いつもウサギの耳をつけている風変わりな少女バーバラは、自分だけに見える恐ろしい巨人から町を守るため、孤独な戦いを続けている。バーバラを襲う巨人の正体とは?多感な少女の悲しみと再生を描いた感動の成長物語。
映画『バーバラと心の巨人』の作品情報
- タイトル
- バーバラと心の巨人
- 原題
- I Kill Giants
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2018年10月12日(金)
- 上映時間
- 106分
- ジャンル
- ファンタジー
ヒューマンドラマ - 監督
- アンダース・ウォルター
- 脚本
- ジョー・ケリー
- 製作
- クリス・コロンバス
マイケル・バーナサン
ジョー・ケリー
ニック・スパイサー
キム・マグヌッソン
エイドリアン・ポリトウスキー - 製作総指揮
- マーク・ラドクリフ
ジャスティン・ナッピ
ジョハンナ・ホールデン
ナディア・カムリッチ
ジル・ワテルケン
ジェームズ・ギブ
ゴードン・ピュー - キャスト
- マディソン・ウルフ
イモージェン・ブーツ
シドニー・ウェイド
ロリー・ジャクソン
ゾーイ・サルダナ - 製作国
- アメリカ
- 配給
- REGENTS
パルコ
映画『バーバラと心の巨人』の作品概要
自分にだけ見える巨人と戦う、ちょっと風変わりな少女バーバラの苦悩と再生を描いたファンタジックな成長物語。原作は『ベイマックス』(14)のキャラクターデザインを手がけたジョー・ケリーのグラフィックノベル『I KILL GIANTS』。『HELIUM(原題)』(13)で第86回アカデミー賞短編賞を受賞した経歴を持つ実力派のアンダース・ウォルターが、本作で長編監督デビューを果たす。製作には『ハリー・ポッターと賢者の石』(01)や『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(02)で監督・製作を務めたクリス・コロンバスが参加している。
映画『バーバラと心の巨人』の予告動画
映画『バーバラと心の巨人』の登場人物(キャスト)
- バーバラ(マディソン・ウルフ)
- いつも頭にウサギの耳をつけている、ちょっと風変わりなメガネ女子。自称“巨人ハンター”。バーバラだけに見える恐ろしい巨人がいて、1人でその巨人と戦っている。学校では浮いた存在で、兄からもオタク呼ばわりされている。
- モル先生(ゾーイ・サルダナ)
- バーバラの学校に赴任してきたスクールカウンセラー。バーバラのおかしな行動に気づき、現実を見るよう説得する。
- カレン(イモージェン・プーツ)
- バーバラの姉。弟と妹の世話や家事を全てこなしているため、バーバラの話をゆっくり聞いてやる余裕がない。
- ソフィア(シドニー・ウェイド)
- イギリスのリーズからバーバラの町に引っ越してきた転校生。バーバラの行動に興味を持ち、自ら声をかける。
映画『バーバラと心の巨人』のあらすじ(ネタバレなし)
頭にウサギの耳をつけたメガネ女子のバーバラは、巨人が町を襲いに来ると信じて、たったひとりで町を守ろうとしている。この町の人は誰も気づいていないが、恐ろしい巨人はすぐそこまで来ており、バーバラの大切なものを奪おうとしていた。しかし、巨人は他の人には見えないので、周囲の人々はバーバラのことを変な子だと思っていた。
そんなある日、転校生のソフィアがバーバラの行動に興味を示し、声をかけてくる。新しく赴任してきたスクールカウンセラーのモル先生も、学校で孤立しているバーバラのことを気にかけ、カウンセリングを受けるよう勧める。しかし、バーバラはソフィアやモル先生の好意を拒絶し、自分の世界から出ようとしない。それでも、ソフィアが根気よく話しかけてくれたので、バーバラも彼女にだけは心を許し、巨人のことを打ち明ける。
一方で、巨人を倒そうとするバーバラの行動はエスカレートしていき、周囲の人たちを困惑させる。モル先生に「巨人なんていない、現実から目を逸らさないで」と忠告されるが、バーバラは強く反発し、嵐の中へ飛び出していく。そんな彼女の目の前に、恐ろしい巨人が迫ってくる。
映画『バーバラと心の巨人』の感想・評価
「心の巨人」とは一体何か
バーバラは繊細な心を持つ空想力豊かな少女で、自らを“巨人ハンター”と位置づけ、彼女だけに見える巨人と戦っている。『バーバラと心の巨人』というタイトルからもわかるように、巨人はバーバラの心の中だけに存在する空想の産物だ。バーバラの中では、その巨人がいつか町を襲い、自分の大切なものを奪っていくのだというストーリーができていて、そうさせないために、彼女は独自の方法で巨人対策をしている。バーバラは“恐ろしい巨人がいる”と思い込むことで、受け入れがたい現実から逃避している。それでは、彼女がどうしても受け入れたくない現実とは何を指すのか?それがこの物語の鍵となる。
