漫画家・岡崎京子原作の94年発表作品『チワワちゃん』の実写映画化が、ついにスクリーンに登場する。『ヘルタースケルター』などの人気作品を世に送り出してきた人気漫画家の作品なだけに、今、最も熱く、最も話題となっている20代の若手実力派俳優が集結する。
映画『チワワちゃん』の作品情報
- タイトル
- チワワちゃん
- 原題
- なし
- 製作年
- 2019年
- 日本公開日
- 2019年1月18日(金)
- 上映時間
- 104分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
青春 - 監督
- 二宮健
- 脚本
- 二宮健
- 製作
- 間宮登良松
瀬井哲也
堀内大示
小佐野保
清水啓司 - 製作総指揮
- 加藤和夫
岡本東郎 - キャスト
- 門脇麦
成田凌
寛一郎
玉城ティナ
吉田志織
村上虹郎
仲万美 - 製作国
- 日本
- 配給
- KADOKAWA
映画『チワワちゃん』の作品概要
1994年に発表され、今もなお多くのファンを魅了する人気漫画家・岡崎京子の同名作品『チワワちゃん』を、インターネットやSNSが流行る昨今の東京を舞台に実写映画化。登場するキャストには、門脇麦を始め、村上虹郎、成田凌、吉田志緒などの20代の若手実力派俳優ばかりを集め、弱冠27歳の二宮健が監督として挑む。僅か34ページの短い作品の中に、心に突き刺さる新鮮なセリフが詰まった岡崎京子の短編青春漫画を、現代の若者たちが新たな“青春映画”として描き切る。
映画『チワワちゃん』の予告動画
映画『チワワちゃん』の登場人物(キャスト)
- ミキ(門脇麦)
- ミュージックバーに足しげく通う20代女子。その場にいる仲間たちと、お酒を飲みダンスを踊り、バカ騒ぎするのが大好き。仲間の1人のヨシダが実は好き。
- チワワ / 千脇良子(吉田志緒)
- ミキが恋心を寄せているヨシダの彼女。ヨシダの仲間たちが集まるミュージックバーで現金を盗む。その後、東京湾で遺体となって発見される。
- ユーコ(栗山千明)
- ファッション雑誌のライターをしていて、東京湾で発見された女性の殺人事件について取材している。
映画『チワワちゃん』のあらすじ(ネタバレなし)
ミキは、ニュースを見て女性が東京湾でバラバラ遺体となって発見されたことを知る。女性の名は、千脇良子。千脇さんは20歳で、都内の看護学校に通う生徒だった。だが、ミキにとっては身に覚えのない名前であったし、このニュースを聞いて思うところも何もなかった。
だが、その千脇良子が自分の良く知っている“チワワちゃん”だと分かり、ミキの心に言い表せない複雑な思いが溢れ出す。
チワワちゃんとミキが初めて出会ったのは、ミキが仲間たちとのたまり場にしているミュージックバーにやって来たときであった。以前から恋心を寄せていたヨシダが、自分の新しい彼女だと言って連れてきたのがチワワちゃんだったのだ。
2人が付き合っていることはなんとなく面白くないのだが、仲間と飲んで騒いで、踊ってバカ騒ぎするのは楽しく、そんな日がずっと続くのかと思っていた。だが、そんな気持ちをよそにあっさりとチワワちゃんは仲間たちと離れ、1人だけ日常からはずれていく。
そして、知った衝撃的なニュースの内容。ミキは、仲間たちとチワワちゃんを偲ぶために再び集まった。しかし、あれだけみんなと仲が良く、マスコット的な存在であったはずなのにチワワちゃんについての認識が全員違っている。一体、“チワワちゃん”とは何者だったのだろうか。
映画『チワワちゃん』の感想・評価
岡崎京子の短編漫画が現代に蘇る
漫画『チワワちゃん』が発表された1994年(平成6年)当時、ディズニーの32作品目の長編アニメ映画『ライオン・キング』や、アカデミー賞に輝いた『フォレスト・ガンプ 一期一会』が公開された年。広瀬香美の「ロマンスの神様」や、大黒摩季の「あなただけ見つめてる」などが流行った時代。
日本社会では関西国際空港が開港した年、まだ世界中にインターネットの普及などなく、SNSなんていう言葉は姿かたちも見られない。そんなときに発表された岡崎京子の短編漫画『チワワちゃん』に登場する若者たちは、バブリーな生活を楽しみながらもどこかに不安を感じ、誰からも理解されていない孤独と戦っている。
しかし、この状況は平成も終わろうとしている現代でも変わらない。こんなにもインターネットが普及し、誰とでも簡単に繋がることができるのに、いつも孤独が付きまとう。特に、思春期や20代前後の若者にその傾向は多い。
