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映画『アンダー・ユア・ベッド』のあらすじ・感想・評判・口コミ(ネタバレなし)

2019年6月、高良健吾で送る、愛する女性をひたすら監視する驚愕のラブサスペンス。ホラー小説界の大御所・大石圭原作『アンダー・ユア・ベッド』を、『バイロケーション』『劇場版 零 ゼロ』などの安里麻里監督で実写映画化。

映画『アンダー・ユア・ベッド』の作品情報

アンダー・ユア・ベッド

タイトル
アンダー・ユア・ベッド
原題
なし
製作年
2019年
日本公開日
2019年7月19日(金)
上映時間
98分
ジャンル
ホラー
サスペンス
ラブストーリー
監督
安里麻里
脚本
安里麻里
製作
松井智
堀内大示
製作総指揮
不明
キャスト
高良健吾
西川可奈子
安部賢一
三河悠冴
三宅亮輔
製作国
日本
配給
KADOKAWA

映画『アンダー・ユア・ベッド』の作品概要

恐ろしい設定や、常人離れした嗜好、『呪怨』『甘い鞭』『殺人鬼を飼う女』など、衝撃的な話題作で有名な大石圭の角川ホラー文庫処女作が、ついにスクリーンに登場する。孤独な人生を送っていた男の、ほんの僅かな宝物の記憶が、恐ろしい事件に発展する。異常で狂気的で盲目的な線の細い内外ともに繊細な男を、『ソラニン』や『シン・ゴジラ』などの話題作に出演が途切れない高良健吾が熱演する。監督は『バイロケーション』の安里麻里が務め、脚本を安里監督が書き下ろす。『氷菓』などの話題作で多方面から賞賛を集め、注目を浴びている期待の女性監督が、盲目的な男の愛に鋭く切り込んでいく。

映画『アンダー・ユア・ベッド』の予告動画

映画『アンダー・ユア・ベッド』の登場人物(キャスト)

三井直人(高良健吾)
30歳独身男性。ひたすらに存在感がなく、友人はおろか家族ともほとんど付き合いがない。趣味はアクアリウムで、自分の店を持っている。
佐々木千尋 / 浜崎千尋(西川可奈子)
30歳既婚女性。未就学児の娘が1人いる。三井とは大学時代の同級生。誰もが目を引くような美人で、現在は浜崎健太郎の妻となり、専業主婦をしている。
浜崎健太郎(安部賢一)
千尋の夫。地方公務員として働いており、部下からの信頼も厚い硬派な男。だが、千尋に対して激しい暴力と束縛を強いる面もある。

映画『アンダー・ユア・ベッド』のあらすじ(ネタバレなし)

三井直人という男は、意識しないとその存在を見つけられないほどに存在感が薄い男であった。友人は1人もおらず、教師でさえ三井の存在を忘れてしまう。更に言えば、親でさえ三井の存在を認知できないなんてことがざらであった。

そんな男は、30歳になった現在でももちろん独身である。だがある日、三井はふと大学の講義中に自分の名前が呼ばれたことを思い出した。自分を「三井くん」と呼んでくれたあの人、佐々木千尋は元気だろうか。三井は、佐々木千尋との思い出を脳裏に思い浮かべる。大学の講義で隣の席になり、ノートを見せてくれて、名前を呼んでくれた彼女。講義後に人生で最大の勇気を振り絞って千尋を喫茶店に誘い、一緒にコーヒーを飲んだ。あのときから、自分の好きなコーヒーの銘柄はマンデリンになった。千尋のマンデリンを飲む仕草を、今でもありありと思い出せる。

そうして、ふと何の前触れもなく佐々木千尋を思い出してからは、彼女が現在どこでどんな暮らしをしているのか気になって仕方なくなった。三井は、佐々木千尋を探し出すことを決意する。そして、もう一度、たった一度でいいから「三井くん」と名前を呼んでほしかった。

だが、探し出した佐々木千尋は、三井の想像の遥か上を行く生活をしていた。佐々木千尋の生活を知るため、三井は千尋の近所に引っ越し、彼女の生活を望遠レンズから監視し、更に盗聴器で盗み聞く。そこで見えた千尋は、夫の浜崎健太郎から毎日激しい暴力と束縛と凌辱を受け、憔悴しきり、同年代とは思えないほどに年老いていた。

映画『アンダー・ユア・ベッド』の感想・評価

主人公・三井直人の行動力

誰からも認知されない、ということは、社会に存在していないのと同じことである。書類上ではもちろんはっきりと存在しているが、誰からも認知されていない三井直人は、逆に言えばどこで何をしていても全く平気であった。

