェーンだけだった。検視の結果、ナタリーは生前に犯人から暴行され、逃げる途中でマイナス30度の冷気により肺出血を起こして死亡したことがわかる。これは明らかに殺人事件だったが、法医学的には他殺と断定することができず、FBIの専門チームを呼べないという事態に陥る。

たった1人でこの事件を担当することになったジェーンは、この土地のことをよく知るコリーに協力を依頼し、極寒のウインド・リバーで捜査を開始する。捜査を続けるうち、ジェーンはコリーが抱える心の傷やこの土地が抱える問題の根深さに直面していく。

ウインド・リバーの感想・評価

テイラー・シェリダンの軌跡

本作で初監督を務めるテイラー・シェリダンは、俳優として映画やテレビでキャリアを積み、2015年公開の『ボーダーライン』で脚本家デビューを果たした。この作品は骨太な内容と繊細な人物描写が高く評価され、テイラー・シェリダンも脚本家としてハリウッドで注目される。

2作目の『最後の追跡』(16)は、テイラー・シェリダンのオリジナル脚本を映画製作会社が買い取り、デヴィッド・マッケンジー監督によって映画化された。ひと昔前の西部劇を思わせるような設定で、テイラー・シェリダンは濃厚な人間ドラマを展開させている。この作品も批評家から大絶賛され、第89回アカデミー賞で作品賞・助演男優賞(マーカス・ハミルトン)・脚本賞・編集賞にノミネートされた。残念ながら日本では劇場未公開だが、Netflixでオリジナル映画として配信されているので、利用されている方はぜひ鑑賞してみて欲しい。

そして、現代アメリカの辺境地にスポットを当てたフロンティア3部作の完結編として、テイラー・シェリダンは『ウインド・リバー』の脚本を執筆し、初監督を務める。テイラー・シェリダンがフロンティア3部作完結編の舞台に選んだのは、ネイティブアメリカンの保留地だった。それには深い理由がある。

ネイティブアメリカンの人たちのリアルな声を伝えたい

物語の舞台となる「ウインド・リバー」は、ワイオミング州の山間部にある豪雪地帯で、人間が普通に暮らせるような場所ではない。しかし、この不毛の地はネイティブアメリカンの保留地に指定されており、今でもネイティブアメリカンの人々が暮らしている。彼らはわずかな年金と引き換えに、人間の尊厳を奪われた。何の産業も育たない不毛の地に追いやられた人々は、アルコールやドラッグに溺れ、犯罪に手を染めていく。ここでは、癌よりも殺人で命を落とす確率の方が高いのだ。そして、年頃になった少女たちは集団レイプを企む男たちの餌食になっていく。

テイラー・シェリダン監督は、そういう現実から目を背けてきた現代アメリカの失敗を直視し、ネイティブアメリカンの保留地で念密な取材を重ねた。彼らと生活を共にして、時間をかけて彼らの話を聞き、彼らの抱える問題と向き合ってきた。そして、アメリカ社会が黙殺してきたネイティブアメリカンの人々のリアルな声を伝えたい一心で、この作品を作り上げたのだ。彼の真摯な姿勢は、きっと多くの観客の心を揺り動かし、忘れ去られた不毛の地に小さな光を灯すことになるだろう。

ジェレミー・レナーという名優を迎えて

本作で主人公のハンターを演じるジェレミー・レナーは、名脇役としてキャリアを重ねてきた実力派の俳優だ。いかにもスター然とした雰囲気の俳優が多いハリウッドで、自然体で生きている素朴な魅力がある。

長らく助演男優の印象が強かったジェレミー・レナーが、主演男優として脚光を浴びたのが2008年公開の『ハート・ロッカー』。イラク戦争の最中、バグダッドで危険物処理をするアメリカ兵の死闘を描いたこの作品で、ジェレミー・レナーは主人公のウィリアム・ジェームズ一等軍曹を演じた。ジェレミー・レナーは命知らずの危険な雰囲気の軍曹を見事に演じ切り、全米映画批評家協会主演男優賞など、多くの映画賞で主演男優賞を受賞した。

『ウインド・リバー』のキャストについて、テイラー・シェリダン監督は、心に傷を負った孤独なハンターのコリーを演じられるのは、ジェレミー・レナーしかいないと考えていたようだ。「このキャスティングは大正解だった」と監督も太鼓判を押しているので、ジェレミー・レナーがどんな演技を見せてくれるのか、とても楽しみだ。

