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映画『女王陛下のお気に入り』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

ギリシャの鬼才、ヨルゴス・ランティモス監督が手掛ける、18世紀初頭のイングランドの王室で巻き起こる愛憎歴史物語。2018年のベネチア国際映画祭で審査員大賞と女優賞を受賞した話題作が、遂に日本でもお目見えする。

映画『女王陛下のお気に入り』の作品情報

女王陛下のお気に入り

タイトル
女王陛下のお気に入り
原題
The Favourite
製作年
2018年
日本公開日
2019年2月15日(金)
上映時間
120分
ジャンル
ヒューマンドラマ
監督
ヨルゴス・ランティモス
脚本
デボラ・デイビス
トニー・マクナマラ
製作
セシ・デンプシー
エド・ギニー
リー・マジデイ
ヨルゴス・ランティモス
製作総指揮
不明
キャスト
オリビア・コールマン
エマ・ストーン
レイチェル・ワイズ
ニコラス・ホルト
ジョー・アルウィン
ジェームズ・スミス
マーク・ゲイティス
ジェニー・レインスフォード
製作国
アイルランド
イギリス
アメリカ
配給
20世紀フォックス映画

映画『女王陛下のお気に入り』の作品概要

18世紀初頭の、イングランド・グレートブリテン王国。宿敵であるフランスのルイ14世と交戦中の激動の時代を生きるアン女王を主人公に、戦争を巡る政治的駆け引きが渦巻く宮廷で、アン女王の寵愛を取り合う女たちの激しい闘争劇を描く。主演のアン女王をオリヴィア・コールマン、アン女王の侍女の2人を、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンと、『ナイロビの蜂』のレイチェル・ワイズが演じる。監督は、ギリシャを代表する映画監督・ヨルゴス・ランティモスが務める。

映画『女王陛下のお気に入り』の予告動画

映画『女王陛下のお気に入り』の登場人物(キャスト)

アン王女(オリヴィア・コールマン)
イングランドのグレートブリテン王国最後の女王。国は戦時中だが、戦争とは無縁の宮廷で優雅な毎日を送る。
レディ・サラ / サラ・チャーチル(レイチェル・ワイズ)
アン女王の幼馴染で、アン女王の女官でありながら女王を陰で操っているため、宮廷では絶大な権力を持つ。
アビゲイル・ヒル(エマ・ストーン)
サラの従妹で、没落期族の娘に当たる人物。上流階級に返り咲くために、サラに宮廷への召し抱えの口利きをしてもらう。

映画『女王陛下のお気に入り』のあらすじ(ネタバレなし)

自由奔放、好きな時に好きなことをして好きなものを食べて、誰かが自分を世話してくれるありがたい生活を送るグレートブリテン王国女王のアン。18世紀初頭のグレートブリテン王国を統治していたアンは、フランスのルイ14世との交戦中でありながらも、そんな戦争とは無縁な日常を送っていた。自分の周りのことは、幼馴染で女官のサラが常に目を見張り、甲斐甲斐しく世話をしてくれる。

そんなある日、サラの従妹だというアビゲイル・ヒルが、サラを訪ねて宮廷へやって来る。実家が没落し、貴族から転落してしまったアビゲイルは、サラを頼って宮廷で召使として働かせてもらうこととなった。そして、ある出来事からアビゲイルは、サラの後押しもあってアン女王の侍女にしてもらえることになる。

一方のサラは、夫が指揮を執る戦争の継続に意欲を燃やし、議会での発言権を高めていた。そして、国民から徴収している税の増税案を何とか通そうと躍起になる。そうしてサラが国政に没頭している間に、アビゲイルは少しずつアン女王の心を掴み始めていた。

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映画『女王陛下のお気に入り』のネタバレ・あらすじ・考察・解説
映画『女王陛下のお気に入り』のネタバレ・あらすじ・考察・解説。物語のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎を分かりやすく考察・解説しています。

映画『女王陛下のお気に入り』の感想・評価

名女優3名が揃う究極の宮廷ドラマ

わがままで自分勝手で、気まぐれなアン女王。少し病弱なところがあり、17人の子供に先立たれたことから心の奥底に寂しさを抱えている、最後のイングランド王。そんなアン女王を演じるのは、第75回ベネチア国際映画祭で女優賞の栄冠に輝いたオリヴィア・コールマン。2017年に出演したテレビドラマ『ナイト・マネジャー』シリーズで、ゴールデン・グローブ賞助演女優賞にも輝く、実力派女優である。

