映画『女神は二度微笑む』の概要:これからのインド映画の方向性を決定付けた至極のヒューマン・ミステリー。夫の失踪事件を追う若い女性のストーリーを軸に、腐敗したインド社会にメスを入れた本作。二転三転するストーリー展開に、ラストにアッと驚く衝撃の事実を据え置きながら、謎が謎を呼ぶ展開は、観る側を混乱の渦に陥れる。主演は将来のインド映画界を担うヴィディヤ・バラン。誰もが知らなかったもう一つのインドの“顔”を炙り出す名作だ。
映画『女神は二度微笑む』 作品情報
- 製作年:2012年
- 上映時間:123分
- ジャンル:アクション、サスペンス
- 監督:スジョイ・ゴーシュ
- キャスト:ビディヤ・バラン、パラムブラト・チャテルジー、ナワーズッディーン・シッディーキー etc
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映画『女神は二度微笑む』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『女神は二度微笑む』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『女神は二度微笑む』のあらすじを紹介します。
インドの大都会コルカタ。ここは、2年前猛毒ガスによる地下鉄無差別は起きた地だ。この大都会の国際空港に一人の妊娠中の女性が降り立った。彼女の名は、ヴィディヤ(ヴィディヤ・バラン)。イギリス・ロンドンから遥遥この地に訪れた理由は、一ヶ月前コルカタに出張に行ってから、突然失踪した旦那アルナブを探しに来たのだった。しかし彼の手掛かりは写真一枚だけ。他に勤務していた会社に訪ねてみても、旦那の勤務履歴もない。出張先で宿泊していた宿の店主に聞いてみても、彼が宿泊した履歴は何一つ残されていなかった。今までずっと存在していた旦那が、ある日突然、忽然と姿を消してしまった。途方に暮れる彼女に、協力を申し出たのは警察署に勤務する下っ端の警察官ラナ(パランブラト・チャテルジー)だった。彼は警察経験が浅く、少々頼りないものの、誠実で実直な性格は、ヴィディヤを最後まで支える良き理解者、協力者になる。
後日、彼女の携帯電話に初老の女性から連絡が入る。彼女はヴィディヤの旦那が勤務していた会社の人事部の女性。その彼女によると、ヴィディヤの訪問後、気になってアルナブの勤務データを調べたところ、彼とは別の男性ミラン・ダムジという旦那と瓜二つの人物が浮上した。パソコンの中にあるデータにアクセスしようとしたが、その男の写真はおろか、データ内にもアクセスできない人物だったのだ。少し怪しんだ人事部の女性が、自らヴィディヤに連絡をとった訳だ。そのミラン・ダムジが見つかれば、旦那アルナブの消息が掴めるかもしれないと、ヴィディヤに助言を与えるのだが、その日の晩に彼女は何者かによって、殺されてしまう。その一方、ミラン・ダムジと言う情報が再浮上したことによって、国家情報局のエージェント達が動き出した。捜査の指揮権を与えられた国家情報局の幹部、傍若無人で独裁力の高いカーン(ナワーズディーン・シッディーキー)が捜査に加わることに。圧力のある物言いの彼だが、頭の切れる洞察力で事件解決に導こうとする。
旦那の消息を未だ掴めないヴィディヤとラナ。ミラン・ダムジの存在を知った彼らは、事件の核心に近づこうとするも、彼女は地下鉄のホームで怪しい男性に命を脅かされる。ショックを隠せない彼女だが、執念の元、アルナブの捜索とミラン・ダムジの調査を再開する。少しずつ事件の全容が明らかになる中、ミラン・ダムジという男が、2年前にコルカタで起きた凄惨な事件、猛毒ガスによる地下鉄無差別テロの首謀者だったのだ。そして、ミラン・ダムジが身を置いていた会社は、彼にとっての隠れ蓑だった。果たして、夫アルナブを見つけることができるのか?ミラン・ダムジは存在するのか?無事、彼女はイギリスに帰ることができるのか?
