1973年、男女同権を求めて「女子テニス協会」立ち上げたビリー・ジーン・キングが、女性の力を証明するために元男子世界王者のボビー・リッグスと“バトル・オブ・ザ・セクシーズ(性差を超えた戦い)”に挑んだ実話を映画化した作品。
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の作品情報
- タイトル
- バトル・オブ・ザ・セクシーズ
- 原題
- Battle of the Sexes
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2018年7月6日(金)
- 上映時間
- 122分
- ジャンル
- ヒューマンドラマ
スポーツ
コメディ - 監督
- ジョナサン・デイトン
ヴァレリー・ファリス - 脚本
- サイモン・ボーフォイ
- 製作
- ダニー・ボイル
クリスチャン・コルソン
ロバート・グラフ - 製作総指揮
- なし
- キャスト
- エマ・ストーン
スティーブ・カレル
アンドレア・ライズブロー
サラ・シルヴァーマン
ビル・ブルマン
アラン・カミング
エリザベス・シュー
オースティン・ストウェル - 製作国
- アメリカ
- 配給
- 20世紀フォックス映画
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の作品概要
主人公のビリー・ジーン・キングを演じるのは『ラ・ラ・ランド』(16)でアカデミー主演女優賞を受賞し、名実共にトップ女優の仲間入りを果たしたエマ・ストーン。そして、彼女と世紀の一戦を戦うボビー・リッグスには、『40歳の童貞男』(05)でブレイクし、『フォックスキャッチャー』(14)でゴールデングローブ賞映画部門の主演男優賞を受賞したスティーブ・カレル。役者として旬を迎えた2人が、実在の人物になりきって火花を散らす。
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の予告動画
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の登場人物(キャスト)
- ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)
- 1960年から1983年の引退まで、世界の女子テニス界で活躍したアメリカの女子テニス選手。男女同権を声高に訴えたフェミニストとしても知られ、女子テニス選手の待遇改善のため、1973年に「女子テニス協会(WTA)」を発足させた。1965年にラリー・キングと結婚。
- ボビー・リッグス(スティーブ・カレル)
- 1930年代後半から1940年代初頭にかけて活躍したアメリカの男子テニス選手。1973年には55歳になっていたが、再び脚光を浴びたいという目論見もあってビリー・ジーンにテニスでの戦いを挑む。ギャンブルが原因で妻と離婚の危機を迎えている。
- グラディス・ヘイドマン(サラ・シルヴァーマン)
- ビリー・ジーンの友人で有名なジャーナリスト。ビリー・ジーンが立ち上げた「女子テニス協会」のスポンサーを見つけてくれる。
- マーガレット・コート(ジェシカ・マクナミー)
- ビリー・ジーンのライバルの女子テニス選手。オーストラリア出身。グランドスラム優勝記録で女子歴代1位の24勝を上げている。ビリー・ジーンの前に、ボビーと試合をする。
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のあらすじ(ネタバレなし)
まだあらゆる世界で男女格差が大きかった1970年代初頭。テニスのグランドスラム(4大大会)オープン化に伴い、プロとなった女子テニス選手のビリー・ジーン・キングは、大会で支払われる男女の賞金格差に驚きと怒りを感じる。女子テニス選手の優勝賞金は、男子選手の8分の1しかなかったのだ。
「ビジネスでもスポーツでも頂点は男、女は男に敵わない」という男性至上主義の世の中に一石を投じるべく、ビリー・ジーンは同じ志を持つ仲間たちと「女子テニス協会」を立ち上げ、女子選手だけのツアーを実現させる。
ところが、そんなビリー・ジーンに元男子テニス世界王者のボビー・リッグスが「そんなに男女同権と騒ぐなら、男性至上主義のブタである俺を倒してみろ!」と、テニスの勝負を挑んでくる。1度は断ったビリー・ジーンだったが、自身最大のライバルであるマーガレット・コートがボビーに完敗する姿を見て、こうなったら自分がやるしかないと覚悟を決める。“バトル・オブ・ザ・セクシーズ”と銘打たれた世紀の大決戦で、ビリー・ジーンは世界を変えることができるだろうか?
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の感想・評価
エマ・ストーンとスティーブ・カレルのガチンコ勝負!