原作では、ある日思い出の香水の香りを嗅いで、学生時代を思い出し、そのときに思いを寄せていた女性を、興信所を頼って探し出す。探し出すだけでは飽き足らず、近所に引っ越し望遠レンズと盗聴器を使って、女性の生活を暴き、誰にも知られたくない秘密をこっそりと覗き見る日々を送る。

三井は、言ってしまえばただのストーカーである。覗き見たり写真を撮ったり、盗聴器を仕込んだりから始まり、行動はエスカレートして、果ては自宅に侵入して千尋のすぐそばに隠れて彼女の生活を「見守る」。自分の全く知らない間に、誰かが家の中に侵入しただけでは飽き足らず、何時間も居座り自分たちの生活を覗き見ているなんて知ったら、発狂してしまうかもしれない。

認知されていない、ひ弱でおどおどしていて、コミュニケーション能力も皆無な男は、自分の欲を満たすためにとんでもない行動を起こす、アクティブな人間であった。

大石圭の小説に登場する、猟奇的な嗜好の持ち主たち

原作者の大石圭が書く作品に登場する人物たちは、どの人間たちもどこか突出して優秀であるが、限りなく変人たちばかりである。美容整形の医師として天才的な腕を持ちながら、女性の肉を食べることに執着する男や、産婦人科で働く美人女性は、SMクラブで痛めつけられることに快感を覚える。調香師として、誰も作り出せない香水を調合できる嗅覚を持つ男は、過去に自分を捨てた母親に対しての憎しみを募らせる。無限の性欲を持て余した男は、ついに自分の好みの女性たちを拉致監禁し、毎夜凌辱の限りを尽くす。

ここで語るだけでも、大石圭の脳内にはびこる欲望は、一般的とは言い難いほどに逸脱している。今回の主人公・三井直人も、限りなく薄い存在感を持つ特殊な人間である。しかし、思い込みが激しく自分の求めるもののために、一切の躊躇なく法を犯し他人の領域に侵入していく。

知らない男が、夫婦のベッドの下で夫婦生活の様子を聞いているなど、普通の人は思いもよらない。そうする理由も、「もう一度名前を呼ばれたいから」とは、恐れ入る。普通なら、もっと別の形で接触し、懐かしさを誘って昔話に花を咲かせ、お互いに名を呼び合うだろう。そうした「普通」な人たちが登場しない作品だからこそ、大石圭の作品は、面白さが止まらないのだ。

登場する3人の人間

原作に登場する三井直人は、おどおどとしており、言葉遣いもたどたどしく、表情も暗い上に声もぼそぼそと小さい。三井直人とは終始そんな様子なので、主演が高良健吾だと知ったとき、三井直人にしてはイケメンすぎると感じる人が多かったのではないだろうか。

三井直人は常に下を向いて、人目を避けるように生活してきた。高良健吾は、背も高くすっきりとした鼻梁に、人受けのする顔立ちである。そんな高良健吾が、自身とは全く正反対の存在感の薄い人間を演じると、違和感しかないのではないか。そう感じながらも、高良健吾が演じる猟奇的で盲目的な男にギャップを感じ、予告編からわくわく感が止まらない。原作を読んでみると、三井直人の心境がよく分かるので、ファンならぜひ押さえて劇場に向かうべきであろう。

逆に言えば、佐々木千尋に対しての描写があまりにも美しすぎるため、ヒロインを演じる西川可奈子ではどこか物足りなさを感じざるを得ない。西川は、2007年に舞台からデビューをして以来、2015年に初めて映像作品に登場してきた今後活躍が期待される女優である。19歳の頃の大学生の千尋を演じる分には違和感などないが、30歳となり、主婦であり母であり妻である千尋を演じるには、西川可奈子は若すぎたと言える。夫である浜崎健太郎役の安部賢一と比べると、年の差がありすぎてしまい、あまりに違和感のある夫婦に見える。そうした配役のミスマッチ感を、ストーリーや映像で払拭してくれると期待したい。

映画『アンダー・ユア・ベッド』の公開前に見ておきたい映画

映画『アンダー・ユア・ベッド』の公開前に見ておきたい映画をピックアップして解説しています。映画『アンダー・ユア・ベッド』をより楽しむために、事前に見ておくことをおすすめします。

蛇にピアス

小説家・金原ひとみのデビュー小説で、第27回すばる文学賞を受賞した作品である。原作者の金原ひとみは、『蹴りたい背中』で第130回芥川龍之介賞を受賞した作家で、この作品は、そうして金原ひとみが注目を浴びていたときに発表されたものである。