そして、自由奔放なアン女王の幼馴染のサラには、『ナイロビの蜂』でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演女優賞を受賞したレイチェル・ワイズ。上流階級から没落し、虎視眈々と返り咲く機会を狙っているもう1人の侍女には、大ヒット映画『ラ・ラ・ランド』で圧倒的な歌唱力を見せつけたエマ・ストーンが演じる。エマ・ストーンもまた、『ラ・ラ・ランド』でベネチア国際映画祭を始め、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞ともに主演女優賞を受賞という輝かしい功績を残している。

映画界でも名のある3代女優が、それぞれの頭脳と肉体と精神力を駆使し、互いを罠に掛け合い、自らの欲望を満たそうと奮闘する。おかしく、見ていて爽快で、どこか切ない豪華絢爛な宮廷ドラマである。

宮廷ドラマを引き立てる美しい衣装の数々

豪華絢爛な王宮で生活する上流階級の貴族たち。彼らの権威や権力の偉大さは、着ているドレスや身に着けている装飾品からも伺える。王室の人々の気品さを形にし、ため息が出るほどの美しさを表現して見せたのは、『恋におちたシェイクスピア』、『アビエイター』、『ヴィクトリア女王 世紀の愛』で3度のアカデミー賞に輝いた、イギリスのファッションデザイナー、サンディ・パウエル。

2015年には、ディズニーの実写映画『シンデレラ』の衣装も担当しており、サンディのデザイン力の高さと表現力の豊かさがありありと見て取れる。王宮衣装を得意としているサンディが、今回の映画には制作の噂を聞きつけると自ら名乗りを上げた。

伝説とまで言われているサンディの美しい衣装の数々は、女優たちの表情さえ際立たせる。また、3代女優の衣装だけでなく、3代女優の脇を固めるニコラス・ホルトやジョー・アルウィンらのイギリス美青年が演じる、若き貴族たちのお召し物も、美しく優雅に仕立て上げているので、そちらもこの映画の見どころの1つとなっている。

同国内で対立するグレートブリテン王国の権力を奪い合う貴族たち

この映画の見どころの1つは、アン女王を筆頭に、女たちの数々の欲望が渦巻いた様が面白おかしく描かれているという点である。そして、アン王女にとても近しい人々は、それぞれ胸の内に思惑を隠し、利権のためにお互いの腹を探り合う。

アン王女の女官であり、幼馴染であるレディ・サラは、夫であるモールバラ公が進めている戦争を継続させるため議会で増税を提案する。レディ・サラこと、サラ・チャーチルはイギリス元王太子妃ダイアナの先祖であることでも知られている人物である。

しかし、議会にはこれ以上の増税には反対の意を示す戦争終結派の人々もいた。その中の1人が、トーリー党の絶大な権力者であるロバート・ハーリーである。ハーリーは戦争を経済的大失策だと言い切り、増税反対の姿勢を見せていた。

更にここでややこしく、物語的には面白くなる要素が、エマ・ストーン演じるアビゲイルの存在である。アビゲイルとサラは従姉妹関係にあたるが、サラと対立しているトーリー党のハーリーとアビゲイルは、また従兄妹の関係でもある。

自身とハーリーの関係を知ったアビゲイルは、内部情報を手に入れるためにハーリーを利用する。その結果、レディ・サラとも対立することになるのだが、その人間関係が幾重にも絡み合い、面白さを増している。映画を見る人は、ぜひ権力争いに息巻く人物たちの相関図を把握しておくことをおススメする。

映画『女王陛下のお気に入り』の公開前に見ておきたい映画

映画『女王陛下のお気に入り』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『女王陛下のお気に入り』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

ロブスター

『女王陛下のお気に入り』の監督・脚本を務めるギリシャの名監督、ヨルゴス・ランティモスが、2017年アカデミー賞で脚本賞にノミネートした作品である。カンヌ国際映画祭では、審査員賞も受賞している。

