不慮の事故で命を落とした男は、シーツを被った幽霊となって愛する妻のいる自宅へ戻り、彼女を想って彷徨い続ける。新進気鋭の映画製作スタジオA24が放つ、“死の先”にある切なくも美しい愛と記憶の物語。
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の作品情報
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の作品概要
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の予告動画
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の登場人物(キャスト)
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』のあらすじ(ネタバレなし)
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の感想・評価
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の公開前に見ておきたい映画
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の評判・口コミ・レビュー
- 映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』のまとめ
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の作品情報
- タイトル
- A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー
- 原題
- A Ghost Story
- 製作年
- 2017年
- 日本公開日
- 2018年11月17日(土)
- 上映時間
- 92分
- ジャンル
- ラブストーリー
ヒューマンドラマ - 監督
- デビッド・ロウリー
- 脚本
- デビッド・ロウリー
- 製作
- トビー・ハルブルックス
ジェームズ・M・ジョンストン - 製作総指揮
- デビッド・マドックス
- キャスト
- ケイシー・アフレック
ルーニー・マーラ - 製作国
- アメリカ
- 配給
- パルコ
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の作品概要
すでに世界各国の映画祭で絶賛され、アメリカの有名映画批評家サイトでも91%の高い評価を得ている映画製作スタジオA24発の話題作。監督・脚本を務めるのは『セインツ 約束の果て』(13)のデビッド・ロウリー。同作品でも共演したケイシー・アフレックとルーニー・マーラの実力派コンビが、再びデビッド・ロウリー監督のもとに集結し、不慮の事故で幽霊になってしまった男と残された妻の“死の先”にある切ない旅路を情緒的に描き出す。
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の予告動画
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の登場人物(キャスト)
- C(ケイシー・アフレック)
- Mの夫でミュージシャン。不慮の事故で死んでしまうが、シーツを被った姿の幽霊となって、自宅へ帰る。
- M(ルーニー・マーラ)
- Cの妻。突然の事故で愛する夫を亡くし、悲しみに暮れている。幽霊になったCは見えない。
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』のあらすじ(ネタバレなし)
ミュージシャンのCと妻のMは、アメリカ・テキサスの郊外にある一軒家で幸せな結婚生活を送っていた。ところが、ある日Cが交通事故に遭い、早過ぎる死を迎えてしまう。病院に駆けつけたMは、すでに冷たくなってしまった夫と対面し、その死を確認する。茫然自失のMは、Cの遺体に白いシーツを被せて、病院を去っていく。その直後、Cの遺体はシーツを被ったままの状態でむっくりと起き上がり、愛する妻のいる自宅へと帰っていく。しかし、Mには幽霊となったCの姿は見えない。Cはどうしてやることもできず、悲しみに暮れる妻を見守り続ける。
そんな日々がしばらく続いた後、このままではいけないと感じたMは、前向きに生きるための決断をする。思い出の中に取り残されたCは、妻への未練を抱えながら何十年も彷徨い続けることに。長い旅路の果てに、幽霊となったCが行き着く先とは?
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の感想・評価
死んでしまった男の目線で綴られた死の先にある物語
人間には様々な死に方があるが、不慮の事故による突然の死は、残された者にとっても、死んでしまった本人にとっても、とても残酷な死に方だと言える。朝まで元気にしていた人が、数時間後には遺体になっているのだから、まずはその現実を受け入れることが難しい。残された者は、時間をかけて再生していくしかないのだが、死んでしまった本人はどうだろうか?きっと、この世に未練を残し、幽霊となって彷徨ってしまうのではないか?デビッド・ロウリー監督は、きっとそんなことを想像して、本作の脚本を書き上げたのだろう。