19歳の少女であるルイが、蛇のように舌を二股にして切れ目を入れている人に出会い、身体改造に興味を持ち始める。ルイと同棲しているアマが、そうした身体改造に熱心で、ピアスも顔中に施し、体の至る所に派手な刺青をしている。そんな派手な見た目の男性を、高良健吾が熱演する。主人公のルイ役には映画初主演の吉高由里子が配役され、その他にも浴びる優や、市川亀次郎、井出らっきょ、小栗旬、唐沢寿明、藤原竜也などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。

映画はR-15指定され、「19歳、痛みだけがリアルなら 痛みすら、私の一部になればいい。」のキャッチコピーで話題となった。当時、吉高由里子がメディアに多く登場していた時期で、話題の小説に話題の女優が相まって、当時印象的な映画であった。

詳細 蛇にピアス

リアル鬼ごっこ シリーズ3~5

自費出版からデビューを果たした、ホラー小説家・山田悠介のデビュー作品を実写映画化したものである。刊行から半年ほどで1万部を達成した爆発的人気で話題となり、累計では100万部を超えるメガヒット作品となった。作品は、映画化の他にもテレビドラマ化されている。

『アンダー・ユア・ベッド』の監督と脚本を務める安里麻里は、『リアル鬼ごっこ』シリーズの3~5作品を担当している。これまでのシリーズと違うのは、3~5は、話がすべて繋がっているということと、追いかけられる対象が「佐藤さん」ではなく「B型」の人間であるということ。5作品目でなぜB型が追いかけられるのか謎がすべて明かされるが、それまではただB型の人たちは恐怖に戦き、逃げ惑うしかない。

また、ルールは原作とは違う完全オリジナルで、期間は3日間、時間は1時間で24時間のうちに王様の気分次第で始まるというもの。3では男子高校生が主人公となり、4では女子高校生が、5では製薬会社に勤める冴えないサラリーマンが主人公になるなど、ストーリーは繋がっているものの、あらゆる視点から物語を楽しむことができる。

どうしてB型だけが狙われるのか、謎が知りたい人は鬼に追いかけられながらその謎を解いてみて欲しい。

詳細 リアル鬼ごっこ3
詳細 リアル鬼ごっこ4
詳細 リアル鬼ごっこ5

私は絶対許さない

西川可奈子が、平塚千瑛とW主演で挑んだ衝撃作品。35歳の雪村葉子が、15歳の時に受けた集団レイプの被害を告白した手記を元に制作され、精神科医である和田秀樹が監督を担った。

作品は、主人公の目線で描かれ、リアルなレイプのシーンが印象的な作品である。西川可奈子は、15歳の頃の雪村葉子の役で、レイプに遭った被害者を熱演した。15歳の頃の葉子は、黒縁メガネでパッとしない大人しい女学生であった。だが、年末に悪夢のような集団レイプの被害に遭ってからは、家族に突き放され、学校でもいじめられ、とにかく逃げ出したい一心で援助交際を繰り返し、大金を稼ぐ日々。

そんな、身も心もずたずたにされた悲しい少女の役を、西川可奈子は見事に演じきっている。衝撃的な内容のため、概要を見ただけで気分が悪くなる人もいるかもしれないが、日本にはレイプに遭った被害者が、理解のない家族や周りの人間たちによって更に追い込まれ、逃げ場を失ってしまう現実が蔓延っている。

映画の制作には、日本アカデミー賞最優秀編集賞を受賞し、北野武作品も多く手掛けている太田義則や、日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した高間賢治、日本人として初めてプッチーニ国際賞を受賞した音楽家・三枝成彰が関わっている。制作陣を見ただけで、この映画に制作陣が寄せる社会的期待の大きさが伺える。

詳細 私は絶対許さない

映画『アンダー・ユア・ベッド』の評判・口コミ・レビュー

映画『アンダー・ユア・ベッド』のまとめ

映画の予告では、うつろな目で憧れの人の生活を除いている高良健吾の様子が、妙に生々しく描き出されている。普段の高良健吾が見せる笑顔は一切なく、ぼさぼさの髪の毛に何かに怯えているような視線、そして、憧れの人が使っているベッドの下に入り込み、息を潜めてジッとしている姿が映し出される。あまりに狂気的で、不気味な姿に、現実を忘れてしまいそうになる。高良健吾は、作品に対して「心から痛々しくて不気味」だとコメントし「見ている人を何とも言えない気持ちにさせるかもしれない」と危惧するような発言もしている。気分次第の愛と緊張感の入り混じる、衝撃的な作品に仕上がったことは、原作ファンも大いに喜ぶべきところだろう。

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