オフィシャルサイトのストーリーには「ソフィアは、決してバーバラが上がろうとしない2階のある部屋で、バーバラが避けてきたものを目撃してしまう」とある。どうやらバーバラは、自宅の2階の部屋にある現実を封印するために、巨人が襲撃してくるという妄想の中に逃げ込んでいるようだ。その現実が何かを記すことはできないが、「心の巨人」とは、バーバラの自己防衛本能が生み出した彼女の守護神なのかもしれない。
悲しいだけの物語ではない
過酷な現実に直面した少女が、空想世界に救いを求めるという世界観は、ギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』(06)を彷彿とさせる。ただ、本作は『パンズ・ラビリンス』まで重い内容ではなく、倫理区分も「G」(ちなみに『パンズ・ラビリンス』は小学生には助言・指導が必要な「PG12」)なので、小さい子供も安心して見られる。
子供時代、様々なことを空想して、飽きることなく遊んだ記憶は誰にでもあるはず。いわゆる“ごっこ遊び”をする時、ジャングルジムは大海を漂う船に早変わりして、海となった地面には、恐ろしいサメがウヨウヨしていた。地面に落ちたらサメに食べられてしまうと思うと、心臓がバクバクしたものだ。バーバラも豊かな空想力を駆使して、大真面目に“巨人ハンターごっこ”をしているのだと思って欲しい。そういう見方をすると、自分の決めたルールを守り、巨人ハンターとして頑張っているバーバラの奮闘もどこか微笑ましい。そして何より、この物語にはちゃんと救いがある。大人でも子供でも、生きていれば避けようのない悲しい現実に直面する時が必ず来る。その試練を乗り越えることで人は成長し、思いやりや慈しみの心を育てていくのだ。本作はバーバラという多感な少女の成長を通して、大切なことを私たちに教えてくれる。
スタッフとキャストには実力派が勢ぞろい
そんな本作をプロデュースするのは、スティーブン・スピルバーグに脚本家としての才能を見出され、『グレムリン』(84)や『グーニーズ』(85)などの脚本を手がけたクリス・コロンバス。彼は監督としても『ホーム・アローン』(90)や『ミセス・ダウト』(93)といった大ヒット作を生み出している。さらに、『ハリー・ポッター』シリーズにも監督や製作として関わっているのだからすごい。
本作の脚本を手がけたのは、原作者でもあるジョー・ケリーで、彼も『ベイマックス』(14)や『デッドプール』シリーズなどの大ヒット作に貢献してきた経歴の持ち主。本作で長編初監督を務めるアンダース・ウォルター監督は、短編監督作品ではアカデミー賞を受賞している実力派で、脚本の魅力を最大限に引き出す演出に成功している。
主人公のバーバラを演じるのは、『死霊館 エンフィールド事件』(16)で迫真の演技を見せたマディソン・ウルフで、今後の活躍が大いに期待されている注目株。バーバラを支えるスクールカウンセラーのモル先生には、世界興行収入歴代1位を記録した『アバター』(09)でヒロイン・ネイティリを演じたゾーイ・サルダナがキャスティングされている。まさにスタッフもキャストも最強の布陣であり、本作への期待は高まる。
映画『バーバラと心の巨人』の公開前に見ておきたい映画
パンズ・ラビリンス
1944年、内戦後のスペイン。少女オフェリア(イバナ・バケロ)の父親は内戦で亡くなり、母親はスペイン独裁政権の陸軍大尉ヴィダルと再婚して、オフェリアの弟を妊娠する。出産を前に、母娘は森の中にある砦に移動し、ヴィダルの側で暮らし始める。冷酷なヴィダルにも砦での暮らしにも馴染めないオフェリアは、幻想の世界へ逃げ込み、迷宮の番人“パン”と出会う。パンに「あなたは地平の王国の姫君だ」と告げられたオフェリアは、3つの試練を果たして、病気も苦しみもない地底の王国へ行こうとするのだが…。
メキシコ出身のギレルモ・デル・トロが監督・脚本を手がけたダーク・ファンタジーで、スペイン内戦を描いた戦争映画にもなっている。おとぎ話などの本が大好きなオフェリアは、過酷な現実の中で、妖精や迷宮の番人パンといった幻想を見るようになる。とてもファンタジックな話に思えるが、ダグ・ジョーンズの演じるパンは薄気味悪いし、幻想世界のキャラクター全般がグロテスクで、そこはかとない恐怖を感じる。さらに、現実世界での暴力描写も強烈なので、子供が見るには少々ハードルが高い。その分、大人には見応えのある内容になっており、デル・トロ監督の描き出す映像世界も恐ろしくて美しい。
詳細 パンズ・ラビリンス
ネバーエンディング・ストーリー
バスチアン(バレット・オリバー)は、母親を亡くしてから何もやる気が起きず、本ばかり読んでいる。ある日、バスチアンは、いじめっ子に追いかけられて逃げ込んだ本屋で、「ネバーエンディング・ストーリー」という本を手に入れる。その本を読み始めたバスチアンは、物語の主人公“勇者アトレーユ”(ノア・ハサウェイ)と共に、ファンタージェンと呼ばれる不思議な世界を冒険することになるのだが…。