シーツを被った状態の幽霊になってしまったCは、妻Mのいる自宅へ帰り、生きている Mの様子を見つめている。愛する夫がすぐそばにいるのに、MはCの存在に気づかない。この状況は、かなり切ない。つい数時間前まで、肌の温もりを感じ合い、幸せな夫婦として生活していたのに、死の先にある世界では、CとMの間に見えない結界ができている。同じ空間にいながら、2人は“生”と“死”という全く別の空間に存在しているのだ。Mの空間の時は進み続けているが、Cの空間の時は止まったまま。この絶対的な孤独の中で、幽霊になったCが何を見て、何を感じて、どんな風に魂を浄化させていくのか。それがロウリー監督の作り話であったとしても、切実に知りたいと思ってしまう。
新進気鋭の映画製作スタジオ「A24」のすごさ
本作を製作したのは、2012年に設立された独立系映画製作スタジオ「A24」。A24は、アメリカの映画業界で働いていたダニエル・カッツ、デビッド・フェンケル、ジョン・ホッジスの3人が立ち上げた映画製作スタジオで、新感覚のインディペンデント映画を次々と製作して、世界で最も注目される映画製作スタジオに急成長した。日本で“スタジオ・ジブリ最新作”が注目されるのと同じように、世界の映画界では“A24最新作”というコピーが付くだけで、その作品は大きな注目を集める。
2013年に公開されたハーモニー・コリン監督の『スプリング・ブレイカー』では、セレーナ・ゴメスを主演に迎え、映画は大ヒットする。この成功を皮切りに、ソフィア・コッポラ監督の『ブリングリング』(13)、ジェイク・ギレンホールが1人2役を演じた『複製された男』(13)、トム・ハーディ主演の新感覚サスペンス『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(14)など、斬新な作品を次々と製作して、映画界に新旋風を巻き起こす。そして、設立4年目の2016年にはバリー・ジェンキンス監督・脚本の『ムーンライト』が第89回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚色賞の3部門(ノミネートは8部門)を受賞し、名実共に世界トップクラスの映画製作スタジオとなった。
2018年6月に日本で公開されたシアーシャ・ローナン主演、グレタ・ガーウィグ監督の『レディ・バード』(17)や、10月公開予定の『アンダー・ザ・シルバーレイク』(18)もA24製作の作品。そして11月にはこの『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』(17)と『イット・カムズ・アット・ナイト』(17)の公開が控えているのだから、A24恐るべし!
デビッド・ロウリー監督のセンスと実力派キャストの共演
本作でとても印象的なのが、幽霊になったCの姿。Cを演じるのは、主演作『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16)でオスカーを受賞した超実力派のケイシー・アフレックだというのに、幽霊になったCは常に白いシーツを被っているため、ケイシーの表情を見ることはできない。これはとても大胆な演出なのだが、予告編を見る限り、ロウリー監督の試みは成功している。シーツを被っていても、ケイシーの演じるCからは、そこはかとない哀しみや孤独が伝わってくる。幽霊を白のシーツ姿というシンプルなビジュアルにしたことで、ファンタジーやオカルト系の作品にはない、本作独自の世界観が確立されている。さらに、胸に染み入るようなダニエル・ハートの音楽が素晴らしく、映画全体のクオリティを高めている。
シーツを被ってCの心情を表現するケイシー・アフレックの実力もさることながら、Cが見えないという設定で迫真の演技を続けるルーニー・マーラの底力もすごい。批評家と観客のどちらからも絶賛されているということは、ほぼ間違いない作品だということだ。
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の公開前に見ておきたい映画
ゴースト ニューヨークの幻
ニューヨークの銀行員サム・ウィート(パトリック・スウェイジ)は、恋人のモリー・ジェンセン(デミ・ムーア)と新しいアパートに引っ越し、幸せな日々を送っていた。ところが、勤め先の銀行で不正を働いていた同僚のカール・ブルーナー(トニー・ゴールドウィン)の陰謀により、見知らぬ男に命を奪われてしまう。ゴーストになってしまったサムは、モリーの身に危険が迫っていることを知り、インチキ霊媒師のオダ=メイ・ブラウン(ウーピー・ゴールドバーグ)を介して、彼女にそれを伝えようとするのだが…。
1990年に公開されたファンタジックな恋愛映画で、世界興行収入5億ドル以上を稼ぎ出す大ヒット作となった。本作は、殺された主人公のサムがゴーストとなり、恋人のモリーを必死で守ろうとするラブストーリーで、サムの一途な愛に胸を打たれる。ウーピー・ゴールドバーグの扮するインチキ霊媒師の活躍や、地下鉄に居ついているサブウェイゴースト(ヴィンセント・スキャヴェリ)の存在感も抜群で、ゴーストの細かい設定も非常によくできている。ショートカットのチャーミングなデミ・ムーアが、天国に召されるサムを見送りながら、ポロポロと涙をこぼすラストシーンは号泣必須。
ラブリーボーン
1973年12月6日。14歳のスージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)は、連続レイプ殺人犯ジョージ・ハーヴィー(スタンリー・トゥッチ)の魔の手にかかり、無残に殺されてしまう。スージーは天国と地上の境目にある世界から、残された家族やボーイフレンドの様子を見守る。そして、自分を殺した犯人の正体を家族に伝えようとするのだが…。