映画『女神は二度微笑む』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『女神は二度微笑む』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
ドンデン返しと新たなヒロイン像
ドンデン返しのある映画は好きですか?この作品『女神は二度微笑む』は観る側を驚かせる衝撃のラストが用意されている。また、そのラストを説得力のあるシーンにするために、物語の途中途中に多くの伏線を配置している。主人公のか弱き女性ヴィディヤは協力者ラナや国家情報局員の幹部カーンだけでなく、私たち観客をも騙してしまう映画史に残る稀代の名キャラクターだ。
ドンデン返し映画で有名なのは99年に異例のヒットを飛ばしたホラー映画『シックス・センス』が認知度高い。ブルース・ウィリス演じる小児精神科医マルコムが、映画の冒頭で既に亡くなっており、ラストに実は幽霊だったと言う設定は、当時は斬新だった。ストーリー展開を読めた人は、少し物足りなかったかもしれないが…。本作も同様の衝撃度があるのは間違いない。ドンデン返しのある映画が、過去にどのような作品が軽く触れておきたい。
まずは前述に触れた『シックス・センス』はその代表格だ。近年では2014年の年末に公開されたデビッド・フィンチャー監督最新作『ゴーン・ガール』が記憶に新しいだろう。また同監督の代表作『セブン』も、ある意味ドンデン返しと言えるかもしれない。次に公開年順にドンデン返しのある作品について紹介したい。70年代は『スティング(1973年)』80年代は『エンゼル・ハート(1987年)』90年代は『ユージュアル・サスペクツ(1995年)』『真実の行方(1996年)』『陰謀のセオリー(1997年)』『ゲーム(1997年)』『オープン・ユア・アイズ(1997年)』『ライアー(1997年)』『隣人は静かに笑う(1998年)』『メメント(2000年)』『スナッチ(2000年)』2000年代以降は『アザーズ(2001年)』『アイデンティティー(2003年)』『マッチスティック・メン(2003年)』『バタフライ・エフェクト(2004年)』『SAW(2004年)』『プレステージ(2006年)』『シャッター・アイランド(2009年)』『ミッション8:ミニッツ(2011年)』とこのリストから漏れたが、多くの映画が製作されている。
80年代まではこのような作品ジャンルが、それほど人気がなかったと窺える。知名度と共に人気が出始めたのは90年代後半以降だろう。その人気の流れを汲むキッカケとなったのはデビッド・フィンチャー監督の出世作『セブン』かもしれないと、私は思う。あの後味悪い衝撃のラストは、後の作品に大いに影響を与えている。また95年に公開された『ユージュアル・サスペクツ』のヒットのおかげで、この作品以降、頻繁にこれらと類似した作品が数多く公開されている。公開から今年で20年経つが、この作品は未だに映画ファンの間でもラストのドンデン返しは語り草だ。初期のドンデン返しの特徴を考えてみると、記憶喪失系の作品か詐欺師が関連した作品が目立っていたが、99年公開の『シックス・センス』はその後の方向性を転換させている。2001年公開の『アザーズ』はきっと、この作品のヒットを受けて作られたのだろうと考えられる。サスペンスの多かった作品群にホラー映画と言う新しい風を送り込んだのではないでしょうか。2000年、少しずつ形態が変わって行くのが分かります。中でも顕著に現れているものは『バタフライ・エフェクト』と『ミッション8:ミニッツ』です。前者はタイムスリップのもの。後者は軍の陰謀に巻き込まれた兵士。両作品はドンデン返し系の作品群では、群を抜いて異色作と言ってもおかしくないでしょう。ここで、新しい流れを生み出したのはやはり2000年代に人気を独占した『SAW』が挙げられます。この辺りから、映画ファンのみならず、世間一般にもこの類いのジャンル映画が定着したと言えるのではないでしょうか。