この作品のクライマックスは、当然ながら“バトル・オブ・ザ・セクシーズ=ビリー・ジーンvs.ボビー・リッグス”のテニスの試合だ。1973年9月20日に行われたこの試合。会場には3万人の観客が押し寄せ、9000万人がテレビ中継を見守っていたというのだから驚く。
この試合を再現するため、エマ・ストーンとスティーブ・カレルはテニスの猛特訓をしたそうだ。最新のCGを使えば、どんなスーパーショットも再現可能なのに、この作品では2人のリアルなガチンコ勝負にこだわっている。その演出が可能になったのも、エマ・ストーンとスティーブ・カレルの並々ならぬ努力があってこそ。ビリー・ジーンとボビーの試合を見守った当時の人たちと同じような気持ちで、映画館を訪れた観客も2人の役者魂のぶつかり合いに釘付けになることだろう。
最強のスタッフ陣
監督のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスは、『リトル・ミス・サンシャイン』(06)で鮮烈な映画監督デビューを果たした。この作品は製作費800万ドルで約1億ドルの世界興行収入を稼ぎ出し、第79回アカデミー賞で作品賞を含む4部門にノミネートされ、脚本賞と助演男優賞(アラン・アーキン)を受賞している。製作パートナー兼夫婦の2人は、有名アーティスト(オアシス、ビースティ・ボーイズ、レッド・ホット・チリペッパーズ、スマッシング・パンプキンズ等)のミュージックビデオ監督としても有名で、アップルやギャップ等、数多くの大手企業のコマーシャルも手がけている。
製作に名を連ねているダニー・ボイルは、『トレインスポッティング』(96)、『ミリオンズ』(04)、『28日後…』(02)などのヒット作を次々と生み出し、2008年公開の『スラムドッグ$ミリオネア』では第81回アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む8部門を受賞した超有名な映画監督。脚本のサイモン・ボーファイは『フル・モンティ』(97)で脚本家デビューを果たし、『スラムドッグ&ミリオネア』でアカデミー賞脚色賞を受賞した実績のある脚本家だ。まさにスタッフ陣はこれ以上ないほどの最強メンバーであり、本作への期待は高まる。
男女のバトルを描いただけではない、ヒューマンドラマとしての深み
物語の主軸は男女同権を求めて立ち上がった女性とそれを阻もうとする男性の対決だが、本作には「自分らしく生きることの大切さ」という大きなテーマが隠されている。ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督は『リトル・ミス・サンシャイン』でも、個々に問題を抱えた家族が「自分たちはこれでいいよね!」と思えるまでの葛藤と再生を描き、自分らしく生きようとする人々に勇気と希望を与えている。本作の主人公のビリー・ジーンが抱える問題とは何なのか。彼女はその問題とどう向き合い、自分らしい人生を歩んでいくのか。ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督からのメッセージは、ぜひ映画館で受け取って欲しい。
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の公開前に見ておきたい映画
リトル・ミス・サンシャイン
ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督の映画監督デビュー作にして、最大のヒット作。
「美人コンテストに出場したい!」というぽっちゃりメガネ少女オリーヴちゃんの夢を叶えるため、崩壊寸前の家族がボロボロのマイクロバスに乗り込み、ニューメキシコの自宅からコンテストが行われるカリフォルニアへと旅立つ。その道のりは波乱万丈で、家族は様々な困難に直面しながら、本来抱えていた自分や家族の問題と向き合っていく。
お世辞にも美人とは言えないオリーヴちゃんが、ヘロイン中毒の破天荒なおじいちゃんに教えてもらったダンスを一心に踊るクライマックスは、おかしいのになぜか泣けてくるという名シーン。この作品を見れば、ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督のセンスの良さや人生を見つめる視点の確かさが一目瞭然なので、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』と合わせて楽しみたい1作。ちなみにスティーブ・カレルは情緒不安定なゲイの役でこの作品に出演している。
ラ・ラ・ランド
エマ・ストーンは、世界中で数え切れないほどの映画賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)で薬物依存症の娘役を好演し、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。それから2年後の2016年、この『ラ・ラ・ランド』で女優志望の主人公ミアを演じ、主演女優としてオスカー像を手にした。近年だけ見ると、いかにも順調な女優人生を歩んでいるように見えるが、彼女は15年近いキャリアを経て、現在の地位にたどり着いた。