若者の本質は、時代が過ぎても変わってはいないのだ。いつも誰かから必要とされたいし、いつも誰かと繋がっていたい。けれど、心のどこかでは繋がりを持つことを煩わしいとも感じて、人との間に一線を引く。通信手段が多様化した現代だからこそ、『チワワちゃん』の切なさや孤独感は、今の社会を映す鏡のようにもなるのだろう。
映画の本質は、犯人探しではない
『チワワちゃん』の物語の冒頭は、1人の女性がバラバラ遺体となって発見されるところから始まる。これはもちろん事件として扱われ、警察では犯人探しに全力を挙げる。だが、この映画の本質は犯人探しではないのだ。
この映画で重要なのは、「犯人が誰か」と言うことではなく、殺されたチワワちゃんこと千脇良子とは「どんな」人間だったか、なのだ。1人の女性が遺体となって発見されるには、何かしらの理由が必ずそこにある。それが、千脇良子と言う人間を読み解くカギになる。
しかし、仲の良かったはずの仲間たちは誰一人としてチワワちゃんの本名も、境遇も、最近までどこで何をしていたのかも知らない。彼氏だったはずのヨシダでさえ、把握していない。ただ毎日、酒を飲んで騒いで、踊って、バカ騒ぎしていただけなのである。
物語は、この「誰もチワワちゃんのことを知らない」と言う点に焦点を当てている。仲が良いと思っているのは自分だけで、本当は誰も自分を理解していないし、自分も誰も理解していないのではないか。この問題に突き当たったとき、映画が伝えたい内容が理解できるかもしれない。
映画オリジナルキャラクターも登場
『バトル・ロワイアル』や、ハリウッド映画『キル・ビル』でもおなじみの女優・栗山千明と、同じく『マイティ・ソー』でハリウッドデビューを果たした浅野忠信が、今作の『チワワちゃん』に友情出演という形で登場する。
栗山千明は、ファッション雑誌のライター・ユーコの役で、遺体となって発見された千脇良子のことをミキたちに聞いて回る。実は原作では、チワワちゃんのことを仲間たちに聞いて回る役が、他でもない主人公のミキの役目だった。また、浅野忠信はカメラマン・サカタ役で、チワワちゃんの新しい彼氏の立ち位置である。
原作では、思春期を経て大人へなったばかりの若本たちの視点で描かれていた内容に、当事者以外の要素が盛り込まれる形となる。映画のオリジナル要素が、どこまで映画の幅を広げるのか、ファンの間では期待が高まっている。また、ラストシーンでは全員がチワワちゃんの発見された海へ赴いているが、エンディングでも原作との相違があるのかどうか、ファンは気になって仕方がないようだ。
映画『チワワちゃん』の公開前に見ておきたい映画
ヘルタースケルター
2012年、沢尻エリカが5年ぶりの主演を務めたことで話題となった、カリスマファッションモデルの物語。原作は今回と同じく岡崎京子で、第8回手塚治虫文化賞漫画大賞を受賞した作品。
美しく謎に包まれたファッションモデルのりりこを沢尻エリカが演じ、元は体重87kgのブサイクデブだったりりこは、美容整形によって大きく生まれ変わり、モデルデビューを果たす。しかし、結婚は上手くいかず、元々「美」に対してコンプレックスのあったりりこと違い、生まれながらにして美しい後輩・こずえの存在や、りりこを整形した美容クリニックの違法行為が発覚したことで、りりこは錯乱状態となり失踪する。
映画は2012年1月中旬から始まり、2月の終わりにはクランクアップしたが、公開が近づいた5月になっても沢尻エリカは「りりこの役がなかなか抜けない」と語っていた。監督の蜷川は、沢尻エリカがりりこそのものであったことを絶賛し、りりこになりきっていた沢尻エリカが役から抜けきらないのは仕方ないとしていた。
結局、公開までのPR活動を沢尻エリカが欠席し続けていたことも話題を呼び、映画公開時までに人気は高まる一方で、沢尻エリカの代表作として語られることとなった。
詳細 ヘルタースケルター
リバーズ・エッジ
1993年から1994年にかけて連載されていた、岡崎京子の衝撃の青春物語。映画化された際は、『ヘルタースケルター』同様R15指定となり、主演・二階堂ふみが若者たちの心の揺らぎを熱演する。
二階堂ふみが演じるハルナは、自身の彼氏である観音崎がいじめている同級生の山田という男の子を助けたことで、山田から川で見つけた「秘密の宝物」の存在を教えられる。宝物を見ると勇気が出ると言う山田に対して、言い表せない恐怖と絶望感を抱くハルナ、そして、それぞれの性癖や境遇の中で懸命に生きる若者たち。
ある者はゲイであることを隠して売春し、ある者は暴力の衝動を抑えきれず、ある者は摂食障害を患い、ある者は人との繋がり欲しさに体の関係を求める。社会から閉ざされた「学校」という特殊な日常の中に潜む淀んだ影は、日増しに膨らみ続け爆発寸前を迎える。
