1977年、イタリアで制作発表されたホラー映画『サスペリア』は、映画史に残る名作と言われるほどの評価を得る。2016年、その傑作作品がアメリカでリメイクされ、2018年に満を持して公開された。禁断の話題作が、2019年ついに日本上陸。
映画『サスペリア』の作品情報
- タイトル
- サスペリア
- 原題
- Suspiria
- 製作年
- 2018年
- 日本公開日
- 2019年1月25日(金)
- 上映時間
- 152分
- ジャンル
- ホラー
- 監督
- ルカ・グァダニーノ
- 脚本
- デビッド・カイガニック
- 製作
- マルコ・モラビート
ブラッドリー・J・フィッシャー
ルカ・グァダニーノ
デビッド・カイガニック
シルビア・ベンチュリーニ・フェンディ
フランチェスコ・メルツィ・デリル
ウィリアム・シェラック
ガブリエレ・モレッティ - 製作総指揮
- キンバリー・スチュワード
ローレン・ベック
ジョシュ・ゴッドフリー
ジェームズ・バンダービルト
マッシミリアーノ・ビオランテ - キャスト
- ダコタ・ジョンソン
ティルダ・スウィントン
ミア・ゴス
クロエ・グレース・モレッツ
ルッツ・エバースドルフ
ジェシカ・ハーパー
アンゲラ・ビンクラー
イングリット・カーフェン - 製作国
- イタリア
アメリカ - 配給
- ギャガ
映画『サスペリア』の作品概要
「決してひとりでは見ないでください」、印象的なキャッチコピーが日本版でも採用されたリメイク版『サスペリア』。トマス・ド・クインシーの小説『深き淵よりの嘆息』をモチーフに、1977年に公開された「魔女3部作」の第1作品目が、イタリアとアメリカの共同により蘇る。ロサンゼルス映画批評家協会賞監督賞を受賞した『君の名前で僕を呼んで』などで知られるイタリアの監督・ルカ・グァダニーノがメガホンを取り、『フィフティ・シェイズ』シリーズのダコタ・ジョンソンが主演を務める。
映画『サスペリア』の予告動画
映画『サスペリア』の登場人物(キャスト)
- スージー・バニヨン(ダコタ・ジョンソン)
- 世界的に有名な舞踏団「マルコス・ダンス・カンパニー」に入団するため、アメリカ・ニューヨークから単身・渡独する。
- マダム・ブラン(ティルダ・スウィントン)
- 「マルコス・ダンス・カンパニー」で多くの生徒を抱える天才的なカリスマ振付師。魅力的な振り付けと、印象的な冷たい表情が特徴的。
映画『サスペリア』のあらすじ(ネタバレなし)
1977年、雪が舞うドイツ・ベルリン。この町を拠点とする世界的に有名な舞踏団「マルコス・ダンス・カンパニー」に、アメリカから1人の少女がやって来る。彼女の名はスージー・バニヨン。「マルコス・ダンス・カンパニー」に憧れ、夢を抱き、希望に満ちた表情で単身ドイツへやって来た少女。
多くの若いダンサーたちが活躍する舞踏団は、刺激的で、美しく見える。初めてのオーディションを受けることになったスージーは、懸命にダンスを踊る。そのオーディションで踊ったスージーのダンスは、天才的とも言われているカリスマ振付師のマダム・ブランの目に留まる。
舞踏団の女性たちは、マダムを崇拝し、マダムに多くの憧れを抱いている。そんなマダムから大事な演目のダンサーに抜擢されたばかりか、センターを任されることとなったスージーは、厳しい練習にもめげず励む日々を送る。
ところが、マダムのレッスンを受けていく中で、スージーはあることに気付く。スージーの周りで不可解な出来事が頻発するようになったのだ。ダンサーが次々と失踪していく中、スージーは舞踏団に隠された秘密に踏み込もうとしていた。
映画『サスペリア』の感想・評価
幼少期からの願いが込められた、ルカの挑戦
アカデミー賞作品賞にもノミネートされた『君の名前で僕を呼んで』の監督、ルカ・グァダニーノが、『サスペリア』と出会ったのは彼がまだ10歳の幼い少年だった頃。今でこそ 『サスペリア』は、40年以上も前の古い映画としての位置づけになっているが、当時の『サスペリア』は、多くの衝撃を観客たちに植え付けた話題作であった。
40年以上経った今でも、『サスペリア』がホラー映画界でも傑作として語り継がれているのは、当時とても珍しかった音響立体移動装置による音楽で、観客の恐怖をどん底にまで貶めた手法が用いられているからである。
この映画はルカ監督が、監督として歩み始めるきっかけとなった作品であり、25年以上も前から企画し、ついに念願叶って形となった映画でもある。「自分ならどんな『サスペリア』を作るか」常に考えていた監督が思い描いた新たな『サスペリア』は、自身の指針となった映画に敬意を表するために、前作の『君の名前で僕を呼んで』とは全く正反対の手法によって美しく芸術的に生まれ変わる。
官能的演技のスター・ダコタ・ジョンソンの挑戦