また蛇足ですが、もう一つのこの作品群の中から見えてくるものがあります。それは、一人の映画監督は数本、似たような作品を制作している点です。例えばデビッド・フィンチャーは『セブン』『ゲーム』『ゴーン・ガール』クリストファー・ノーランは『フォロウィング』『メメント』『プレステージ』アレハンドロ・アメナーバルは『オープン・ユア・アイズ』『アザーズ』と一人の監督が似たような作品を制作する傾向にあるのかもしれません。
本作『女神は二度微笑む』のもう一つの特徴は、映画ラストに据え置かれたヒロイン像でしょう。彼女ヴィディヤに対する観客のイメージは、ラスト5分のところまで妊娠中のか弱き女性の姿に映っていますが、実は彼女は妊娠などしてなかったのです。それどころか、失踪中の旦那もすべて作り話だったのです。では、彼女の目的はなんだったのでしょうか?それは、2年前に遡ります。実は彼女の実在した夫は、元警察官。地下鉄テロの首謀者を追って、車内で殉職していたのです。その復讐として彼女は大掛かりな作り話をでっち上げ、周りの協力者を欺きました。観ているこっちまで、騙されるとは。私は物語の行く末を案じながら、ヴィディヤの正体を考えていましたが、最後まで見抜けなかったです。その点は本当に騙されました。ラスト5分、復讐を胸に反逆する彼女の姿には、映画史に残る新たなヒロイン像を打ち付けています。映画の中での格好いいヒロインは、まさに映画の魅力の一つでしょう。
アクション映画などで連想できる格好いいヒロインはたくさんいます。記憶に新しいのはリュック・ベッソン監督、スカーレット・ヨハンソン主演の『ルーシー』。リュック・ベッソン監督と言えば『レオン』や『二キータ』など、アクション・ヒロインのキャラクターを造型する監督では、一番有名で人気の監督でしょう。次に、『エイリアン』シリーズ、『テルマ&ルイーズ』の製作者リドリー・スコットにこの類いの作品の印象が強い監督の一人だ。ちなみにかドンデン返し映画『マッチスティック・メン』は同監督だ。アクション女優ではアンジェリーナ・ジョリーがどの世代からも人気が高い。『トゥーム・レイダー』シリーズ『ソルト』『ウォンテッド』『Mr.&Mrs. スミス』などアクション女優としての印象がある。またアクション関係ではないが女優のヒラリー・スワンクもこれらの類いの女優として印象深い。代表作『ボーイズ・ドント・クライ』『ミリオンダラー・ベイビー』など、どちらかと言えば格好いい映画のヒロインを演じることが多い。こうして見ると、映画にとってどんなカタチであれ、ヒロインと言う存在は必要不可欠なのです。
本作はまさに格好いいヒロインの歴史の中にまた新しいヒロイン像を生み出したのは、間違いないのです。ドンデン返しで見ても、アクション・ヒロインで見ても、どちらでも楽しめる必見の価値ある作品です。
映画『女神は二度微笑む』 まとめ
少しずつ従来のインド映画のイメージが払拭されつつ昨今。インド映画はもう、ミュージカルだけの映画ではないのです。感情を押し出したヒューマンドラマや頭を使わなければならないような珠玉のサスペンスドラマなど、日本のみならず、全世界の映画ファンが好むような作品が目白押しなのです。インド映画=ミュージカルと考える人は、少し古い考え方を持っているのかもしれません。ただ、ミュージカルが全面的に消滅しているわけではなく、ミュージカル要素を含む演出や作品はいまだに存在しています。インド映画にとって、今が一番ミュージカル映画とそうでない映画のバランスがとれているのです。ミュージカルがちょっととか、上映時間が長いからとか、どこか稚拙で古い概念は捨てて、インド映画を鑑賞する絶好のタイミングが“今”なのです。そのチャンスとして、一番初めに観ても損はしない作品として本作『女神は二度微笑む』をオススメします。
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