10代の若者が体験する、生き辛さ・生き苦しさ、虚しさなどが混ざり合い、大人への階段を登っていく。日常を生きることに精いっぱいで、違和感を覚えているもののどうにもできない若者たちの暴力的な心の揺らぎを、『世界の中心で、愛を叫ぶ』などを手掛けた行定勲がリアルに描く。
衝撃的な内容で、多くのファンの心をつかむ岡崎京子の世界観に、20代の実力ある俳優たちが体当たりでぶつかり、迫真の演技でリアルな「生」を演じ切る。
詳細 リバーズ・エッジ
太陽
2015年、NHK連続テレビ小説『まれ』で、土屋太鳳演じるヒロインの同級生役を好演したことで話題となった門脇麦。彼女の初の主演映画である『太陽』は、同じく主演を神木隆之介が務め、SFであり青春ドラマでありラブストーリーであり家族の物語でもある究極のハイブリッド映画として話題を呼ぶ。
原作は、2011年に劇団イキウメによって舞台上映された同名作品。監督と脚本は、『22年目の告白 私が殺人犯です』で知られる入江悠。
21世紀初頭、バイオテロによって蝕まれた架空の世界が舞台となっており、ウイルスが蔓延している中、人類は2つの種類に分けられる。太陽の下で暮らせなくなった新人類の「ノクス」と、太陽の下でこれまで同様暮らす旧人類の「キュリオ」。
相容れない存在の2つはぶつかり、キュリオはノクスに管理され、貧困の中あえぎながら懸命に生きている。神木隆之介と門脇麦は、そんな新人類に管理されながら生きるキュリオの役で、新人類に憧れる青年と新人類を憎む少女を演じる。
20代の若手俳優の中でも抜群の演技力を持つ2人が放つ、新たな未来のために奔走する切なくも希望に満ちた物語。
詳細 太陽
映画『チワワちゃん』の評判・口コミ・レビュー
『チワワちゃん』鑑賞。東京に住む若者の日常を描いた二宮健監督作品。今年の日本映画ベスト1。クラブやナイトプールといったインスタ映えしそうなスポットを舞台とした青春群像が眩しすぎて号泣。今最も好きな日本人監督の新作とはいえ、これほどの中毒性があると映像ドラッグ。ダメ。ゼッタイ。 pic.twitter.com/HGWVqIXaA7
— だよしぃ (@purity_hair) 2019年1月20日
『チワワちゃん』@あべのアポロシネマ
予告で感じた通りの映画だったけど、思ったより纏まっていた。もっと無茶苦茶であって欲しかったな…。でも、浅野忠信のシーンは異質で流石だ、と。若さ故の刹那的な無軌道さ。青春とは酩酊中の乱痴気騒ぎ。覚めるまでは踊り(踊らされ)続けていればいいサ。 pic.twitter.com/GXrXWAVOze— masao obata。 (@obao_cinema0206) 2019年1月19日
チワワちゃん
独特ながらおしゃれでMVのような映像と音楽 良くも悪くも二宮ワールド全開 個人的にはリミスリよりも好き
キラキラした映像 その中に垣間見れる憧れや嫉妬
話したりするけどその人の中身は知らない それ以前にフルネームすら知らない 高校後の人付き合いってこんな感じなんだろうな pic.twitter.com/d4itIC7p5S— yossy (@yossy__1026) 2019年1月20日
「チワワちゃん」
言語化するのは難しい。ただただ好き。
はじまりからおわりまで最低で最高。
この作品がまさに青春の自爆テロ。 pic.twitter.com/FEMupOMw3F— ℍℝ (@_469646_) 2019年1月19日
『チワワちゃん』(2019/日)
劇場にて。
舞台を90年代から現在に移しても、やはり岡崎京子作品の映画でした。
生々しく、清くも正しくもないけどキラキラしている青春グラフィティ。理由は、ただそうしたいから、くらいで突っ走る、青春の自爆テロ。https://t.co/6p4vgVvsrM— 銀色のファクシミリ (@Iin5cjYdKrAm26D) 2019年1月20日
映画『チワワちゃん』のまとめ
インターネット上の架空世界で、簡単に誰とでも繋がることができるようになった現代で、本名も知らず、生い立ちも知らず、仕事や境遇なども全く知らない人と「友達」関係を続けている。一昔前では想像もできなかったことが、現代では当たり前に起きている。90年代の作品でありながら、新鋭の監督・二宮健と現代の象徴である若者たちの演技で現在形の物語に変換された青春群像劇。ある意味で、時代を感じさせない岡崎ワールドは必見である。
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