俳優の父親と、女優の母親の元から生まれたダコタは、とても自然な流れで芸能界に入る。もともとダンススクールに通っていたダコタは、ティーンの間で人気のファッション誌に載っている、有名人の子供たちに触発され、モデルとして活動を始める。
ダコタの活躍が飛躍したのは、2010年のアカデミー賞ノミネート作品『ソーシャル・ネットワーク』に出演してからである。それまで演技のキャリアを積んでいたダコタは、この映画への出演がきっかけで、その後多くの作品に主役や主演で出演することとなる。
また、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』では、主演の役をオーディションで見事に勝ち取り、その後の3部作全てにおいて主演を張っている。官能的な映画でヌードやラブシーンなども多く登場する作品だが、ダコタは見事に演じ切った。
監督・ルカ・グァダニーノとの出会いは、2015年の『胸騒ぎのシチリア』でのこと。1969年制作公開の映画『太陽が知っている』のリメイク版として公開された。個性派俳優たちが集められ、魅惑の島シチリア島で魅力的な音楽・ファッションと共に、2組の男女の人間模様が描かれる。ダコタはここでも、不穏かつ魅惑ありげな若さを持て余す女性を演じた。色気があり、官能的な演技に定評のあるダコタが、今回もその美しさを武器に魔女と対峙する。
監督との親交深いティルダ・スウィントンの挑戦
『ナルニア国物語』シリーズや、『フィクサー』、『ドクター・ストレンジ』などのハリウッド映画からマイナームービーに至るまで、どんな要素の映画でもこなし、また、そのクールな表情から魔女や女王などの存在感ある役柄で知られているティルダ・スウィントン。
『サスペリア』の監督、ルカ・グァダニーノ氏との付き合いも長く、お互いの信頼関係が強い間柄である。
今回の『サスペリア』では、カリスマ的な存在感のある天才振付師のマダム・ブランを演じているが、実はティルダが映画内で1人3役を演じると明かされている。そのうちの1人が、物語に一石を投じる82歳の男性・心理療法士クレンペラー博士。
公式サイトでは、ルッツ・エバースドルフの名で紹介されているので、誰もその本人が本当は特殊メイクによって変装したティルダ・スウィントンだとは思わない。すらりとした体型と、色白で透き通った鼻筋のティルダ・スウィントンが、82歳の老人化け、それも男性になっているとは、知らなければ気付かない程の完成度である。
もう1人が誰かなのかは、映画公開前には明かせないとされており、それ故に物語でも重要な役どころであることが予想される。高い演技力を誇るティルダが、映画にどんなスパイスを投じてくれるのか、今から期待が増すばかりである。
映画『サスペリア』の公開前に見ておきたい映画
サスペリア
1977年に制作された、イタリアのホラー映画で、ホラー映画史の中でも傑作と名高い作品。音響立体移動装置サーカム・サウンド・システムを採用したことで、映画内の音楽は深みを増し、観客を更なる恐怖へと突き落としたことでも有名である。
多くのホラー映画を手掛けてきたイタリアを代表するホラー映画監督、ダリオ・アルジェント氏がメガホンを取り、トマス・ド・クインシーの小説『深き淵よりの嘆息』を元に脚本する。映画は大絶賛の評価を得、その後「魔女3部作」として知られるようになる。
リメイク版では、ストーリーや登場人物にいくばくかの改変が見られる。主人公であるスージーは変わらないが、ダンサーではなくバレリーナ死亡で、単身ドイツに渡り、有名なバレエの名門校に入学する。
そこで起きる、多くの血にまみれる残虐で不運な惨死は、目をそむけたくなるほど身の毛がよだつ出来事ばかり。ちなみに、映画で主演に抜擢されたジェシカ・ハーパーは、リメイク版にも出演しているので、気になる人はぜひチェックしておくことをおススメする。
詳細 サスペリア
君の名前で僕を呼んで
イタリア・フランス・ブラジル・アメリカの合作で制作された青春映画で、リメイク版『サスペリア』の監督ルカ・グァダニーノ氏が手掛けた作品。その年のアカデミー賞に作品賞を含む4部門にノミネートする。
この作品はアンドレ・アシマンの『Call Me by Your Name』を原作としており、物語の中盤までが描かれている。舞台は、1983年の北イタリア。17歳のエリオは、考古学者の母親の影響でアカデミックに育ち、文学・語学・音楽に長け、知性豊かに育つ。
母親のパールマン教授は、自身の教えている学生を1人北イタリアの別荘に招き、休暇を過ごす。母が連れてきた学生のオリヴァーは、エリオと同じ知性に長け、自信に満ちた青年である。自分と同じような青年に戸惑うエリオだが、やがてエリオはオリヴァーに言い知れない感情を抱く。別荘で過ごす限られた時間の中で、エリオの情熱溢れる恋物語が紡がれる。