女優活動を開始したのは2004年で、映画デビュー作は2007年公開の『スーパーバッド 童貞ウォーズ』という青春コメディ。この作品では、主人公が想いを寄せる女子高生を演じているが、それほど出番は多くない。その後も様々な映画に出演して確実にキャリアを積み重ね、ミアという当たり役に出会ったのだ。「女優になりたい」という夢を追い続けるミアの姿は、エマ・ストーンの人生とも重なる。今回のビリー・ジーン役にも、そんなエマ・ストーンの意志の強さが反映されているはず。ミアの時とは別人のようになったエマ・ストーンの表情から、実力でここまできたのだという彼女の自信がうかがえる。
詳細 ラ・ラ・ランド
フォックスキャッチャー
コメディ劇団出身のスティーブ・カレルは、『40歳の童貞男』(05)でブレイクしてから、コメディ映画やテレビドラマを中心に大活躍している俳優だ。今回の『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』でも、コメディ俳優としての実力を遺憾無く発揮して、ボビー・リッグスという癖の強い人物を熱演している。
そんなスティーブ・カレルが、俳優としての懐の広さを見せつけたのが2014年公開の『フォックスキャッチャー』。大財閥の御曹司ジョン・デュポンがオリンピックの元金メダリストを殺害したという衝撃的な実話を映画化したシリアスな作品で、スティーブ・カレルは主人公のジョン・デュポンを演じている。スティーブ・カレルは特殊メイクで見た目から本人になりきり、精神状態の不安定な主人公を完璧に演じ切っている。『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』でも、本人かと見間違えるほどボビー・リッグスにそっくりで、これはもう一種の才能ではないのかと思ってしまう。ぜひ、デュポン役とボビー役のスティーブ・カレルを見比べて、彼の変幻自在ぶりを楽しんで欲しい。
詳細 フォックスキャッチャー
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の評判・口コミ・レビュー
こちらも見応えあった!!『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』いつも思うが実話もので最後にご本人登場するやつ好き。こちらも見応えあった!!『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』いつも思うが実話もので最後にご本人登場するやつ好き。 pic.twitter.com/cdDWRT8Vsk
— sasakiHIDEAKI (@ciscosmo) 2018年8月1日
バトル・オブ・ザ・セクシーズ、差別とは疑いなく差別的発言を繰り返したり確信的な放言といった顕在化されたもののみでなく、その基盤である人や社会に複雑に深く刻みつけられてきた価値観そのものなのだと言うことを多層な視点から見事に描いている。
— sato° (@pc_6o4) 2018年8月1日
バトル・オブ・ザ・セクシーズ、シネマート心斎橋で観てきました。
すごい良かったなあ、、終わったあと、ロッカールームじゃなくてトイレで泣きました。
それから、ほんとに戦わないといけないものは何かとか、ちょっと考えた。— のぶこふ (@nobukofu22) 2018年7月28日
バトル・オブ・ザ・セクシーズ、1970年代のアメリカが舞台なんですが、その頃の女性のファッションやお化粧、髪型etc.を見てるだけでも楽しかったです。機会がありましたら是非!
— 礼堂奈宇@土曜東F40bシムーンとププ (@nowraido) 2018年7月25日
バトル・オブ・ザ・セクシーズ、題材的に強固な「女性映画」になりそうなところが、この映画スティーブ・カレルへの目線がもっのすごく優しい。泣きそうなぐらい。露悪的パフォーマンスで男性至上主義をアピールする人間の弱さや強さ、生き方をこれ程までに丁寧に描かれて。スティーブ・カレル、名優!
— あした (@karasumanime) 2018年7月23日
映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のまとめ
2017年に世界経済フォーラムが公表した「世界ジェンダー・ギャップ指数(世界男女格差指数)」によると、日本は調査対象となった世界144カ国中114位。G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)に含まれる世界屈指の先進国でありながら、男女平等という観点において日本は相当な後進国なのだ。自分とは違うもの、理解できないものは排除しようとする日本人の保守的な姿勢に、その原因があるのではないだろうか。それがどんなに馬鹿らしいことか、この映画はにこやかに教えてくれるはずだ。
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