ミヒャエル・エンデの小説『はてしない物語』を実写映画化した作品で、大人から子供まで楽しめるファンタジー・アドベンチャー。物語の舞台となる“ファンタージェン”は、“無”と呼ばれる正体不明の何かに侵食され、崩壊の危機に瀕している。勇者アトレーユは、ファンタージェンを救うための旅に出て、様々な困難に直面する。そして、バスチアンは本を読み進めていくうちに、自分がこの物語と深く関わっていることに気づいていく。誰の心の中にもファンタージェンが存在していて、夢や希望を失わない限り、はてしない物語は続いていくのだというストーリーは、普遍的な冒険物語になっている。
アリス・イン・ワンダーランド
かつて不思議の国を冒険したアリス・キングレー(ミワ・ワシコウスカ)は19歳になり、金持ちの婚約者からプロポーズされる。しかし、アリスは結婚する気になれず、婚約パーティーの場から逃げ出す。その直後、服を着たウサギを追いかけて穴に落下したアリスは、13年ぶりに不思議の国へ迷い込む。マッドハッター(ジョニー・デップ)たち不思議の国の住人は、この国を邪悪な赤の女王(ヘレナ・ボナム=カーター)から救ってくれる救世主アリスの帰還を喜ぶ。しかし、アリスは昔の記憶を失っており、かつての勇敢な少女とは別人のような臆病者になっていた…。
不朽の名作『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』(ルイス・キャロル著)の後日談を描いた新しい物語を、ティム・バートン監督が実写映画化した作品。19歳になったアリスが、13年ぶりに訪れた不思議の国で、赤の女王と白の女王の戦いに巻き込まれていく。ディズニーの長編アニメーション『ふしぎの国のアリス』(51)と違って、アリスが年頃の娘に成長しているので、彼女の心の葛藤が物語の鍵となる。マッドハッター、赤の女王、芋虫のアブソレムなど、不思議の国のキャラクターたちの造形も面白く、ティム・バートン監督らしい映像世界が楽しめる。
映画『バーバラと心の巨人』の評判・口コミ・レビュー
「バーバラと心の巨人」これは良い…これは超良い…。
重大なネタバレに触れてしまうので詳しくは言えないけど、実際に観て改めて思う、この映画は“バーバラと心の巨人”なんかじゃ絶対にない、この映画は『I KILL GIANTS』だ。 pic.twitter.com/LidSKTGyo4
— 殺人豚鼠 (@taninakasan) 2018年10月14日
映画「バーバラと心の巨人」観ました。ホラーじゃないよな?っと思いながら見ていたら哲学か~って感じ。けっこうココロに刺さるオハナシでした。ナニはさておきバーバラ役のオンナのコのカワイイこと。このコの魅力だけで見る価値ありました。映画もチャンと良かったです。
— ぽんや (@ponyajirou) 2018年10月14日
「バーバラと心の巨人」、途中までこれはどこに向かっている映画なのか、「キャリー」?と思いながら見てたんだけど、最後は鼻水をたらすレベルで泣いてしまった…バーバラ役の女の子、素晴らしいね。ゾーイ・サルダナとイモージェン・プーツもとても良かった。
— やゆよん (@cloudy3) 2018年10月14日
「バーバラと心の巨人」鑑賞。
“全てを奪い去る巨人”と孤独な戦いを続ける女の子のお話。色々考察し甲斐のある作品ですがもうまずは主人公バーバラを演じるマディソンちゃんの狂人演技に圧倒される。 pic.twitter.com/iHFFF02GA2— かの (@oceanarrowwaka) 2018年10月14日
先日「バーバラと心の巨人」をみてきました。
個人的には序盤の巨人をおびき出すまでのシーンやバーバラちゃんが使う道具などに興味がそそられる映画でした。
見えない何かと戦う主人公を描いた映画をみたい方にお勧めです。 pic.twitter.com/8LD07oi9mW— トロロ芋 (@Mourinho2010) 2018年10月14日
映画『バーバラと心の巨人』のまとめ
空想の中だけで生きることは危険だが、豊かな空想力は時に現実の過酷さを和らげ、人生の救いになってくれる。現実と空想の境目を見極め、両方の世界をバランス良く持ち続けることができたら、人はとても強くなれるはずだ。バーバラはまだそれができなくて、空想の世界で迷子になってしまうが、そんな経験は誰にでもある。バーバラが必死で心の巨人と向き合い、人生の試練を克服していく姿に、私たちは自分の過去や未来を重ね、心を揺さぶられることだろう。少女バーバラの成長を、ぜひ劇場で見守ってあげて欲しい。
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