この映画は、原作の中盤までしか描かれていないことから、続編ではエイズ問題に言及した作品を制作する予定である。
詳細 君の名前で僕を呼んで
胸騒ぎのシチリア
同じくリメイク版『サスペリア』の監督・ルカ・グァダニーノ氏が『君の名前で僕を呼んで』の前に制作した魅惑の恋愛情熱映画。この映画には、『サスペリア』の主演務めるダコタ・ジョンソンの他に、カリスマ振付師のマダム・ブランこと、ティルダ・スウィントンも出演している。
ルカ・グァダニーノ監督とティルダ・スウィントンは、20年来の親交がある。『胸騒ぎのシチリア』でティルダが主演を務めることについて、ルカ・グァダニーノ監督は、「信頼のおける映画制作者と組むのと同じこと」だとコメントしている。
物語は、プレイボーイの音楽プロデューサーであるハリーが、言葉巧みに人々を惑わしている中、ティルダが演じる主人公のマリアンは、声帯の手術を受けたばかりだから声があまり出ないという役を演じる。多くの言葉が飛び交う中、ティルダだけがその言葉の海に飛び込まず、静寂の中で気持ちを伝えるのだ。
このアイディアは、ティルダ自身がルカ・グァダニーノ監督に提案した内容で、この提案に監督はとても嬉しい衝撃と共に、信頼関係の強さを確信したとのこと。
『サスペリア』の主演であるダコタは、マリアンの昔の男であるハリーの娘役として出演し、マリアンの現在の恋人のポールを、その魅惑的な女の色気を使って誘惑している。ダコタの色気溢れる演技は、彼女がこれまで培ってきた官能的な演技の良さが存分に発揮されている。
詳細 胸騒ぎのシチリア
映画『サスペリア』の評判・口コミ・レビュー
『サスペリア』
こりゃおったまげw時代を経てもいつまでも混沌の止まない世界にさすがの魔女も呆れるよwそんな大いなる嘆きをサスペリアというプロットを借りて訴える人類よ目覚めよ映画。77年版とはまるで別物やけど勝手に百歩進めた感や妖艶舞踊、エログロ増し増しに幻惑、恍惚wミアゴスえら可愛い! pic.twitter.com/aEy1qCeqWY— コーディー (@_co_dy) 2019年1月26日
『サスペリア』
ベルリンの壁を背景に、ナチズムの暗き歴史を絡めたことで物語はより一層深みが増す。極彩色に満ちたオリジナル版とは異なり、アートダンス映画色が濃厚に。エロスと魔性が入り乱れる終盤の暗黒舞踏は正に芸術。狂気を突き抜け”嘆きの母”と化し、”制裁”と”慈悲”を与えるシーンに圧巻! pic.twitter.com/j4I9QHKQkh— 峯キング (@xvHvDW0bkPHMMsY) 2019年1月27日
『サスペリア』観ました。ただのホラーではなく77年当時の政治状況を踏まえた暗喩劇に。妖艶な暗黒舞踏、容赦ない血しぶき、オリジナル版に負けず劣らず怪しく美しい。
メロドラマ要素もぶっこんで来るとは驚いた。
しかしこんなの1回じゃ絶対咀嚼できるわけないよw 長いけどまた観るしかないかな pic.twitter.com/io8UQo7xbF— 桑畑 (@3106max) 2019年1月26日
#サスペリア
見応えありました。クライマックスのグロ描写がいかにもな感じで少し興醒めだけど。
単なるホラー映画と捉えると勿体ない。生きるために歪み閉鎖された価値観に寄り添うのでなく、本来の人間性を解放する物語。一つの古い時代の終焉と新たな時代の夜明け。博士こそもう一方の主役。 pic.twitter.com/USWCU4UOBn— センタ (@UdonsukiMimiu) 2019年1月27日
『サスペリア』なるほど、ダリオアルジェントが怒るわけだ。彼が滅ぼした”魔女=自立した女性”を聖母として復活させちゃった笑。長年謎とされてきたオリジナル版ラストの微笑みに対するグァダニーノなりの解答。それは現代的解釈でもありオリジナルの時価を高めたと思う。残りの二人の復活もあるか笑。 pic.twitter.com/2tp6QIyS2y
— シネマダイアリー (@susan6662) 2019年1月25日
映画『サスペリア』のまとめ
『ミラノ、愛に生きる』や『胸騒ぎのシチリア』などで、何度もルカ・グァダニーノ監督作品に出演しているティルダ・スウィントンは、自身もファンであるというダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』について、ルカ・グァダニーノ監督と何度も話し合ってきたそう。それほど企画に長い時間をかけ、プロフェクトを進行してきた背景には、2人の映画に懸ける情熱や、信頼関係があったことは言うまでもない。大好きな映画について語り、その映画のリメイク版について相談し合い、それが形となって世に送り出せる喜びは、きっと計り知れない。
みんなの感想・レビュー