2009年に公開されたファンタジックなヒューマンドラマで、スージーを演じたシアーシャ・ローナンと二面性のある殺人鬼を演じたスタンリー・トゥッチの演技が高く評価された。原作は自身もレイプ被害者であることを公表しているアリス・シーボルドの同名小説。この物語は、殺人鬼によって殺されてしまった少女スージーが、死後の世界で精神的な成長を遂げていくという斬新な設定になっている。客観的な立場で愛する人たちの人生を見つめながら、スージーが明らかに成長している。それでも生き返ることはできないので、とても切ない気持ちにさせられるが、スージーの明るさに救われる。その分、レイプ殺人犯への怒りがフツフツと湧いてくる。
詳細 ラブリーボーン
ティム・バートンのコープスブライド
19世紀ヨーロッパのとある村。内気な青年ビクター(声:ティム・バートン)は、没落貴族の娘ビクトリア(声:エミリー・ワトソン)との結婚を控えていた。ところが、ビクターは結婚式前日のリハーサルで大失敗してしまい、神父の怒りを買って、森へ逃げ込む。ビクターは森で誓いの言葉の練習をしながら、結婚指輪を何気なく枯れ枝にはめる。驚いたことに、その枯れ枝はコープスブライド(死体の花嫁)・エミリー(声:ヘレナ・ボナム=カーター)の指であり、エミリーはそれをプロポーズと勘違いして、ビクターを地中深くにある死者の世界へ引きずり込んでしまう。
2005年に公開されたティム・バートン監督作品で、手間暇のかかるストップモーション・アニメーションで撮影されている。キャラクターの造形もアニメーションの仕上がりもすごいとしか言いようのない作品で、一見の価値あり。悪い男に騙されて殺害され、悲劇のコープスブライドとなってしまったエミリーは、体の一部が白骨化しているし、目玉もポロリと落ちてしまう正真正銘の死者なのだが、なぜだかとても可愛らしい。さらに、エミリーが暮らしている死者の世界がとにかく魅力的で、こんな所に行けるのなら、死ぬのも悪くないなと思えてしまう。ダニー・エルフマンの音楽も素晴らしく、何度も繰り返し見たくなるファンタジーの名作。
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』の評判・口コミ・レビュー
『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』人でなくなっても愛に寄り添い世界を覗く幽霊の物語。浮遊感に満ち、時間の概念も取り除かれたファンタジーはまるで夢をみている感覚。叙情的で美しい映像に幽霊のかすかな感情が刻まれる、 https://t.co/fsiyUTRpOE
— Monsieur おむすび (@Pooh_kuru_san) 2018年11月17日
『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』パイを食べ続けるルーニー・マーラの長回しが死ぬ程せつない。泣き叫ぶわけでも狂乱するわけでもない。けれど突き立てられたカトラリーの音が大きくなり、口に運ぶスピードが速まるにつれ、感情はどんどん高まっていく。こんな嘆きのシーンがあるなんて。 pic.twitter.com/iZeWYSfh2O
— ろろ・そぜ (@rorosoze) 2018年11月17日
『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』
残された人間同様この世を去った人にも成仏に至るまでの未練、愛する人への想いなど魂を浄化しきれずただ佇む時間がある。無念に対し涙を流すでもなく留まり静観するしかない霊の視点で描いた風変わりな旅やけど言葉排した喪失感の表現は予想以上に響く。 pic.twitter.com/CprWUKhsBC— コーディー (@_co_dy) 2018年11月17日
『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』鑑賞。複数形の作品もあるので紛らわしい。
雰囲気映画で、前半は退屈で仕方ないが、中盤からは独創性が顔を出し、一気に物語が加速。
個人的な所感ではちょっとインターステラーに被って見えた。
あれと比べてしまうと、どうにも幼稚に思えてしまった。 pic.twitter.com/L279U4eucR— CHOCOMONKEY (@_chocomonkey) 2018年11月17日
『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』観た、静の描写から表現する感情の美しさ。事故で亡くなった夫が幽霊になり妻を見守り続ける。幽霊目線で描かれる遣る瀬無さ、悲しみに苦しむ妻をただ見守る切なさ。パイ、宛ての無い手紙、死を扱いながらも個人的には「生」への賛歌だと感じた、泣いた pic.twitter.com/0UpaJZFAfP
— ミヤザキ (@komakomakamn) 2018年11月17日
映画『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』のまとめ
生きている人間が様々なことを経験しながら成長していく物語というのは、何の違和感もなく受け入れられる。しかし、死んでしまった人間が幽霊となってこの世にとどまり、現世で生きる人たちを見守りながら、多くの葛藤を経て魂を浄化させていく物語と言われても、先の展開や結末を予想するのは難しい。なぜなら、私たちは誰も死んだことがないからだ。誰も経験していないからこそ、人は死の先に何があるのかを知りたいという強い願望を持っている。できれば、幽霊の話も聞いてみたい。本作は死を体験した幽霊Cの心情を描いた不思議な感覚のヒューマンドラマなので、私たちの想像を超えた新しい価値観に出会えるかもしれない。
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