ランティモス監督が手掛ける作品としては、初めての英語作品であり、製作にはフランスやアイルランド、オランダ、イギリスなど多くの国が共同で作り上げている。

物語は、家庭を築き子孫を残すことが義務付けられた近未来を描くSF恋愛。妻に捨てられてしまった悲劇の男デヴィッドは、町のはずれのホテルに閉じ込められ、45日以内に新たな配偶者を見つけるよう命じられる。もしも配偶者が見つからなければ、デヴィッドは動物にされてしまう運命にあった。

そんな状況に嫌気が差し、デヴィッドはホテルから逃げだして独身者が暮らすという盛の中に姿を隠す。森の中では、町とは正反対のルールが敷かれていた。「恋愛禁止」という奇妙なものである。しかし、町ではいくら探しても配偶者となる人が見つからなかったのに、デヴィッドは森で出会った独身者の1人、“近眼の女”と恋に落ちるのであった。

この奇妙で斬新な設定や、デヴィッドの突っ込みどころ満載な行動の数々は、見ていて痛快である。主人公デヴィッドを演じたコリン・ファレルは、第74回ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞にノミネートしている。

詳細 ロブスター

ナイロビの蜂

『女王陛下のお気に入り』で、アン女王の幼馴染で女官を務めたサラ・チャーチルを演じたレイチェル・ワイズの代表作である。第78回アカデミー賞と、第63回ゴールデン・グローブ賞では助演女優賞をともに受賞している。

レイチェル・ワイズの名が世に知られるようになったのは、1999年公開の大ヒット映画『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』であるが、それからアクション・ラブストーリーなどのキャリアを順当に積み上げ、『ナイロビの蜂』で主人公ジャスティン・クエイル外交官の妻であり、弁護士でもあるテッサ・クエイルの役を演じ切る。

テッサは、アフリカにあるケニアのナイロビで救助活動を熱心に行う献身的な女性であったが、製薬会社が絡んだ陰謀に嵌められ命を落とすことになる。当時30代中ごろのレイチェル・ワイズは、演技のキレもさることながら見た目の美しさでも目を引いた。また、妻が死んだ真相を知るため、事件を調べているジャスティンを演じているレイフ・ファインズの悲しみ・苦悩・後悔・自責、そして真相への覚悟の表情なども、迫真に迫るものがあるので、是非おススメである。

詳細 ナイロビの蜂

ラ・ラ・ランド

2016年に公開され、近年のミュージカル映画ではストーリー、音楽、キャスト共に圧倒的な人気を誇る映画である。第89回アカデミー賞では、『タイタニック』、『イヴの総て』に並ぶ14部門にノミネートし、主演のエマ・ストーン自身も主演女優賞を獲得した作品。

女優を目指して、友人たちとオーディションに応募しまくり傷つきながらも夢を追う女性ミアと、売れないジャズピアニストのセブのお互いを励まし合う恋愛に多くの人が胸を打たれた映画である。そして、劇中で流れる数々の音楽が、観客の心を癒し、和ませ、涙させた。

エマ・ストーンとライアン・ゴズリングの軽やかなダンスや、美しい歌声が印象強く、映画のヒットに加えて、サウンドトラックの売り上げもヒットを呼んだ。

2014年公開の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で多くの賞にノミネートし、2016年の『ラ・ラ・ランド』で受賞までこぎつけたエマ・ストーン。彼女はキャリアを着々と伸ばし、今後の活躍からも目が離せない存在である。

『女王陛下のお気に入り』では、ゴールデン・グローブ賞で助演女優賞にノミネートもしており、作品自体も本年度の賞レースの主役間違いなしと大絶賛されているので、3代女優の活躍は押さえておきたいところ。

詳細 ラ・ラ・ランド

映画『女王陛下のお気に入り』の評判・口コミ・レビュー

映画『女王陛下のお気に入り』のまとめ

イギリスのインディペンデント映画祭では、作品賞をはじめとして歴代最高となる10冠を達成した『女王陛下のお気に入り』。主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマンは、インタビューで作品について、「無礼な映画であり、不穏でもある。魅惑的で下品でもある」と笑顔を見せ、公開を待つ日本のファンへ向けてのメッセージを残している。リアルで人間味溢れ、醜い姿を見せることを厭わなかったヨルゴス・ランティモス監督の撮影方法も絶賛し、独特で美しく仕上げられた映像に期待が高まる。

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