ウインド・リバーの公開前に見ておきたい映画

映画『ウインド・リバー』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。『ウインド・リバー』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

ボーダーライン

アメリカ西部のアリゾナ州では、メキシコの麻薬カルテルによる誘拐事件が多発し、多くの被害者が出ていた。この捜査を担当することになったFBI女性捜査官のケイト(エミリー・ブラント)は、国防総省のマット(ジョシュ・ブローリン)と彼のパートナーのアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)という謎のコロンビア人と共に、アメリカとメキシコの国境付近へ向かう。そこは暴力で支配された地獄のような無法地帯だった。

テイラー・シェリダンが脚本を書いた「フロンティア3部作」の第1作目。アメリカとメキシコの国境付近に横行する暴力をリアルに描き、多くの批評家から高い評価を得た。暴力描写は強烈だが、エミリー・ブラントが演じた過酷な現実に翻弄される女性捜査官とベニチオ・デル・トロが演じた冷酷な殺し屋の人物描写が素晴らしく、画面から目が離せない緊張感が続く。この作品が高い評価を得たのは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の演出のうまさ、エミリー・ブラントとベニチオ・デル・トロの確かな演技力に加えて、テイラー・シェリダンの脚本が秀悦であったことが大きい。

詳細 ボーダーライン

ミシシッピー・バーニング

1964年、ミシシッピ州のフィラデルフィアで公民権運動家3名が行方不明になる事件が発生し、FBIのベテラン捜査官アンダーソン(ジーン・ハックマン)とエリート捜査官ウォード(ウィレム・デフォー)が現地で捜査を開始する。しかし、人種差別主義者の地元警察やKKK団に邪魔をされ、捜査は難航する。アンダーソンとウォードは人種差別という巨大な敵と戦いながら、事件の真相に迫っていく。

1988年に公開されたこの作品は、実際に起こった公民権運動家殺害事件を基にして製作されており、1960年代当時のアメリカ南部で、いかに不条理な人種差別が行われていたかを知ることができる。事件の真相もさることながら、人種差別主義者たちの黒人に対する残虐性が容赦なく描かれており、アメリカの抱える深い闇を嫌でも垣間見ることになる。胃がキリキリと痛むような作品ではあるが、社会派のクライム・サスペンスを探している方にはオススメだ。

詳細 ミシシッピー・バーニング

シティ・オブ・ゴッド

ブラジル出身のフェルナンデス・メイレレス監督が、リオデジャネイロのスラム街に生きる若者や子供たちの弱肉強食の世界を描き、世界中に衝撃を与えた犯罪映画。メイレレス監督はこの作品で数々の映画賞を受賞し、ブラジルを代表する映画監督となった。

演出は決して重くないのだが、描かれている内容は強烈で、鑑賞後は呆然としてしまう。リオのスラム街の子供たちは、貧困から抜け出すために銃を手にして、ギャングとしてのし上がる道を選ぶ。人を傷つけてはいけない、殺してはいけないという当たり前の倫理観がここには存在しない。彼らは生きるために違法薬物を売りさばき、縄張り争いをして多くの人を殺す。政府も警察も守ってくれないので、多くの子供が暴力を肯定するようになる。

メイレレス監督はこの現実を伝えるため、現地の子供たちをキャストに起用して、作品にリアリズムを持たせている。演出にリアリズムを求めるという点に『ウインド・リバー』との共通点を感じるので、両作品を見比べてみるのも面白いだろう。

詳細 シティ・オブ・ゴッド

ウインド・リバーの評判・口コミ・レビュー

ウインド・リバーのまとめ

脚本と監督を務めるテイラー・シェリダンは、物語の作り方も人間の描き方も非常にうまいので、本作はサスペンスとしてもヒューマンドラマとしても見応えのある作品に仕上がっているはずだ。観客は初めてこの地を訪れた新米捜査官と同じ気持ちでウインド・リバーの悲劇に胸を痛め、そこから目を逸らしてはいけないという使命感を感じることだろう。そして、人間について深く考える機会を得る。テイラー・シェリダン監督は「この作品を通して観客をカタルシス(浄化)へと導きたい」と語っている。「カタルシスってどんな感じ?」と思った方は、劇場へ足を運んで欲しい。

この記事をシェアする